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日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少し始めています。人口減少は都市部以上に地方に大きな影響を与えていきます。東京一極集中による若手人材の不足、経済の縮小による税収減、無居住地の増加などのさまざまな課題に対して、今後地方はどのような対策を進めていけばよいでしょうか?

本記事では、地方創生に成功した自治体や近年の新しい取組事例など、地方の人口減少についての課題と対策を紹介していきます。

地方の人口減少の現状と予測

地方の人口減少は都心部よりハイスピードに進んでいます。

2018年推計で人口が増加している自治体は7都県のみ

総務省が公表している2018年10月時点での人口推計によると、47都道府県中で人口が増加しているのはわずか7都県のみです。

 

東京都が最も増加率が高く次いで沖縄県、埼玉県、神奈川県、愛知県、千葉県、福岡県と続きますが、この中で人口が自然に増加しているのは沖縄県のみです。人口が最も減少している都道府県は、秋田県、次いで青森県、岩手県が並ぶなど東北地方の人口減少が目立ちます。

 

男女人口の推移

出典:総務省統計局

 

若者の東京一極集中の現状

人口減少の要因は、出生率の低下と人口流出です。厚生労働省が2019年6月に公表した「平成30年(2018)人口動態統計月報年計)」によると出生率の全国平均は1.42と過去最低を更新しています。平均を下回る自治体のトップは東京都で出生率は1.2、次いで北海道、京都府、宮城県、秋田県、神奈川県が続きます。

 

全体で見れば、都心部より地方のほうが出生率は高い傾向にあります。しかし、1960年代以降一貫して地方から首都へ人口が流出している日本においては、都市部より多少出生率が高くても、結果として地方の人口がマイナスになります。

 

三大都市圏の人口推移

 

出典:内閣府

 

10代後半から24歳までの若者が東京に転出

具体的にどのような層が地方から東京に流入しているかについて、以下の「東京圏への転入超過数(2010-2017年、年齢階級別)」を見ると、大半が10代後半~24歳までであることがわかります。首都圏の進学先や就職先の多さ、若者の都会への憧れなどが大きく影響していることがうかがえます。

 

東京圏の年齢別転入者数

 

出典:内閣府

 

地方の人口減少予測 - 2030年から日本の全都道府県が人口減

現在のペースで人口減少が進むと地方はどうなるでしょうか?  国立社会保障・人口問題研究所がまとめた『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』によると、2030年からは日本のすべての都道府県が人口減に陥ります。

 

生産年齢人口(15-64歳)の減少のペースも速く、以下の経済産業省の「都道府県別将来推計人口(15-64歳人口)の増減率」のグラフをみると、東京都以外の自治体は、2030年時点で、2015年比で平均約10%も生産年齢人口が減少します。2045年時点では30%近く減少することが推計されています。

 

都道府県別人口推移動向

 

出典:経済産業省

 

人口増加に転じる自治体も登場

しかし、近年、国や自治体をあげて地方創生への取組を行ってきた効果も一部に見られます。平成29年度の国土交通白書においては、地方移住へ関心を持つ30代までの若い世代が増加しつつあることと、行政・民間のさまざまな取組により実際に移住者を増加させている自治体が出現していることが指摘されています。

 

市町村の人口増減

 

出典:平成29年度国土交通白書(概要)

地方の人口減少が起こす社会課題

急速な人口減少はすでに人手不足倒産などの深刻な問題を引き起こしています。それだけではなく、長期的にみると自治体の存続に影響するほどの大きな問題が発生します。以下に、地方の人口減少が引き起こす具体的な課題を提示します。

地方経済の縮小による税収減

生産年齢人口が減少することで労働力不足になると人手不足倒産、後継者不足による廃業が増えてきます。2019年1月から4月までの人手不足や後継者不足による倒産の累計は119件であり、過去最高の2018年を上回るペースで推移しています。好景気であっても事業の存続が難しい状況にすでになりつつあると言えます。

 

また、生産年齢人口=消費を牽引する人口でもあるため、人口減少に伴い国内マーケットを対象にする地場産業は苦戦することになります。消費の低迷、地域を支える地場産業の業績不振は地方自治体の税収減につながります。

社会の安心、安全を支える仕組みの維持が困難に

2019年6月に大阪府の救命救急センターが医師の人件費を集めるためにクラウドファンディングを始めることがニュースになりました。人手不足は企業の末端労働者だけではなく、医師、看護師、自衛官など人の命を支える職種、災害時に人を救助する職種にも起きてきます。

 

また、若い人材が減少することで社会保障制度においての負担と受益のバランスが崩れます。高齢化により介護費用・医療費用が増大するにもかかわらず若者世代は少なくなるため、これまでの仕組みは維持することが難しくなると言えます。社会の安心、安全を支える仕組みがゆらいでしまうのです。

無居住地点の増加                                   

国土交通省は、2050年に人口が2010年時点の半分以下になる地点が現在の6割以上になり、2割の地点が無居住化すると指摘しています。島国である日本の地方部の無居住地増加は、防衛や安全保障という観点からも大きな問題だと言えるでしょう。

 

人口増減割合

 

出典:国土交通省

地方の人口減少への対策と取組み

平成26年に国が掲げた「2060年に1億人程度の人口を維持」という中長期展望のもと、国と地方自治体は連携して2015年~2019年度の5カ年計画でさまざまな政策目標・施策を策定し実行しています。以下に国、地方自治体の支援策や取組事例を紹介します。

国の支援策

国は財政支援、人材支援、情報支援の三方面から自治体を支援しています。

 

1.財政支援策

地方創生関係交付金

地方大学・地域産業創生交付金

企業版ふるさと納税

地方拠点強化税制

 

2.人材支援策

地方創生カレッジ:

地方創生事業展開に必要なデータ分析、戦略の検討、事業化や資金調達の各種手法、観光・DMO、住民自治や交流などが学べるオンライン講座の提供。

地方創生コンシェルジュ:

地方自治体の地方創生についての相談窓口を設置。それぞれの都道府県に勤務した経験がある職員やその都道府県出身の職員が対応。

地方創生人材支援制度:

市町村長の補佐役として国家公務員や大学の研究者や民間のシンクタンクの人材などを派遣し、地方創生推進を支援。

地域活性化伝道師:

地域にの課題に対して適切な地域起こしのスペシャリストを紹介

プロフェッショナル人材事業:

地方の企業と事業革新や新商品開発などの経験がある優秀な人材のマッチング事業

地方創生インターンシップ:

若者の地方でのインターンシップを促進するための情報提供

 

3.情報支援策

国や民間が持つ地域経済に関わるさまざまな情報を収集したビッグデータを可視化した地域経済分析システム「RESAS」とデータのAPIを地方自治体に提供。

 

参考:内閣府 地方創生推進事務局

 

地方自治体の取組事例

地方自治体は各省庁のさまざまな支援策を活用し、主体的に地方創生に取り組んでいます。以下にいくつかの例を紹介します。

 

1. 地方のハンデを解消するICTの充実

地方創生のためにICTを充実させる地方自治体は多く、成功事例も多数出ています

事例1:福岡県福岡市 - 無料Wi-Fi73拠点に整備

福岡市は誰でも使える無料Wi-Fiサービスを平成24年に開始。駅、空港などの交通拠点や観光拠点など73拠点、328アクセスポイントで展開しました。多言語による観光情報の発信や、簡素な認証システムの導入(メール認証、パスワード不要)、海外とのローミングなどの先進的なサービスも提供することで、以下の成果につなげました。

 

  • ・外国語のサイト平均閲覧回数が約1千回/日、導入当初比の約17倍に(韓国語が最多)
  • ・利用者の満足度は82%。平成24年の入込観光客数は1740万人と過去最高を達成
  • ・国際コンベンション開催件数は東京に次ぐ2位に
  • ・国家戦略特区に指定され、外国人向け観光サービス実証を実施

 

参考:総務省

 

事例2:宮崎県日南市 - 通信回線使用料の80%を3年間補助、移住希望者とWeb面接

日南市では、2013年に当時33歳の新市長が就任後、「創客創人」というコンセプトを掲げて地方創生に取り組みました。「商店街再生請負人」という職種で人材を外部から公募し、斬新なマーケティング戦略と充実した企業立地優遇制度を導入した結果、市内中心部の油津商店街に4年間で29店舗(内IT企業10社以上)を誘致することに成功しました。

 

企業に対しては、固定資産税の5年間免除、雇用促進奨励金1人あたり30~36万円の補助、高速通信回線年間使用料の80%の3年間補助、賃料補助金(賃料の50%)などの手厚い優遇施策を実施。また、日南市で働きたい人に対して移住コンシェルジュがWEB面談を行うなどICTを活用した最先端の仕組みを導入しています。

 

参考:日南市

 

事例3:福島県会津若松市 - データ解析産業誘致のためにICTオフィスビルを設立

会津若松市は2019年4月に、データ解析産業の集積を目的としたICTオフィスビル「AiCT」を完成。誘致する企業には市が収集したデータと実証する場を提供するため企業側にとっては実社会で実証実験を行えるメリットがあり、ビルの完成時点で大手外資系、国内大手企業17社の入居が決まっています。

 

データ産業を集積することで、農業、観光、医療・福祉などの地域のさまざまな課題を、ICTで解決し、地域にイノベ-ションを起こすことも期待されています。地方においても都会同様の事業環境を整備することで、成長産業分野の企業誘致に成功しています。

 

参考:日刊工業新聞

 

2.地方自治体が連携して観光事業に取り組む、広域連携DMO

近年は、観光に訪れる外国人が増加しインバウンド消費額が伸びています。いろいろな地方を観光する旅行客を想定し、複数の自治体が連携して効果的なマーケティングやサービス提供を行う「広域連携DMO」も増えています。

事例1:せとうちDMO

兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県の7都道府県は2016年3月から広域連携DMOとして瀬戸内ブランドの確立に取り組み、金融機関とも協力して約100億円規模のファンドを設立。宿泊型クルーズ事業「guntû(ガンツウ)」をスタートしています。

 

参考:せとうちDMO

 

3. 地方への人材流入を促す、地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業

地方創生推進交付金を活用した、地方でのUIJターンによる起業、就業を創出する取組が2019年からスタートしており、すでに北海道、青森県、島根県などの多くの都道府県が事業を推進しています。

 

事例1:あおもり移住支援事業

青森県ではマッチングサイト「あおもりジョブ」の求人に応募し、平成31年4月以降に東京圏から青森県へ移住した人に移住先の市町村から移住支援金を支給しています。

 

支援金額:

 

  • ・2人以上の世代で青森県へ移住・就業した場合、100万円を支給
  • ・単身で青森県へ移住・就業した場合、60万円を支給
  • ・起業の場合は移住支援金+最大200万円の起業支援金の対象

 

対象者:直近で連続して5年以上東京23区に在住していた方、東京圏(一部の条件不利地域を除いた埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に5年以上在住しかつ東京23区に通勤していた方。

 

参考:青森県

地方人口を増加することに成功した例とその取組み

地方の人口を増加させるためには、出生率を上げる取組や地方へ人材が移住する流れを作ること、地方でも都心と遜色ないビジネスが行える環境を整えることが重要です。以下に、人口増加に成功した自治体の例と取組の内容を紹介します。

 

徳島県神山町 - 「神山の奇跡」と呼ばれるIT企業誘致と人口増

自然豊かな環境でありながら町内全域に整備された高速ブロードバンド網、大手企業のサテライトオフィス開設や移住者の増加などで2011年に人口増となった徳島県神山町は、地方創生のモデルケースとして注目を浴びている自治体です。

 

しかし、神山町は当初からサテライトオフィス集積を目的としていたわけではなく、働きやすいビジネスの場を提供することと毎年芸術家を国内外から招くなど「質」を重視した地方創生の取組を行っていました。それが結果としてブランディングにつながり、移住希望者が増加します。

 

高速インターネット網など都心同様のビジネス環境があることから、人のつながりを介して一社のIT企業が神山町でサテライトオフィスを開設し、それがTVで紹介されたことがきっかけでほかのIT企業もサテライトオフィスを設けるという好循環が生まれ、自治体の予想を超えた成功につながったというまさに奇跡のような経緯があります。

 

参考:Impress クラウドWatch

 

北海道厚真町 - 消滅可能性都市が人口増に

2014年に日本創成会議より「消滅可能性」があると指摘された北海度厚真町は、自治体の努力により平成22年~平成27年までの社会増減率を2.85%と増加に転じさせることに成功しています。

 

新千歳国際空港から35分、羽田空港から飛行機と車で2時間5分という地の利を活かし「東京圏との日帰りも可能」というキャッチーなコピーで600区画整備した分譲地を約500区画販売することに成功。周辺自治体より2割近く安価な「子育て支援住宅」も建設し子育て世代の移住を促進したことなどが人口増の要因です。

 

現在は地震の影響により貸出を中止していますが、厚真町でテレワーク又はサテライトオフィスの開設、起業を検討している人を対象に、北海道らしい雰囲気の木造建造物に光回線やデスク、プリンターなどが整備されたオフィス部分と住居部分が一体となった「厚真町お試しサテライトオフィス専用施設」も設置しています。

 

参考:内閣府 移住・定住施策の好事例集(第1弾)

 

岩手県遠野市 - 産学官が共同で「遠野みらい創りカレッジ」を創設

岩手県の内陸部に位置する遠野市は、閉校になった旧中学校を改修して平成26年に「遠野みらい創りカレッジ」を開校。平成28年時点でカレッジ利用者数が5049名、平成22年から28年の起業件数は103件に増加。移住者も増え、平成22年から平成27年人口の社会増減率がプラスに転じています。

 

平成29年にはテレワークセンターも施設内に開設し、テレビ会議システムやWi-Fiを完備。地方での仕事や2拠点で仕事をしたい人などを支援する環境を整備しています。

 

参考:内閣府 移住・定住施策の好事例集(第1弾)

まとめ

地方創生は東京一極集中を是正し地方社会を活性化させることを目的として、2014年にスタートしました。出生率はいまだ低下傾向にあるものの、人口流出に歯止めがかかったり、人口増加に転じたりする自治体の例も出始めています。

 

地方創生の成功事例にはさまざまなパターンがあり、事業やアプローチの手法にはその地方の地理や歴史、自治体のスタンスなどが色濃く出ていると言えます。ただし、共通する要素として移住する企業や人材への優遇施策、地元のインフラ構築などがあります。