【事例付き】5分でわかるコスト削減!必要なポイントや実施手順などを解説

企業の成長と掛かるコスト(経費)は表裏一体の関係です。企業は、限られた資源をどこにどれだけ配分するかを考えなければいけません。時には利益を確保するために、「コスト削減」を意識的に行わなければならないことがあります。

 

ですが、コスト削減が適切な方法で行われないと効果が出ないばかりか、社員のモチベーションや生産性の低下に繋がるケースも少なくありません。

そこで今回の記事では、コスト削減における目的や考え方、具体的な取り組み事例などを交えて解説します。



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コスト削減とは

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企業はコスト削減に取り組むことで、自社の利益を増やすことが可能です。ここでは、コスト削減における意味と目的について解説します。

コスト削減の意味・目的

企業におけるコストとは、営利活動をする上で必要な費用(経費)のことです。家賃や人件費、水道光熱費、通信費などの、可視化できるコストもあれば、時間やコミュニケーションなどの見えないコストも存在します。

  • 企業の利益=売上 − コスト

企業の利益に関する考え方は様々ですが、基本的には売上からコストを引いたものになります。コストには人件費やオフィスコストなどがあります。つまり、売上が変わらなくても人件費やオフィスコストを抑えることができれば、企業は利益を増やすことが可能です。

コスト削減の目的は、企業の最終的な利益を増やすことです。そのため、売上を上げるために必要なコストは削ってはならず、無駄にかかっているコストを見極めて削減する必要があります

コスト削減の効果

企業は、適切なコスト削減を行うことで、以下のような効果を期待することができます。

  • コスト削減の取り組みにより、業務が効率化される。
  • 従業員の労働生産性が向上する。
  • 企業価値が向上する。
  • 中長期的には従業員にとってもリターンを見込めるので、モチベーションアップに繋がる。

一般的に言えば、コスト削減と聞いて、良い印象を持つ従業員はいないでしょう。しかし、無駄な業務や余計なコストをチェックし直すことで、現場の業務の効率化が可能になり、生産性の向上が期待できます

先ほど述べたコスト削減の目的を明確にしなければ、いたずらに規制が多くなり、モチベーション低下につながってしまいます。後述するコスト削減の取り組み方も参考にしていただければ、より効果的にプロジェクトを進めることができるでしょう。

企業にかかる4つのコスト

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「コスト削減」といっても、企業にかかるコストには様々なものがあります。以下では代表的なコストの種類について解説していきます。

1.人件費

人件費は、企業にかかるコストの中でも大きな割合を占めます。毎月支払う基本給のほかに残業代や通勤手当なども人件費に含まれます。

会社の売り上げに対する人件費の割合である「人件費率」は、主に業種によって異なります。

ここで業種ごとの人件費割合をTKCが行った経営指標に関する調査からご紹介します。1人当たりの人件費と1人当たりの売上高から人件費率を求め、業種ごとの平均値を求めると、建設業では約25%、製造業では約29%、卸売業では約11%、小売業では約19%、サービス業では約42%でした。業種ごとに人件費は異なりますが、4割を超える業種もあり、人件費は企業にかかるコストの多くを占めています。

近年ではICTツールの発達により、遠隔でも仕事ができる環境が整っています。初期コストは必要ですが、テレワークやサテライトオフィスなどを導入できればオフィスに出社する必要がなくなり、通勤手当の削減に繋がります。

またクラウド型ICTツールを導入することで、これまで手動で行っていた業務を自動化でき、人件費削減になります。

2.採用コスト

人件費の次に大きなコストになりうるのが、採用に関するコストです。採用コストには新卒採用・中途採用があり、新卒採用においてはインターンシップや企業説明会の開催、求人媒体への広告掲載費などが必要になってきます。

マイナビが行った新卒内定調査によれば、入社予定者1人あたりに掛かる採用コストは約54万円。それが10人以上ともなれば、毎年500万円以上のコストが見込まれます。企業においては非常に大きなコストと言えるでしょう。

せっかく採用をしても、すぐに離職されては掛けたコストが無駄になってしまいます。早期離職を避けることで、採用コストを減らしましょう。

3.オフィスコスト

オフィスコストとは、家賃やOA機器のリース費用、コピー代、事務用品代など、オフィスで必要になるコストのことです。

このようなオフィスでかかる経費は、人数が多ければ多いほど減らすことができれば大きな会社の収益となります。毎月発生する賃料などのオフィスコストは、一度削減できれば、中長期的にその効果を実感することができます。

具体的には、テレワークの導入により、より安いオフィスに移転することも考えられるようになるでしょう。また、オフィスに出社する従業員が減れば、電気代やコピー代なども大幅に削減可能です。

総務省の試算では、テレワークやフリーアドレスの導入により、オフィス自体の電力消費は一人当たり43%削減可能だとされています。テレワーク導入による家庭での電力消費量の増加を考慮しても、オフィス・家庭全体で電力消費量は一人当たり14%削減可能と試算されています。オフィスコストを減らすために、企業でテレワークを導入してみてもいいかもしれません。

4.IT機器関連コスト

近年ではパソコンやタブレットなどのIT環境が日々進化しており、企業にとってはその普及が課題となっています。

企業にとってIT機器は、1年単位で買い換える必要も時にはあります。とはいえ性能に合わせて都度購入していては、コストはかさんでしまいます。そのような時には、自社で購入するのではなく、月額で利用契約を結ぶ「リース・レンタル」なども検討してみましょう。

リースであれば新規で購入するコストを抑えながら、最新機器を利用することができるようになります。

購入機器の種類にもよりますが、10万円のパソコンを一台買うとして、月額料金がおよそ5000円だとします。すると、1年のレンタルであれば購入するよりも4万円安くなります。

購入・レンタル・リースそれぞれにメリットやデメリットが存在するので、実際の使用目的、使用期間をよく検討したうえでどのようにIT機器を導入するのが一番コストがかからないかを調べましょう。

コスト削減のためのアイデア集

コスト削減の方法は、企業の事情やステータスによっても様々です。ここでは、コスト削減のためのアイデアをいくつか紹介します。使えるものがあれば、御社でもぜひ活用してみてください。

従業員にとって働きやすい環境をつくり、定着率を高める

採用コストを抑えるために、定着率を高めることを意識しましょう。

新卒を1人採用する場合、50万円程度の採用コストが掛かると先ほど紹介しました。しかし、近年は転職が当たり前の時代でもあり、企業では離職率を減らす努力をすなければなりません。

入社後に「思っていた職場環境と違かった」ということで、すぐに離職しまう人も増えており、もしそうなってしまえば掛けたコストは水の泡となり、また新たな採用コストが必要になってしまいます。

このような事態を避けるためにも、従業員にとって満足な職場環境をつくり、定着率を高めるような文化をつくっていかなければいけません。

そのためには、本人がやりがいを持って仕事に取り組める仕組みづくりや、適正な評価基準、お互いのビジョンについて話し合うことができる職場環境の構築など企業全体の雰囲気をよりよくする必要があります。これらは新卒採用だけの問題ではなく、従業員全体のモチベーションやパフォーマンス向上にも繋がる話です。

コストを削減するのではなく、コストを見直す

働く人は1日の3分の1をオフィスで過ごすと言われています。そのため、オフィスでの作業環境を見直すことは大幅なコストの削減につながります。

パソコンの電源をおとさないまま昼休憩に行ってしまうことや、強すぎる空調設定など、オフィスでは無駄なコストがかさんでいることがあります。

また、従業員が集中して作業ができるか否かが、生産性が高いかどうかを決定付ける要因の一つと言えます。実は生産性を上げることは、ある意味でコストの削減につながっているのです。

また、この場合はコストを削減するのではなくコストを「見直す」という考え方ができます。特にエンジニアなど高い集中力を要する仕事はその傾向が強いです。オフィスの照明やスタンディングデスクの導入など、削るばかりのコスト削減ではなく、コストを見直すという視点も重要でしょう。

通勤コストを無くし、従業員のストレスを軽減する

通勤によるストレスは多大です。心理的な負担だけでなく、体力、移動時間面から見ても、通勤のメリットは一つもありません。企業側にとっても、毎月交通費を負担しなければならず、非常にコストがかさむ部分でもあります。

朝のラッシュ時など通勤地獄によって従業員の体力が奪われれば、オフィスに着いた頃には疲労困憊、出社後の生産性を著しく下げる可能性があります。

その対策として、先ほども述べたようなテレワークを導入するのも良いですし、Web会議システムなどを活用して、自宅から移動しなくても働ける環境整備を行うのもコスト削減の一環でしょう。

仕組み化やマニュアル化の徹底

仕組み化やマニュアル化が徹底されていないことで、都度余計なコミュニケーションや調整によって、多大な時間コストが掛かっている可能性があります。

例えば、多店舗展開を行う企業であれば、どの店でも均一レベルのサービスを求められます。そのような中で、仕組み化が徹底されていないと、商品価値にバラつきが出てしまうので、顧客の満足度を下げてしまう恐れもあります。

そうなると、それをリカバリーするためのコストが掛かってきます。なので結果的にはじめから教育マニュアルを作ったほうが効率的というわけです。

コスト削減の手順とポイント

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コスト削減は、局所的な改善では意味がありません。企業は利益を継続して出していかなければならないということは、コスト削減も恒常的に発生する取り組みということです。

コスト削減が習慣化するためには、計画、実行、改善のプロセスを何度も繰り返し、効率化していく必要があります。 ここではコスト削減の手順について紹介します。

手順①:現状の課題(コスト)把握と、削減プランの作成

冒頭でも述べたとおり、コスト削減への取り組みにおいて重要なのは、目的の設定です。何のためにコスト削減をするのか、という問いに答えられなければ、効果を出すのは難しいでしょう。

そのためにはまず、現状の課題を把握する必要があります。必要なコストと、そうでないコストを仕分け、優先順位を決めましょう。取り組む順番を決めたら、具体的な行動プランまで落とし込めるとより効率的に進めることができます。

手順②:プランの実施・共有

コスト削減プランを作成したら、実行に移していきます。ここで注意しなければいけないポイントは、コスト削減に関係する人全てに情報を事前に共有しておくということです。

これまで普通に購入できていた備品や、経費がいきなり使えなくなり、上から削減だと言われれば従業員のモチベーションが下がってしまうのも無理はありません。

「なぜコスト削減を行うのか」といったことについて、従業員の理解と納得が必要不可欠になってくるので、マネージメント層の方はそれらの努力を怠らないようにしましょう。

手順③:実施した結果を分析・検証

施策をやったままではいけません。取り組みを行なった結果、どこのコストを削減することができたのかを、定量・定性的に評価・分析する必要があります。検証は1ヶ月、3ヶ月、半年後などある程度期間を決めて定期的に行えば、行動の前後の結果が比較しやすいでしょう。

また成果を見える化することで、「なぜいまこれをやっているか」の説明もできるので、従業員のモチベーションを維持する効果もあります。

手順④:改善を行う

コスト削減施策への評価・分析を行なった後は、その結果をもとに改善を行います。バックオフィスのメンバーだけでなく、取り組みは全従業員で協力して行う必要があります。企業にかかるコストは局所的なものではなく、すべての従業員の一つひとつの行動と密接に関連しているからです。

また改善案は少人数チームで考える方法もありますが、従業員からコスト削減アイデアを募集するのも良いでしょう。

コスト削減に成功した4つの企業事例

最後にコスト削減に成功した事例について、厚生労働省が発表する「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の平成28年度版平成29年度版の中から、「働きやすい環境を整えることでコスト削減に成功した例」にピックアップして紹介していきます。

ヤマサハウス株式会社|移動コスト削減のために全社員へスマホを支給

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出典:ヤマサハウス株式会社

住宅設計・施工などを行う鹿児島県の「ヤマサハウス株式会社」では、移動コスト削減のために全社員にスマートフォンを支給。

鹿児島という土地はとくに面積が広く、これまでは顧客先への訪問にともなう移動コスト(時間)が高くなっていたそうですが、スマートフォンを活用したWeb会議を積極的に活用することで、打ち合わせ等の効率化を図っているといいます。

また社内決済に関しては紙ではなく電子申請システムを導入することで、回覧の手間を省き、時間コストの削減に注力しています。

その結果、悩みを抱える営業へのサポート強化などもあり、一般に離職率が高いと言われる住宅営業職において、過去5年間の離職率がゼロという数字につながったそうです。

株式会社かんきょう|移動コスト削減のためにテレビ会議システムを導入

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出典:株式会社かんきょう

介護福祉用具のレンタル・販売を行う「株式会社かんきょう」では、秋田という雪国かつ広い地域での活動において移動コストが大きくなることから、テレビ会議システムを導入することで、コスト削減に取り組んでいます。

事業の拡大とともに拠点数が増加した同社ですが、各拠点の従業員が一箇所に集まるというのは、東北地方という広い面積、ならびに冬は大雪といった事情があるため、難しい状況にありました。そこで移動コストをかけずに、全拠点の従業員同士がコミュニケーションを行えるように、テレビ会議システムを導入するに至ったといいます。

また各自のパソコンから会議に参加することで、電話対応などデスクワークの多い営業事務職は、会議室に移動するといった手間がなくなり、結果的に通常業務を中断することがなくなったそうです。

ほかにも「良くする・良くなる提案書」という、各社員自らが気づきを提案する制度を実施しました。これにより一人ひとりのコストへの関心が高まり、結果的にローコスト経営につながった同社。ここまでの取り組みが、利益確保に大きく貢献しています。

株式会社Waris|テレワークを導入してオフィスコストを削減

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出典:株式会社Waris

プロフェッショナル女性(文系総合職・経験10年以上)と企業とのマッチングサービスを提供する「株式会社Waris」では、業務のほとんどをテレワーク化。コアタイム2時間・フレックスタイムは5時~22時までのハイパーフレックスタイムを導入するなど、出社の必要をなくすることでオフィスコストを削減しています。

一方でテレワーク化により、コミュニケーションの希薄化などが表面化。そこで、社内のコミュニケーションを円滑にするための制度も導入しました。具体的にはカフェ代を支給し、上司との個別面談を頻繁に実施。またランチ代を支給し、月に1度ランダムにメンバーを組み合わせて行う「ランダムランチ」などを実施しています。

このようにオフィスにお金をかけるのではなく、希薄になりがちなコミュニケーションをより円滑にすることにお金をかけることで、テレワークのデメリットを取り除いているそうです。

株式会社丸井グループ|多様な勤務体系の構築により定着率を改善

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出典:株式会社丸井グループ

株式会社丸井グループでは、多様な勤務体系を構築すべく50通りの就業パターンによるシフトを作成し、各店舗に最適な組み合わせでシフトを運用することで、1人当たりの残業時間の削減に成功しました。

また、労働の勤務および知見の多様性が醸成され、多様な視点でのサービスが可能となることで、生産性の向上に成功。多様な勤務体系を実現したことによって働きやすさが向上し、新卒採用者の定着率を大きく改善しています。

まとめ|コスト削減はまず「見える化」から

ここまでコスト削減の方法や事例を紹介してきました。以上を踏まえてコスト削減を実施するためには、まず企業にかかっているコストを把握することから始めましょう。

コストは従業員・部門ごとで、それぞれ把握する必要があります。把握・見える化することによって、従業員のコストに対する意識が芽生えるといった効果も期待できるでしょう。

コストの見える化を行い、「本当に必要?」と思える部分こそ削減の検討余地があります。普段当たり前に利用しているものでも、本当に必要かどうか改めて疑ってみることで、以外な無駄が発見できるはず。その上で、実際にコスト削減を実施していきましょう。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在東京在住。2019年はフィリピンに在住し日本企業のBtoB活動を遠隔支援、場所にとらわれない働き方を通じ、マーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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