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近年、日本産業の競争力向上のために、「オフショア開発」と呼ばれるものが注目を集めています。

オフショア開発とは、簡単に言ってしまえば開発のアウトソーシングです。ただし、通常のアウトソーシングと異なる点は、発注元と受注先に経済的格差があることによってコストメリットが生じる点です。

 

つまり、アウトソーシング先は通常、経済格差のある海外となります。海外にアウトソーシングすることをオフショアリング (オフショア開発) と考えて頂ければ間違いありません。受注先としては、人件費が安く労働力が豊富であるインド、中国、ベトナムが現在の主流になっています。

 

しかし、開発を海外に出すことは多数のメリットがある反面、問題点や失敗してしまうケースが多いです。そこで本記事では、オフショア開発における問題点を解説した後、オフショア開発を失敗させない方法についても説明します。

オフショア開発とは

オフショア開発とはソフトウェア開発やWebシステム開発、スマホアプリ開発、それらの運用・保守管理を海外企業や海外現地法人に委託することです。この様な開発形態は、2つの背景から広く利用される様になりました。

 

これからその2つの背景について解説します。

オフショア開発が利用される2つの背景

オフショア開発が利用されるようになった背景の1つ目は、「日本にIT人材が少ない」ことです。グローバル化が進んだ現在では、開発のサイクルも加速しており、高性能のソフトウェアを早く、安く開発する必要性があります。この為には、開発を進められる多くの優秀な人材が必要です。

 

しかし、自国内だけではその需要に対応できない状況になっています。2019年3月にみずほ情報総研株式会社が発表した調査では、2030年には約45万人のIT人材が不足すると予想されています。

 

IT人材需給に関する主な試算結果

(画像引用元:IT人材需給に関する調査

 

需要が増加する一方、供給が不足しているため、人材確保のコストも高くなるでしょう。つまり、自国内だけを見ていたら、高性能のソフトウェアを迅速かつ安価に開発するという目標は非常に難しいと言えます。

 

オフショア開発が利用されるようになった背景の2つ目は、「グローバル化の加速」です。グローバル化の初期は大規模な投資を必要とするため、大企業でなければ難しいという実情がありました。

 

しかし、インターネットの発展やグローバル化をサポートする企業の登場により、海外進出への障壁はなくなり、中小企業でも海外進出が可能となりつつあります。その様な中で、オフショア開発が登場してきました。

 

実際に平成29年度の中小企業白書を見ても、直接投資をしている企業で中小企業の割合が増加傾向にあることが分かります。これがグローバル化の加速を表しているといえるでしょう。


企業規模別・業種別直接投資企業数の推移

 

(画像引用元:平成29年度 中小企業白書

オフショア開発のメリット

オフショア開発が広まった理由は、上記の背景に加え様々なメリットがあったからです。そのメリットとは以下の2つになります。

人件費の削減

2019年のオフショア開発の主な委託先は、ベトナム、中国、インドといった国々です。これらの国々には、日本人エンジニアと同レベルのスキルをもつエンジニアも多数存在します。しかしながら、これらの国の人件費は、日本と比較して格段に安い為、開発コストを大幅に削減できます。

 

アジア各国の平均人件費

 

(画像引用元:各国の平均人件費

 

単月の人件費は日本の半分以下です。日本人のエンジニア人件費が70万円とすると、10人規模の開発で1年ベトナムでのオフショア開発を行った場合は下記の様なコストメリットを得ることが可能です。

 

日本で行った場合の人件費:

70万円/月*10人*12ヶ月=8,400万円

 

ベトナムでオフショア開発を行った場合の人件費:

30万円/月*10人*12ヶ月=3,600万円

 

差額はおよそマイナス5,000万円。人件費だけで比べると非常に大きなメリットがあることがわかります。そのため、オフショア開発の導入が増加しているのです。

IT人材不足の解消

日本はIT技術者が不足している為に人材の確保が難しい、という点は先に述べた通りです。しかし、オフショア開発先の海外では国としてもIT教育に力を入れており、実力のあるエンジニアを容易に確保できます。また、大量のIT人材を抱える企業も存在しており、大規模なソフト開発にも対応できるのです。

 

例えばベトナムを例に挙げると、ベトナム政府は1995年4月に「IT2000」(ベトナム情報化基本計画)を発表しています。これはITが今後の経済発展にとって戦略的な役割を果たすとの認識を持っていたことがきっかけでしたが、その後もITに力を入れる施策が次々と行われています。

 

2019年には、ベトナム・ダナン市をアジアで最も優れたIT開発コミュニティを形成することを目標に、「ダナンITパーク」をオープンさせました。シリコンバレーをモデルとしており、ベトナムからも有能なIT人材を輩出していく見込みです。このように、IT人材育成に積極的なベトナムに委託することで自社のIT人材不足を解消できるのは、オフショア開発のメリットの一つでしょう。

オフショア開発の問題点

メリットのあるオフショア開発ですが、活用する際にハードルとなる問題点も存在します。この問題点によって、オフショア開発が失敗してしまうケースも多数あります。一般的に挙げられる問題として、以下の3つがよく起こる事例です。

言語の違い

1つ目の課題はコミュニケーションの問題です。国内なら母国語同士の話し合いなので、細かいニュアンスもしっかり理解することができます。しかし、オフショア開発の場合は、コミュニケーションは基本的に英語です。

 

もちろん、最近では日本語を話せるオフショア開発の委託先もありますが、日本語を話せる委託先を選んだ場合には、コストは上がる傾向にあります。つまり、オフショア開発における最大のメリットである「コスト削減の旨み」を十分に受けられません。その為、オフショア開発においては、日常会話や仕様を含めた書類関係は全て英語が基本です。

 

英語が話せなければ、言葉の壁によってコミュニケーションが取れません。当然、うまくコミュニケーションが取れなければ、仕様のミスマッチ、納期の間違い等が発生し、結果として開発委託の失敗という結果になります。

相手の文化理解が必要

2つ目の課題は、文化の違いを理解することです。例えば、インドのオフショア開発では、時間感覚がルーズと言われます。また、マトリクス図でまとめることが不得意だったりすることもあります。また、文化によっては、発注元の真意を確認しないまま、作業手順、仕様、納期を変更してしまう事も少なくありません。

 

もちろん、オフショア開発の委託先は、良かれと思って変更をしたと弁明しますが、結果的には発注元が求める仕様に合わないモノを納品され、受注先ともめてしまう事もあります。もめる程度ならまだしも、自社にとって致命的な遅延に繋がり、予定したサービスの提供ができなくなってしまう最悪の事態も想定しておく方が良いでしょう。

 

しかし、生活や文化の違いを無理やり変えることは、そのオフショア開発会社のプライドを傷つける場合もあります。長期的な関係を考えると、ある程度の妥協は必要かもしれません。

 

更に、生活や文化の違いを無理やり変えること以上に、日本の文化を強要することは最も避けるべきことです。例えば、日本では残業は日常的に行われていますが、海外では普通ではありません。特に、追加賃金を払わないサービス残業を求めるなどは、確実に許容されません。相手の文化を重んじ、自国の文化を押し付けない態度が重要です。

管理不足になりやすい

3つ目の課題は、管理不足になりやすい点です。オフショア開発は地理的にも離れており、現地でどのような開発をしているか目で見て把握できません。その為、進捗内容は全てレポートか電話会議となります。しかし、報告内容は相手を信用するしかなく、開発の真の現状は見えません。

 

更に、レポート・電話会議のいずれも英語で進められますので、コミュニケーションの問題から逃げてしまうと、開発の全てをオフショア委託先に丸投げすることになります。全体の進捗が管理できないだけでなく、リスクも見えないので、リスクへの対策を事前に講じることもできません。

オフショア開発を成功させるポイント

オフショア開発を成功させる為には、前記に述べた問題点を予め理解し、その対策を講じておくことです。具体的には、以下の様な行動を心掛けると良いでしょう。

積極的なコミュニケーション

オフショア開発の最大の課題は「コミュニケーション」です。コミュニケーションさえ十分に行えたら、多くの問題は解決するでしょう。その為には、待ちの態度でなく、自ら積極的にコミュニケーションをとっていく姿勢が大切です。しかも、わかりやすく高頻度でコミュニケーションを行うことが望ましいでしょう。

 

以下の図では、オフショア開発で望ましいコミュニケーションの一例を記載しています。

 

オフショア開発におけるコミュニケーション

(画像引用元:「オフシェア開発」におけるコミュニケーション

 

その為には、遠隔地と画面を共有して同時に書き込みできるITツールや、類似のSkype、Google Hangout等の利用を行うのがおすすめです。

開発進捗の明確化

進捗を確認するためには、毎日始業時、就業後の提携フォーマットでの報告してもらう様にするのが良いでしょう。もし、英語でのコミュニケーションに不安があるならば、図やソースコードを見せてもらえばよいでしょう。最も大切な点は、相互の理解にずれが生じない様に可能な限り図解(見える化)することです。

 

その為にはSkype、Google Hangout等のWeb会議システムを利用すると良いでしょう。また、Googleドキュメントでソースコードの写しを共有するのも有効です。開発の進捗や納品物の現状をブラックボックス化させないために、納品物と進捗をデータで共有するようにしましょう。

オフショア開発に成功した事例

オフショア開発には様々な問題があることを理解されたと思いますが、そのメリットを最大限に活用し成功している例も多数あります。以下にその例を見てみましょう。

例1. 株式会社アールテクノ:オフショア開発契約期間満了時の再契約率100%を達成

株式会社アールテクノ

 

(画像引用元:株式会社アールテクノ

 

株式会社アールテクノ」はオフショア開発で成功した企業です。同社はCAD/CAMシステムの設計・開発を始め、インドやベトナムでの「システム・工作機械・人材」の開発をトータルに支援する事業を手掛けています。オフショア開発の最大の課題である、「コミュニケーション問題」を解決するために積極的にWeb会議を活用してきました。

 

その中で問題意識とニーズに気付き、「コミュニケーション問題」を解決するだけでなく、より高度な情報共有やコミュニケーションを実現出来るWeb会議ソリューション「V-CUBE コラボレーション」を発表しました。その結果、オフショア開発契約期間満了時の再契約率100%を達成しています。

例2. テモナ株式会社:オフショア開発を利用して大規模ソフト開発に成功

テモナ株式会社

 

(画像引用元:テモナ株式会社

 

テモナ株式会社」はリピート通販市場において国内最大規模の1000社以上に導入されている「たまごリピート」をはじめ、ユーザーの行動履歴、属性を元に表示をパーソナライズしCVRを改善する「ヒキアゲール」を提供しています。

 

オフショア開発を検討したのは、開発初期にエンジニアが10人以下だったことが理由と言います。事業速度を上げたい、コストの変動費化を早めという希望があったようです。同社の成功ポイントは、パートナーの選定に有ったようです。結果として、初期開発期間は2ヶ月を達成しました。

 

また、その後もコミュニケーションのずれが生じない様に、代表者が自らベトナムに何度も赴いたようです。

まとめ

日本の産業の競争力向上のために、「オフショア開発」と呼ばれるものが注目を集めています。オフショア開発とは、ソフトウェア開発、Webシステム開発、スマホアプリ開発、それらの運用保守管理などを海外企業や海外現地法人に委託することです。

 

オフショア開発のメリットは人件費の削減、IT人材不足の解消ができる事です。オフショア開発を利用することによって、大成功を収めた企業も少なくありません。しかしながら、問題点もあり、代表的なモノは、点です。こういった事から、失敗に終わってしまう企業も多数あります。

 

重要なことは、言語の違い・文化理解の違い・地理的距離による管理不足といった問題点を事前に把握しておき、対策を講じること。その一つの手段が積極的なコミュニケーションをとることです。言葉の違いを理由にせず、絵での意思疎通、ソースコードの見える化等を通して、受注先の開発ブラックボックスを失くすことが大切です。