【企業担当者必見】働き方改革を通じ、女性が活躍するための方法とは

近年はオフィスワークはもちろん、営業職、エンジニア、建設現場の監督、ドライバー、シェフほか、いろいろな職種で女性が活躍しています。企業以外も同様で女性医師や弁護士も今や珍しくありません。

現代の50代女性が若かりし頃は「女性はクリスマスケーキ」と揶揄され、結婚退職することがスタンダードだったことを考えると、男女雇用機会均等法以降、やはり女性の社会進出はかなり進んできたと言えるでしょう。

しかし、独身時代はハンデなく働けるものの、子育てや介護などの問題で退職したり仕事をセーブしたりする女性は今も少なくありません。いまだに就労や出世において男性と比較すると不利な面もあります。

一口に女性と言っても男性とは違い、仕事に対する価値観が多様です。ワークライフバランスを重視するため、人生のステージにおいて仕事の優先順位を低くすることもあります。企業から見れば、女性は男性と比べると「安定的に雇用しづらい」という立ち位置であったことも言えると思います。

とはいえ、生産年齢人口がどんどん減少していく日本において、男性女性均等に活用していくことは企業にとって大きな課題です。この記事では、企業がこれから女性に活躍してもらうために、どのような施策をとっていけばよいかについて紹介します。

 

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働き方改革での女性の活躍とは

働き方改革においては、女性活躍推進が一つの目玉とされています。これは、すでに女性の実務能力については社会的な認知が進み、女性に対する期待がさらに高まっていることの表れの一つだと言えるでしょう。
働き方改革では非正規問題も重視されていますが、これも多くの女性が出産を機に非正規社員となり、その能力を十分に発揮できていない現状を解決する一つのきっかけになると期待を持たせてくれる面がある方針です。

女性に対する社会的な期待の変化と男女均等の大切さ

日本の企業の女性活用において、よく指摘される課題は女性管理職の少なさです。

内閣府が公表している男女共同参画白書(平成30年版)を見ると、女性管理職比率は2017年のデータで13.2%であり、欧米各国はもとより、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど東南アジア諸国よりも低い状況です。

女性の活躍と海外との比較

出典:男女共同参画白書(概要版)平成30年版 - 内閣府男女共同参画局

もっとも、これは男女雇用機会均等法以降、企業が採用した女性総合職などの人数が当初は若干であり、管理職適齢期にある層に女性が少ないことも理由の一つです。

男女雇用機会均等法施行後しばらくは、企業にとっても女性の採用は新しい試みであり、どちらかと言えば短期的な視点で女性活用を試み、女性の側も働きながら企業でポジションを広げてきた経緯があります。

しかし、多くの企業が就労機会を均等にすることを試みた結果、女性の活躍の場が広がってきたことは事実です。昇進・昇格の機会を均等にし、育児や介護と両立しやすい環境を整える努力をすることで、マネジメント領域においても女性が能力を発揮できる可能性は十分あるでしょう。ここにきて女性への社会的期待が大きく変化したのです。

ワークライフと女性活躍の推進が企業に対してもたらす優位性

現在の日本は、生産年齢人口(15~64歳)がハイペースで減少しています。以下の総務省が出しているグラフの緑色の部分が生産年齢人口です。高齢化が進行している状況がおわかりになると思います。

生産人口年齢の比較

出典:総務省 平成28年版 情報通信白書 人口減少社会の到来「図表1-1-1-1 我が国の人口の推移」

人手不足の時代になるといつも「女性、外国人、高齢者」が注目されますが、この中では女性が潜在的労働力として最もボリュームがあり、かつ言葉の問題ものないポテンシャルの高い層だと言えます。

昨今は国が女性活用企業を助成金で支援していることもあり、今後は女性市場も優秀な人材の取り合いになっていくでしょう。早期に採用や活用に着手したほうがベターなことは言うまでもありません。

また、ワークライフバランスを重視する風潮は、近年は若い男性にも広まっています。フラットで柔軟な働き方を実現した企業は、就職戦線での人気度にもプラスの影響があることが期待できます。

これまで女性の活躍を阻害してきた企業課題

女性活躍推進のためには、これまで女性の活躍を阻害してきた企業課題を解決していく必要があります。この項では、優先して解決すべき課題について説明します。

介護・子育て中の女性への働きやすさの不整備

最も大きな課題は、子育てや介護でフルタイム正社員として働けなくなる女性の数が非常に多いことです。特に子育てです。日本の女性の労働力率は昔から、M字カーブと言われ、30歳前後の出産・子育て期に大幅に落ち込み40代に再び上昇するMの文字に似たカーブを描いています。

女性の年齢別労働力出典:男女共同参画白書 平成27年版 「 I-2-1図 女性の年齢階級別労働力率の推移 」

近年はM字カーブの底の部分が浅くなりつつはありますが、出産後の多くの女性は非正規社員として働いているのが実情です。以下の「ライフイベントによる女性の就業形態変化」の図を見ると、第1子出産後に女性の正社員率は19.8%にまで下がり、その後も出産するたびに下がり続けていることがわかります。

女性のライフイベントごとの就業形態出典:内閣府 男女共同参画白書(概要版)平成25年版 第10図

子育ては実際に経験しなければわからない肉体的・精神的負担がかかります。そもそも保育所の数は限られています。それにもかかわらず、育児休業を気兼ねなくとれる企業は少数で、パートナーが育児や介護を積極的に手伝うケースはあまり多くはありません。

いろいろなサイトをご覧になればわかりますが、多くのワーキングマザーの本音は「なぜ、私だけがこんなに働かなければならないのか」です。正社員であれ非正規社員であれ、子育てと仕事の両立はそれほどにハードだと言えるでしょう。

もっとも、これまでの企業の価値観であればこれも「個人の問題」だったかもしれません。しかし、女性の活躍を推進する道を選ぶのであれば、解決すべき課題です。介護の問題については、すでに高齢化社会に突入している日本においては、多くの男性にものしかかってくる課題でしょう。

時代の変化に沿わない企業の風土

女性が活躍しづらい理由の2つ目に、日本企業の風土や人事評価制度があります。誰もが同じ時間に出社し、決められた時間に働く制度であるため、時短勤務はおろか残業をしないで帰宅することすら気をつかわねばならないケースが少なくありません。

そして、女性が企業内でもっとも気を遣う相手は、多くの場合同性の女性です。解決策として「女性だから理解しあえるだろう」とばかりに、時短勤務の女性のフォローを同じ職場の女性に任せると今度は任された女性の側にストレスが溜まり軋轢のもとになります。

女性活躍を推進するのであれば、全従業員にワークライフバランスの重要さを認識してもらう努力をし、かつ人事評価制度を柔軟にしていく必要があります。

人事評価制度についてはいろいろな考え方がありますが、柔軟な働き方の先進的な例では、サイボウズ株式会社の「人事制度は変えるものではなく増やすもの」だという考え方が、示唆に富んでいると言えるでしょう。

労働環境の整備

これまでは、就職したら同じ職場に通勤して働くことが常識でした。そのため、勤め先も通える範囲を選ばねばならず、女性の場合はパートナーが転勤したり、出産や介護をきっかけに通勤の問題で退職することも珍しくありませんでした。

しかし、今はテクノロジーが進歩したおかげで、ネット環境さえあればいつでもどこでも働ける時代と言っても過言ではありません。今後は在宅ワーク、テレワーク、最近急速に増えつつある法人向けシェアオフィスなどを活用することで、多くの女性がより働きやすくなる可能性があります。もちろん、これは男性社員にもメリットがありますし、生産性向上にもプラスでしょう。

女性の管理職や意識の問題

女性管理職の数が増えてきているとはいえ、全体から見るとまだ若干といってよい数です。ロールモデルが少ないためか「女性のマネジメント能力」に懐疑的な意見は、男性だけでなくも当の女性たちにも残っています。

また、現在、管理職として活躍してメディアに出ているような女性は、そもそも能力が高く、就労や昇格の段階で厳しい倍率をくぐりぬけてきたスーパーウーマンのような方が多いため、普通の女性がしり込みしてしまうケースも見受けられます。

しかし、海外各国はもちろん、昔から女性管理職が多数活躍している日本の企業も存在します。男女にかかわらず能力に応じた評価をする風土や人事制度を構築していけば、女性もある程度の年齢になればマネジメント能力を身に着けるという認識を自然に持つことができるでしょう。

企業担当者必見の「女性活躍推進法」と「両立支援助成金」とは

昨今は女性活躍を推進するために、新しい法律や助成金ができています。企業担当者が知っておくべき女性活躍に関する法律や助成金の概要と押さえておくべきポイントについて説明します。

企業担当者が知っておくべき「女性活躍推進法」とは?

女性活躍を検討するにあたり、まず知っておくべき法律に「女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」があります。働き方改革に先がけて2016年4月に施行された法律です。

簡単に言うと、第一子出産にともなう離職、育児後の再就職時の非正規雇用率の高さ、女性管理職の割合の低さなどの課題を是正していく取り組みです。「女性活躍推進法」では、管理職にしめる女性の割合が数値目標化されているところがポイントです。

常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に義務付け

女性活躍推進法は、従業員301名以上の企業や国、地方公共団体は女性活躍に関する情報の公開が義務づけられています。300名以下の企業においては強制力はなく努力義務という形になっています。

情報公開までの手順

①自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
④女性の活躍に関する情報の公表
(参考:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定について

企業の変革を後押しする「両立支援助等成金」と「女性活躍加速化コース」とは?

厚生労働省では、女性が仕事と家庭を両立することを支援する企業に対して、助成金を出しています。女性従業員が出産、育児、保育、介護などさまざまなシーンに直面したときに活用できる制度ですので、ぜひ有効活用しましょう。

両立支援等助成金6コース【2019年度】

1.出生時両立支援コース:
男性労働者の育児休業に関する助成金

2.介護離職防止支援コース:
介護休業を取得した場合、職場復帰した場合、仕事と介護との両立に資する制度を利用した場合に支給する助成金

3.育児休業等支援コース:
育児休業の円滑な取得、出産後の職場復帰の取り組みを行った中小企業に対しての助成金

4.再雇用者評価処遇コース:
妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤などで退職した従業員が、適切に評価されたうえで復職できる再雇用制度を導入し、実際に活用している企業に対しての助成金

5.女性活躍加速化コース:
女性が活躍しやすい職場環境の整備等に取り組み、取り組んだ結果、数値目標を達成した中小企業に対して支給する助成金

6.事業所内保育施設コース:
自社が雇用する従業員向けに、一定基準を満たす事業所内保育施設を設置し運営、あるいは増築、建て替えを行った企業、団体などに支給する助成金

女性活躍加速化コースの詳細について

助成金の中でも、企業担当者が特に知っておくべき「女性活躍加速化コース」について説明します。これは、女性活躍に関する「行動計画」を作成し、数値目標を設定し実際にその目標を達成した場合に給付される助成金です。目標には以下の4つの区分があります。

1.女性の積極採用に関する目標
2.女性の配置・育成・教育訓練に関する目標
3.女性の積極登用・評価・昇進に関する目標
4.多様なキャリアコースに関する目標

「女性活躍加速化コース」は、目標を立てるだけでなく実際に達成した場合にのみ助成金が支給されます。「加速化Aコース」「加速化Nコース」の2種類がありますが、Aコースには従業員が300 人以下の中小企業しか申請できません。

そのため、申請条件もNコースより厳しくありません。Nコースの場合、女性管理職の比率が高くなると助成金の支給額が増額されます。

まとめ

人口の半分は女性です。日本では、その半数の中に能力を活かしきれていない女性がまだまだ多数存在します。人手不足がきっかけではありますが、ぜひこの機会に有能でポテンシャルの高い女性に活躍してもらい、企業の競争力を高めていってはいかがでしょうか?女性活躍を切り口にさまざまな制度や職場風土を改革していけば、ダイバーシティも推進され、働き方改革もよりスムーズに進行していくでしょう。

働き方関連法案について

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山田 陽一
著者情報山田 陽一

デザイン制作会社、広告代理店、フリーランスを経てブイキューブへ入社。社会の働き方の変化を実感し、ブイキューブの活動に共感。ブイキューブサービスを世の中に広く伝えるため、マーケティング プロモーション周りのディレクション・デザインを担当。

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