在宅勤務を制度とするまでの流れを徹底解説

時間外労働の上限規制など、法改正にともなって働き方改革の影響がこれまでに以上に及びつつある現在。その手段として、在宅勤務も注目される動きにあります。しかしいざ在宅勤務を導入したいと思っても、どこから始めれば良いのか、頭を悩ませる企業担当者も多いと思います。

そこでこの記事では、在宅勤務を制度化するまでの手順を紹介していきます。

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在宅勤務を制度化する企業

東京五輪に向けて、大企業を中心に在宅勤務を制度化・推進する企業は増えています。例えば最近ではトヨタ自動車が、東京五輪期間中の17日間は原則として在宅勤務とする方針を発表。東京地域に勤務する約1650人の社員全員が対象だといいます。

また事務機器、光学機器の製造を行うリコーでも、五輪期間中に主要会場に近い東京都大田区にある本社を約2週間、閉鎖すると発表。本社に勤務する社員約2000人が、在宅勤務を実施するといいます。

大企業を中心に、多数の従業員を対象とした在宅勤務の導入が進むなか、実際に在宅勤務を制度化する企業は、どの程度の割合なのでしょうか。

制度導入の状況

総務省が全国約2000社を対象にした調査(2019年)によると、在宅勤務を導入している企業は19.1%と、前年比で5.2%増加したといいます。まだまだ全体としての割合は少ないものの、着実にその数は増えているといえます。

さらにエン・ジャパンが2019年8月1日に発表した調査によると、従業員数300人未満の中小企業における在宅勤務の導入率は14%。こちらも2年前の2017年と比べると6%上昇しており、中小企業においても着実に在宅勤務の制度化に向けた動きは進んでいるといえるでしょう。

在宅勤務を導入するメリット

先のエン・ジャパンの調査によると、導入して良かったこととして「通勤困難な社員が継続して働くことが可能になった」、「業務効率(生産性)の向上につながった」、「多様性のある働き方を選ぶ社員が増えた」という回答が上位を占められていました。

1_在宅制度

(参照元:エン・ジャパン

夫の転勤や介護によって実家に戻るなど、これまでの住居から遠くへ移動せざるをえない状況であっても、在宅勤務であれば継続して働き続けることが可能です。

さらに働き方の選択肢として在宅勤務があれば、例えば子どもが急に熱を出して幼稚園や小学校を休まざるをえない状況でも、家庭で子どもの様子を見守りながら働くことができます。

導入して良かったこととして「業務効率の向上」が上位にきている点からも、従業員だけでなく、企業にとってもメリットがあることがわかります。

一方で導入する際に難しかったこととしては、「テレワーク社員の時間管理」が最も多数の回答を占めています。さらに「テレワークの利用条件設定(自然災害時、月に4日までなど)」や「テレワーク時の業務ルールの設定(始業・終業の連絡・会議出席など)」などの回答も多く、在宅勤務を導入するにあたっては、制度化するまでの条件・ルールの設定が難しいと感じている企業が多いようです。

2_在宅制度

(参照元:エン・ジャパン

在宅勤務制度導入の手順

エン・ジャパンの行った調査からも、やはり在宅勤務を導入するまでの過程に、ハードルがあるように感じます。そこで以下では、在宅勤務を導入するにあたっての手順を紹介していきます。

在宅勤務導入の目的を明確化する

昨今の働き方改革の影響や、大手企業の在宅勤務導入が話題となるなかで、在宅勤務の導入そのものが目的となってしまう可能性があります。

しかし在宅勤務はあくまでも、働き方の手段でしかありません。無目的のままに在宅勤務を導入してしまっては、コミュニケーションが希薄になったり、従業員を管理する手間が余分に増えたりと、「やっぱり在宅勤務を導入しないほうが良かった」という結果になる恐れがあります。

そこで在宅勤務によってどういった目的を果たしたいのか、明確にすることから始めましょう。

例えば企業の目的であれば「業務の効率化によって生産性を上げることで売上げを○%向上させる」ことや、「在宅勤務によって残業時間を全体平均で○時間削減することで、従来の人件費にかかるコストを○%削減する」などがあります。

ただこういった企業にとっての目的ばかりを提示していては、従業員は付いてきません。そこで従業員にとってメリットになるような目的も示す必要があるでしょう。例えば「女性が長く働き続けられる環境を作る」「柔軟な働き方によって個人の自己実現に寄与する」などかもしれません。

このように目的を明確化するうえで、企業にとっての目的と従業員にとっての目的の両輪で考える必要が出てきます。

在宅勤務の導入を推進する体制の構築

社内で在宅勤務を導入することが決定したら、在宅勤務の導入を押し進める体制を構築していきましょう。

通常、制度の導入となると人事部が主導で動くイメージがあります。しかし実際に在宅勤務を実施する従業員が必ずしも人事部の担当者ではないことを考えると、複数の部署の従業員が参加するプロジェクトチームを作ることがおすすめとされています。

田澤由利氏著書の「在宅勤務が会社を救う」によると、プロジェクトチームに含む部署の候補としては、人事・システム・経営企画・柔軟な働き方の必要性が高い部署が挙げられています。

3_在宅制度

(画像引用元:在宅勤務が会社を救う

中小企業にも当てはまる大事な視点としては、社内の全部署の業務に精通している従業員が主導で行うこと。さらに経営トップ自らが、チームの指揮をとることが重要であるといわれています。

導入する目的の共有と過程の見える化

プロジェクトチームが組まれたら、チームメンバーで在宅勤務を導入する目的の共有、さらに導入に至るまでの過程を見える化しておきましょう。

経営トップ自らが、在宅勤務の目的をプロジェクトメンバーに伝えることで、意識の擦り合わせを行う必要も出てきます。

導入に至るまでの過程を細かく見える化しておくと、各プロジェクトメンバーの役割分担も容易となります。

過程を見える化するうえで決めておく内容として、「在宅勤務が会社を救う」のなかでは、以下の7つが紹介されています。

1.導入目標
2.導入スケジュール
3.実施内容
4.実施対象
5.利用システム
6.制度の運用ルール
7.トライアルの実施内容

業務の整理

現状でどういった業務が在宅勤務可能なのか、整理しておきましょう。現状の業務をまずは洗い出したうえで、在宅勤務可能かそうでないのか、判断していく必要があります。

流れとしては、まずは在宅勤務可能な部署とそうでない部署の把握。そのうえで、在宅勤務可能な部署については、どの業務が可能なのかそうでないのかを整理していきましょう。

システムを選定する

在宅勤務を導入するにあたっては、必要に応じてシステムの導入も検討していく必要があります。例えば、在宅勤務時でも打ち合わせを行う必要が生じるなら、Web会議システムを導入する、さらにコミュニケーションをより円滑にするためにチャットツールを導入するなどが考えられます。

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出典:Zoom公式ページ

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在宅勤務に合わせた制度やルールを設定する

在宅勤務では、当然ですが職場に出社することなく、在宅で仕事を行うことになります。となると従来の制度や管理方法を変更する必要も出てくるかもしれません。例えば「労働時間制を変更する」「賃金制度を変える」などが挙げられます。

あわせて、在宅勤務を実施する際のルールも決めておきましょう。在宅勤務の申請方法を決めたうえで、「在宅勤務後は必ず成果物の提出を義務づける」、「開始・終了時に上司への報告を義務づける」などのルールを設定していきます。

一方であまりにも在宅勤務に関するルールが多すぎたり、厳しすぎたりすると、従業員は面倒を感じて制度はあるものの誰も利用しないといった状況に陥る可能性があります。とくに在宅勤務を自己申告制にするのであれば、「どうすれば従業員に利用してもらえるか」もセットで考える必要が出てくるでしょう。

トライアルを実施する

いきなり在宅勤務を制度化するのではなく、一部の従業員・部署を対象として、トライアル的に在宅勤務を導入します。そして行動→反省→改善→行動を繰り返すなかで、自社に合った在宅勤務のやり方を見つけていきましょう。

トライアルを実施する際のポイントとしては、「繁忙期を避ける」「在宅勤務の必要性が高い部署を対象とする」「まずは社内の会議室などを利用して擬似在宅勤務を実施する」などが挙げられます。

トライアル後の結果を踏まえて実際に制度化する

トライアル的に実施した結果、明確になった課題を踏まえて、在宅勤務の導入におけるルールや制度など改善していきましょう。

在宅勤務をいざ実際に制度化するとなったら、従業員への告知や制度開始のお知らせなどを行っていきます。必要に応じて、説明会などの実施も検討したいところ。今回紹介した手順も踏まえながら、在宅勤務の導入に向けて一歩動き出してみましょう。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在東京在住。2019年はフィリピンに在住し日本企業のBtoB活動を遠隔支援、場所にとらわれない働き方を通じ、マーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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