「直行直帰」夢ではない! 就業規則に取り入れて仕事を効率化するには?

一昔前、LTE通信が可能なポケットWi-FiのCMで「夢の直行直帰」というフレーズが使われていました。これまでは夢のように扱われていた直行直帰ですが、現在はクラウド型の勤怠管理システムやWeb会議システムなどを利用することで、外出先での勤怠管理や社内会議への参加が容易になり、直行直帰を行う人が増えているといいます。

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(引用:Youtubeより)

そこで今回は、直行直帰が(合コン...ではなく)仕事に与える影響や、実現に向けた取り組みなどを紹介していきます。

そもそも直行直帰とは?

そもそも直行直帰とは、会社に出社せずに自宅から直接取引先などへ訪問し(直行)、その日の目的が達成された後は日報などを入力するために会社に戻ることなく、自宅に直接帰宅すること(直帰)を指します。

一般的には始業時間前や前後に取引先へ訪問する、また取引先への訪問後に会社に戻る手間を軽減するなどの理由から直行直帰を利用します。

直行直帰が仕事に与える影響とは?

では直行直帰は仕事にどういった影響を与えるのか、以下で紹介していきます。

仕事の効率化

直行直帰によって会社に戻る必要がなくなれば、その分の移動時間を有効に使えるため、仕事の効率化につながります。

とくに取引先への訪問が多い営業などの職種は、ただでさえ移動時間が多いにも関わらず、会社への移動時間も費やしていたらメールや資料作成などの営業以外に費やす時間はどんどん削られていきます。

しかし直行直帰が実施できる環境であれば、会社への移動にともないいたずらに体力を消耗することもなくなりますし、空いた移動時間分をメールの返信などに費やすことができます。

日経BPムックの「ワークスタイル変革」のなかには、直行直帰によって仕事の効率化に取り組む企業として、小岩井乳業の例が紹介されています。

同社では2014年4月から営業担当者へiPadを支給し、取引先から直帰できるようにiPadから営業日報システムにアクセスして、日報を入力できる環境を整えました。

その結果、会社に戻らない分、時間を有効に使えるといった声が挙がっており、部下の日報提出頻度も上がったそうです。

残業時間の短縮

終業時間ぎりぎりに取引先へ訪問する必要がある場合、訪問が終了して再度会社に戻るとなると、移動時間分が余計に残業時間として上乗せされてしまうことになります。

これは営業だけでなくクライアントとの打ち合わせが日常的に発生する職種においても、移動時間を含めて終業時間を超えてしまう場合は、直帰しても良い制度を導入するなどの環境を整備していきたいところ。

会社へ戻る時間として、余分な残業が発生している場合は、直帰を実施することで企業にとっては人件費の削減にもつながります。

また2019年4月から(中小企業は2020年4月から)は、時間外労働の上限規制に関する法案が施行され、残業については国を挙げて削減する方向へと向かっています。そういった潮流のなかで、残業を削減するための1つの方法として直行直帰は有効といえるでしょう。

直行直帰のメリット

次に、直行直帰のメリットを考えていきます。

通勤地獄からの解放

例えば訪問先が郊外など都心以外の場所である場合、直行によって、都心にある会社に向かう人で混雑する朝の通勤地獄を回避することができます。

また仮に10時から始業する会社で、クライアントとの打ち合わせが10時半にある場合を考えてみます。出社してからクライアント先へ訪問するとなると、朝は始業開始にあわせてちょうど通勤ラッシュ時に会社に向かう必要があります。さらにクライアント先への移動時間を加味すると、出社しても会社に居れる時間はほとんどありません。

そこで直行を実施すれば、自宅からクライアント先へ余裕を持って向かうことができますし、10時の始業に合わせて電車に乗る必要もないため、朝の通勤ラッシュを回避できる可能性があります。

通勤時間をプライベートへ充足できる

直行直帰によって、会社への通勤時間が削減できれば、その分プライベートに充てられる時間は増えます。

朝食の時間を余分に取ったり読書の時間に充てたり、また訪問先が友人の会社の近くであれば、友人の帰宅時間に合わせて一緒にご飯を楽しむといった時間の使い方もできます。

魅力的な就業規則としてPR。人材獲得につながる可能性も

とくに若い人は、高給ではなくプライベートの時間も確保できるかどうかで会社を選ぶといわれる現在。直行直帰によって無駄な時間を極力削減している旨が社外へPRできれば、そういったとくに若い世代の人材獲得につながる可能性もあります。

帰りにくい雰囲気に飲まれることがない

一度会社に戻る必要があると、退社する際は、上司の目を気にしながら帰る必要も出てきます。しかし取引先へ訪問した後、自宅へ直接帰ることができれば、上司の顔色をうかがいながら退社する必要もなくなります。

その分、とくに若手社員にとっては、退社時間を気にする際に発生する余計なストレスも軽減されるはずです。

直行直帰のデメリット

次に直行直帰のデメリットについて、考えていきます。

タイムカードなどによる勤怠管理の難しさ

社内で仕事をしている人であれば、何時に出社し、何時に退社したかどうかなどの勤怠管理は比較的容易です。しかし直行直帰により、業務の開始や終わりが見えづらい状況であれば、勤怠管理が難しくなります。

そこであらかじめ、出社と退社の時間を決めておく必要もあるでしょう。例えば訪問先への到着時刻を出社時間、最後の訪問先を出た時刻を退社時間とするなどの方法があります。

タイムカードについては、スマホなどからアクセスできるクラウド型のツールの導入も検討したいところ。スマホに内蔵されたGPSをもとに、訪問先に到着、または出た時間と勤怠を入力したタイミングが一致しているかどうかで、管理する必要が出てきます。

仕事のプロセスが不透明

社内であれば部下の進捗状況を、上司が把握することも容易です。しかし直行直帰により部下1人で現場に出ている場合、営業が成功したかどうかなどの結果しか見ることができず、アプローチ方法などのプロセスは不明瞭となります。

すると、もし結果が出ていない場合、部下のアプローチ方法に対して上司がその都度フィードバックを行うといったことは難しくなるでしょう。そこで定期的に一対一の面談を行いながら、部下がどういった点でつまづいているのか、丁寧にヒアリングするなどの方法を取る必要も出てきます。

高い自己管理能力の必要性

直行直帰を実施しやすい営業などは、社内で誰かの監視のもと仕事を行う時間は必然的に短くなるため、各個人の自己管理能力が求められます。

直行直帰の導入によって出社義務の必要性が薄まるなかで、従業員の自己管理能力を鍛えることも企業にとっては必要となるでしょう。

直行直帰を就業規則に盛り込むには?

では実際に、直行直帰を就業規則に盛り込むための方法について考えていきましょう。

従業員に直行直帰の定義や手続き方法を共有

まずは直行直帰の定義について、従業員と共有しておきましょう。直行直帰には「終日外出する場合」「直行しその後出社する場合」「所定勤務時間の途中で外出し帰宅する場合」の3つのケースが存在します。

基本的には業務開始時刻に会社に居ない、または取引先へ訪問後、帰社しない場合などに直行直帰にあたると定義し、従業員にも事前に共有しておきましょう。

直行直帰の実施・連絡方法をルール化

従業員が直行直帰を実施する際は、届け出制を導入するなど、実施方法をルール化しておきましょう。 届出は必ずしも文書である必要はなく、口頭でも構いません。頻繁に外出が発生する場合は、前もって外出先・帰社時間などを記入するボードを用意しておくことも有効です。

そのほか訪問先に到着したら上司に連絡する、直帰する際には訪問先を出た直後に上司に連絡するなど、直行直帰の連絡方法についてもルール化しておく必要があります。連絡手段については、「Chatwork」や「Slack」などのコミュニケーションツールを利用することで、連絡が容易になります。

労働時間の把握方法を決定しておく

始業時刻と終業時刻を決める

直行直帰を実施する場合、始業にあたる時刻と終業にあたる時刻の基準を明確化することで、労働時間を把握することができます。具体的には下記のような判断基準を設けてみましょう。

種別

始業時刻

終業時刻

直行直帰

最初の訪問先の受付への到着時刻

最後の訪問先を出た時刻

直行のみ

最初の訪問先の受付への到着時刻

会社での業務終了時刻

直帰のみ

出社し業務を開始した時刻

最後の訪問先を出た時刻

(参照元:「直行直帰における適切な労務管理のしかた」

労働時間に含まれるか含まれないかの具体例を設定する

また直行直帰により労働時間を把握する際は、移動時間を含め、どの時間が労働時間に含まれるのか具体例も設定しておきたいところ。

労働時間に含まれるか含まれないかの具体例としては、主に下記となります。

労働時間に含まれる例

労働時間含まれない例

会社から取引先等へ移動する時間

自宅から取引先へ直行する移動時間

直行先の取引先から会社まで移動する時間

取引先から帰宅する移動時間

取引先から取引先へ移動する時間

外出中に私用で立ち寄った買い物時間

取引先と喫茶店で打ち合わせした時間

移動の合間など喫茶店で休んだ時間

取引先との商談を目的とした昼食時間

昼食時間

直帰予定だったが帰社命令があり、帰社した場合の出先から会社までの移動時間

車で移動し、社内で昼寝をした時間

(参照元:「直行直帰における適切な労務管理のしかた」

目安労働時間を算出し、従業員の報告と照らし合わせる

上司が必ずしも一緒に外出するわけではないため、やはり100%正確に労働時間を把握することは難しいでしょう。しかし1日の打ち合わせ回数が少ない場合、打合せに要した時間や移動時間については、事前にだいたいの時間を算出できるはずです。

その算出した時間と、従業員の報告を照らし合わせることで、労働時間を把握しましょう。

仮に算出した時間と、従業員が申告した時間とにズレがあったとしても、打ち合わせが長引いたのかそれとも交通渋滞に巻き込まれたのか理由を聴くことによって、勤怠管理を行うことができます。

助成金等を活用する

国では、中小企業の働き方改革に関連する取り組みを支援するために、助成金等も準備しています。例えば、直行直帰の制度を導入するなど就業規則の変更によって残業の削減に取り組む企業に対しては、対策に要した費用の一部を助成する「時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)」などを用意しています。

そのほか直行直帰しやすい環境へと整備するために、導入したITツールなどの費用の一部を補助する、「IT導入補助金2019」なども用意。こういった助成金等の支援を受けながら、直行直帰など働きやすい環境を整えることもできます。

ICTツールの導入・活用で直行直帰しやすい環境へと整備

最近では社外でも勤怠管理が容易にできるクラウド型の勤怠管理システムのほか、外出先で領収書をデータ化できる経費精算システムなどが増えてきています。

例えば「jinjer勤怠管理」は、直行直帰に関して打刻時にスマホから「直行」「直帰」ボタンを押すことで、勤怠管理を行うことが可能です。また「ジョブカン勤怠管理」は、チャットツールのSlackなどと連携して、遠隔地からでも手軽に打刻することができます。

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(画像引用元:jinjer勤怠管理

 

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(画像引用元:ジョブカン

楽楽清算」などのクラウド型の経費清算システムを利用すれば、これまで紙やエクセルで行っていた経費精算の管理をクラウド上で一元化。領収書をスマホで写真撮影するだけで、金額や取引先などをデータ化し、クラウド上で管理することが可能です。

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(画像引用元:楽楽清算

Web会議システムの利用で社内MTGにも参加できる

直行直帰したくとも、社内MTGに参加する必要があり、一度は会社に戻らなければならないといった方もなかにはいるのではないでしょうか。

しかしそういったケースでも、例えば弊社のMTGに特化したWeb会議システム「V-CUBE ミーティング」や、「Zoom ミーティング」などのクラウド型ツールを利用すれば外出先でも社内会議に参加することが可能です。

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(画像引用元:Zoom ミーティング

Zoomの有料版を使うべきメリットとは?

Web会議ツールZoomの有料版を使うべきメリットについては、「Zoomの有料版を使うべきメリットとは?無料プランとの違いや決済方法を解説」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。

また外出先から社内会議に参加するとなると、手近なところでいけばコワーキングスペースやカフェなどを利用するケースが思い浮かびます。一方でこういったテレワークに利用されることの多い場所は、周囲の人に声が聞かれるなど、セキュリティの面で課題があるのもたしか。そこで、弊社が提供する防音型のスマートボックス「テレキューブ」などを利用するのも1つの方法です。

テレキューブは2018年から東京・丸の内エリアのオフィスビルで導入が始まり、さらに2019年5月20日からは日比谷、赤坂、青山、横浜へ新たに設置。テレキューブの内部にはテーブルとイスが用意されており、外部に話声を聞かれることのないセキュリティの保たれた静かな環境のなかで、Web会議を実施することが可能です。

このようにICTツールを活用することで、社内MTGへの参加義務がある場合においても直行直帰は容易になります。

直行直帰の導入で働きやすい環境を

現在はクラウド型の勤怠管理システムなどを利用することで、外出先での勤怠管理が容易に行えるなど、直行直帰しやすい環境は整備されつつあります。

また時間外労働の上限規制など、働き方改革関連法案が施行されるなかで、無駄な残業や労働時間を削減する方向へと世の中が動いています。そのなかで直行直帰は、会社への無駄な移動時間を削減し、従業員の仕事の効率化や働きやすい環境を作る上で、導入を検討したいところです。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在東京在住。2019年はフィリピンに在住し日本企業のBtoB活動を遠隔支援、場所にとらわれない働き方を通じ、マーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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