インナーブランディングの成功事例6選|実際の事例を詳しく解説します

「ブランディング」は顧客などの社外に向けて、自社の魅力やブランド価値を浸透させることをいいます。このブランディングを社内の従業員に向けて行うものが「インナーブランディング」です。

「社員であれば、自社のことを一番詳しく知っているはず」と思う人もいるかもしれませんが、実情は異なる企業も多いのではないでしょうか。従業員が自分の担当以外の業務についてはよく知らなかったり、企業理念について理解していなかったりすることがよくあります。

従業員が企業理念や価値を理解していない状態では、経営陣や上司からの指示や意見に対して支持できず、積極的に業務に就けず士気が低下するおそれもあります。

そこで、必要になるものが「インナーブランディング」です。インナーブランディングにより、従業員に企業理念や価値をしっかりと浸透させることにより、従業員一人ひとりが社内で何を目指すべきか明確になります。また、自社の価値を正しく認識することにより、より愛社精神が育まれることも期待できるでしょう。

従業員と経営陣が一番となって企業を成長させていきたいのであれば、インナーブランディングのための施策を行うことが必要になります。しかし、具体的に何をすればよいのか、よく分からない担当者の方もいるかもしれません。

そこで、実際の企業が行っているインナーブランディングの施策を7つ紹介します。どのような目的で行われ、どのような結果をもたらしたのか、それぞれの事例から参考にしてみてください。

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社内向け動画による企業理念の浸透(日本航空株式会社)

社内向け動画による企業理念の浸透(日本航空株式会社)

日本航空株式会社(以下JAL)は社内教育やインナーブランディングに関する課題として、以下のようなものがありました。

  • 広報誌ではコーポレートメッセージが伝わりにくく、従業員が読んでいるのか確認できない
  • 分かりやすく効率的に伝えたい

そこで、従来ではPDFや紙媒体で情報を発信していましたが、動画を利用することになりました。動画では、経営計画や社長のメッセージ、それぞれの部署が製作したコンテンツを発信しています。

経営層が文章ではなく、自分の言葉で語ることにより表情や話す熱量まで伝わるため、より従業員に伝わりやすくなります。実際に、トップメッセージに対する従業員の受け止め方も大きく変化したそうです。

社内向けコンテンツとして、トップメッセージだけではなくそれぞれの部門がどのような業務を行っているのかが分かる動画も配信しています。これにより、自身の業務が別部門でどのように利用されているのか分かり相互理解を深めることに成功しました。

また、JALでは社内教育にeラーニングを導入していたのですが、資料は静的な画像しか掲載できず、伝達力の弱さがありました。その点も、動画による社内教育コンテンツを導入したことで、より分かりやすく効率的に従業員が教育を受けられるようになっています。

動画はライブ配信やオンデマンド配信で発信しており、紛失した場合外部流出する可能性があるDVDなどの媒体による配布はしていません。新制服発表などの大きな通知があるときにはライブ配信、トップメッセージや社内教育動画など、勤務時間に合わせて見る必要があるものはオンデマンド配信など、コンテンツに合わせて発信方法を変えています。

JALは、業務の性質上従業員の大半がシフト勤務であり、従業員全員が同じ時間に動画を見ることはかなり難しい状況です。そういった意味からもオンデマンド配信はJALに適しており、従業員が動画を閲覧しやすい状況にするように工夫されていることが分かります。

※参考:ITmedia NEWS SPECIAL「まるで社内向けYouTube!? JALが社内の情報共有に動画を活用、従業員が効果的な使い方を生み出す好循環に」

V-CUBE「日本航空株式会社 様(社内向け動画)」

社内SNSを活用した従業員へのプロモーション(日本たばこ産業株式会社)

社内SNSを活用した従業員へのプロモーション(日本たばこ産業株式会社)

出典:日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業株式会社(以下JT)は、煙がでない無縁たばこ「ゼロスタイル」などの自社製品を従業員に対してプロモーションするために、社内SNSを始めました。

導入にあたっては、子会社であるJTクリエイティブサービスに社内SNSを専門に扱う運営事務局を設置し、本格的に認知度向上に向けどのように活用していくのか検討しています。こういった社内向け新規事業は、広報などが業務のなかの一環として行う企業もあるでしょう。

しかし、JTでは専門の運営事務局を設置したことにより、登録フローの改善、昨日改修などディスカッションを重ねられるようになり、結果として従業員にとって参加しやすい社内SNSの製作に成功しています。

具体的には、プロモーションだけではなく、社員紹介や対談、コラム記事など幅広い形式で継続的にコンテンツを発信する、コンテスト企画を行うといったものです。従業員だけではなく社長も積極的に社内SNSに参加している点も、社内SNS参加人数向上に役立ちました。

以前はメールマガジンによりこういったプロモーションを行っていましたが、インパクトが少なく従業員への効果が薄いという課題がありました。しかし、社内SNSを導入することにより「ゼロスタイル」などの社内商品に興味を持つ従業員の声が多くなる、という効果をもたらしています。

※参考:SKIP「日本たばこ産業株式会社様」

ZDNet Japan「JT、社内SNSを採用--部署を越えて新たなアイデア集まる」

魅力的な社内報によるブランディング(株式会社マクロミル)

魅力的な社内報によるブランディング(株式会社マクロミル)

出典:株式会社マクロミル

株式会社マクロミルでは、経営陣の意見や支持は介入せず、従業員が自由な発想で社内報を発行しています。発行までに経営陣の許可をとる必要がなく、社内で起きたことをスピーディに発信可能です。

マクロミルの広報誌は外部からの評価も高く、「社内報アワード2021」でゴールド賞、「社内報アワード2022」ではゴールド賞にくわえグランプリを受賞しています。

受賞のポイントは、「会社の価値」に関するコンテンツを新入社員向けの情報として分かりやすく平易にまとめらえていること、堅苦しくなりがちなテーマも、優しいトーンと、ストーリー性のある書き方により読みやすくなっていることでした。実際に、読者の反響も大きかったそうです。

社内報は紙媒体による広報誌以外に、Webマガジン版として公開しています。当初の公開範囲は社内のみでしたが、広報誌は株主や投資家にも配布し、Webマガジンは一般人も閲覧可能です。

インナーブランディングが顧客や取引先に向けてのブランディングにつながっており、非常にコストパフォーマンスがよい取り組みといえるでしょう。

※参考:社内報ナビ「3つのインターナルメディアで、組織の実行力を高める(株式会社マクロミル)」

株式会社マクロミル「マクロミルの社内報『ミルコミ』が、「社内報アワード2022」でグランプリとゴールド賞を受賞」

「マクロミルの社内報『ミルコミ』が、「社内報アワード2021」でゴールド賞を受賞」

大規模シャッフルランチで社内について知る(トランスコスモス株式会社)

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出典:トランスコスモス株式会社

トランスコスモス株式会社は、コロナ禍の影響により業務形態をテレワークにシフトしました。テレワークは社内の感染症対策として有効なものですが、コミュニケーション不足になり、従業員同士のつながりが希薄になるという問題も起こります。

部署間のコミュニケーションがないと、自部署で対処できない問題をどこの部署に依頼すればよいのか分かりません。業務を円滑に進めることは難しくなり、生産性が落ちるおそれもあります。

テレワークのときでも、ビデオ会議ツールやチャットシステムによるコミュニケーションは可能です。しかし、時間の設定が必要であったり、テキストだけのやり取りになったりするため、実際に対面して気軽に話すことはできません。

そこで、トランスコスモスでは、部署を限定せず、さまざまなつながりを持てるように、週に1回100人規模のシャッフルランチを開催しています。

シャッフルランチでは、グループミーティングができる専門のツールを導入しました。大規模ランチではありますが、中身は20個のグループに分け、少人数でしっかりとコミュニケーションをとれるような工夫をしています。

このランチによりコロナ禍に入社して社内のことがよく分からない新入社員ともコミュニケーションをとれるようになったため、従業員が社内のことを知るきっかけとして成功しています。

※参考:oVice「部署を超えたつながり作りに成功。100人規模のシャッフルランチを開催」

「あぐら」と「動画メッセージ」によるハミダス活動(株式会社ニチレイフーズ)

「あぐら」と「動画メッセージ」によるハミダス活動(株式会社ニチレイフーズ)

出典:株式会社ニチレイフーズ

株式会社ニチレイフーズでは、社内風土を改革すべく、従業員のモットーである「ハミダス(とらわれず、明るく)」の浸透活動を行いました。おもに行ったことは「あぐら」と「動画メッセージ」です。

「あぐら」は経営層と従業員が双方向にコミュニケーションをとることです。経営者はニチレイフーズの企業理念は何を目指すべきなのかを語り、従業員は現場の声を伝えます。対話のテーマは事前に話す内容を用意できないように、直前に発表されます。

1回につき10人という少人数と議事録を非公開にすることにより、忌憚のない意見や活発な発言を引き出すことに成功しました。従業員のアイディアから生まれた施策もあり、企業活動に大きな影響を与えています。

「動画メッセージ」では、当初は経営層がトップメッセージを発信する媒体として活用されていました。しかし、今では従業員も動画発信に携わるようになり、新入社員の紹介や、商品の売行きが好調のときに祝福のメッセージを作成するなど、幅広い用途で使用されています。動画メッセージは毎月1本のペースで配信され、2020年1月には150本にも達しています。

ニチレイフーズグループは、以前は売上がなかなか上がらず、営業利益率が1%となかなか業績が向上しない時代もありました。しかし、業績低迷を打破するために、ハミダス活動を始めさまざまな業務改革を行ったところ、2020年には2,266億円もの売上を記録しています。

※参考:広報会議「社内活性化プロジェクトで社風の改善や業績向上の契機に」

カルチャーブックにより企業のバリューを浸透させる(株式会社ユーザベース)

カルチャーブックにより企業のバリューを浸透させる(株式会社ユーザベース)

出典:株式会社ユーザベース

株式会社ユーザベースは2008年に設立されたベンチャー企業で、2016年10月に上場しています。設立当初は会社が掲げるバリューを真に理解する人たちで構成されていましたが、会社の規模が大きくなると、そこまでしっかりとバリューが染み込んでいない従業員も増えてきました。頭では理解できていても、実体験を伴っておらず、日々の業務に活かせていない状況です。

そこで、企業のバリューを7つのルールとしてまとめ、そこからさらに「31の約束」を設定しました。この31の約束を持ち歩きできる冊子として製作しています。この冊子にはカラフルで分かりやすいイラストもついており、日々の業務のなか「企業バリューは何か、何をユーザーベースとして動けばよいのか」を確認できるようになっています。

従業員が見やすいように、という理由でWeb媒体での発信を選ぶ企業もありますが、ユーザーベースではあえて紙で冊子を作りました。これにより、カバンに入れて持ち歩くこともでき、使いたいときに気軽に開けるようになっています。

結果として、採用面談のときや社内イベント、チームの状態が悪くなったときに振り返る目的として利用され、従業員一人ひとりが「ユーザーベースのバリュー」に基づいた行動をとれるようになりました。

参考:SELEC「「DO」と「DON’T」で自社のバリューを明文化。ユーザベース「31の約束」の存在意義」

まとめ

インナーブランディング形成は企業にとって重要なものです。企業によってはインナーブランディングのための施策を行ったことで、業績が向上することもあります。

インナーブランディングを成功させるためには、どうすれば伝わりやすいのか従業員目線に立って行うことが重要です。「インナーブランディングのため」ということを理由に、一方的に企業理念やビジョンなどを押し付けても、反発を覚える従業員が出るかもしれません。

今回紹介した企業では、社内の状況や課題に合わせて社内動画、社内SNS、社内報など、さまざまな施策を行っています。自社でインナーブランディングのための施策を計画する際には、ぜひ参考にしてみてください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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