インナーコミュニケーションとは。社員のモチベーションを向上させる4つの手法と事例を紹介

新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的に、新たにテレワークを導入し遠隔で仕事を進める企業が増えています。社員同士が顔を合わせたり、フランクに会話したりすることが難しくなる中、社内の意思統一やモチベーションの向上が必要だと感じている経営企画・マネジメント層も多いのではないでしょうか。

組織の一体感の醸成や社員のモチベーション向上には「インナーコミュニケーション」が重要です。実際、インナーコミュニケーションの活性化を目標に掲げ、組織内の意思疎通を円滑にすべく改善に取り組む企業が増えてきています。

今回はインナーコミュニケーションが重視されている背景とともに、活性化による効果、具体的な施策、そして成功事例をご紹介します。

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インナーコミュニケーションとは

インナーコミュニケーションとは、全社員が企業と共通の目的意識を持てるように、社内に向けてメッセージを発信したり、社員間でコミュニケーションをとったりすることです。インターナルコミュニケーション、社内コミュニケーション、社内広報とも呼ばれます。

組織の一体感を醸成し、社員の満足度、生産性を高める目的で、インナーコミュニケーションの重要性に注目が集まっています。

インナーコミュニケーションが重視される背景

なぜ今、インナーコミュニケーションが重視されているのでしょうか。

その理由の一つに、テレワークの導入が進み、社員同士のコミュニケーションが希薄化していることが挙げられます。

自宅で働く社員にとって、リアルに対面した会議やちょっとした雑談が難しくなったことで、他の社員とのコミュニケーションの量と質が下がっていると感じている人が増えているのです。日経BPコンサルティングが実施した調査結果では、60%を超えるビジネスパーソンが「社内コミュニケーションが取りづらい」と回答しています。

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出典:
「新型コロナウイルスによる業務への影響とその対応に関する調査 2020年4月」日経BPコンサルティング

また、人材の流動性の高まりも、インナーコミュニケーションが重視される要因の一つです。

「終身雇用」が当たり前だった時代が終わり、企業が永続的に存続する保証がない今、働き手は自らの仕事を確保できるようにしようとします。いつ会社が業績不振に陥っても大丈夫なように、転職できる高いスキルを養おうという意識が高まっているのです。またプライベートを重視する働き方を望む人が増えたり、複数の企業で仕事をする働き方を始める人が増えたりと、仕事の選び方も多様になっています。

そんな中で企業は優秀な人材が社内から流出しないようにするために、社員に「自社のファン」になってもらい「自社で働く意義」を感じてもらう必要が出てきています。つまり、企業ビジョンの共有や社内制度の構築などによって、社員の帰属意識を高め、業務へのモチベーションを高める取り組みが必要になっているのです。

テレワーク導入によって社内コミュニケーションの希薄化が進めば、より一層、人材の流動性も高まりかねません。こうした状況を踏まえると、インナーコミュニケーションを活性化させることは非常に重要だと分かります。

インナーコミュニケーションを強化する3つのメリット・効果

インナーコミュニケーションの活性化によって得られるメリット・効果は何でしょうか。

効果1. 離職率の低下

インナーコミュニケーションが重視される背景の一つでもある「人材の流動性の高まり」。社員に自社のファンになってもらうことができれば、離職率は低下します。

会社を辞める理由は人それぞれですが、経営理念や事業戦略などの経営層からのメッセージが曖昧で共感できない場合よりも、実は上司や他の社員とうまくいかないという人間関係が退職の引き金になっている場合が多くあります。

人材の流動化が進み、転職が当たり前の時代になったからこそ「優秀なのに他の社員とうまく合わず辞める」ことを避けたいもの。そこで社員間のコミュニケーション改善に取り組めば、優秀な社員も存在意義を感じて辞めずに働いてくれる可能性が高まります。

効果2. モチベーションの向上

インナーコミュニケーションを強化すると、会社全体の一体感の醸成や組織力の強化に繋がり、結果的に社員一人ひとりの仕事に対するモチベーションが高まります。

社員をまとめるには、経営理念や事業の価値を伝え続け、自社の社員でありたいと動機付けた後、事業戦略から各自の明快な仕事のタスク・目標へと展開し、納得して行動してもらうことが大切です。納得して仕事に取り組むことができる状態になれば、仕事に対するモチベーションが向上します。

つまり、明確に目的を設定してコミュニケーションをとることで、会社全体の一体感が生まれ、チームや組織が一つにまとまるだけでなく、社員一人ひとりの仕事が明確になり、モチベーションがアップするのです。

効果3. 業務パフォーマンスの向上

企業の組織力を高めるインナーコミュニケーション施策で、各チームでのコミュニケーションの質や量が向上すれば、自ずと業務パフォーマンスが向上します。

パフォーマンスが上がる条件として、各々の仕事内容や実現のための手段が明確で揃っていることが前提になります。その要素を揃えるためには、チームや組織内での対話やディスカッションが重要です。会社の事業戦略やチーム目標を何度も共有し、しっかり納得しタスクに落とし込むことができることで、やるべき業務に専念してパフォーマンスを上げられます。

さらに、社内のコミュニケーションが活発になり、いつでも話しやすい関係性が出来ていると、社員の心理的安全性は高まり、より仕事に集中しやすくなります。その結果、業務パフォーマンスが向上していきます。

インナーコミュニケーションを活性化させる施策・手法

では、具体的にどんな手法を用いればインナーコミュニケーションが活性化するのでしょうか。

ここからは、インナーコミュニケーションを活性化させる具体的な手法をご紹介します。オンラインでも実施可能な施策と、オフラインでの施策にわけて見ていきましょう。

オンライン上で実施可能な3つの施策

広がるテレワーク導入に合わせて、オンラインでも実施可能なインナーコミュニケーション施策をご紹介します。

手法1. 社内報

企業からのメッセージを社員に向けて発信する媒体の一つに「社内報」があります。具体的には以下のような形式で発信されることが多いです。

  • 冊子
  • 新聞
  • 動画
  • 音声

企業規模が大きくなるほど、経営層のメッセージは現場に届きにくくなり、各部門の動きが伝わりにくくなります。そこで社内報を活用すれば、経営層が何を目指しているのか、他の社員がどのように働いているのかを発信し、社員同士の目線を合わせ、会社の一体感をつくることができます。

冊子や新聞で制作し、社内で配布もしくは掲示、自宅に郵送していた事例が多いですが、最近はオンライン上で発行して、いつでもどこでもアクセスできる状態にしている企業も多いようです。ウェブ上であれば、アナログな手法では取得できなかった「実際に誰が読んだか・見たか」というデータを取得し分析もできます。また、動画プラットフォームを活用した社内報では、視聴時間やどこまで視聴したのかなどを取得できます。こうした数値結果をもとに発信内容の改善も可能になります。

また、動画や音声を活用して、直接メッセージを届ける社内報も増えています。動画や音声であれば、冊子や新聞などのテキストでは伝わりづらい、本人性や思いが言葉に乗るため、伝わりやすくなります。経営層から現場に向けて、心に訴えかけたい大切なメッセージを伝える際や、社員のインタビューでその人らしさを伝える際にはおすすめです。

動画配信を簡単にできるツールを活用すれば、制作コストを押さえながら継続的に発信することができます。

手法2. 社内SNS・ビジネスチャット

社内SNSやビジネスチャットを活用して、コミュニケーションの量を増やすことも手法の一つです。これらのコミュニケーションツールは「社内イントラネット」とも呼ばれます。

SlackやChatworkなどに代表される社内SNS・ビジネスチャットでは、業務に関するやり取りだけでなく、社員同士の気軽なコミュニケーションを促進する上で便利に活用できます。重要なお知らせや業務のやりとりをする場所以外に、雑談ができる場をつくる企業が多いようです。

よくある懸念として「余計な雑談が増えすぎてしまい、かえって業務が捗らないのでは」という声が挙がりますが、良くも悪くもオンライン上での雑談は自然と時差が発生するので、雑談が長時間盛り上がりすぎる可能性は低いです。社員一人ひとりが業務への意識を保てていれば、雑談しすぎることもなく適切なタイミングで気軽なコミュニケーションができるようになります。

最近では「分報」という名称で、社員一人ひとりが自分の “部屋” を作り、自由につぶやくことのできる場を用意している企業も増えています。テレワークでは孤独を感じやすくなるので、気ままに感じたことや疑問点を書き込んでよい場所があることは、社員に安心感を与えます。また書き込まれた疑問点や悩みに対し、他の社員が解決策を書き込む流れができると、自然に他の社員とのコミュニケーションにも繋がります。

手法3. 社内イベント

定番の手法と言えますが、「社内イベント」はさまざまな目的にあわせて実施することが可能です。

コミュニケーション研修や、社員同士の交流を深めるための社内イベント、期ごとのキックオフミーティングや社員総会など、さまざまなイベントがあります。キックオフミーティングや社員総会のタイミングで表彰式を開催するのもよいでしょう。日頃の仕事の成果を評価される機会は、社員のモチベーションを高めます。

テレワークの影響で、社内イベントをオンラインで実施する必要性が高まっています。社内イベントのポイントは「目的を明確にして実施する」ことです。オンラインであれ、目的に沿った設計ができていれば、インナーコミュニケーションの活性化に繋がります。

たとえば、社員同士の交流を深める目的なら、Web会議ツールを通して他の社員と一緒にランチを食べる時間を定期的に設けたり、新しく入社したメンバーに関する早押しクイズ大会を実施したりと、お互いをより深く知れるようなイベントを企画してみてください。

オフラインでできる施策

その他、オフラインでのインナーコミュニケーション施策をご紹介します。これまでご紹介した、社内報や社内イベントをリアルの場で実施すると、さらに社員間のコミュニケーションが活発になります。

手法4. オフィス環境の整備

職場環境やレイアウトにこだわることも大切です。社内設備が充実していれば、日々快適に集中して仕事ができ、業務パフォーマンスが向上するでしょう。特に、オフィスのデザインやデスク・チェアの選定は重要です。

どのようにオフィス空間を設計するかによって、人と交わる導線が生まれたり、より集中できる作業スペースができたりします。例えば、固定席ではなく毎日自由に席を選べる「フリーアドレス」を採用している企業も多いです。フリーアドレスなら、部門を超えた会話が生まれやすくなりますし、プロジェクトごとに集まって効率よく作業を進めることもしやすくなります。

その他にも、打合せ専用スペースや休憩室、社員食堂などの共有スペースがあると、自然と社員間の会話が生まれます。

以上のように、インナーコミュニケーションを活性化させる手法は数多くあるため、目的や予算、企業規模にあわせて効果的な手法を選択してみてください。

インナーコミュニケーション活性化の事例

インナーコミュニケーションの重要性が増している今、多くの企業が取り組み始めています。ここでは、実際に取り組んでいる事例をご紹介します。

事例1. 本社から映像を中継し、入社式をオンライン開催|コニカミノルタ株式会社

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課題:Web会議システムでは全員に配信できず、多数の視聴者がアクセスできる安定した稼働が必要だった

成果:簡単に操作して動画配信を安定してでき、同時接続にも対応した「Qumu」でスムーズな配信を実現できた

コニカミノルタ株式会社は複合機やプリンター、医療機器、計測機器、さらにはプラネタリウムなどを開発、製造する電気機器メーカー。2020年4月の入社式は、全国的な非常事態宣言も見込まれていたため、実地開催を見送ることに。しかしWeb会議では、全員に配信できず動画も安定していなかったため課題となっていました。

そこで、もともと全社員向けのキックオフなどのイベントにも活用していた企業向け動画配信プラットフォーム「Qumu」を用いて入社式をオンラインで開催。本社には関東地区の新入社員のみが集まり、「Qumu」を活用して入社式を中継、配信。関西、東海地区の新入社員は自分の配属地に近い拠点に集まり、本社の中継を視聴しました。

参考:https://jp.vcube.com/case/20301.html

事例2. 行内向けのWeeklyニュース配信で、動画作成・配信を内製化|株式会社肥後銀行

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課題:通達文書では理解レベルにばらつきが生まれ、訴求力の高い動画の制作ノウハウもない状態だった

成果:放送局を開設し、研修を受けたスタッフが動画作成から配信までを行い、教育用コンテンツも配信可能に

株式会社肥後銀行は熊本県熊本市に本店を置く地方銀行。文書での通達では、受け手の理解力に差があったり、通達を見なかったりして浸透しないことや、訴求力の高い動画に挑戦したくても制作ノウハウがないという課題を抱えていました。

そこで映像によるコミュニケーションを強化するために、企業向け動画配信プラットフォーム「Qumu」を活用し、ニュース仕立ての「Weeklyニュース」を行員向けに配信しています。コンテンツの企画や収録、編集までを内製化し、外注していた動画コンテンツの制作もできるようになっています。こうしたトップメッセージのライブ配信やコンテンツ作成の内製化など、幅広い分野のノウハウを蓄積することで、将来的には動画を活用した顧客サービスの展開も視野に入れています。

参考:https://jp.vcube.com/case/17401.html

まとめ|企業成長にはインナーコミュニケーション活性化が不可欠

インナーコミュニケーションの活性化は、社員のモチベーションやパフォーマンス向上、組織の一体感の醸成に繋がります。

事業や組織規模が拡大すればするほど、他部門が何をやっているのか分からない、他の社員が何をしているのか見えない、知らない社員が増えた、という感覚が増えていきます。こうした状況は会社への帰属意識を薄めかねないので、コミュニケーションの質と量を高めて改善していきましょう。中には社内報コンテンツの一部を外部に発信し、社員の愛社精神を高めながら、企業ブランディングに繋げている事例もあります。

コミュニケーションを円滑にし、さらなる成長を遂げるためにも、インナーコミュニケーションの活性化に取り組んでみてください。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

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