インサイドセールスにおけるKPIの重要性
KPI(重要業績評価指標)は、目標達成の進捗を測るための数値目標です。現在の業績を評価・管理することで、目標達成に向けた具体的な行動計画が立てやすくなります。インサイドセールスにおいても、ボトルネックや目標進捗の把握に必要です。
インサイドセールス部門だけでなく、マーケティング部門・インサイドセールス部門・フィールドセールス部門・カスタマーサクセス部門が連携して動く「THE MODEL型組織」では、ファネル全体としてのボトルネックの把握にもつながります。
また、目標達成までの過程を可視化できるため進捗状況を共有しやすく、業務効率化や生産性向上が期待できる点もメリットです。加えてKPIの適切な管理はタスクを明確化でき、リソース分配の最適化も図れるでしょう。
インサイドセールスのKPI達成やボトルネックの解消について詳しく知りたい方向けに「インサイドセールスのボトルネック解消!今すぐ実践できるTips集」をご提供しています。ぜひ下記よりご覧ください。
インサイドセールスの主要KPI
KPIは最終目標達成に向けての中間目標を指します。KPIの設定は、それぞれの業種や企業によって異なりますが、インサイドセールスの場合は、以下の6つがKPIとして設定されることが多いでしょう。
KPI |
内容 |
コール数(フォローアップ数) |
顧客に電話やメールなどでアプローチする件数 |
コネクト数 |
返信や返答がきて実際にコミュニケーションをとれた件数 |
アポイント獲得数 |
商談の約束ができた数 |
有効商談数 |
見込みのある商談につなげた数 |
受注数 |
契約や注文が成立した数 |
受注金額 |
顧客から注文を受けた金額 |
それぞれのKPIにおける達成数を記録し、分析することによって企業が行っている営業活動のどこにボトルネックがあるのか見つけられるようになります。そこから改善・対策を行なっていけば、より効率的で確実な営業活動につながるでしょう。
また、分析指標としては以下が挙げられます。
計算方法 |
内容 |
|
コネクト率 |
コネクト数÷コール数 |
・コール数に対してどのくらいコネクトに成功しているのかを表す確率 ・コネクト率が高いと、電話やメールでのアプローチの効果が高いことを示す ・インサイドセールスのパフォーマンスの高さを計れる |
アポイント獲得率 |
アポイント獲得数÷コネクト数 |
・コネクト数に対して、どの程度アポイントがとれたかを表す ・アポイント獲得率が高いと、コネクト時に適切な対処ができているということを示す |
有効商談率 |
有効商談数÷アポイント獲得数 |
・アポイント数に対してどのくらい見込みある商談につながったのかを表す ・有効商談率が高いときには、効果のあるアポイント獲得や商談ができているということになる |
コネクト率が低いときは最初の電話やメールによる営業活動に、アポイント獲得率が低いときはコネクト時の対応に、有効商談率が低いときには商談の内容に問題があると言えます。これらはすべて客観的に記録した数から出せるため、自社のどの部分に課題を抱えているのか把握するときに役立つでしょう。
BDRとSDRのKPI設定例
インサイドセールスのKPI設定は「BDR」と「SDR」で異なります。ここでは、それぞれのKPI設定例を紹介します。なお、BDRとSDRの違いや役割は以下の記事もあわせてご覧ください。
BDRとはどんな役割?新規顧客開拓を成功させるためのポイント
BDRについては、別記事「BDRとはどんな役割?新規顧客開拓を成功させるためのポイント」にて解説していますので、合わせてお読みください。
SDRとは?BDRとの違いと役割、成果を上げるポイントを解説
SDRについては、別記事「SDRとは?BDRとの違いと役割、成果を上げるポイントを解説」にて解説していますので、合わせてお読みください。
BDRのKPI設定例
BDR(新規開拓型)は、企業側から見込み顧客にアプローチしていく手法で、主に新規顧客の開拓や市場の拡大が担当です。そのため、KPIには以下の指標が適しています。
KPI |
内容 |
新規リードの獲得数 |
週または月に獲得した新規リードの総数 |
アウトバウンド接触回数 |
電話やメールでの新規接触の回数 |
アポイント設定数 |
見込み客との初回ミーティングやデモの設定数 |
リードコンバージョン率 |
接触したリードが商談に進んだ割合 |
市場カバレッジ率 |
ターゲット市場内で接触した企業や担当者の割合 |
SDRのKPI設定例
SDR(反響型)は、マーケティング部門が獲得したリードに対して育成やフォローアップを担当します。「インバウンド型」とも呼ばれており、顧客からの問い合わせや資料請求などにも対応するのが特徴です。そのため、KPIには以下の指標が適しています。
KPI |
内容 |
リードのフォローアップ速度 |
リード獲得から初回接触までの平均時間 |
商談化率 |
フォローアップしたリードが商談に進んだ割合 |
リードナーチャリング数 |
育成中のリード数やナーチャリングキャンペーンの実施数 |
クオリフィケーション率 |
リードが購買意思決定者として適格と判断された割合 |
クロスセル/アップセル提案数 |
既存顧客に対して追加提案を行った回数 |
共通のKPI例
BDRとSDR共通で設定するKPIは以下の通りです。ただし、目標が高すぎると従業員のモチベーション低下や離職につながる恐れがあるため実現可能な数値設定が大切です。
KPI |
内容 |
目標達成率 |
個人またはチームの目標に対する達成度合い |
コミュニケーション品質 |
顧客からのフィードバックやNPS(ネット・プロモーター・スコア) |
パイプライン貢献度 |
全体の営業パイプラインに対する個人の貢献割合 |
インサイドセールスのKPI設定のポイント
KPIをどのように設定すべきか、業種によって異なります。ここでは、インサイドセールスにおけるKPIの設定をどうすべきか解説します。
成果目標、経過指標、行動指標に分類して考える
まずは、最終的な成果をどこまで求めるのかを決める成果目標を設定し、そのためにはどの程度の行動が必要かを決める行動指標を設定します。行動指標と結果目標の中間として、経過指標も設定すると、より細やかな目標設定ができるでしょう。
KPI設定では、この3種類に分類してから設定していくと効果的です。先ほど紹介したインサイドセールスのKPIを例にすると、成果目標が有効商談数、経過指標がアポイント獲得数、行動指標がコール数になります。このように3種類に分類し、成果目標から逆算して経過指標、行動指標を具体的に設定していきましょう。
多角的に指標を捉える
KPIは目標を細かく分けていくものですが、1つだけに着目すると逆効果になることがあります。
例えば「行動指標であるコール数を多くすれば成果目標達成につながるはずだ」と盲目的になることは危険です。単純に目標コール数を多く設定すれば、おのずと成果目標達成につながる可能性は上がりますが、現場のストレスやプレッシャーも上がってしまいます。結局質が悪くコネクト数、アポイント数につながらないアプローチになれば、全体的な効率が下がるおそれがあります。
同様に、アポイント獲得数を増やすことだけに着目してしまうと、商談に繋がらない質の悪い商談ばかりをしていることに気が付けないかもしれません。アポイント獲得数を増やそうと数ばかり見るのではなく、商談につながるアポイントをとれているのか質を確認することも重要です。
個々のKPI達成具合に注目し改善していくことは必要ですが、全体的な効率や質の高い営業活動を目指すのであれば、広い目線で多角的に指標を捉えなければなりません。
他部署と認識をすり合わせる
インサイドセールスでは、基本的にマーケティングとフィールドセールスの間で活動します。
インサイドセールスにより多数のアポイントメントや商談を獲得しても、購買意欲が低い顧客ばかりではフィールドセールスの行動に無駄が多くなってしまいます。また、インサイドセールスの時点で顧客が求めるものや、解決したい悩みを把握できれば、より適切なマーケティングができるようになるでしょう。
そのため、インサイドセールス部門だけで目標を設定し分析・改善するのではなく、それぞれの部署との連携が重要となります。
KPIを設定するときにも、インサイドセールスだけで完結するのではなく、マーケティングやフィールドセールスの状況や目標なども参考にするようにしましょう。有効商談、有効リードの定義や、キャンペーンの管理、顧客情報の引き継ぎなど、直接KPIに関わらないような活動についても把握してから、KPIを設定をすることが望まれます。
KGIから逆算する
KGIとは「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」とも呼ばれ、最終目標を定量的に定めた指標です。インサイドセールスのKPIは、このKGIから逆算して設定するとよいでしょう。
例えば、KGIとなる受注金額が月500万円で顧客単価が50万円だった場合、1ヶ月に必要な受注件数は10件。過去の受注率が20%であれば、1ヶ月に必要な商談化数は50件となります。
このように、なんとなくや希望的観測からではなく、過去の実績をベースにして設定することが大切です。
SMARTフレームワークに当てはめて考える
SMARTとは、目標設定のためのフレームワークで、次の5つの頭文字を取って名付けられました。
要素 |
内容 |
Specific(具体性) |
明確かつ具体的であるか |
Measurable(計量性) |
定量的に測れる目標であるか |
Assignable(達成可能) |
達成可能な目標であるか |
Realistic(関連性) |
所属部署の目標や会社の戦略・方針に沿っているか |
Time-related(期限設定) |
期限は明確か |
SMARTを元にKPIを設定することで、行動計画を立てやすくなります。従業員は、共通認識を持てるうえにスムーズに行動できるためモチベーションアップにもなるでしょう。また、評価基準が明確になることから人事評価にも役立ちます。
定期的に見直しをする
KPIは一度設定したら終わりではありません。PDCAサイクルを回し、定期的に見直すことが重要です。経過の測定や結果の評価・分析を行うことで課題の発見につながり、改善策を検討できます。PDCAを繰り返すことで現状と目標のギャップが埋まり、目標達成の再現性が高まるといえるでしょう。
もし、PDCAがうまく回らない場合は、目標数値が高すぎる、あるいはKPIの種類や数が適していないなどが考えられます。自社の現状を把握し、数値とKPIの見直しを行いましょう。
フェーズごとのKPI設定例
ここからは各フェーズに分けて、KPIの設定例を紹介します。
立ち上げ期(初期フェーズ)
インサイドセールスの立ち上げ期は、プロセスの構築や市場からのフィードバック収集が主な目的です。最初に商談金額や商談数を追いかけても達成は難しいため、主にコール数やアポイント獲得数などのアクション数を意識するとよいでしょう。具体的には、次の3つのKPIが挙げられます。
KPIの種類 |
計測すべき数値 |
活動量系KPI |
発信コール数:1日あたりの電話発信回数 メール送信数:1日あたりのメール送信件数 リード接触数:実際に連絡が取れたリードの数 |
成果系KPI |
アポイント取得数:訪問やオンライン商談の設定件数 反応率:コールやメールに対するリードの応答率 |
プロセス検証系KPI |
スクリプトテスト数:異なる営業トークやメールテンプレートの試行回数 ターゲットセグメントごとの反応率:各セグメントでの効果測定 |
成長期
成長期はプロセスが確立され、効率性と成果の向上に注力する段階です。初期段階のデータが蓄積してくるため分析と改善を繰り返し、より高い数値の創出を目指しましょう。具体的には、次の3つのKPIが挙げられます。
KPIの種類 |
計測すべき数値 |
効率系KPI |
アポイント取得率: コンタクト数に対するアポイント獲得割合 メール開封率・クリック率:メールマーケティングの効果測定 |
成果系KPI |
商談数:営業担当に引き渡された商談件数 転換率:リードから商談への転換率または商談から成約への転換率 平均契約額:1件あたりの平均売上金額 |
コスト系KPI |
顧客獲得コスト(CAC):新規顧客獲得にかかった平均コスト。 |
最適化期
最適化期では、プロセスや戦略の最適化を図り、質の向上とコスト効率に焦点を当てます。フィールドセールスからはより確度の高い商談が求められるため、アプローチするリードの条件を再設定することも有効です。
また、施策の見直しを行い、リード獲得のためのコストを期待値の高いリードに集中させることでコスト効率を改善できます。具体的には、次のKPIが挙げられます。
KPIの種類 |
計測すべき数値 |
品質系KPI |
リードの質:マーケティング認定リード(MQL)から営業認定リード(SQL)への転換率 顧客満足度(CSAT):顧客の満足度スコア ネットプロモータースコア(NPS):顧客の推奨度合いを測定 |
効率系KPI |
セールスサイクル期間:リード獲得から成約までの平均日数 リード応答時間:リードからの問い合わせに対する初回応答までの時間 |
リテンション系KPI |
顧客維持率:一定期間内での顧客継続率 リピート購入率:再購入した顧客の割合 |
拡大期
拡大期は、ビジネスのスケールアップと新市場の開拓に取り組む段階です。インサイドセールスが定着してきたら、成果の評価に役立つKPIに切り替えましょう。連携組織全体で適切に構築されているか確認し、改善を図ることが大切です。具体的には、次のようなKPIが挙げられます。
KPI |
計測すべき数値 |
市場拡大系KPI |
新規市場からのリード数:地域や業界など新たなセグメントからのリード獲得数 地域別・セグメント別売上高:各市場での売り上げパフォーマンス |
生産性KPI |
担当者一人あたりの売上高:個人の生産性評価 オンボーディング期間:新規メンバーが目標を達成するまでの期間 |
アップセル・クロスセル系KPI |
アップセル率:既存顧客への上位商品・サービスの販売割合 クロスセル率:関連商品・サービスの追加販売割合 顧客あたりの平均売上高(ARPU):一顧客からの平均収益 |
まとめ
インサイドセールスにおけるKPIは、営業プロセス全体のボトルネックや目標達成の進捗を把握するための重要な数値です。主なKPIとしてはコール数・コネクト数・アポイント獲得数・有効商談数などが挙げられ、これらを成果目標・経過指標・行動指標に分類し、多角的に捉えることで効果的な目標設定が可能になります。
インサイドセールスの成果を上げるために、「まずはコール数を増加」と考える企業も少なくありませんが、最終的な目標達成には、SMARTフレームワークの活用や他部署との連携、定期的な見直しを適宜行いましょう。
インサイドセールスの成果向上やボトルネックの解消にご興味のある方は、無料ガイド「インサイドセールスのボトルネック解消!今すぐ実践できるTips集」をご提供していますので、ぜひご覧ください。