インターナルコミュニケーションは活発な企業活動に必須?具体的手法5つも紹介します!

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新型コロナウイルス感染症は収束や拡大を繰り返しており、2022年10月現在いまだにコロナ禍以前のような生活には戻っていません。勤務先でテレワークが導入されていると答える人の数も、新型コロナウイルス感染症拡大直前の2020年3月以前には19.8%でしたが、2021年10月には40.0%にまで増えています(国土交通省 令和3年度テレワーク人口実態調査)。

そのような中、社内のコミュニケーションが減少していることに課題を感じる企業も多いのではないでしょうか。実際に、翔栄クリエイトの調べによると、新入社員のうち55.8%がコミュニケーションに関する悩みを持っているそうです。

転職を考えている人も39.6%にまで達していて、コミュニケーションに問題を抱えている社員を放置すると、離職率アップにつながるおそれがあるといえます。

こういった問題を解決するための方法の1つとしてインターナルコミュニケーションの強化があります。インターナルコミュニケーションとは社内における双方向の広報活動のことで、組織内で活発な意見交換や話し合いをするための素養となるものです。

社内のコミュニケーションの減少に悩んでいる人や社内コミュニケーションを活性化させたい人は、インターナルコミュニケーションを取り入れることをおすすめします。そこでこの記事では、インターナルコミュニケーションの概要や具体的な手法について解説します。

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インターナルコミュニケーションとは

インターナルコミュニケーションは活発な企業活動に必須?具体的手法5つも紹介します!

インターナルコミュニケーションとは、同一組織内に向けて行う広報活動のことです。欧米では1980年代からインターナルコミュニケーションの概念が浸透し始めていますが、日本ではまだ十分に広まってはいません。

しかし、「インターナルコミュニケーションと従業員満足度には相関関係がある」という研究結果もあり、企業にとって重要なものと言えます。広報活動というと社外に向けて行われるものをイメージする人も多いでしょうが、社内に企業理念や業績を正しく伝え、社内コミュニケーションを活性化するために、インターナルコミュニケーションも重要視したほうがよいでしょう。

また、インターナルコミュニケーションにより従業員が企業に対する理解を深め、従業員満足度が高まれば、従業員エンゲージメント向上にもつながります。従業員エンゲージメントとは、会社に貢献したいと積極的に業務に取り組む意欲や愛社精神のことです。従業員エンゲージメントが強化されている状態になると、生産性向上や離職率低下などの効果が期待できます。

※参考:古屋光俊「インターナルコミュニケーション満足度の調査法と日本語版尺度の検証」

一般的な社内広報との違い

インターナルコミュニケーションは社内広報を意味しますが、企業で一般的に行われていた従来の社内広報とは少し異なります。
従来の社内広報は、社内報や集会などで経営陣などから企業の理念や業績などを伝えることが一般的でした。そして基本的にコミュニケーションの方向は一方通行で、従業員の反応や考えは反映しにくいものでした。

一方インターナルコミュニケーションは、ただ情報を従業員へ流すのではなく、従業員が企業の理念を正しく理解し、お互いに考えを活発にやり取りする状態を目指します。情報が一方通行か双方向かという点に、従来の社内広報とインターナルコミュニケーションの違いがあります。

インターナルコミュニケーションの目的

インターナルコミュニケーションをなぜ行うのか、どのような効果が得られるのか解説します。

従業員へ企業理念を浸透させる

経営陣や社内広報担当者にとっては当たり前である企業理念ですが、実は一般社員にはあまり正しく理解されていないことがあります。エニワン株式会社の調査によると、7割近くの社員が企業理念の浸透は必要であると考えているにも関わらず、企業理念をしっかりと理解していないという人の割合は6割にも及びました。

理由としては、企業理念が抽象的で分かりにくい、背景が分からず共感できない、企業理念が事業遂行と何がつながるのか分からない、といったものが多く、理解不足により企業理念が浸透していないと考える人は多くいるようです。

そのような状態でもインターナルコミュニケーションは効果的です。

インターナルコミュニケーションは、従業員の反応や質問を取り入れつつ社内広報を行っていきます。ただ企業理念を一方的に発信するのではなく、従業員がどこを疑問に思っているのか、なぜ共感できないのか確認していくようにすることがインターナルコミュニケーションです。

結果として、従業員は企業理念を正しく理解するようになるうえに、企業理念の重要性も分かるようになるでしょう。

相互理解を深める

インターナルコミュニケーションのポイントは双方向のコミュニケーションです。トップダウンだけではなく、現場の従業員の声を拾うボトムアップの性質を持っています。そのため、経営陣は従業員の悩みや要望を聞きつつ、それを踏まえた情報発信を行うようになり、経営陣と従業員の相互理解を深められます。

それだけではなく、インターナルコミュニケーションは部署間や従業員間の相互理解にも有効です。インターナルコミュニケーションによりさまざまな従業員とコミュニケーションをとると、他部署やほかの従業員がどのようなことを行っているのか互いに理解できるようになります。

従業員エンゲージメントの向上

従業員が企業理念を理解し、経営陣と従業員、従業員同士の相互理解が深まっていくと、相手に対し愛着が湧くため、従業員エンゲージメントの向上につながります。

企業理念に共感できない、自分の意見が通らないといった状態では、従業員は企業に対して貢献しようと考えられません。まずは、相手がどのような考えなのかを正しく理解する環境づくりが大切です。

インターナルコミュニケーションでは双方向のコミュニケーションを大切にするため、従業員が理解できていない部分を把握しやすく、信頼関係を十分に築けていないときに早急に対処することもできるようになります。

また、社内コミュニケーションが希薄で人間関係が良好でない企業には、出社する意欲が湧かなくなり、転職を考える従業員も増える可能性があります。しかし、インターナルコミュニケーションを導入し、自分の意見を表明しやすい土壌を作っていけば、発言しやすく人間関係が良好になることが期待できます。

社内に自分の居場所があると感じられると、企業に対し愛着を感じるようになるため、インターナルコミュニケーションは従業員エンゲージメント強化のためにも重要と言えるでしょう。

インターナルコミュニケーションの重要性が増している背景

日本ではあまり注目されることのなかったインターナルコミュニケーションですが、昨今重要性が増していると言われています。なぜインターナルコミュニケーションは重要なのでしょうか。その背景について解説します。

インターナルコミュニケーションの重要性が増している背景テレワークの普及

2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大により企業は政府から出社制限を要請され、テレワークを導入する企業が増加しました。総務省令和3年情報白書によると、2020年3月には17.6%だったテレワーク実施率は、2021年3月には38.4%にまで増加しています。

それに伴い増加しているのがコミュニケーションに関する悩みです。ビズヒッツの調査によると、テレワークでの悩みとして「コミュニケーションがとりにくい」とする人の数は、全体の第2位でした。オフィスに出社していれば気軽に話しかけられるため、雑談やちょっとした悩み相談などもすぐにできますが、テレワークではそうはいきません。

どうしても業務連絡だけのやり取りとなってしまい、コミュニケーションは激減するという企業は多いでしょう。そのようななか、活発に社内コミュニケーションを行っていくためには、企業側が意識して働きかけなければなりません。

社内コミュニケーション活性化のためには、ただ情報を伝えるのではなく、従業員側の声を聞き取るインターナルコミュニケーションを行うことが重要になってきています。情報を相互にやり取りすることで、それぞれが独立して業務を行いがちなテレワークの状況下であっても、従業員の意見を拾いやすくなります。

ジョブ型雇用などの働き方の変化

ジョブ型雇用とは業務単位で人を雇用する方法で、欧米ではこの雇用形式が主流となっています。あらかじめ必要な技術や仕事内容が決められており、その範囲内で働く人を雇用します。日本では人を企業のメンバーとして迎え入れ、定年退職まで雇用するメンバーシップ型が基本でした。

しかし、日本でも、同一企業で働き続ける人は年々低下している状況です(2018年厚生労働省職業安定局「我が国の構造問題・雇用慣行等について」)。株式会社学情によると、2022年現在では日本でも4社に1社がジョブ型雇用を取り入れているそうです。

ジョブ型雇用には、専門性を持った社員を雇用できる、さまざまな働き方を望む社員の希望を叶えられる、といったメリットがありますが、組織の一体感を醸成しにくいといった課題もあります。それぞれが契約に応じた業務に就くことから、「一緒に仕事をする」といった意識を持ちにくくなるからです。

また、業務ごとに雇用するジョブ型雇用では、より良い条件を提示する企業に転職される可能性が高く、人材を安定して供給することが難しいというデメリットもあります。こうしたジョブ型雇用で雇われた従業員も、企業の一員として愛着を持って働けるようにするためには、インターナルコミュニケーションにより、相互理解を深めることが重要と言えるでしょう。

人材流動性の高まり

先程も説明した通り、同一企業に勤め続ける人の割合は年々減り続けていて、より良い条件を求めて転職する人も少なくありません。それはジョブ型雇用の企業だけではなく、メンバーシップ型の企業でも同様です。

総務省の労働力調査によると、2019年の転職者は351万人と過去最多で、より良い条件の企業に就職するために転職する人が増加しています。

このように、人材流動性が高いような状況であるため、自社に魅力がなければ優秀な人材を自社にとどめておくことは難しくなってきています。そこで、インターナルコミュニケーションにより自社の魅力を正しく従業員に伝え、優秀な人材が他社へ流出することを防ぐ必要性は高まっているでしょう。

インターナルコミュニケーションの実施方法

インターナルコミュニケーションの強化のためにはさまざまな施策があります。そのなかで代表的なものを紹介します。

社内イベント

社内表彰式、社内運動会などのイベントを行うと、役職や部署を越えたコミュニケーションをとる良い機会となります。従業員が一同に介するため、そこで経営陣が企業理念や日頃の感謝を伝えることもおすすめです。イベントのときに対話をすることにより、お互いの意見や考え方に触れられるためインターナルコミュニケーションとしても有効です。

ただ、新型コロナウイルス感染症の流行状況によっては、従業員が一同に介することは難しいかもしれません。そういった場合は、Web会議システムなどを利用したオンライン社内イベントがおすすめです。

オンライン社内イベントであれば感染症対策になるほか、チャット機能などを活用して、気軽に意見交換ができるようになります。自宅からイベントに参加できるため移動の負担はないうえ、家族でイベントを楽しめるようにする、といった工夫も可能です。

社内動画

社内向けに企業の歩みや理念を分かりやすく解説する動画を作ることも、インターナルコミュニケーションの1つです。企業理念はホームページに掲載されていますし、社内報で伝えることもできます。しかし文字だけの情報だと、読み飛ばして誤解を生じることや、そもそも読まない従業員がいるといった課題が考えられます。

けれども動画形式で発信をすれば、従業員は画面に目を向けるだけで多くの情報を得られるようになるでしょう。社内イベントの際にリアルタイム配信すれば一体感も生じるため、従業員の記憶に残りやすいという点も大きなメリットです。

オンデマンド配信にすれば何度でも再生可能ですし、こういった社内動画は採用活動でも活用できる場合もあります。動画作成には手間とコストはかかりますが、さまざまな場所で利用可能です。

タウンホールミーティング

タウンホールミーティングとは、経営陣と従業員が直接対話することです。企業の存続や売上向上を目指す経営陣と、現場での業務に目を向けている従業員では、どうしても考え方や企業への関わり方が異なります。

しかし、経営陣が現場での働きやすさや待遇を軽視していけば従業員の満足度は低下し、魅力的な商品やサービスが生まれにくくなってしまいます。また、従業員が経営陣の考えを理解できない、自分たちの声が伝わっていないと感じると、経営陣の施策に不満を抱くようになり、優秀な人材の流出にもつながるでしょう。

このような事態を避けるためには、お互いの考えや意見を活発に交換することが必要です。規模が大きな企業では、Web会議やテレビ会議システムを利用し、拠点が異なる従業員や経営陣同士とも会話できる機会を設けると良いでしょう。

社内報

社内報は企業内の出来事や業績、従業員や経営陣のインタビューを掲載します。ウィズワークス株式会社による社内報白書2021では、インターナルコミュニケーションの一環として社内報を行っている企業は、紙媒体では71.1%Web媒体では68.9%と、多くの企業が社内報を活用していることが分かります。

同調査では今後も継続して紙媒体の社内報を発行する予定である企業が8割弱という結果がでていますが、コスト削減や双方向のコミュニケーションを重視するのであればWeb媒体の社内報もおすすめです。Web媒体であれば、紙や印刷などに必要な費用は削減できますし、記事に対して従業員がリアルタイムにコメントを残せます。

ただし、紙媒体での社内報は従業員に直接手渡しできますが、Web媒体では従業員自らサイトにアクセスしなければなりません。Web媒体での社内報にするのであれば、従業員が積極的に見たくなるような工夫が必要でしょう。

社内勉強会

社内勉強会は、従業員の知識を増やし能力を高められるほか、さまざまな部署や役職の人と交流するきっかけになります。業務に関係することを学ぶだけではく、健康増進や英会話、投資講座など、実生活に役に立つものもおすすめです。共通の話題ができ、コミュニケーション活性化につながるでしょう。

社内勉強会は従業員だけではなく経営陣も積極的に参加できるようにすると、よりインターナルコミュニケーションの目的に近づきます。

社内勉強会まとめ

インターナルコミュニケーションとは、一方的ではなく双方向にコミュニケーションをとるための社内広報のことです。従業員の声を反映することで、愛社精神の育成、一体感の醸成、従業員満足度アップが期待できます。そこから、従業員エンゲージメントの向上にもつながると考えられます。

インターナルコミュニケーションの手法には、社内報や社内イベントなどさまざまなものがあります。どの手法においても、一方的な情報共有ではなく、双方向に意見をやり取りすることを意識して行うと成功につながるでしょう。自社の課題を洗い出し、自社に合った手法を試してみてください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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