働きがいのある会社の特徴と取り組み事例をご紹介

政府が推し進める働き方改革は、労働条件や労働環境を改善する取り組みですが、それは「働くということ」の一面が改善されるに過ぎません。「働きやすい」と「働きがいがある」の間には違いがあるのです。
「働きがい」の有無は、雇用定着率に大きく影響します。しかし、「働きがい」は労働者一人ひとりの主観の問題ですから、具体的にどうしたら良いのか手をこまねいている会社も多いのが実情です。
そこで、この記事では、「働きがいのある会社」づくりに成功している会社の取り組みについて紹介していきます。
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「働きやすさ」から「働きがい」重視へ
dodaが実施した2018年の転職理由ランキングによると、1位は「ほかにやりたい仕事がある」となっており、給与や休日以上に「仕事内容や働きがい」を求めている人が多いことが分かります。
(画像引用元:求人情報・転職サイトdoda)
また、働き方改革が生まれた理由の一つは、「結婚・出産・育児の女性、介護が必要な家族がいる男女が働きやすい職場」をつくることでした。しかし、厚生労働省の調査によると、意外にも結婚・出産・育児・介護といった自己都合(家庭の事情)を要因とした退職理由は6.7%(男性1.6%・女性5.1%)と10%にも満たないのです。
(データ引用元:「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」|厚生労働省)
以上のことから、「末永く働きたい」と思える優良会社は、労働条件・労働環境・福利厚生が充実した「働きやすさ」だけでなく、労働者に「働きがい」をも与えてくれる環境がなければならないということが窺えます。
2019年4月に施行され始めた働き方改革ですが、これからは働きやすいのは最低条件であり、「働きやすく働きがいのある仕事」が必要とされるでしょう。
働きがいのある会社が得られるメリット
メリット1:離職率低下
「働きがい」の有無は退職理由の大きな要因ですので、働きがいのある会社であることは離職率低下・雇用の維持に直結するでしょう。離職率低下は会社の生産性にも直結するため、「働きがいのある会社づくり」は会社の大きな課題ともいえます。
メリット2:社員のモチベーション向上
テレワークやフレックスタイム制度、時短勤務といった「場所と時間」の自由度が増える働き方を政府が推進しています。
働き方改革は、働きやすさとしては、労働者に快適な労働環境を与えている事になるでしょう。しかし、どんなに働き方が自由であっても、人は心が満足しないと「やりがい」「働きがい」というプラスのモチベーションが生まれないのです。
反対に、モチベーションが向上すれば、多少の困難(マイナスの労働条件)があってもある程度なら工夫することで乗り越えようと努力する意思がはたらくものです。
極端な例ではありますが、どんなに働き方改革法案が進んでも、残業時間を削減して労働環境を向上させても、会社が倒産しては何にもなりません。
働きがいというモチベーション向上のためには、働くことによる自己の尊厳、会社への信頼、仲間とのコミュニケーションが重要なカギを握ります。労働者(個人)を中心に、経営陣(会社)と仕事と上司・同僚との三者の関係がバランス良く整ったとき、はじめて労働者は「働きがい」を実感できるのです。
(画像引用元:Great Place To Work)
働きがいのある会社になるためには
では、具体的にどのようなことをしたら良いかについて、3つのアプローチをピックアップして解説します。
アプローチ1:現場の労働者の声に耳を傾ける
労働者の雇用を維持するためには、まずは労働者の会社への不満を知ることから始めなければなりません。どんなに会社が労働者のために働きやすい職場を提供しようと努力しても、その思いがすれ違ってしまっては意味がないからです。
ハラスメント問題、チームワークや人間関係の問題、労働者自身が目指している思いや希望・悩みといったものは、経営陣まで伝わることは少ないでしょう。コミュニケーションが上手くいっていない会社の場合は、現場の直属の上司にさえ伝わっていないこともあります。
まずは「現場の問題に素早く対応してくれる会社だ」と労働者が思える体制づくりが重要です。そうでないと、現場の声を労働者から発する事はできません。現場の課題を払拭するためには、まず経営陣が声を聴く姿勢を労働者全員に示さなければならないのです。
しかし、社長をはじめ経営陣が支店や全ての部署を回って社員一人ひとりの声を聞くというのは時間的にも金銭的にも不可能に近いことです。そこで、テレビ会議やモバイルツールを利用したセミナーといった労働者の生の声を聴く工夫が必要です。
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アプローチ2:労働者に目標やチャンスを与える
目標を定めて、その目標に達するためのチャンスや研修の準備をするだけでなく、その研修後のサポート体制や周囲のフォローも重要になってきます。
労働者に「働きがい」を感じてもらうには、まずは成果を出すことができた達成感や周囲の評価を実感し、自分の仕事への喜びや誇りを感じさせることが重要です。
また、新卒3年未満の若手社員向けにおこなった調査(複数回答)では、「働きがいのある企業の条件」として「自分を認めてくれる上司・先輩がいる」が70.6%で1位となりました。
(画像引用元:日経STYLE U22)
会社・人の役に立っている実感、周囲の評価、自己の達成感、これらのどれを一番重要とするかは人それぞれですが、そういったものを実感できることが働きがいに繋がる事は確かです。
そのためには、会社の全ての労働者に平等にそのチャンスを与え、その功績をフォローする会社の体制は重要となるでしょう。
アプローチ3:経営理念を伝え、共感してもらう
先ほどのランキングを見てみると、働きがいのある企業の条件2位は「社会の役に立っている実感がある」となっています。つまり、自社のビジネスが社会的価値を持っていて、自分が任されている仕事は重要であると認識することが、働きがいを感じる1つの条件だといえます。
自社が社会貢献に役立っていることを社員に理解してもらうためには、経営理念をしっかりと伝え、共感してもらう必要があるでしょう。
経営理念とは、企業の価値観や方向性を示すのと同時に、社会的責任・存在意義も表明しているもの。社会に役立つ企業で働いていることを明確に伝えることが、働きがいのある会社になるためには大切なのです。
働きがいのある会社の取り組み事例
ここからは、働きがいのある会社を作るための取り組みをおこなっている企業を3つご紹介します。
株式会社JSOL:経営陣の変革からテレワークで労働時間削減まで多面的なアプローチ
(画像引用元:株式会社JSOL)
「株式会社JSOL」はICTコンサルティングからシステム構築・運用までの一貫したサービスを提供している従業員1200名(2019年4月)の企業です。2019年の「働きがいのある会社」ランキングで大規模部門(従業員1000名以上)15位に選出されました。
働きがい向上のために、まずは事業部長や役員にアプローチをすることに。啓発活動として合宿や研修を行いました。そして、組織のトップにアプローチした後は各組織のメンバーにアプローチするため、各組織の取り組みを発表させる機会を設けることで、組織同士の切磋琢磨を促したそうです。
社員の意識を変えた後、肥大化したワークフローの簡素化やWeb会議利用による出張コストの削減といった具体的施策に取り組み、労働時間を削減することに成功しました。
また、有給休暇を時間単位で取得できる制度を施行。フレックスタイム制のコアタイムも廃止するという人事制度改革もあり、多面的なアプローチをしたことも働きがいの向上に繫がったといえるでしょう。
日本イーライリリー株式会社:仕事の喜びと誇りをシェアする取り組み
(画像引用元:日本イーライリリー株式会社)
「日本イーライリリー株式会社」は世界の医療用医薬品売上高ランキングでトップ10前後をマークし続けるイーライリリー・アンド・カンパニーの子会社です。「働きがいのある会社」調査において10年連続でベストカンパニーに選出されています。
人の生命に関わる薬を作り、患者さんやそのご家族の人生を変えている誇りは社員にあったものの、「バックオフィス系の部署は、自分の仕事がお客様の価値に繫がっていることを実感しにくい」という課題がありました。
そこで、仕事の喜びと誇りをシェアする取り組みを始めたのです。まずは社員のリーダーシップとエンゲージメントを高めることが必要であり、そのことが最高の顧客経験の実現、ひいては業績の拡大へと繋がるという「順番」を重視しました。
代表的な取り組みとして、仕事の理解度と連帯感を育むべく各部署から寄せられた「社員の顔と仕事が見える記事」を毎月2本程度ずつ全社員に公開。その他にも新入社員向けの手作りワークショップや社員の家族も参加できるファミリーデーを開催することであらゆる社員を対象に取り組みを実施しています。
働きがいの向上は短期的な売り上げには繋がらないかもしれません。しかし、社員の働きがいを高めることを長期的な視点で見て取り組むことが、企業存続には重要かもしれません。
バリューマネジメント株式会社:徹底的なビジョン共有と目標の可視化
(画像引用元:バリューマネジメント株式会社)
「バリューマネジメント株式会社」は税金や寄付金、ボランティアの力で維持されている歴史的建造物を利活用し、収益化する事業を展開している877名(2018年12月31日時点)の企業です。2018年の「働きがいのある会社」ランキングで中規模部門(従業員数100〜999人)で第2位を獲得しました。
同社が主に取り組んだのは2点。採用活動時に会社の魅力を応募者に徹底的に伝えることと、月1回全社員で行う「キックオフミーティング」の実施です。
採用においては、後から身につけられる知識やスキルよりも人間性を重視して選考するとのこと。同社の事例から、価値観の一致が働きがいを構成する大きな要素であることがわかります。
また、月1回全社員を集めて行う「キックオフミーティング」においては、丸一日かけて全体のKPIを共有。KPIを設定した意図や達成のアクションプランまで可視化することで、社員が社会にどのような価値を提供しているのかを常に意識続けられるように取り組みました。
社員全員に社会への貢献・自己重要感を伝えるこの取り組みは、社員一人ひとりの働きがいに繋がっていることが伺えます。
まとめ
いかがでしたか。
働きがいのある会社への取り組みは、労働者一人ひとりの気持ちにより添う姿勢と、人材は企業の宝であるという認識から始まります。
その認識を基に、人材を活かすためにどう動くのか、何をするのか、どのようなマネジメントが必要かを考えなければなりません。
「働きがいのある会社づくり」は百社百様です。そして、会社(経営陣)と労働者との思いがマッチしたときに、働きやすく働きがいのある会社が誕生するでしょう。