工場というフィールドで、働く環境を変える。花王和歌山工場が踏み出したオフィス改善の一歩

国内最大級の生産規模を有する花王株式会社の和歌山工場。製造プラントから研究施設、管理棟まで、広大な敷地に多様な職種の社員が働くこの場所で、「オフィス環境の改善」が静かに、しかし確実に動き出しています。

その中心にいるのが、工場内の建物設計・施設管理を一手に担う建築担当の吉岡さんです。防音ブースの導入から配管の修繕まで、工場の「働く環境」に関わるあらゆる課題を受け止めてきた吉岡さんに、工場オフィスの現在と、変化への挑戦について伺いました。

お話を伺った方:花王株式会社 和歌山工場 建築設計担当 吉岡 直彦 さん

「生産現場を支えること」を最優先にしてきた工場で、オフィス環境に向き合う

── 吉岡さんはどのような業務を担当されているのでしょうか。

吉岡さん: 設計計画・見積・工事発注から工事完了まで、工場内の建物に関わることは基本的に全部やります。防音ブースの設置もあれば、トイレの配管詰まりへの対応も(笑)。細かいことから大きなプロジェクトまで、工場の「建物のこと」といえば私のところに話が来ます。

── 工場というと、製造に特化した現場というイメージがありますが、オフィス環境の整備にも携わっていらっしゃるんですね。

吉岡さん: 工場はどうしても、生産現場を支えることを最優先にしてきた文化があります。そういう中で、オフィス環境への投資にはなかなか大きな予算をかけられなかったというのが正直なところです。でも最近は本社からも「職場環境を改善しなければ」という声が届くようになってきて、優秀な人材を獲得するためにも、築40年のオフィス環境を改善していく必要があります。

自転車で15分、工場内での「移動」が示す現実

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花王株式会社 和歌山工場 建築設計担当 吉岡 直彦 さん

── 和歌山工場の規模や構造について教えていただけますか。

吉岡さん: とにかく広いんです。一番遠い建屋まで自転車で15分ほどかかります。それぞれの建屋に事務所があって、部署ごとに分かれている。だから工場内で「ちょっと打ち合わせしましょう」となっても、移動自体がひと仕事になってしまう。今日みたいな雨の日は、傘をさして歩くか、びしょ濡れで自転車をこぐしかない(笑)。

── それはなかなかの環境ですね。コロナ禍の影響は、働き方にどのような変化をもたらしましたか?

吉岡さん: コロナ前は全員出社が当たり前でしたが、緊急事態宣言をきっかけに「来なくてもできる仕事はリモートで」という流れが一気に広まりました。Web会議で本社と打ち合わせをする機会も急増して、以前なら「出張してきてください」だった話が、「Web会議でよくない?」になった。

コロナが収束した今も、本社や他建屋との打ち合わせがWeb会議に移行したことで、同じ工場内にいるのに画面越しで話すケースが増えました。それから、1対1の上司との面談など、周りに声を聞かれない高い防音性を有する場所確保する必要性も高まり、Web会議でやることが増えました。その変化自体は悪くはないんですが、オフィスの設備がそれに追いついていなかったのが課題でした。

自作パーテーションでは限界があった

── 具体的にはどのような問題が起きていましたか?

吉岡さん: Web会議をする時の「場所」です。

1人でWeb会議をするのに、会議室を一部屋使うのはもったいない。でもオープンスペースでやれば、周りの声が相手に聞こえてしまうし、こちらも周囲を気にして話しづらい。以前は防音パネルで仕切ったスペースを作っていたんですが、上が開いているから音は抜けてしまう。中には手持ちの資材で上部を塞いで自作パーテーションを作っている人もいて、「その工夫は素晴らしいけど、ちゃんとした環境を用意しないといけないな」と思っていました。

── 会議室の不足も課題だったのでしょうか。

吉岡さん: そうなんです。4〜5人での打ち合わせに使いたいのに、1人のWeb会議で埋まっていることも多くて。そういう状況を何とかしたいという声は、ずっとあがっていました。

「工事不要で空調まで解決できる」。建築担当が感じたテレキューブの価値

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花王和歌山工場が導入した「テレキューブ」 *1人用×4室

── テレキューブの導入を検討されたきっかけは?

吉岡さん: 本社からの職場環境改善の要請をきっかけに、人事総務の方から「こういうものを入れたい」という話が来たのが最初です。個人用のブースが欲しいというリストの中に入っていて、正直最初は「どんなものか知らなかった」のですが、調べてみたら実用的だなと思いました。

── どのような点が評価されたのでしょうか?

吉岡さん: 建築をやっている立場からすると、「空調の問題を自己解決してくれる」のが一番ありがたかったですね。工場内で間仕切りをして個室を作ろうとすると、その空間に空調を通す工事が必ず発生します。換気も必要だし、コロナ以降は二酸化炭素濃度も気にしないといけない。古くなった建屋の大規模修繕も計画されている中で、工事の二度手間はかけたくない。テレキューブは空調と換気が本体に内蔵されているので、コンセントにつなぐだけで終わる。「何も考えなくていい」というのは、本当に助かります。

── コスト面ではいかがでしたか?

吉岡さん: 壁を作るより「ポンと置くだけ」の方がシンプルだし、後で撤去する時もお金がかかりません。しかも同じ場所にずっと置いておく必要もなくて、将来建物の改修や配置換えがあった時に移設できる。「今お金を払っても、ずっと使い続けられる」という説明ができると、社内の承認も得やすくなります。防音性能については、他の製品とも比較しました。見た目だけではわからない部分もあるので、パネルの構造をしっかり確認して選定しましたね。

予約は半分以上埋まる。静かな個室が生んだ変化

── 実際に導入されてから、どのような変化がありましたか?

吉岡さん: 予約カレンダーを確認すると、半分以上の時間帯で使われています。「需要があったんだな」と実感しましたね。以前はWeb会議で会議室が埋まっていた分も、テレキューブに移ってくれたので、4〜5人での打ち合わせに使える会議室に少し余裕が生まれました。

── 社員の方の反応は?

吉岡さん: 特に好評なのは「音が気にならなくなった」という点です。以前の簡易的な対応とはやっぱり全然違いますね。あとは、1人でWeb会議をするのに広い会議室を使うのは気が引けるという人も多いので、気軽に使えるサイズ感も好評です。

工場だからこそ、人がつながれる場所が必要

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── テレキューブ以外に、職場環境で気になっている課題はありますか?

吉岡さん: 部門をまたいだコミュニケーションですね。工場は職種も建屋も分かれているので、専門分化された組織の性質上、どうしても部門内でのコミュニケーションが中心になりやすい。Web会議が増えてからは、同じ部署内ですら雑談が減った気がします。特に若手との関係は難しくて。「飲みに行こう」という文化が薄れた今、どうやって距離を縮めるかは正直、頭を悩ませています。

── 気軽に立ち寄れる休憩スペースのようなものがあれば、変わりそうですね。

吉岡さん: そこなんです。今回の改善プロジェクトでも、休憩室の整備は候補に上がっていて、順次対応を進めています。カフェのような場所があって、コーヒーを飲みながら違う部署の人と自然に話せる、そういう環境は、ずっと作りたいと思っています。テレキューブは「閉じる場所」として機能してくれているので、次は「開く場所」を整えていきたいですね。

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── 最後に、今後の展望を聞かせてください。

吉岡さん: 今回の改善はまだ第一歩です。改善の余地はまだまだあると思っていますし、予算も時間もかかりますが、「会社に来たくなる」「ここで働きたいと思える」環境を少しずつ積み上げていきたいです。建物の設計をやっている人間として、働く人の「居心地」を整えることが仕事だと思っていますので。

【取材協力】花王株式会社 和歌山工場

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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