働きやすいオフィスとは?オフィス環境を整備すべき理由と押さえておきたいポイント

「照明や空調が快適」「周囲の雑音が少ない」といったオフィスは仕事に集中しやすく、反対に従業員が働きにくさを感じるようなオフィスでは作業の効率が落ちてしまいます。そのため、オフィス環境は働きやすさや業務効率を左右する要素といえるでしょう。

総務省消費者庁内閣人事局など各府省もオフィス改革に力を入れており、従業員の働きやすさを向上させる職場環境と制度を整えた結果、生産性が120%向上した企業の事例もあります。

また、社内の様子はホームページやパンフレットに写真を掲載することもありますし、顧客や取引先が自社を訪れることもあります。そのときに整ったオフィス環境であれば、社外からのイメージアップにもつながります。場合によっては自社に入社希望の人の数にも影響するでしょう。

このようにオフィス環境の重要性は理解しつつも、「オフィス環境を改善したいけど、何から手を付けたらいいのかわからない」という企業の担当者の方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、オフィス環境の整備について詳しく解説します。オフィス環境を整備するべき理由やオフィス改善のポイント、実際の事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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オフィス環境を整備するべき理由

オフィス環境を整備するべき理由として、以下が挙げられます。

  • 生産性の向上
  • 採用力の強化
  • 従業員エンゲージメント・帰属意識の向上
  • 健康経営の実現

上記4つの理由について、以下で詳しく解説します。

生産性の向上

働きやすさを考慮してオフィスを整備すると、生産性の向上が期待できます。例えば、空調や照明の明るさが適切に管理されているオフィスは「暑い」「暗い」といった身体的なストレスが少なく、集中して仕事に取り組めるようになります。

反対に、「周囲の音がうるさい」「休憩できるスペースがない」など集中力が続かない環境では同じ仕事でもかかる時間が長くなりがちで、残業時間の増加や生産性の低下をまねきます。オフィスをより快適な環境に近づけることで、仕事に集中しやすくなって作業効率が上がり、その結果生産性の向上が目指せます。

採用力の強化

自社のホームページや採用パンフレットなどに、オフィスの写真を載せている企業も少なくありません。求職者の立場で考えてみると、オフィスの写真が魅力的だと「こんなところで働いてみたい」「社員を大切にしていそう」といった印象を持つ人も多いでしょう。

実際に、2019年のエン・ジャパンの調査では、20代の求職者の55%が「転職先を選ぶ際に重視すること」に「オフィス環境」を含めているという結果が出ました。この結果からもわかるように、より多くの求職者に自社への興味を持ってもらうためには、オフィス環境の整備も重要なポイントです。

従業員エンゲージメント・帰属意識の向上

オフィス環境を整えると、従業員から自社に対する評価が上がります。「この会社でこれからも働きたい」という感情が芽生え、従業員エンゲージメントや帰属意識の向上も期待できるでしょう。従業員が自社に愛着を持つようになると、生産性の向上や人材の流出防止などのメリットがあります。

反対に、従業員が「働きにくい」と感じるオフィスのまま改善がされないと、よりオフィス環境の整った企業へ転職してしまう人材が出てくるおそれがあるため、早急な対応が求められます。

健康経営の実現

健康経営とは、「従業員の健康を維持することが、将来的に収益性などを高める」とする考え方に基づき、経営的な視点で従業員の健康を管理する取り組みのことです。日本は超高齢社会で急激に人口が減少していて、就労世代の活力向上や健康寿命の延伸のために経済産業省が健康経営を推進しています。

従業員の健康維持に力を入れることは、休職者数の減少や、従業員の医療費が減って健康保険組合の負担が軽減されるなど、企業側のメリットも多いでしょう。

従業員の健康を守るためには、オフィス環境の整備も重要です。オフィスは多くの時間を過ごす空間のため、空調や照明、周囲の音、休憩できるスペースがあるかなど、さまざまな点に配慮しなければなりません。オフィスの環境が整っていないせいで従業員が体調を崩すことがないよう、企業は適切に環境整備を行う必要があります。

環境整備が必要なオフィスとは

ここでは、どのような場合にオフィスの環境整備が必要なのか紹介します。以下に当てはまるオフィスは、改善を検討してください。

  • 雑音がうるさい
  • パーソナルスペースが侵害されている
  • 照明が暗い
  • 換気がされていない
  • リフレッシュができない

上記5点について、以下で詳しく解説します。

雑音がうるさい

「適度な雑音があったほうが集中できる」という人もいますが、「うるさい」と感じるほどの雑音がある場合には改善が必要です。キーボードのタイピング音や空調設備の音、オフィス周辺を走る電車や車などの音など、オフィスでは常に多くの音が聞こえています。Web会議や電話を自席で行う従業員がいると、その声にストレスを感じている人もいるかもしれません。

また、雑音がうるさい環境では電話やWeb会議の際に相手の声が聞き取りづらく、こちらのマイクが周囲の雑音を拾ってしまうと相手にも不快感を与えてしまいます。このように、雑音があるとさまざまなシーンで「働きにくい」と感じてしまうため、対策が必要です。

パーソナルスペースが侵害されている

パーソナルスペースとは、他者が侵入すると不快だと感じる空間のことです。パーソナルスペースの広さは人によって異なりますが、従業員同士の距離が近すぎるとパーソナルスペースが十分に確保できず、仕事に集中できなくなってしまいます。

社員数やオフィスの広さによって確保できるパーソナルスペースに限りがあるケースもありますが、従業員のストレスになるほど距離が近い場合には改善しなければなりません。

オフィスでは、問題なく会話ができて、かつ距離が近すぎない1.2〜3.5mをパーソナルスペースの目安にしてください。1.2m以下になると「パーソナルスペースに侵入されている」と感じ、ストレスの原因になります。ストレスの強い環境では集中力の低下や心身の不調をまねき、生産性や業務効率の低下につながるため、パーソナルスペースは1.2m以上を保つように意識しましょう。

感染症対策の観点からも、パーソナルスペースを保つことは重要です。

照明が暗い

従業員の健康のためには、照明の明るさにも配慮しなければなりません。照明が暗いと、周囲が見えづらく物に躓いて転倒したり、資料が読みにくく作業効率が落ちたりするなど、デメリットが多くあります。

また、暗い場所での作業は目に負担がかかり、従業員が眼精疲労を起こすおそれもあります。眼精疲労があるとパソコンのモニターや資料が見づらくなり、仕事の効率が落ちてしまうため、企業側にとってもデメリットがあるといえるでしょう。

換気がされていない

換気がされていない空間は酸素が足りなくなり、「頭がぼーっとする」など従業員の体調に影響が出る可能性があります。集中力や判断力が低下した結果、生産性も下がってしまうかもしれません。

特に、多くの人が在籍するオフィスや長時間利用する会議室などは、適切に換気されていることも重要です。感染症対策の観点からも換気が推奨されているので、意識的に窓やドアを開けるなどこまめに空気を入れ替えましょう。

リフレッシュができない

従業員が快適に働けるようにするためには、リフレッシュできる環境を整えることも大切です。「休憩室を設けていない」「休憩スペースが狭すぎて利用しづらい」といったオフィスは、従業員が十分に休憩できていない可能性があります。リフレッシュできない環境では疲労やストレスが溜まっていくため、仕事をするスペースだけでなく休憩スペースについても見直してみましょう。

オフィス環境の改善ポイント

ここまで、オフィス環境を整備すべき理由と環境改善が必要なオフィスについて紹介してきました。しかし、「実際にオフィスを整備する具体的な方法がわからない」という人もいるかもしれません。

オフィス環境の改善に取り組むときは、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 身体へのストレスが少ない環境にする
  • 業務内容・働き方に合わせたスペースをつくる

上記2つのポイントについて、以下で詳しく解説します。

身体へのストレスが少ない環境にする

まずは、照明の明るさや換気、パーソナルスペースなどを見直し、身体へのストレスが少なくなるように改善することが大切です。

照明の明るさについては、労働安全衛生法の改正によって令和4年12月1日から以下の基準が適用されるため、これに従わなければなりません。

  • 一般的な事務作業:300ルクス以上
  • 付随的な事務作業:150ルクス以上

建築物衛生法では、空気に関する基準を設けています。例えば二酸化炭素の含有量は1000ppm以下、温度は18℃以上28℃以下が推奨されているため、換気や空調設備を整えて基準に適合するよう管理しましょう。

パーソナルスペースについては法律で定められていませんが、「隣の人と腕がぶつかる」「デスクが狭くて資料を広げられない」など仕事に支障が出ている場合は、問題を解消できる広さまでスペースを広げる必要があります。

必要なスペースは業務内容によって差が出る可能性があり、外出の多い営業職と自席での作業が多い事務職では求めるオフィス環境が変わるでしょう。経営層や総務部門では把握しきれていないオフィスの問題が存在する可能性もあるため、従業員にオフィスに関するアンケートを実施してみてください。従業員の働きやすさを実現するためには、まず一人ひとりの生の声を聞くことが大切です。

業務内容・働き方に合わせたスペースをつくる

オフィスで用意すべきスペースとして、執務スペース・打ち合わせスペース・ワークブースの大きく3つがあり、それぞれの業務内容や働き方に合わせたスペースを整備する必要があります。

例えば、営業部門やテレワークを積極的に実施している部署は、執務スペースの利用率は低いでしょう。この場合は、執務スペースをフリーアドレスにして面積を減らし、その代わりに部署を問わず利用できるリフレッシュエリアや打ち合わせスペースを充実させるとオフィス面積を有効活用できます。

一方、自席での作業が多い人事や経理などの管理部門では、執務スペースをしっかり確保する必要があります。また、Web会議を行う人が多いと、「会議室が足りなくて仕方なく自席でWeb会議を行っている」という人もいるかもしれません。この場合は、Web会議でも使用できる1人もしくは少人数用のワークブースを複数設置することもおすすめです。

ワークブースはWeb会議だけでなく1人で集中して作業したいときにも使えるので、いくつか設置しておくと従業員に喜ばれるでしょう。

そのほか、執務スペースの一角にカフェテリアを設けているオフィスもあります。明確に用途を定めないので、休憩やちょっとした打ち合わせ、作業スペースなどさまざまなシーンで活用できて、部署の垣根を越えた交流の場にもなります。

オフィス環境の改善事例

最後に、オフィス環境の改善事例を2件紹介します。参考にできる点がないか、チェックしてみてください。

株式会社マツキヨココカラ&カンパニー

株式会社マツキヨココカラ&カンパニーは、4フロアを1つのフロアに集約させ、フリーアドレスを導入しました。仕切り付きのパネルデスクでパーソナルスペースを確保し、集中して作業できる環境を整えています。

ソファのボックス席やカウンターテーブルなど、複数のスタイルのコミュニケーション用のスペースも設けており、会議室は部屋ごとに家具を変えるなど、こだわりのオフィスとなっています。

参考:株式会社マツキヨココカラ&カンパニー様|オフィスデザイン・レイアウト施工事例

太陽ホールディングス株式会社

太陽ホールディングス株式会社は、執務スペースの一角をリノベーションして小規模のミーティングスペースを設置しました。人員増加で会議室が足りなくなり、Web会議用のスペースも必要となったため、書庫を改装してミーティングスペースを確保しています。4部屋のうち2部屋はサイズを小さくし、1人での利用も想定したレイアウトを採用しました。

参考:太陽ホールディングス株式会社様

まとめ

オフィス環境は生産性や働きやすさ、従業員の健康などを左右するため、オフィスに課題がある場合は早急に改善策を検討する必要があります。快適なオフィスは生産性の向上や採用力の効果など企業側にとってもメリットが多くあるため、積極的に取り組むべきです。

オフィス環境の整備を進めるには、まず現状のオフィスの課題を洗い出しましょう。まずは、本記事で紹介した「環境整備が必要なオフィス」に当てはまる部分がないかチェックしてみてください。また、従業員がオフィスに対して不満を抱えていないか調査することも大切です。

テレワークやWeb会議の増加で、この数年で働き方が大きく変わった企業も多いのではないでしょうか。業務内容や働き方に合わせて、快適に働けるオフィス環境を目指しましょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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