リモートワークのメリットとは?企業・労働者・社会それぞれの視点で解説

働き方改革が推進される中、新型コロナウィルス感染症拡大により一気にリモートワークが普及してきました。多くの方がリモートワークを一度は体験したのではないでしょうか。

リモートワークには感染対策だけではなくさまざまなメリットが存在します。そこで、本記事では企業側、労働者側、社会と3つの視点からメリットを詳しく解説します。

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企業側のメリット

優秀な人材の確保

高いポテンシャルがある人や、仕事において技能や経験、柔軟性を持つ人々がワークライフバランスの実現を重視した就職・転職活動をする事例が増えています。

生活や趣味、家族との時間を大切にしたい、周囲からの影響を極力減らして自分のペースで仕事をしたい人々にとっては、リモートワークを行っている企業は魅力的です。オフィスの通勤圏外に住みたい人々にとっても、勤務場所に縛られないリモートワークはありがたいものです。

実際に業務の戦力となる社員を確保したい企業にとって、リモートワークの実施は優秀な人材を惹きつける大きなアピールポイントになります。高い能力を自社に招き入れるための方策としてリモートワークの導入を検討しましょう。

コスト削減

社員をオフィスに通勤させる場合、通勤費用は企業が支給するのが一般的です。新幹線通勤を要する社員を雇用する場合、通勤費用の上限全額を設けていたとしても企業にとっては大きな支出となります。

リモートワークを実施することで出社する社員が減り、通勤費用のコストを削減できます。組織によっては月内に1日でも出勤すれば月額通勤費を支給するところもありますが、オフィスに出社した日数で通勤費を計算する組織であれば、リモートワークはコスト削減の有効な手段です。

オフィスに出社する社員が少なければ、労働環境維持のための光熱水費を節約できます。もしオフィスが賃貸であれば、出社人数の減少に合わせて借りる部屋数やフロア数を減らす、あるいはより小さな規模の建物や賃貸料の安い建物にオフィスを移転して、賃料を減らすこともできます。

コスト削減となるとまずは人件費に目が行きがちですが、リモートワークの実施によって他のコストを削減することで経費節減効果があると同時に、従業員の労働意欲を維持できるというメリットがあります。

デジタル化の推進

これまで多くの職場でペーパーレスが謳われてデジタル化が推進されてきました。しかし、オフィス内で行う業務には紙媒体の書類がしぶとく残り続け、中には事務手続きをデジタル化するために紙の申請書が新たに必要になったという笑い話もあります。

一方リモートワークでは、業務で使用する資料や書類はデジタル化することが基本となります。社員がオフィスに集まらないのであれば、お互いのコミュニケーションに紙媒体を回覧することはできず、資料や書類を電子化せざるを得なくなります。

リモートワークの実施に伴って文書のデジタル化によるペーパーレスを本当に推進できるとともに、業務プロセスもデジタル化を図る必要が出てきます。そこから新たな商品やサービス、ビジネスの創出につなげることができれば、収益向上も期待できます。

2022年1月には改正された電子帳簿保存法が施行されます。企業会計の面でもデジタル化を進める必要があり、そのためにリモートワークの実施は大きな力となるでしょう。

業務改善

リモートワークがまだ現在のように広まっていなかった頃は、多くの業務を社内で行う、社員同士のコミュニケーションはオフィス内における対面で行う、それが基本でした。しかし新型コロナウィルス感染症によって社員全員がオフィスに集まれない状況が起こり、業務停止のリスクが生まれました。

政府や自治体によって出された「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」、その他の各種呼び掛けによってオフィスに出勤する人数が減る局面も出てきました。しかしリモートワークを行う体制を整えることで社員はオフィスに行かなくても職場と繋がって仕事ができ、緊急時の業務停止リスクを最小限にできます。

また従来の顧客との対面による営業スタイルでは、商談の時間と移動時間を足し合わせて営業スタッフをアサインする必要がありました。営業をリモートワークに移行することでスタッフの移動時間を減り、新たな顧客との商談件数を増やせるとともに、既存顧客とのコミュニケーションも取りやすくなるため営業効率の向上が見込めます。

企業イメージの向上

リモートワークを導入した企業に対して良いイメージを持つ人が多くなると考えられます。導入に至る理由は「社員のワークライフバランスの重視」「コスト削減」「緊急事態への対応」など様々ですが、オフィスに出勤しなくてもできる仕事はリモートを選択できるという柔軟性により、高い評価を得られます。

「健康医療」「介護」「飲食」といった業種は、オフィスに出向いた顧客を職員がサービスするという業態ですし、「警察」「消防」などの業種も対人対応が必要のためリモートワークはできません。一方、直接的対人サービスを伴わない業種では社員がオフィスの外にいても業務遂行可能な場合が多く、リモートワークにできます。

従来は決まった時間にオフィスに出社して、決められた勤務時間はオフィスで労働し、決まった時間に退社する働き方でした。現在はICTの進歩によりリモートワークが簡単かつ高度になるとともに、「働き方改革」により働きやすい企業であるかどうかが重視されています。

「企業規模が小さい」「導入費用が捻出できない」などの理由によりリモートワークに移行できない企業があるのも事実ですし、それは仕方のないことです。しかし、ICTが進歩して社会の流れも変わっているため、リモートワークを実施できる企業はそれを推進することで、企業イメージの向上につなげられます。

労働者側のメリット

通勤の負担が減る

朝に眠気の残る体を引きずって寿司詰めの満員電車に乗り会社に向かう光景は、特に大都会で昔から続いてきました。出社した時点ですでに疲れ切っているという経験をされた方も多いと思いますが、リモートワークによって出勤の苦行からは解放されされたのではないでしょうか。毎朝の行動から出勤時間と肉体疲労を省くことで、心身ともに楽になれます。

夏の台風や冬の大雪、地震などの災害により交通機関に影響が出たときなど、移動中の危険を覚悟して出勤することに躊躇される方も多いと思いますが、今日はリモートワークということが決まっていれば、安心して家にいられます。これもリモートワークの大きなメリットです。

また、1日オフィスで勤務して疲労困憊した際には、帰宅の移動が心身の負担になます。リモートワークであれば、自宅あるいは周辺の施設でモバイル端末を使って仕事をしますから、長距離移動で帰宅する必要はありませんし、特に在宅勤務であれば業務終了後にすぐ眠ることもできます。

リモートワークによって通勤移動の負担がなくなるというのは、労働者にとって大きなメリットと言えます。

生産性の向上

オフィスで担当プロジェクトの複雑な業務プロセスについて深く考え込んでいるときに同僚からの「ちょっと1分だけいいかな」という声によってつい先ほどまとまり掛けていた考えを忘れてしまった、ということがあるかもしれません。

リモートワークの勤務中であれば、深く考えているときに突然声を掛けてくる同僚は周囲にいません。そのため、オフィスにいるときよりも自分の業務に集中できて成果を出せるかもしれません。

また周囲にいる他人が常に少ない方が集中力を上げられるという人も多くいます。古い考え方の上司からは「協調性が足りない」と評価が下るかもしれませんが、今は社員の個性を尊重して働きやすい職場を作る時代です。リモートワークはそのための有益な手段にもなり得ます。

これらのような観点からリモートワークは生産性の向上にメリットがあると考えられます。

ワークライフバランスの改善

オフィスで仕事をしていると目の前に上司がいます。今日は家族サービスのために定時で帰ろうと思っていたのに突然重い残業を頼まれた場合、上司との対面では断りにくい場合があると思います。相手が上司でも割り切って断る人もいますが、断る勇気が出ない人も大勢いるはずです。

ワークライフバランスを重視して「仕事」と「プライベート」を両立させたいのだけれど上司にNOと言えない社員にとって、リモートワークが大きな助けとなるかもしれません。

リモートワーク中であれば上司と部下はほとんどの場合直接の対面ではありませんので、「プライベート」を圧迫するような業務命令が定時退勤間際に突然下りてくることも少ないでしょう。また会社が許すのであれば、業務時間中に「プライベート」に関わる活動を少し混ぜ込むことも可能です。

2007年に内閣府が定めた「仕事生活の調和(ワークライフバランス)憲章」には「ワークライフバランスとは何か」が書かれていますが、企業がリモートワークを導入することで、社員のワークライフバランスを改善することに大いに役立ちます。

参考:http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html

育児や介護、病気などとの両立

社員の中には、面倒を見なければいけない子供や介護を必要とする家族がいる人もいます。また家族や社員自身が突然病気に掛かることもあります。そんなとき、多くの「育児」「介護」「医療」関連のサービスは社員の勤務時間に提供されており、オフィスでの勤務中では家族の緊急事態に対応することが難しくなります。

その点がリモートワークで改善されるかもしれません。在宅勤務であれば子供の世話や家族の介護をしながら業務ができます。また、幼稚園や保育園、子供の学校、老人向けデイサービスの終了時刻は会社の勤務終了時刻より早めの場合がほとんどです。それらに家族を預けた場合でもリモートワーク中であれば社員自身は家にいますので、柔軟に対応できます。

また、家族が突然発病して社員自身が対応する必要が発生した場合、オフィス勤務であればまず帰宅のために移動しなければなりません。リモートワークであればオフィスよりも家族に近い場所で勤務することが多いので、より迅速な対応が可能となります。特に注意を要する持病がある家族を抱える社員にとってリモートワークは大きな助けとなります。

育児や介護、家族の病気への対応は業務とは関係のないことですが、労働者にとっては非常に重要な問題です。リモートワークによってこれらの対応が容易になると考えられるとともに、それは大きなメリットとなります。

仕事のモチベーション向上

オフィスワークとリモートワークのどちらが労働者自身にとって働きやすい環境かというのは、労働者それぞれに個人差があります。しかし、これまでオフィスワークを辛抱して働いていた社員にリモートワークを許可すれば、仕事に対するモチベーションは大いに上がると考えられます。

オフィスでの勤務はある意味拘束された環境です。執務室内の同僚は仲間と言えば仲間ですが、それぞれの信頼関係は千差万別で、状況次第ではお互いに監視の目ともなります。そんな中では勤務態度だけではなく身だしなみにも気を配らなければいけない場合もあります。

その点でリモートワークはかなり自由度の高い環境です。まず周囲に監視の目はありません。さらに在宅勤務であればラフな格好で仕事ができますし、公衆の面前ではやりにくい行動も自宅内であれば問題ありません。リモートワークを好む労働者にとってはストレスが格段に減って、仕事へのモチベーション向上につながるでしょう。

社会的なメリット

労働人口増加

世間には働きたいけど働けないという人々が大勢います。理由は人それぞれですが、自分自身や家族、その他の生活上の事情によりオフィスに通勤することが困難で働けないという人々をリモートワークで雇用すれば、その分の労働人口を増やすことができます。

労働人口が増えれば、企業にとっては売上をつくる人数が増えることになりますし、今の社会制度においては所得税、住民税といった税収も増えることになるので、それはリモートワークのメリットと言えます。

雇用創出

リモートワークによる雇用創出には労働人口増加と重なる部分もありますが、勤務場所に縛られたくないと考える人々に向けて雇用を創り出すという点でも、リモートワーク導入による効果があると考えられます。

優秀なスキルを持っているにもかかわらず、住みたいところに住みたい、人と群れるのが好きではない、などの理由で本人のスキルを生かせる仕事に就いていない人々をリモートワークによって適材適所に配置して働いてもらうことで、社会全体の生産性が向上すると考えられます。

環境負担の軽減

勤務場所には「ICT機器」「空調機器」「照明器具」が必要ですが、それらの電力消費量で考えた場合、家庭よりもオフィスの方が空間的に大きく設備も多いので、消費量は高くなります。リモートワークを実施すれば社員はオフィスに来なくなりますから、その分社員自身の電気代は増えるかもしれませんが、社会全体の電力消費量は低くなります。

また、リモートワークによって通勤移動する人数が減れば、交通の混雑も減少します。地域によって通勤における移動手段の主体は「鉄道」「自動車」「自転車」「徒歩」など様々ですが、動力を要する移動手段については人数が減ればそれだけエネルギー消費量も減りますから、環境負担の軽減につながります。

参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000120568.pdf

経済効果

リモートワークの導入によって業務プロセスをデジタル化することで、情報システムによる複雑かつ大量の処理が可能となります。実際にそういった処理を担うシステムやサービスがいろいろと商品化されており、販売収益増加による経済効果が見込めます。

また、リモートワークの実施によってオフィス勤務の労働環境維持コストが削減されるとともに、社員の労働意欲が向上して生産性が上がることによる収益増加の可能性もあります。これもリモートワークによる経済効果と考えられます。

総務省の資料では、テレワークの活用による生産性の向上で4千300億円のGDP押し上げにつながるとされています。

参考:http://teleworkkakudai.jp/seminar/2020/pdf/iwate/01_soumu201127.pdf

パンデミック抑制

現在問題とされているパンデミックでは、感染対策の1つとして人の密集を避けることが求められています。リモートワークを実施すれば少なくともオフィスや公共交通機関での密集を避けることができ、パンデミックの抑制につながると思われます。

リモートワークのデメリット

リモートワークにはメリットだけでなく次のようなデメリットもあります。

  • 情報漏洩のリスクが高まる
  • 従業員の適切な労務管理や人事評価ができない
  • コミュニケーション不足に陥りやすい
リモートワークのデメリットとは?十分な対策で成功へと導こう

リモートワークのデメリットとその対策については、「リモートワークのデメリットとは?十分な対策で成功へと導こう」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。

まとめ

働き方改革が推進される中で、新型コロナウィルス感染症拡大により一気に普及してきたリモートワークですが、上記のようなメリットやデメリットがあります。メリットを生かしてデメリットを回避する方向でリモートワークをさらに普及させれば、企業経営者、労働者、社会全体にとってより良い労働環境の実現できるでしょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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