人的資本投資の費用対効果を可視化する!戦略的なイベント・オフィス空間設計のノウハウ

コロナ禍を経て、多くの企業がオンラインからリアルへの回帰、あるいはハイブリッドワークへの移行を進める中で、「社内コミュニケーションの希薄化」が深刻な課題となっています。
本記事では、株式会社ブイキューブのセミナー内容をもとに、「イベント」と「オフィス」という2つの側面から、いかにしてコミュニケーションを戦略的に生み出し、その投資対効果(ROI)を可視化するか、その具体的な手法とノウハウを解説します。
1.人的資本経営とコミュニケーション投資の重要性
なぜ今、コミュニケーション投資なのか?

人的資本経営の文脈において、「サービス・プロフィット・チェーン」というモデルが注目されています。これは従業員満足度が上がれば顧客満足度が上がり、結果として業績向上や採用強化につながるという考え方です。
しかし、社内コミュニケーションへの投資は、その効果が見えづらく、経営判断が難しい領域でもあります。これを解決するためには、「動機づけ要因(満足を高める)」と「衛生要因(不満を招く)」の両面からのアプローチが必要です。
- イベントの役割:主に「動機づけ要因」(達成感、承認、評価)に働きかけるだけでなく、上司・同僚との関係改善という「衛生要因」の改善にも寄与します。
- オフィスの役割:従来は「衛生要因」(働きやすさ、設備)が主でしたが、現在は「会社に行く意義(同僚との相互理解や承認)」という「動機づけ要因」としての機能も求められています。
2.【イベント編】成果を可視化する「目的ファースト」の設計術
社内イベントにおいて、「費用対効果が見えない」「マンネリ化している」という課題の多くは、「コンテンツファースト(内容ありき)」で設計されていることに起因します。
「コンテンツファースト」の罠
「もっと派手な演出にしよう」「有名なゲストを呼ぼう」といったコンテンツの部分的な改善を繰り返すと、本来の目的(なぜやるのか)が迷走し、マンネリ化を招きます。
解決策:「目的ファースト」への転換

成果を出すためには、以下の3ステップで設計を行います。
STEP1:コミュニケーション課題の洗い出し
経営層、事業部、現場それぞれのレベルで、具体的な課題(例:他事業部との交流不足)を徹底的に洗い出します。現場の声が多ければ多いほど、課題の質が上がります。
STEP2:コンセプトの設計(課題×企業カルチャー)
洗い出した課題と、企業のカルチャー(理念や大切にしている価値観)を掛け合わせてコンセプトを策定します。
- 計算式:コミュニケーション課題×企業カルチャー=コンセプト
- このコンセプトが「課題解決の判断基準」となります。
STEP3:判断基準に基づくコンテンツへの落とし込み
決定したコンセプトに基づき、演出やプログラムを決めます。
- 例:目的が「一体感の醸成」であれば、派手さよりも「センターステージ」を採用し、全員の視線が集まる設計にするなど、すべての選択に理由を持たせます。
3.【オフィス編】生産性を定量評価する空間戦略
オフィス投資の最大のリスクは、一度作ると10年単位で償却する「固定資産」となり、組織の変化に柔軟に対応できない点です。数年後には「使いにくい」「生産性を下げている」という事態を防ぐためのノウハウを紹介します。
ノウハウ①:必要スペースの定量評価(マトリクス分析)

感覚でレイアウトを決めるのではなく、データを元に決定します。
- マトリクス作成:縦軸に「部門」、横軸に「用途(集中、会議、商談など)」を取り、各部門に必要なスペースを埋めます。
- 定期的更新:四半期や半期ごとに各部門にヒアリングし、更新させます(事業フェーズによって「商談数重視」から「質重視」へ変化するため)。
- 稼働率の傾向分析:単純な稼働率だけでなく、「時間帯別の推移」を見ます。
- 例:15時〜16時が満室なら、その内訳を分析し、移動可能な社内定例会議を午前中にずらすなどの調整を行います。
ノウハウ②:多用途を兼ねられるスペースの設置

「商談専用」「Web会議専用」と用途を限定しすぎるとスペース効率が悪化します。
- 解決策:複数人用の個室ブース(テレキューブなど)を導入し、「Web会議」「1on1」「集中作業」など複数の用途で使えるようにします。
ノウハウ③:固定資産化しない「サブスク・組立式」の活用
壁を作る工事を行うと「固定資産」になり、現状回復費用も発生します。
- 解決策:天井に達しない「組み立て式」のブースを活用します。
- メリット:
- コスト減:従来の会議室工事と比較し、金額は約半額、工期は1/4。
- 変動費化:サブスクリプション契約なら「経費」として処理でき、効果がなければ撤去や配置換えが容易です。
4.コミュニケーションを「戦略的」に生み出す運用プロセス
ハード(空間)を用意しただけではコミュニケーションは生まれません。ソフト(運用)面での仕掛けが必要です。
STEP1:小規模チームによる主導

全社員に「話して」と言っても機能しません。6名程度のチームを作り、自分たちに必要なコミュニケーションを議論させ、主体性を持たせます。
STEP2:業務外活動(オフサイト)の導入

業務の話だけでは相互理解は深まりません。
- 施策例:特別感のあるスナック・ドリンク、スポーツ観戦、サンクスポイント、リラクゼーションなど。
- 効果:業務外の会話から「個人の性格」が見え、相互理解につながります。
STEP3:プロセスの可視化と文化の醸成

楽しんでいる様子を隠さず発信し、「会社で楽しんでいいんだ」という空気を作ります。
- 手法:活動内容をAI要約して社内報やチャットで配信する。写真や動画で熱量を伝える。
- 場所:コミュニケーションスペースは、あえて「他の社員の目に止まる場所」に設置し、オープンな文化を作ります。
STEP4:PDCAを回す

イベントや活動を単発で終わらせず、半年ごとに結果を振り返り、改善点を次のチームに引き継ぐサイクルを作ります。
5.成功事例に見る「目的」の明確化
事例①:表彰式を「アリーナ」で開催(イベント)
- 課題:従来のホテル開催の表彰式がマンネリ化し、効果が見えない。
- 施策:ライブ会場(アリーナ)を借り切り、LEDスクリーンを用いた派手な演出に変更。
- 意図:「あのステージに立ちたい」という希少性と誇りを醸成する。
- 結果:翌年の登壇を目指すモチベーションが高まり、売上向上に直結した。
事例②:個室ブース16台の一括導入(オフィス)
- 課題:商談の「質」と「数」の向上、および営業人材の育成。
- 施策:1人用および複数人用のテレキューブを大量導入。
- 意図:
- 背景への映り込みを防ぎ、顧客信頼度を上げる。
- 上司が同席しやすい環境を作り、商談直後にフィードバックを行う(人材育成)。
- 結果:具体的な課題(商談環境、育成)に対する投資として、明確な意思決定が行われた。
まとめ:手段にとらわれず「課題解決」に集中する
イベントもオフィスも、あくまでコミュニケーション課題を解決するための「手段」です。
- 具体的な課題を現場から吸い上げる。
- 企業のカルチャーに合わせた解決策を設計する。
- 定量的なデータ(稼働率やコスト)と定性的な熱量(フィードバック)の両面でPDCAを回す。
これらを徹底することで、見えづらい社内コミュニケーションの費用対効果を可視化し、人的資本経営を推進することが可能になります。




