長時間労働の原因と、改善のために取り組むべき5つの対策を徹底解説

日本では、「少々の残業は仕方ない」「残業=がんばっている」という認識を持っている人が多いせいか、定時で帰ることに罪悪感を持つ人も少なくない状況にあります。

しかし長時間労働は、健康を害し過労死問題を引き起こす直接原因ともいわれていますので、政府が掲げる働き方改革の中でも重要な課題の一つです。

そこで、本記事では長時間労働を引き起こす原因とその対策について、実際のデータを用いながら詳しく解説していきます。

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長時間労働の定義とは

「長時間労働」といっても、その認識は人によってさまざまです。そもそも長時間労働とは、本来予定されている就業時間よりも長い時間労働する事をいい、日本では、まだはっきりした定義がありません。いわゆる「長時間労働だ」と感じる時間は、年齢や健康状態・育った環境等々によって個人差があるからです。

そこで、日本の長時間労働を世界と比較するために、ILOSTAT Database の労働時間別就業者統計より、一般的「長時間労働」の時間を仮に定めることとしました。調査対象国の労働時間のデータで、最長区分とされていた「週49時間以上」を長時間労働ラインと定め、それに該当する労働者の比率を国別に比較したデータをグラフ化してみました。

2.長時間労働比較

(引用データ:国際労働比較2018 P209)

調査年にデータがない国は棒グラフが少なくなっているものの、日本、香港、韓国が圧倒的に多く20%を超えるのに対し、EU諸国では10%を切る状況です。

週49時間というと、週休2日の会社だと仮定して、1日の終業時間を8時間だとしても、毎日1時間以上の残業をした事になります。昨今一般的だと考えられている終業時間7.5時間だとすると、毎日2時間以上、9時始業だとすると毎日20時近くまで残業となります。

日本では、この状況を重く見ています。なぜなら、厚生労働省は2001年に過労死の労災認定の基準を発表したにも拘わらず、まだ長時間労働が多い状況だからです。そのため、2016年の「過労死等の労災補償状況」からは、労働時間による過労死を重く捉えて、裁量労働制・精神疾患による労災件数を過去6年間のデータも発表しました。

過労死等の労災補償状況」にもある通り、長時間労働が脳・心臓疾患だけでなく精神障害まで引き起こすため、長時間労働による自殺も過労死と認定されるようになったのです。

厚生労働省は、過労死の原因の一つが長時間労働とはっきりと定め、過労死防止のためのパンフレットも作成しています。

ストップ過労死|厚生労働省

(画像参照元:「ストップ過労死」厚生労働省

なぜ日本では長時間労働が習慣化されているのか

日本の労働時間は、世界各国と比較しても非常に長いことは分かりました。しかし、そもそもなぜ日本では「長時間労働は当然」というような認識が根付いているのでしょうか。実はこれには、日本特有の法律や雇用システムに原因があると言われています。

以下では、その原因について詳しく見ていきましょう。

無制限に残業をさせることに対する法的罰則の有無

日本の労働基準法では、法定労働時間は1日8時間・週に40時間までと決められています。しかし、「36協定」という特例を企業側と従業員側の双方で締結すれば、今挙げた法定労働時間を超過して従業員を働かせることができます。

36協定とは、従業員に残業や休日出勤をさせる際には必ず結ばなければならない約束のこと。その上限は「1ヶ月で45時間以内、1年で360時間以内」と決められていますが、”特別条項付き”の36協定を結んだ場合、企業側は「年に6回までは」この上限を超えて残業させることが認められます。

働き方改革関連法案の施行により、時間外労働の上限を超えて働かせた場合には特別条項の有無にかかわらず法的罰則を受けることにはなりました。しかし、今までは実質的に会社は従業員を無制限に働かせてもペナルティはない、という状況が続いていたわけです。

その一方ヨーロッパ諸国では、時間外労働の上限を破ることに対する法的罰則が早くから設けられています。日本ではそうした罰則が無かったために、長時間労働が習慣化したということができるでしょう。

「メンバーシップ型」の雇用システム問題

諸外国では一般的に「ジョブ型」という、明確に1人ひとりの業務の範囲を設定してから採用をする、という雇用システムが導入されています。その一方で、日本では総合職のように職場に人を採用してから業務を割り振る、という「メンバーシップ型」の制度が取られています。

そのため日本では、自分の仕事が終わっても他の従業員の業務を手伝ってチームとして前進できる、というメリットはあるものの、ジョブ型とは違って業務範囲の線引きが曖昧になるため、仕事が終わっても「先に帰りにくい」という気まずい雰囲気が生まれることになってしまいます。

この息苦しい環境も、長時間労働問題を悪化させる一因となっているといえるのではないでしょうか。

日本における長時間労働がもたらす問題と対策を詳しく解説した別記事「長時間労働を企業が減少させるには?問題と原因から考える対策と事例」もあわせてご覧ください。

長時間労働が引き起こすリスク

厚生労働省の上記のパンフレットでもわかるように、長時間労働が続けば、心身の健康に悪影響が出てくるのは必須です。ここからは、具体的にどのような悪影響が出るか解説します。

ストレスが溜まり生産性を下げる

長時間労働が続くと疲労感の蓄積や食生活の乱れ・睡眠時間の減少から、健康に直接的な被害がないまでも、ストレスが蓄積しやすくなります。

人の脳にとっては、肉体的苦痛も精神的苦痛も同様に苦痛(ストレス)だと感じます。脳はストレスを感じると、脳の奥にある視床下部が反応して下垂体に危険を伝え、副腎皮質を刺激することにより、「ストレスホルモン」とも呼ばれるコルチゾールが分泌されます。

その結果、筋肉が緊張して血管も収縮するので血流が悪化し、「疲労感・倦怠感、肩のコリ」等、さまざまな身体的苦痛を感じるようになります。血流が悪くなると、脳の働きが鈍り、思考力・行動力・集中力がにぶりやすくなるのです。

また、昼間の過度のストレスは睡眠に悪影響を与えます。人の身体は、睡眠中に脳を含め全身のメンテナンスを行いますので、睡眠に悪影響が及べば、身体のメンテナンスが不十分となって疲労感が残ります。免疫力や自律神経やホルモンバランスの乱れから、ますます健康に悪影響を及ぼし、疲労が蓄積していくのです。

心身が健康な状況でなければ、仕事の生産性が低下することは必死です。

過労死や鬱(うつ)

先述したように、長時間労働が続くと過度に心身のストレスを感じ、睡眠に悪影響を及ぼします。

実は、人の身体は睡眠中に身体のメンテナンスだけでなく、記憶の整理や脳内の余分なストレス物質の除去を行います。そのため、十分な睡眠がとれなくなるとストレスが蓄積していき、不健康のスパイラルにはまってしまうのです。しかし、人の脳は本能的に身体の危険を察知しますので、身体は自ら休憩を欲します。

それでも真面目な人ほど、仕事をがんばろうとするでしょう。限界を超えてがんばりすぎている人の脳は、強制的に身体を休めようとして鬱(うつ)になります。鬱は、「仕事に行きたくない」「朝起き上がれない」「朝、身体が動かない」という状態になることで、強制的に身体を休めようとしているのです。鬱は脳の緊急処置としての症状であり、脳のSOSでもあるのです。

しかし、意志力の非常に強い人は脳の緊急処置(うつ状態)さえも意志力で遮ってしまい、疲労感から内臓機能が悲鳴を上げてしまいます。その結果、脳梗塞や心疾患を引き起こす可能性が高まります。あるいは、本人の意思に反して自殺してしまうことさえあります。こうして過労死は起きてしまうのです。

人件費の増加

長時間労働が増加すると、残業代(法定時間外労働の割増賃金)が発生します。時間外労働の割増賃金について、労働基準法37条を元に以下のように割増率を表にしてみました。

時間外労働の割増賃金

長時間労働が続けば、社員の標準報酬が増加して、会社が半分負担している社会保険料も増加し、会社の社会保険料の負担額も大きくなります。また、会社が支払う労災の保険料は全社員の賃金の総額から算出するので、社員の賃金が増額すれば労災保険料も増額します。

さらに、社員が健康を害し労災事故に該当するような状態になれば、人災として労災保険料率(メリット制導入により労災事故がないほど保険料が安くなる)も上がります。

このようにして、長時間労働は相対的に人件費アップに直結します。

人材獲得・人材定着が困難になる

SNSの発達によって情報が広まりやすい現在では、長時間労働が蔓延している企業はすぐに名前が世間に認知されてしまうという危険性もあります。

若年層は特に就職活動や転職活動における情報収集にもSNSを活用する比重は高く、「長時間の時間外労働はさせられないか」「プライベートの時間は確保できるのか」といった点を重視しているといいます。世間から「ブラック企業」という烙印を押されてしまえば、そういった未来の社会の担い手となる層に敬遠されることに繋がるでしょう。

また、長時間労働は人材の定着率を下げる一因ともなり得ます。なぜなら加齢によって長時間労働に耐えられる体力が低下してしまい、若い人材の育成やマネージメントを担当できるベテランの従業員が離職してしまうことが考えられるからです。そうなると、長時間労働に耐えうる若い人材だけしか生き残れない状況になってしまうのです。

長時間労働が起こる原因

政府は、欧米先進諸国のように「ワークライフバランス」を重視した働き方改革を目指しているのですが、日本人の意識はまだまだついていっていないようです。2014年に内閣府が行った「『ワーク・ライフ・バランス』に関する意識調査」のアンケート結果の集計データを引用して、長時間労働がはびこる原因を考察していきます。

原因1:裁量労働制が上手く機能していない

労働時間別職場の雰囲気

(参照元:『ワーク・ライフ・バランス』に関する意識調査|内閣府)

そもそも「裁量労働制」とは、労働者が雇用者と結ぶ雇用形態の1つであり、あらかじめ労使間で定められた時間分を労働時間とみなして賃金を支払うという形態のことです。

上のグラフの左半分を見てみると、1人に課せられる仕事量が多く、締め切りや納期に追われている状況がうかがえます。

さらに、能力が高く仕事の効率が良い人に仕事が集まっているわけではなく、普段から残業しがちな人に仕事が偏っているという非効率的な状況になっていることもうかがわれます。

一方で、グラフの右半分を見てみると仕事の手順等は自分で工夫しにくく、同僚とのコミュニケーションも上司とのコミュニケーションも良いとはいえず、仕事が早く終わっても定時で退社できる雰囲気にない、と感じている社員が多いことがわかります。

つまり、上司と部下との意見交換もないため上から一方的に指示が下りてくるだけで、社員一人ひとりの能力を活かす裁量性が全く機能していないともいえます。その上、突発的な業務が多いということは、自分の本来の業務以外の業務に追われて、自分の業務が後回しになる傾向にあるようです。

上司や同僚とコミュニケーションの必要が少ない属人化した業務が多いにも拘らず、突発的な業務に時間をとられ、さらにマニュアル化した仕事のやり方に囚われていたら、生産性が低下していくのは当然のことかもしれません。

原因2:残業に対する意識が低い

上司が残業してる人に対してもつイメージ

(参照元:『ワーク・ライフ・バランス』に関する意識調査|内閣府)

上のグラフから、「上司は残業している人に対して非常に高い評価をする」と感じている社員が多いことが伺えます。

また、前述したように、メンバーシップ型の雇用システムを採用している日本では部や課ごとに仕事内容が決まっていて、社員によって仕事が決まっていないことも多いです。そのため、個々人の仕事の領域があいまいであるため、やろうと思えばいくらでも仕事は生まれる環境にいます。だから、突発的な業務が発症してしまう可能性も高いのです。

そして、業務の内容がなんであれ、残業してまで仕事を終わらせたら、上司には「頼りになる」「がんばっている」「責任感が強い」とプラスの評価に繋がるのです。

もしかしたら、初めから「終業時間までに仕事を終わらせて帰ろう」という意識が低いので、突発的な業務も簡単に一人で抱え込んでしまうのかもしれません。

原因3:人手不足

深刻な人手不足も長時間労働に拍車をかけています。平成30年の厚生労働省の調査によると、全年代で、企業の人手不足が深刻であることが伺えます。

人手不足の現状把握

(参照元:「人手不足の現状把握」厚生労働省

また、下の図では人材流入よりも人材流出の方が多いことを表しています。人材確保に成功しても、離職率の高さが目立つ社会状況になってしまっているようです。

人材の流出入の比率

(参照元:「人手不足の現状把握」厚生労働省

とくに若手は、長期の安定した就労を目指して大手企業に入職するも、労働環境に耐えられずに、離職率も高い状況にあります。一方、40歳前後から定年退職を迎えるまでの、即戦力になる中堅社員確保の成功率が高い中小企業は、離職率が高く、万年人手不足に悩まされる結果となっています。

原因4:業務過多

不景気からくる人件費削減のあおりを受け、リストラや非正規雇用が増加すると、社員一人に課せられる業務が自然と多くなります。人件費を削減しても、利益の維持はしないといけないので、仕事量が減るわけではありません。つまり、少ない人員で、以前と同じ量の仕事をこなすわけですから、自然と長時間労働になってしまいます。

一人の社員が抱える業務が多くなったなら、効率よく業務をこなす必要があるはずですが、工夫がなされることなくマニュアル通りに仕事を進めてしまうと、自然と残業が増えていきます。

業務過多になれば体調を壊す人材、離職してしまう人材も出てきてしまいます。そのせいでさらなる業務過多になり、仕事のミスや確認不足・伝達ミスによる手違いの発生率も高まります。それらが突発的な業務となってさらに業務過多となり、残された人材にますます長時間労働のスパイラルが襲いかかる可能性が高まります。

このような業務過多の場合は、ICTツールや外注を上手に活用して、柔軟に対処するのが必要です。

原因5:残業代を貰うため

fabcross for エンジニアの調査によると、残業する主な要因は「残業費をもらって生活費を増やしたいからだ」という意見が20〜50代の間で30%前後という結果が出ました。

残業する主な要因

(画像引用元:fabcross for エンジニア

不景気のため昇級しなかったり賞与が減少したりして年収は停滞しているのに、物価は上昇傾向にあります。2019年10月からは、消費税も10%に上がります。教育資金や介護の問題、年金問題等々の経済的な理由のため、もはや残業代を含めた給与の額を充てにした生活となっている人も増加しています。

そのため、仕事がなくても残業代をもらうためにダラダラと仕事をしたり、しなくても良い急ぎでない仕事を残業してやってしまうような人もいます。

原因6:職場の風土

自分の仕事が終わったからといって、先に帰れない雰囲気になってしまっている職場もあります。日本人の人間関係を重視する気質から、以下のような意見を持つ人もいるでしょう。

  • 自分だけ先に帰るのは申し訳ない
  • 定時に帰るのはやる気がないと思われそう
  • 残業する人はがんばっている人だと評価されやすい

実際にfabcross for エンジニアで行われた「残業に対する考え方について」の調査をご覧ください。この調査では「自分の勤めている企業・団体で残業を減らすのは無理だと思う」という意見が各年代で40〜50%を占める結果が出ました。

残業に対する考え方

(画像引用元:fabcross for エンジニア

このような職場の雰囲気や上司の評価制度の意識が、長時間労働を生んでいるともいえるでしょう。

「名ばかり管理職」の蔓延

働き方改革により、管理職の労働時間の把握が義務化されました。その背景には、「名ばかり管理職」の問題もあります。

管理職は、残業や休日出勤をしても残業代が支給されません。しかし、その代わりに労働基準法では以下の要件を持つことが求められています。

権限:労務管理について、経営者と一体的な立場にあること
時間:自分の勤務時間について裁量が認められていること
待遇:一般の従業員と比較して、賃金等の面において管理職としての待遇されていること

この3つのメリットを持ちながら、名ばかり管理職は権限・時間・待遇について一般の従業員と大差がないにもかかわらずその地位に就いていることが問題となりました。管理職に就かせておけば残業代を支給する必要がないため、人件費削減につながり、企業側にとってはコストメリットなのです。

この名ばかり管理職の問題も、日本の長時間労働の原因の1つとなっていると言えるでしょう。別記事「働き方改革は管理職の残業を変えるのか?」でも詳しく解説をしていますので、あわせてご覧ください。

長時間労働への対策

対策1:トップからのメッセージ発信

上記の厚生労働省の調査から、「残業している人ががんばっている人」という上司の評価を意識しながら、やむなく残業をしてしまう社員が多いことがわかりました。そこで、上司が積極的に長時間労働を否定し、定時退社を推進するようなメッセージを発信すれば、社員も安心して定時退社できるようになります。

核家族化、夫婦共働き家庭が当たり前の社会となっていますので、男女問わず「ワークライフバランス」が重要になっています。しかし、やるべき仕事の量は決まっているので、無駄のない効率的な働き方をできる社員が「評価の高い」「仕事のできる」社員という評価に変えていく必要があるでしょう。

評価基準の明確化、長時間労働の削減を推進するためにも、トップからの積極的なメッセージが社員の意識改革の突破口になります。

対策2:管理職のマネジメントを変える研修

長時間労働の原因は、仕事量が多いだけではありません。個人の仕事の能力も原因の一つだといえます。

社員一人ひとりの個性・特性・判断力・苦手な事・仕事の適性について見極める能力や、社員の悩みを聞き出せるコミュニケーション能力、指導力、気付く力、適職・適材の配置能力など、さまざまなマネジメント力が必要です。

また、自分の若いときと現在は、仕事のやり方も常識もコンプライアンス的なものも全てが違う事、世代が違えば常識も異なることを認識し、相手の気持ちや常識を推察できる想像力が重要であることを自覚しなければなりません。

管理職のマネジメントに関する知見を養うために中堅管理職の研修を行うことも、社員の長時間労働の削減と仕事の効率をあげ、成果を出し、会社の利益を出すには大切です。世代が違う部下の養成には、コミュニケーション能力がカギを握るでしょう。

また、仕事の指示の仕方も、部下の仕事の成果に大きく影響します。自分の仕事のやり方を押しつけるのではなく、部下の特性を見出し、部下の仕事の効率性に配慮した指示を出す必要があります。

例えば、自分の仕事力によって割り出された時間ではなく、部下の仕事力に見合った指示ができるようになることが必須です。また、仕事に対する悩みを気軽に話せる人間関係や雰囲気を、部下に与えてあげられる能力も、管理職には必要です。

対策3:勤怠管理システムの導入

長時間労働対策として、勤怠管理システムを導入する企業が増え始めました。

昔からあるタイムカードでは、月末の賃金計算の集計に非常に手間がかかります。そのため、賃金計算等、労務関係の事務をアウトソーシングしてしまう会社も増え始めました。しかしアウトソーシングした場合、そのデータを集計管理して個人の勤務時間等を監理・監督するのは、労務管理担当者の手間がかかっていました。

そこで、昨今の新しい働き方として、テレワークや直行直帰、出張時の労務管理を的確に把握・管理するために、「勤怠労務管理システム」を導入する会社が増えました。

しかし、勤怠管理システム導入については、メリットとデメリットがあります。

勤怠管理システムのメリット

勤怠管理システムのデメリット

  • 労務管理担当者の業務効率アップ
  • 社員の不正打刻の防止
  • 社員の労働時間の管理が簡単になった
  • 人件費等コストの削減
  • 勤怠管理と給与計算システムとの連携
  • 勤怠管理システムを上手に扱えない
  • 会社のシステムに勤怠管理システムがあっていない
  • 勤怠管理システム導入のコストについて経営層の理解がうすい

勤怠管理システムには様々な種類があり、導入コストが0円のものから大きな費用がかかるものもあります。そのため、どの勤怠管理システムを導入するにも、経営層の理解が必要となります。

そこで、勤怠管理導入システムのメリット・デメリットをしっかりと把握し、それを比較検討した上で、資金を導入するに値するシステムである事を経営陣に理解してもらわなければなりません。

そもそも業種や職種によって働き方がさまざまな場合もありますし、スマホやパソコンの操作に慣れている世代とそうでない世代によっても、使い勝手が異なってきます。このようなケースは、勤怠管理システムの利用方法の教育に関しても徹底しなければなりません。

部署によって働き方や時間帯が異なる場合もあれば、テレワークや直行・直帰が多い部署もありますので、どの部署の働き方でも対応でき、社員一人ひとりの勤怠を正確に把握できるようなシステムが望ましいでしょう。

全ての社員に使いやすい勤怠管理システムでないと、正しく勤怠管理ができません。導入する前にトライアルで無料体験をしてみてから、自社にあった勤怠管理システムを導入することをお勧めします。資料を一括請求できるサイトもありますので、あなたの会社にあった勤怠管理システムを検討してみましょう。

対策4:Web会議システムの導入

労働時間を短縮するために、移動時間を削るWeb会議システムを導入するのも有効な手段です。

PCやスマホから会議に参加できるので、本社への出張や営業先からの帰社が不要となります。

宮崎電子機器株式会社」ではWeb会議導入により、宮崎県内で広範囲に展開する拠点からの移動時間は年468時間削減することができました。

宮崎電子機器株式会社

(画像引用元:宮崎電子機器株式会社

この事例からも、Web会議システムの導入が長時間労働の対策になることが分かります。

また、会議だけでなく採用面接や営業活動もWeb会議システムで行い、移動時間をさらに削減することも可能でしょう。

※Web会議システムの導入を検討している方で、どのようにツールを選んだらいいのか分からないという方がいらっしゃいましたら、「チェックで比較!正しいWeb会議ツールの選び方」の資料請求もご検討ください。専用のフォームからどなたでも無料でダウンロードできます。

完璧なビデオ、クリアな音声。インスタント共有「Zoomミーティング」

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出典:Zoom公式ページ

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Zoomの有料版を使うべきメリットとは?

Web会議ツールZoomの有料版を使うべきメリットについては、「Zoomの有料版を使うべきメリットとは?無料プランとの違いや決済方法を解説」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。

対策5:人事評価制度の見直し

人事評価制度は、昇級や給与・賞与に直結するといっても過言ではありません。場合によっては、上司よりも能力の高い部下がいる場合、その能力が正しく評価されない、といった話を耳にする事もあるでしょう。

どうしてこのようなことが起こるのかというと、人事評価制度とは、人が人を評価するシステムだからです。どうしても主観が入りがちで、上司が違えば評価も変わるといった可能性も否定できないのです。

さらに、日本人の気質的に、「労働時間が長いほど評価が高くなる」という印象が強いので、その「労働時間と仕事の能力の評価が比例する方式」を辞め、効率的に働くことに評価の核を置くよう推進するために、政府自ら次のような制度を推進する施策を設けました。

勤務間インターバル制度の導入

勤務間インターバル制度とは、働き方改革関連法案として、2018年6月29日に改正された労働時間に関する法案の一つです。終業と次の始業の間に一定の休憩時間を設けて、労働者の睡眠を確保することで、労働者の健康とワークライフバランスを保つことを推奨しています。しかし残念なことに、この制度は、労働時間の規制のような罰則のある義務規定ではなく、あくまで努力規定です。

この制度は、1993年のEUによる労働者の労働時間規制に端を発しています。EUの規定では、勤務間インターバルを11時間以上とすることを加盟国に呼びかけているのですが、残念ながら法的拘束力のあるものではなく、推奨規定です。26年後の2019年4月からやっと日本も足並みを揃えるように、努力義務規定として施行開始されました。

申請期限は2019年11月15日までで、申請した場合は、「事業実施期間中(2020年1月15日まで)に取り組みを実施しなければならない」というのが条件です。

日本でもまだ「一定の時間を設ける」として、11時間という時間の規制はないものの、「○時間の残業を禁止する」とか「○時以降の勤務を禁止する」だけでは、勤務間インターバルを制定したとみなされないものとしています。

しかし、中小企業では、人材不足からどうしても残業を余儀なくされ、このような制度を導入したら経営に悪影響を与えてしまう企業もあります。そのため、この制度が広まるように、9時間以上(11時間以上推奨)勤務時間インターバル制度を導入した中小企業に助成する、「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」を創設しました。

11時間以上を推奨するために、以下のように助成金の金額は、9時間以上と11時間以上で金額が異なります。

勤務間インターバル制度の支給額

(画像引用元:時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省

ノー残業デー

「ノー残業デー」を設けることで、この日は残業を原則禁止にして、一斉に仕事を終えるように会社を挙げて取り組むことで、労働時間短縮に繋げようと取り組む会社が増えています。

この取り組みを数年前から取り入れている会社は多いようです。NHKのノー残業デーの導入についての調査(2016年10月下旬~11月にかけて100社対象)によると、100社中67社が「実施している」と解答し、週1が42社、週2が10社、月1が5社等の回答があったそうです。以前から導入していた会社は、ノー残業デー以外の定時退社を推奨するために放送で促したり、残業社員がいないか見回りを開始した会社もあるとの回答がありました。

しかし、もはや「ノー残業デー」は時代遅れだという声も聞こえてきます。

2019年4月からTBS(火曜9時~)吉高由里子主演で放映された「私定時で帰ります」も話題になりました。

2.私定時で帰りますTBS

(画像引用元:わたし、定時で帰ります|TBS

このドラマは、まさに「いかにして仕事を効率よくこなして定時で帰るか」をポリシーとしている主人公が、会社で生じる諸問題を皆で解決していくドラマです。

このドラマのように、昨今では、効率よく仕事をして定時で退社して、自分の時間を楽しむ人も増えつつあるようです。

有給休暇の取得促進

有給休暇の取得は、労働基準法39条で定められている労働者の権利です。しかし、内閣府の調査によると、有給休暇の取得率はバブル時代からずっと50%前後で推移しています。

2有給休暇の取得率

(画像引用元:年次有給休暇取得率の推移(男女計,男女別)|内閣府男女共同参画局

景気が良くても悪くても、有給休暇の取得率は低いのです。しかし、その有給休暇を取りにくいという会社の雰囲気を払拭するために、働き方改革によって、有給休暇の5日以上取得が義務化を2019年4月から実施されています。

この制度をわかりやすく解説するために、施行前から厚生労働省はパンフレットを作って周知に励んでいます。

また、有給休暇の取得は、リフレッシュして、仕事の効率もアップするといわれています。それを証明したのが、オリックスの職場改革プロジェクトです。これは、家庭と仕事の両立をしようと時短制度を取り入れたのでは給料が減ってしまうけれども、効率よく働けば、仕事&育児の両立も可能だということを証明したプロジェクトです。

その結果、オリックスの有給休暇奨励金制度や、たくさんの働き方改革の制度(柔軟な働き方の支援)が生まれました。

テレワーク・裁量労働制やフレックスタイム制の導入

政府は、柔軟な働き方として、テレワークや専門業務型の裁量労働制の導入を進めています。

テレワークや労働時間の裁量労働制(専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制)は、自分の自由な働き方をできるというメリットがあります。

テレワークは、ICTツールを利用して時間と場所を問わず、在宅ワーク・サテライトオフィス(自宅以外の自分が仕事のしやすいワークスペース)、モバイルワーク(移動中でも仕事ができる)を行うことです。時間を効率よく使って効率アップを図ることができます。

裁量労働制は、業務の特殊性に注目して労働時間を社員個人の裁量に任せることで、仕事の効率を図るという制度です。しかし、労務管理がしっかりと把握できる管理体制が完成していないと、長時間労働に拍車をかけ、過労死ラインを超えてしまう可能性が一層高まるリスクを負っているともいえます。

今年から新設された最高3ヶ月以内の月をまたぐフレックスタイム制度は、子育て中の女性が夏休みだけフレックスにしたいという場合に夏休みは1ヶ月以上あるので、もうけられた制度ですが、裁量労働制にまでする必要はないけれども、今まで繁忙期が月をまたぐので仕方なく裁量労働制を申請していた会社にも、広くフレックス制度を浸透させようとした制度でもあります。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、政府が働き方改革推進のために発表している措置の1つで、特定の条件を満たす専門家を対象とし、実働時間ではなく業績や成果によって評価する働き方を推進する制度のことです。

裁量労働制と似たような仕組みになりますが、成果を基準にして賃金が決まるという実力主義の手法は、時間に囚われない柔軟な働き方をすることで生産性を上げることができるというメリットがあります。

しかし、評価制度の運用は導入する企業に任されているという一面があるため、従業員側のことを考えない恣意的な運用が行われてしまうのではないかという懸念があることも事実です。

長時間労働が生むリスクや改善方法を詳しく解説した別記事「絶対知っておきたい!働きあkた改革の長時間労働是正を成功させる秘訣」もあわせてご覧ください。

自社の働き方を変えた事例

ここでは、朝型勤務の導入やフレックスタイム制を導入し、効率の良い働き方を実現した企業の事例をご紹介します。

伊藤忠商事株式会社:早朝出勤にインセンティブと朝食を支給

2事例 伊藤忠

(画像引用元:伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社」は深夜勤務を原則禁止とし、やむを得ず20時以降の勤務が仕事上必要となった場合は事前申請で上司の承認を得たもののみ認める制度を設けています。一方で、早朝勤務を推奨するために、5時~8時の勤務にはインセンティブとして深夜勤務と同等の割増賃金手当(50%増し)を設けています。普段から時間外対象外の管理職もインセンティブ対象(25%増し)としました。

しかも、インセンティブのつく8時前出社の社員には、朝食を支給する制度も設けています。

日本航空株式会社:勤務時間帯を1日単位で選択

2事例 JAL

(画像引用元:日本航空株式会社

日本航空株式会社」はワークライフバランスを確保する一環として、「勤務時間帯選択制度(地上職普通勤務部門対象)」を設けました。

基本となる就業時間(8:45~17:45)のほかに7種類(7:00~16:00、7:30~16:30、8:00~17:00、8:15~17:15、8:30~17:30 、9:30~18:30、10:00~19:00)の中から社員本人が1日単位で勤務時間帯を選択できる制度を導入し、フルタイムでも16時に終業できる勤務を選べるようにしています。(引用:CSR|ワーク・ライフ・バランスの取り組み

早朝出勤だけを推奨しているわけではなく、自分のライフスタイル充実のために、フル勤務の時間帯を選択制にしているのです。

まとめ

いかがでしたか。長時間労働で生産性が低いと言われてきた日本も、働き方改革を進める中で画期的な成功例が生まれてきています。他社の取り組みを参考にしながら長時間労働の原因を特定・改善することが、個人のモチベーションアップや企業の利益にも繋がるでしょう。

今回ご紹介した5つの対策が、働き方をより良くするきっかけになれば幸いです。

川本 凜
著者情報川本 凜

ブイキューブのマーケティング本部で広告運用を担当しています。

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