中小企業が人手不足に陥る7つの原因

全企業の99.7%を占め、従業員数は全体の約70%、そして付加価値額は全体の53%以上(※)と影響力の大きい中小企業。そんな中小企業が近年、人手不足による倒産を余儀なくされていることもあり、危機感を覚えている中小企業の経営者や従業員も多くなっているのではないでしょうか。

そんな中小企業の人手不足は、「一体何が原因となって引き起こされているのか」「人手不足への対策は?」など、気になるポイントをまとめてご紹介します。今から対策に取り組み、企業を存続させられるよう、ぜひ参考にしてみてください。

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人手不足の現状

まずは人手不足の現状を見ていきましょう。中小企業を業種別に色分けし、従業員数の過不足を表したのが下記のグラフです。

業種別従業員数過不足DIの推移

(画像参照元:2019年度版中小企業白書 第 1-4-7 図

2013年の後半からほとんどの企業が人手不足を感じていて、年を追うごとにその割合がどんどん深刻になっていっていることがわかります。特に建設業・サービス業・製造業という人手不足が有名な業種の深刻度合いがグラフにも表れています。

また、下記のデータを見ると、中小企業の7割以上が人手不足を感じていて、そのうちかなり深刻が19.7%、深刻が33.1%と半数以上が深刻な人手不足に悩まされています。

人手不足を感じている企業

(画像参照元:人手不足に関する中小企業への影響と対応状況

そして、人手不足の影響を感じる点について人材採用が困難と捉えている企業は75%以上にも達しています。他の理由として、売上減少や商品・サービスの質低下、利益減少など、企業存続にも関わる部分で影響を感じている企業も27.2~34.4%ずつと非常に多いのが特徴となっているのがわかります。

人手不足の影響

(画像参照元:人手不足に関する中小企業への影響と対応状況

ではなぜこれだけ多くの中小企業が人手不足にあえいでいるのか、その原因をご紹介していきます。

中小企業が人手不足になる7つの原因

中小企業が人手不足になってしまったのには、外部要因・内部要因含めて7つの原因が存在しています。人手不足を解決するためにも、まずは原因を知ることから始めましょう。

原因1:日本の人口減少

まずは皆さんもご存じの日本の人口減少についてです。日本の人口は明治時代から上昇を見せ、戦後から2000年まで上昇の一途をたどりました。そして2000年にピークを迎えた総人口は、2030年には1億1522万人、2050年には1億人を割って9515万人、2100年には4771万人(中位推計)程度になるといわれているのをご存じでしょうか。


日本の総人口の推移

(画像参照元:総務省ホームページ「我が国における総人口の長期的推移」

2000年の100年前、明治維新のときの人口が3330万人だったため、2000年から100年かけて再び明治時代後半の人口に戻っていくという推計が出ています。急激に人口が増え、先進国の仲間入りをした日本は他の先進国と同様に少子化となり、急激な人口減少を見せると予想されているのです。

原因2:生産年齢人口の減少

生産年齢人口(=働ける年齢の人口)は現在15~64歳となっています。先にご紹介した人口減少に伴い、生産年齢人口も今後加速度的に減少を見せます。

年齢別人口推計の推移

(画像参照元:2018年度版中小企業白書 年齢別人口推計の推移

上記グラフを見てもわかるように、10年の間の減少幅がグラフの右側に行くにつれて広くなっていっています。全体もそうですが、生産年齢人口を表している黄色の棒グラフの長さが特に急激に変化しているのがわかるでしょう。

人口は大幅に減少していく予測ですが、現時点で70~80歳でも勤務継続している人は多く、今後は長寿化によってさらに増えていくだろうという予想もあります。現在は生産年齢人口の上限は64歳と設定されていますが、今後生産年齢人口の年齢が引き上げられるなどがあれば、減少幅は緩やかになるでしょう。

ただ若いときのようにフルタイムとはいかないため、短時間勤務や週3日勤務など、負担が少なく長く働けるような労働条件を用意することが重要になってきます。

原因3:団塊世代の引退

上記データの05年~10年のグラフの55~59歳を見ると、11.7%~10.3%まで1.4ポイントも減少していることがわかります。これは、1947年〜49年に生まれた団塊世代が定年を迎えたことによっての変化です。人数の多い団塊世代の人達が引退し、労働市場にいなくなってしまったため、労働者数が大幅に減ってしまったという状況が見て取れるでしょう。

さらに2030年頃には団塊ジュニア世代が定年となるため、さらに労働市場の人数が減ることになります。

原因4:売り手市場の影響

人口減少以外の外部要因によっても中小企業の人手不足が引き起こされています。リーマンショック以降、徐々に景気が上向いたことで有効求人倍率も年々上昇。2019年の9月の正社員の有効求人倍率が過去最高値となったと報道されたことは、皆さんもご存じではないでしょうか。

このような状況から、労働市場は求職者よりも求人数が多い「売り手市場」となっています。つまり、求職者は求人を選べる状態だということ。

リーマンショックのときは求人が少なかったため、就職先をあまり選べない立場にあった求職者も、「今は売り手市場だし、できれば大手企業で高い給与をもらい、ワークライフバランスの取れた生活を送りたい」と考えるはず。売り手市場のときに、求職者が中小企業より大手企業を優先する傾向にあるのは、仕方のないことです。

原因5:消極的な外国人採用

日本は公用語が日本語のみで英語を話せる人が少ないためか、あまり外国人の採用も盛んではありません。政府が2019年から力を入れて取り組むということで入管法の改正を行いましたが、まだまだ人手不足の解消ができるほどは採用できていないのが現状です。

このように日本が抱える少子化&超高齢化社会という側面が大きく影響したこと、売り手市場の労働環境、そして言語や文化の問題で外国人などの受け入れが進んでいないことなどが、中小企業が抱える人手不足の外部要因といえるでしょう。

原因6:業務量が多すぎる

そもそも中小企業は分業制の大手企業とは異なり、業務範囲が広いため一人ひとりの業務が多くなる傾向にあります。中小企業は大手企業に比べて従業員数が少ないため、必要な業務を兼務している、あるいは少人数で多くの業務を行うというのが当たり前です。

きちんと採用予定人数を採用でき、業務が回っているうちは問題ありませんが、ひとたび人手不足によって担当業務範囲が増える、業務量が増加するなどがおきると、一気に負担が増えてしまいます。それによって退職する人が増加するとそのしわ寄せが残った人にいき、さらに人が減って業務量が過密状態になるという悪循環が生まれてしまうのです。

もともと中小企業は余裕のある人員構成で業務を行っていることが少ないため、退職しないような仕組みづくりが求められます。

原因7:人材の流出

人材の流出というと、普通に退職してしまうパターンと、海外に流出してしまうという2つが考えられます。

パターン1:退職による人材の流出

まず退職による人材の流出は、業務量・人数が少なくて逃げ場がない人間関係の問題・ワンマン経営になりがちな部分も退職につながるポイントでしょう。

他に退職の原因として考えられるのは、「従来の採用基準で採用ができないため、採用基準を下げる」という決断によるものもあります。大手に人材がとられてしまい、採用基準を下げて、なんとか採用人数を確保しようと考えている中小企業も多いでしょう。

しかし、人材の質が下がれば、商品・サービスの質の低下や利益減少にもつながっていきます。業績に関わる部分が落ち込むと、企業の採用力も低下してしまうため、より採用できなくなるというスパイラルに突入することも考えられます。採用基準を下げるのではなく、やるべきは育成への注力です。

採用したらOJTで現場に育成責任を持たせ、人事は採用に特化すると役割分担をしている中小企業は多いもの。しかし、中間管理職の業務も多く、育成にあまり手が回っていない状態です。人事も採用ができないため、採用に関わる期間が延びてしまい1年中採用活動を行っているという状態も珍しくないでしょう。

このような中でも人手不足への対策を行いたいなら、バケツに水を汲むときのようにまずは空いた穴を塞いでから水を入れることが重要です。穴が空いたバケツに、いくら水を注いでも水はたまらず、「人材の流出が止まらない企業」というレッテルを貼られるでしょう。そうならないように育成や定着などの対策を打っていくことが求められます。

パターン2:海外や外資系への人材流出

中小企業に入って、エース級に活躍してくれる人も中には出てくるでしょう。しかし、優秀な人材は向上心も高いため、成果主義での評価を求める傾向にあります。中小企業のタイプにもよりますが、創業から時間が経っている中小企業の場合は、成果主義というよりも年功序列が残っているケースも多いです。

そのため、優秀な社員であればあるほど、不満が溜まりやすい環境ともいえます。それに比べて海外や外資系の場合は成果主義で、しかもフレキシブルな働き方が進んでいます。働き続けても昇進せず、時間を拘束される旧態依然とした中小企業を離れたいと考えるのも当然でしょう。

このように内部の制度や教育体制に不満を持って流出していってしまう人材もいるため、どういった理由で従業員が離れていっているのかの原因を突き止めておくことが重要です。

人手不足への対策

では具体的に人手不足への対策では何をすればいいのか、3つのポイントにわけてご紹介します。先に結論を言うと、人手不足の解消には流入を増やし、業務負担を減らして流出を防ぐことが重要です。

対策1:人材流入を増やす「採用の効率化」

まずは、人材の流入を増やす採用の効率化についてご紹介します。()内はそれに取り組むことにより、どんな効果が得られるかというメリットをまとめたものです。自社の悩みに合わせて参考にしてみてください。

リファラル採用(採用強化・マッチング率向上・選考の効率化)

まずは、数多くの企業が取り組んでいるリファラル採用です。リファラル採用はいわゆる社員紹介のこと。既に働いてくれている社員に自社に合いそうな人材を紹介してもらい、マッチング率の高い選考を行って効率的に採用をすることができます。

人材の適性によっては選考を省略することも可能でしょうし、活躍してくれている人材の紹介する友人・知人であれば、自社で活躍できる可能性も高いといえるでしょう。採用の前工程と呼ばれる母集団形成にお金と時間を使わなくても済むようになるため、採用強化・マッチング率向上・選考の効率化が一度に叶う採用手法です。

ただ頑張って取り組んでも大量採用ができる手法ではないので、他の採用方法と組み合わせて使うことが必須の採用方法だと覚えておきましょう。

ダイレクトリクルーティング(採用強化・マッチング率向上・選考の効率化)

スカウトメールやSNS、ヘッドハンティングなど、求職者にダイレクトなコミュニケーションをとって採用していく方法を、ダイレクトリクルーティングといいます。企業側の積極性も見えるため、候補者からも興味を持ってもらいやすいシチュエーションが作れます。

伝える言葉によって興味や応募の動機形成ができるようになるので、ターゲットをよく選定して行うこと、SNSで発信する内容やスカウト・ヘッドハンティングの際に伝える言葉を吟味する必要があります。手間はかかりますがマッチング率を向上させ、動機形成をしているので、その後の選考を効率化することが可能です。

こちらも大量人数を採用できるわけではないため、複数の採用手法と組み合わせて行っていくことが重要になります。

無料ツールの導入(採用強化・コストダウン)

Google for Jobsやindeedなど、自社の採用ホームページを無料転載してくれるツールをうまく活用して、採用をしていくのも良い採用手法です。従来使っていなかった場合は、そこからの応募が少しでも募れれば採用強化とコストダウンの両方が叶います。

こちらも応募人数がどの程度来るかは読めませんし、求人広告のように掲載してすぐ反応が出るタイプのものではないため、長期間さまざまな原稿にトライして1番反応の良いものを残していくなどの工夫が必要です。こちらもすぐに人数が確保できない手法であるため、他手法と組み合わせて行いましょう。

採用代行の導入(コア業務への注力・選考の効率化)

本来行うべきターゲットの選定や採用計画の策定、育成などのコアな業務ができず、採用の対応に追われている企業も多いです。採用代行を導入すれば、電話やメールの応対をしてもらえるため、浮いた分の時間で本来力を入れるべき業務に注力できます。

これによって、自社にマッチした採用手法のパッケージを発見することもできるようになるでしょう。

採用支援システムの導入(採用強化・コストダウン)

コア業務をもっと効率化するために必要になってくるのが、採用支援システムの導入です。あらゆるところから入ってきた応募や採用状況を一元管理し、選考通過率や採用率、応募単価や採用単価を導き出すことができます。

それによってコストがかかりすぎている苦手分野や、無料ツールでも採用できる得意分野などを見極めることが可能です。それができれば、無料で採用できるところは無料ツールのみ、浮いた費用を採用難職種に充てるなどの効率的な使い方ができるようになってきます。データがたまっていけば採用傾向も見えるようになるため、より人手不足の対策をとりやすくなるでしょう。

Web面接ツールの導入(採用強化・コストダウン・選考の効率化)

Web面接ツールを導入すれば、これまでは面接に足を運んでもらえなかった地方の優秀な層を呼び込むことも、面接官を移動させる費用や時間をかけない面接もできるようになります。音声や映像も安定して提供できるものが増えてきたため、対面と遜色なく面接が行えるようになっているのも大きな変化でしょう。

このように、さまざまな採用手法をどう組み合わせていくかがとても重要になってきます。採用手法に絶対の正解はありません。自社に合う方法を模索して見つけ出すことでしか、正解を導き出せないのです。ご紹介した方法を検証して自社なりのカスタマイズを行っていけば、数年後の採用活動は大きく流入を増加させられる、進化したものになっているはずです。

対策2:一人当たりの負担を減らす「業務効率化」

2つ目は負担を減らすための業務効率化です。

・業務の見直し(なくす・減らす・アウトソースする)

・IT化、機械化(コア業務への注力・業務効率化)

まずは業務をなくす・減らす・アウトソースするのどれにするかを検討し、その後にIT化・機械化で効率的になる部分を見つけて導入します。慣例だっただけでいらない業務はたくさんあるものですし、機械化によって本来注力すべきコア業務が進んで経営効率が上がることも期待できるでしょう。

対策3:人材流出を防ぐ「柔軟な働き方」

3つ目は人材流出を防ぐ柔軟な働き方づくりです。

フレックス、テレワーク、在宅勤務制度の導入

従来の時間拘束型の勤務ではなく、自由な働き方を導入するに伴って本来評価すべき成果に着目することができるようになります。同時に成果主義に変わっていくため、優秀な人にとって働きやすい環境にもなり、流出を防ぎやすくなります。

また、育児や介護の家庭事情や、高齢者のため時短勤務しか難しいという場合も、自由な働き方を推進すれば優秀なのに働けていなかった層を採用できるようになるでしょう。

ツールの活用(テレワーク・在宅勤務推進)

それに伴って、会議システム・チャットツール・オンライン営業ツールなどのツールを活用し、時間や場所に縛られず業務を効率的に進められる体制を整えることも可能です。資本金規模別にテレワークの導入率を見ると、10億円~50億円未満では38.6%、50億円以上の企業の場合は44.9%となっています。

資本金規模別テレワークの導入状況

(画像参照元:テレワーク情報サイト

こういった柔軟な働き方は大手企業しか取り組んでいないことがデータからも見て取れます。中小企業がテレワークなどの柔軟な働き方を導入するとそのギャップで注目を集められる可能性も高くなるのではないでしょうか。このように取り組み内容を発信していくことで、自社に人材を集めやすくなるはずです。

まとめ

働ける人口が減っていく中で中小企業が人手不足を解消するには、今すぐに自社に合った対策を見つけ出すためにまず始めてみることです。成果が出るまでには年数がかかりますから、人口が1億を切るといわれる2050年までには自社の中で対策が確立されるよう、取り組み始めてみることが大事になってきます。

さまざまなツールを活用しながら満足のいく人材を採用・定着させられるよう、今回ご紹介した方法をぜひ参考にしてみてください。

川本 凜
著者情報川本 凜

ブイキューブのマーケティング本部で広告運用を担当しています。

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