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メディアやSNSで頻繁に耳にする「働き方改革」。法律の改正に合わせて企業でもその対応が迫られています。しかし、取り組みを進めているものの、壁に直面している企業もあるかもしれません。

 

どうすれば働き方改革を失敗に終わらせず、組織を変革する契機にできるのか。今回は働き方改革を成功させる方法について考察しましょう。

働き方改革とは

世の中で声高に叫ばれる「働き方改革」。具体的には2019年4月1日より施行された働き方改革関連法案の一部を指します。これに伴い、70年ぶりに労働基準法が改正され、政府にとっても一大改革として取り組んでいるのです。

 

働き方改革特設サイト

 

(画像参照元:働き方改革特設サイト)

 

働き方改革のコンセプトは「一億総活躍社会を実現する」ことに尽きます。少子高齢化が進み、労働人口の減少が懸念されている日本において、これまで活躍の場が限られていた方も安心して働ける社会を作ろうと様々なルールが設けられています。

 

また労働人口の減少の対策として生産性の向上も目標の一つとして掲げられています。日本の労働生産性はOECD加盟国36カ国中21位となっており、主要7カ国の中では最下位と大きな課題となっています。生産性向上に向けた取り組みも働き方改革の目玉になるのです。

 

これらの課題を解決するため、働き方改革では3つの対策を打ち出しています。

 

1, 長時間労働の是正

2, 同一労働・同一賃金

3, 柔軟な働き方の実現

 

この3つは働き方改革の肝になるので、詳細にお伝えしましょう。

1, 長時間労働の是正

時間外労働の上限規制

 

(画像参照元:働き方改革特設サイト 時間外労働の上限規制)

 

働き方改革で特に目玉となっているのが長時間労働の是正です。2015年に大手広告代理店の若手職員の自殺を機に、世の中では長時間労働に対する目が厳しくなりました。また日本は過労死大国とも言われ、厚生労働省が「過労死白書」を毎年発表し、その現場を伝えています。

 

平成30年に発表された過労死白書によれば、平成29年の自殺者総数は21,321人の売り勤務問題を原因・動機の一つにする自殺者の割合は9.3%となり、平成19年の6.7%から増加傾向にあると報告されています。

 

もちろん、勤務問題を理由に自殺した方が全員過労に陥っていたとは限りません。しかし、一定数は過労を原因にしていた可能性はあり、今回の働き方改革の柱の一つに長時間労働の是正が加わったと考えられます。

 

これまで時間外労働については労使の合意があれば36協定で上限を超えることができました。しかし働き方改革では労使の合意があり、かつ臨時的な特別な事情があっても年720時間以内、時間外労働45時間を超えるのは年間6ヶ月までと厳格な規制が設けられました。

 

すでに大企業では施行が始まっていますが、中小企業では2020年4月から施行開始となっています。それまでに社内体制を見直し、対策を講じる必要があります。

2, 同一労働・同一賃金

同一労働同一賃金

(画像参照元:働き方改革特設サイト 同一労働同一賃金)

 

働き方改革のもう一つの目玉は、同一労働同一賃金の導入です。これまで正社員と非正規雇用者(パートやアルバイト)との間にあった待遇格差を解消するのが目的です。

 

今回の働き方改革では、基本給や賞与などの個々の間で不合理な待遇差を設けることが禁止されます。厚生労働省ではガイドラインを策定し、どのような待遇差が不合理になるか明確にしています。

 

例えば、賃金の決定においては「将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的な理由で決めることを禁じています。賃金の決定はあくまで職務内容をはじめ、客観的かつ具体的な実態に照らし合わせて決定することが求められています。

 

また基本給や賞与だけでなく、教育訓練や福利厚生についても待遇格差の是正に言及。福利厚生施設理説の利用や慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保証についても同一に付与することと指針が設けられています。

3, 柔軟な働き方の実現

2018年ごろから副業・兼業の話題を耳にするようになりましたが、これも働き方改革の一つである「柔軟な働き方」に起因します。この柔軟な働き方とは、副業・兼業が認められるだけでなく、働く場所や時間も柔軟に変えられるようにしようという動きです。

 

柔軟な働き方を実現するために、厚生労働省の検討会ではテレワークの実現について議論されています。「テレワークは時間や場所を有効に活用できる」とそのメリットを挙げた上で、子育てや介護と仕事を両立する手段であり、多様な人材に職業機会を与えるものとしています。

 

また、厚生労働省ではテレワークについて、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の3つのケースを想定しています。働く時間や場所を柔軟に選ぶことができ、通勤時間の短縮による精神的・身体的負担を軽減することにより高度なワークライフバランスの実現にもつながると期待されているのです。

働き方改革の現状

政府の肝いりでスタートした働き方改革。法律が施行されて半年が経ちますが、その影響を受けるビジネスパーソンはどのように感じているのでしょうか。

 

ビジネスパーソンの意識調査を実施した株式会社日本マーケティングリサーチ機構が2019年9月30日に調査結果を公開しました。その結果を紐解くと、理想と現実のギャップが浮き彫りになります。

「働き方改革」の認知度は高いものの...

調査によれば、「働き方改革」という言葉を知っている人は85.96%という驚異的な数値が出ています。メディアを中心に働き方改革について頻繁に報じられたことにより、言葉自体は多くの人たちに知れ渡りました。

 

働き方改革_認知度

 

(画像参照元:株式会社日本マーケティングリサーチ機構)

 

しかし「働き方改革の内容」を理解している人の割合になると50.75%と半分ほどに落ち込んでしまいます。言葉は印象に残ったものの、肝心な内容についての認知が行き届いているとは言えないようです。

 

働き方改革で何が変わるか

 

(画像参照元:株式会社日本マーケティングリサーチ機構)

 

働く人にとって大きな影響がある働き方改革。なぜその内容まで浸透しないのでしょうか。それはもう一つの調査結果から垣間見えます。

ビジネスパーソンに蔓延する「諦め」

調査では「改革によって労働環境が改善するか」という設問が用意されています。その結果、改善すると回答したのはわずか38.12%。6割以上の人は改革に対して期待していないことが明らかになりました。

 

働き方改革_改善されるか

 

(画像参照元:株式会社日本マーケティングリサーチ機構)

 

政府が目玉の政策として推進している働き方改革。しかし働き手との温度感は想像以上に大きいようです。

 

働き方改革で「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金」、「柔軟な働き方」が掲げられているのは、裏を返せばほとんどの企業でこれらの取り組みが進んでいなかったという実情があったからと考えられます。その実態を嫌になるほど見てきた従業員からすると、本当に改革できるのか疑念を持つのも当然と言えるでしょう。

働き方改革に失敗する3つの理由

とはいえ、企業の人事や労務担当者は働き方改革を成功させたいと考えているはずです。どうすれば働き方改革が成功するのか、そのヒントを掴むためにまずは失敗の原因になるであろう3つの要素を見ていきましょう。

業務の進め方が変わらない

「長時間労働の是正で労働時間は減っても仕事が減らない。」

 

そんな悩みを抱えているビジネスパーソンも数多くいるのではないでしょうか。労働時間を減らすには業務量そのものを減らす、もしくは生産性を上げて一つひとつの仕事を効率的に完了させるしかありません。

 

現実的には後者の生産性向上が対策になるはずですが、これが一筋縄でいかないケースがほとんどです。例えば、企業によっては会議の資料や稟議書などを「紙」で用意しているかもしれません。もしくはデジタル化が進んでいたとしても、稟議を通すために膨大な調査が求められる場合もあるかもしれません。

 

紙文化が根強いと、会社にいなければ仕事ができないという状況になりがちです。そうすると、いくら長時間労働を是正しようとしても解決は難しいでしょう。また無駄な調査や資料作りが消えないと労働時間は削減できないでしょう。

「性悪説」で仕事を進めている

働き方改革でもう一つネックになっているのが企業に蔓延する「性悪説」です。日本の企業では「成果」ではなく「労働時間」が見られているケースが多いです。そのため、周囲の目を気にして、仕事を早く切り上げることができないという人もいます。

 

さらにマネージャーの理解を得られないという例もあるようです。企業で管理職を務めている世代は「長時間労働」が美徳になっている場合もあります。長い時間汗をかいて働き、会社に滅私奉公するのが当たり前、そんな価値観に染まったマネージャーが働き方改革で掲げられた目標を受け入れるのは難しいでしょう。

 

またリモートワークなど柔軟な働き方を実現しようにも「会社にいないとサボっていると思われる」という不安が従業員にはあるかもしれません。これも会社に広まる性悪説の存在を気にしているのではないでしょうか。

危機感の欠如

もう一つ、働き方改革を阻害する要因として危機感が乏しいことが挙げられるかもしれません。「変わらないと企業は存続しない」という意識が欠如しているケースも見られます。

 

ものづくりが中心の工業化社会であれば、従業員の労働時間が企業の売上に直結する可能性が高いです。作れば作っただけモノが売れるのであれば、企業には生産量を最大化するインセンティブが働き、できる限り従業員を働かせるでしょう。働く従業員も企業の売り上げがアップすれば自らの給与もアップする可能性が高いので、できる限り働きます。

 

しかし、時代はものづくりからサービスの時代になりました。日本のGDPに占める割合は第3次産業がおよそ7割に及び、第2次産業を大きく上回ります。ITの世界で顕著ですが、サービスの時代で鍵を握るのは労働時間ではなく、消費者に受け入れられる画期的なサービスの「アイデア」です。そしてこのアイデアは、長く働けば生み出せるものではありません。むしろ生産性が低い状態で長時間労働を続けているとアイデアは一向に出てこない可能性もあります。

 

サービスの時代に移り変わった今、その変化に合わせて変革する覚悟が無い企業は生き残れないでしょう。長時間労働や柔軟な働き方の実現だけでなく、画期的なアイデアを生み出せる組織にする真の働き方改革が求められます。

働き方改革を失敗させないために

働き方改革を実現して、会社をより良くするにはどうすべきか。ここでは「仕組みを変える」という観点から成功へのアプローチを探りましょう。

 

企業が改革するには、トップを含め一人ひとりの行動が重要なのは言うまでもありません。しかしこの行動は、並大抵のことでは変わりません。長年染み付いた習慣を変えるのがいかに困難か、多くの方は理解しているはずです。

 

それでは人間の行動は変えられないのでしょうか。そこで着目したいのが会社の仕組みを変えることです。紙だった書類をデジタルに、柔軟な働き方ができるようクラウドシステムを導入する、リモートで会議に参加できるようシステムを導入するなど仕事で使うツールをデジタル化して、業務の仕組みを変えて組織を変えるのが一つのアプローチです。

 

経営のトップにはデジタルに対するアレルギーを示す人もいます。しかし、デジタル化を進めることによる費用対効果を示せば、考え方が変化するかもしれません。そしてデジタル化が成功した際の青写真を示せば前向きな姿勢になるはずです。

 

システージ株式会社

(画像参照元:システージ株式会社)

 

例えば、北九州に本社を置くシステージ株式会社はテレビ会議「V-CUBE Box」を用いて拠点を超えた社員間の交流を図っています。これにより、同じ場所にいなくても"同じ部屋にいる感覚"で業務が可能になり、文字だけでは伝わらないニュアンスなども伝わるようになったといいます。また、デジタル化によって業務を変えることで、柔軟な働き方を実現するだけでなく移動時間の削減にもつながっています。

 

現代は中小企業でもデジタル化が進み、大きな成果を生み出している企業が数多くあります。またIT人材の不足を理由にデジタル化を断念する企業も多いですが、近年は情報システム部門をアウトソースできるサービスも増え、課題解決の糸口も見えてきました。

 

意識ではなく、仕組みを変える。こうすることで行動は変わり、ゆくゆくは意識の変化も生まれるかもしれません。

まとめ

ここまで働き方改革の基礎知識や求められる時代背景、働き方改革を失敗に終わらせないためのポイントなどを紹介しました。法律が改正され、来年からは中小企業を含め全ての企業が対応しなければなりません。働き方改革は「待った無し」のところまで迫っています。