タウンホールミーティングの効果とは?実施における課題と解決法を解説

価値観の多様化に伴う人材の流動化、コロナ禍におけるテレワークの普及などの影響により、社内のコミュニケーションは取りにくくなっています。特に、経営層の理念や目標に対して従業員が理解できなければ、従業員は企業に対して貢献しようという気持ちが持てず、結果として生産性の低下を引き起こす可能性があります。

感染症による影響で多くの人が集まる機会は減っていますが、経営層と従業員が十分にコミュニケーションをとり、相互理解を深める重要性は依然として変わりません。そのため、経営層と従業員が対話するタウンホールミーティングが、近年注目を集めています。

このタウンホールミーティングは、一体どのような効果・開催方法があるのでしょうか。この記事では、タウンホールミーティングの概要と注目を集める背景、その効果について解説しています。また、実施における課題と解決法についてもお伝えし、事例も紹介していますのでタウンホールミーティングの実施を検討する際の参考にしてください。

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タウンホールミーティングとは

タウンホールミーティングとはタウンホールミーティングの目的は、経営層が現場の声を聞き、素早く経営に反映させることで、「対話集会」とも呼ばれています。

企業としての重要なメッセージを従業員に伝える役割もあり、普段はあまり交流することがない双方のコミュニケーションをとれるよい機会にもなるでしょう。ちなみに政治家や自治体が住民と直接意見交換する場を「タウンミーティング」といいますが、企業などビジネスシーンで行われる対話は「タウンホールミーティング」と呼ばれ区別されています。

タウンホールミーティングの効果

タウンホールミーティングにより経営層と従業員が対話をすることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここではタウンホールミーティングにおける3つの効果についてお伝えします。

従業員エンゲージメントの向上

タウンホールミーティングを実施することにより、経営層と従業員の心理的距離が近づき、円滑なコミュニケーションにつながる可能性が高まります。

JTBコミュニケーションデザインが2021年に行った「ニューノーマルの社長との心理的距離調査」によると、テレワーク頻度が高いほど社長との心理的距離は遠くなるとの結果でした。しかし、タウンホールミーティングをはじめとした社長との交流、メッセージなどは一定の評価を得られており、心理的距離が縮まることで仕事へのモチベーションアップに役立つと考えられます。

企業規模が大きくなるほど経営層と従業員の距離は遠くなり、双方の声は届きにくくなりがちです。距離がある中で経営に関する施策を打ち出しても、従業員は自社にエンゲージメントを感じられず、理解どころか反発する可能性もあります。

しかし、タウンホールミーティングで経営層が将来のビジョンを熱心に語る、あるいは質疑に対して誠意を持って回答する様子を見ることで、従業員は親しみを持てるようになるでしょう。帰属意識が向上し、エンゲージメントが向上すると考えられ、結果的に離職防止にもつながります。

企業理念・MVVの浸透

双方の顔が見える距離で経営層が話しかけることにより、企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が浸透しやすくなるメリットがあります。HR総合調査研究所が2013年に実施した調査によると、98%の企業が従業員への理念浸透は必要と回答。しかし、企業理念が従業員に浸透していると認識する企業はわずか6%、「やや浸透している」と合わせても約4割という数値です。

企業理念やMVVは企業と従業員の方向性を1つにする指針であり、企業成長にも大きく影響します。浸透のための施策はパンフレットや管理職による教育など様々ありますが、経営層自らの言葉で発信することが重要です。

企業理念の背景や従業員が担う業務との結びつきなど、経営層が情熱を持って語ることで従業員から共感を得られ、企業理念やMVVの浸透につながります。そのような点において、タウンホールミーティングは最適といえるでしょう。

現場の声を経営に反映

タウンホールミーティングは、経営層が現場の声を聞ける場ともいえるでしょう。経営層と従業員では仕事に対する視点が異なりますが、経営層の視点だけでは偏りが生じ、サービス低下につながる恐れがあります。タウンホールミーティングでは従業員の本音・意見・要望といったリアルな声を聞けるようになるため、経営に素早く反映させることが可能です。

従業員の視点を知ることで経営層は従業員に歩み寄れますし、円滑な業務が実現すれば信頼にもつながります。コミュニケーションやチームワーク向上にもなるでしょう。また、年齢・性別・役職・部署などにこだわらずコミュニケーションが図れる場では、新たなアイデアや施策が生まれるかもしれません。

現場の声を聞くことで社内イノベーションが起こりやすくなり、スピーディーな企業成長も期待できます。

タウンホールミーティングが注目を集める背景

タウンホールミーティングが注目を集める背景大手企業をはじめとし、タウンホールミーティングを導入する企業が増えていますが、どのような理由があるのでしょうか。ここでは、タウンホールミーティングが注目を集める背景について解説します。

人材流動性の高まり

人材流動性とは、転職などにより労働者が職場を移る度合いのことです。年功序列や終身雇用制度が一般的な日本では人材流動性が低いとされてきましたが、柔軟かつ多様な働き方が認められるようになったことからその高まりをみせています。

その要因として「自分にあった社風や業務内容を選択する」といった考え方、仕事だけでなくプライベートも重視する「ライフワークバランス」など、個人を尊重する風潮の広がりが挙げられるでしょう。また、海外のように転職によってキャリアを積み重ねていく働き方の浸透も考えられます。

企業や経営層の価値観を押し付けることはリスクが高く、帰属意識・信頼の低下による離職率増加を招きかねません。タウンホールミーティングによって現場の声を取り入れることで、多様性のある社風づくりにつながり、人材の流動化を防ぎます。

テレワークの普及

新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークが普及したことも背景の1つに挙げられます。ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社が実施したアンケートによると、新型コロナウイルス感染症の流行前にテレワークを「全社員を対象に導入していた」企業が14%なのに対し、「コロナ対策で新たに全社員を対象に導入した」企業は全体の73%と59ポイントも増加しました。

さらに「コロナ後、在宅勤務制度の対象者を増やす」と回答した企業は74%となっており、テレワークの浸透・定着が加速したといえるでしょう。そのため、企業規模拡大によって経営層と従業員の距離が遠くなると前述しましたが、テレワークの普及により経営層のみならず従業員同士が直接顔を合わせる機会も減少しています。

そのため、一方的な発信ではなく、企業の方針を共有し意思疎通の場を設ける必要性があると考え、タウンホールミーティングが注目されているといえるでしょう。

市場の変化するスピードの高まり

各産業を取り巻く市場変化は著しく、これまでにないスピード・スケールで変化しています。市場および経済のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、組織の考え方やあり方も変化せざるを得ません。このような時代において、経営層のみが判断を下していくのは難しいといえるでしょう。

また、前述したテレワークの普及や人々の自由度・選択肢が増えたことによる価値観の多様化などから、コミュニケーションの活性化も重要視されています。

タウンホールミーティングが注目される背景には、コミュニケーションの機会を増やすとともに、従業員の意見を積極的に取り入れ、それをもとに意思決定する「ボトムアップ」のスタイルを社内に作り出すという理由があると考えられます。

タウンホールミーティングを実施する際の課題と解決法

さまざまな効果が期待できるタウンホールミーティングですが、実施の際は開催場所やコミュニケーション方法などに注意しなければなりません。ここでは、タウンホールミーティングの実施における課題と解決法についてお伝えします。

一堂に集まるのが難しい

タウンホールミーティングは、開催する場所や日時により参加人数が限定される可能性があります。例えば、規模が大きく全国に複数の拠点がある企業では、参加人数が多いうえに業務を中断して参加することが難しい場合もあるでしょう。

シフト勤務者が多ければ、開催日時が勤務時間外にあたるケースも考えられます。とくに、新型コロナウイルス感染症流行後は密を避ける傾向にあるため、対面による大規模なタウンホールミーティングの実施には消極的です。

解決法としてはWeb会議やチャットなど、オンラインツールの活用が挙げられます。あるいは実地開催とオンラインのハイブリッドもよいでしょう。オンラインツールを利用することにより密を避けられ、遠隔地でも移動することなくタウンホールミーティングに参加できます。場所の確保も不要な上に大人数の参加が可能です。

コミュニケーションが一方通行になってしまう

経営層による一方的なプレゼンテーションになっては、タウンホールミーティングを実施する意味がありません。おもな目的は従業員とのコミュニケーションや意見交換です。スムーズな進行を実現するためにもファシリテーターを置き、質疑応答時間は十分に確保しましょう。

また、自由に発言できる雰囲気づくりも大切です。タウンホールミーティングには従業員との心理的距離を縮めるといった目的もあります。いきなり本題から入るのではなく、アイスブレイクから始めて親近感を持たせることを心がけましょう。

タウンホールミーティングの事例

タウンホールミーティングの事例タウンホールミーティングの開催形式は企業ごとに異なり、規模や頻度もさまざまです。ここではタウンホールミーティングの事例を2つ紹介します。

第一生命ホールディングス

第一生命では役員が主催者となり、全社員を対象としたタウンホールミーティングをオンライン形式で開催。およそ6万人いる社員に対し、56回2ヶ月半かけて実施しました。

オンラインツールは「匿名性が担保され、投稿・集計機能を有する」「参加しやすい」という点を条件として選定されています。経営層への意見はハードルが高いと感じますが、匿名ということで忌憚のない意見が交わされ、結果的に課題の抽出が実現しました。今後は意見交換しながら解決につなげていくとしています。

三井物産株式会社

約200名の社員を抱える三井物産ICT事業本部では、タウンホールミーティングを月に1回開催しています。コロナ禍ではオンラインと対面のハイブリッド型で実施。

30分程度の短い時間ですが、事業本部の状況や本部長の仕事観・人生観などを伝える一方で、参加者に質問も投げかけています。参加者同士で共有し、積極的なコミュニケーションを行うことにより一体感を醸成する機会となっているようです。

まとめ

注目を集めるタウンホールミーティングは、様々な要因で希薄になったコミュニケーションを活性化させる施策の1つです。従業員の意見を吸い上げて経営に素早く反映できるメリットや、企業理念の浸透、エンゲージメントの向上といった効果が期待できます。

対面による実施が難しくても、オンラインツールの活用により多様な形で開催が可能です。他社の事例などを参考に、タウンホールミーティング開催を検討してみてはいかがでしょうか。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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