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「ダイバーシティマネジメント」は、人的資産の新たな活用と相乗的な経済効果が期待できる時代に沿った経営手法といわれています。労働人口が減少していくなかで、いかに多くの人材を発掘し、労働力を確保していくかは多くの企業の悩みとなっています。「ダイバーシティマネジメント」は採用・人材育成・人材確保を目指す企業、人事労務や経営企画部門の方に向けた経営手法といえるでしょう。

ダイバーシティマネジメントの意味

まずは「ダイバーシティ」とはどういった定義で用いられているのかチェックしていきましょう。

ダイバーシティとは?

ナビゲート ビジネス基本用語集によると、ダイバーシティとは

 

ダイバーシティとは、多様な人材を積極的に活用しようという考え方のこと。 もとは、社会的マイノリティの就業機会拡大を意図して使われることが多かったが、現在は性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントについていう。 企業がダイバーシティを重視する背景には、有能な人材の発掘、斬新なアイデアの喚起、社会の多様なニーズへの対応といったねらいがある。

引用:ナビゲート ビジネス基本用語集 - コトバンク

 

と解説されています。

 

「ダイバーシティ」という言葉は通常「多様性」と表現され、多様化の対象は人材となっています。様々な背景をもった人材を採用し、その人材の多様性を企業側が受け入れ、活かしていくということです。

ダイバーシティマネジメントとは?

「ダイバーシティマネジメント」とは、人材の多様性を受け入れ、人材資源の確保・労働力の充実を図ろうとする経営手法を意味します。

さらに、女性や高齢者、障害をもっている方をはじめ外国人に至るまで、雇用・就業分野の拡大を行い新たな雇用機会の確立で新市場を開拓し、需要拡大といった社会的好循環も期待できます。

そのためには、今までは採用する人材としてとらえていなかった層に対して採用をする必要があり、新たな労働力として長く労働参加をさせるために環境・制度の整備が必須といえます。

ダイバーシティマネジメントとは

解決すべき社会課題とダイバーシティマネジメントの必要性

ここからは解決すべき社会課題と併せて「ダイバーシティマネジメント」の必要性についても詳しくご紹介します。 

今後、労働力が不足していくなかでいかに多様な人材を確保するか、人材に長く勤めてもらうためにはどのような制度や環境・配慮が必要なのかも知っておくことが大切です。

人口減少による労働力の不足

日本は今、急速な少子高齢化により人口が年々減少しています。人口が減少し、少子高齢化が進むということは、今まで労働力として現役で活躍していた世代が減り、現役を引退した高齢者が多くなるということです。また、将来社会を背負っていく若い世代の絶対数が減っているということは、従来通りの採用・人材育成活動を行っていても労働力の確保が難しくなってきます。

 

人口ピラミッドの変化(1990、2015、2025、2065)-平成29年中位推計-厚生労働省

 

引用:人口ピラミッドの変化(1990、2015、2025、2065)-平成29年中位推計-厚生労働省

 

厚生労働省のデータを見ると、1990年では生産活動の中心となる20~64歳が人口全体の62%となっていますが、2025年には54%となっています。さらに、2065年には48%にまで下がるとされています。対照的に高齢者の割合が1990年と2065年では5%から26%と約5倍に増えています。

労働力は2060年までに大幅に減少

総務省が発表している高齢化の推移と将来推計によると、今後の予測では2060年には生産年齢人口に該当する15~64歳の人口は4,418万人まで大幅に減少するとされています。1950年にはわずか411万人だった65歳以上の高齢者が、2060年には3,464万人まで増加する見込みです。

 

我が国の高齢化の推移と将来推計-総務省

引用:図表4-1-2-1 我が国の高齢化の推移と将来推計-総務省

 

今後、この少子高齢化社会では労働力を確保し、企業活動の維持を図るにはシニアの労働力の活用が一つの解決策になってくるといえるでしょう。

業務効率化の必要性

人口減少により、従来の採用活動では企業が望む人材とのマッチングや採用そのものの維持が難しくなってきます。よって、より幅広い人材の活用はもちろんですが、人材一人あたりの生産性を上げていくことも必要となります。

 

テクノロジーの発達により、煩雑な業務もツールの導入と習熟を図ることによって効率化が可能です。業務効率化を図れる施策にはテレワークやクラウドツールがあり、人材ひとり一人が「場所にとらわれない働き方」「時間にとらわれない働き方」を実現することが求められます。

女性の就業に対する意識の変化と潜在労働力人口の活用

日本経済の維持、持続的な成長のために注目されているのが、女性の就業です。経済産業省でダイバーシティ経営推進の後押しとして、「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」の選定を行っています。

働く女性を応援する企業の先進事例を多く発信し、女性の就業に対する意欲の変化を敏感に感じ取って多様な視点を取り入れた採用活動をはじめる企業が増えているのです。

従来であれば働けない環境にいた女性が社会復帰をし労働力になるということは、潜在労働力が多く存在するということ。つまり、そういった層のニーズを洗い出していくことによって、より豊富な人材の確保に繋がるのです。

女性の就労に関する意識の変化

男女の雇用格差については、日本では長く議論されてきました。今後、より労働力が減っていくなかで女性の活躍の余地はとても大きいといえます。

経済産業省が発表している国内の潜在需要を掘り起こす新産業分野の創出に向けてという資料によると、2010年時点で就業を希望しているが就労していない潜在労働力人口は342万人いるとみられています。

 

M字カーブ解消による女性の労働力人口増加の試算

 

引用:M字カーブ解消による女性の労働力人口増加の試算- 新産業構造部会(第2回)参考資料 3P(抜粋)- 経済産業省

 

この数値は非就労の女性となっており、この女性たちを雇用することによって、7兆円程度の雇用者報酬総額を創出することが可能という試算があります。

条件さえ合えば働きたいと思う女性が増えており、企業としても女性の就労が大きなメリットになると考えていることから、女性の就労に関する意識の変化は社会規模で起こっているといえるでしょう。

女性就業の現状と課題

経済産業省が発表している国内の潜在需要を掘り起こす新産業分野の創出に向けてという資料によると、妊娠・出産前後に退職した理由に「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」「解雇された、退職推奨された」といった意見が全体の3割を超えていました。

 

妊娠・出産前後に退職した理由 - 新産業構造部会(第2回)参考資料(抜粋)- 経済産業省

 

引用:妊娠・出産前後に退職した理由 - 新産業構造部会(第2回)参考資料 6P(抜粋)- 経済産業省

 

働き続けたいという意志があった貴重な労働力である女性を手放すことになってしまっては、今後企業にとっては人手不足の問題となります。優秀な人材を妊娠出産というライフイベントで手放すことのないよう、仕事と育児の両立が可能なように勤務時間帯・場所を整えるためテレワークの活用で解決している企業も存在します。

また、「子を持つ前とは仕事の内容や責任等が変わってしまい、やりがいを感じられなくなった(なりそうだった」という意見も企業側の課題といえます。妊娠し出産を控えた女性、産後子育てに奔走する女性に対していかに意欲的に働き続けてもらうかは適材適所の配置と、十分なフォロー体制の整備が急務といえるでしょう。

急速な事業と組織のグローバル化

業種・規模を問わず急速にグローバル化が進む近年。日本企業は人件費や、海外進出や拠点拡大を図る企業が増えています。ここでは、組織のグローバル化に必要な知識と人材についてお話します。

日本企業の海外進出の増加

国内需要がある程度底が知れてしまった今、国内で潜在ニーズを掘り起こすと同時に日本企業が海外進出・拠点拡大をすべき理由とは「海外市場の規模の大きさ」が大きな魅力となっています。国内の限定的なニーズにターゲットを絞っても、市場規模としては満足のいくものではないでしょう。

一方で海外市場では国内と比較して何倍、何十倍もの市場規模となりますから、今後より世界を視野に入れた経営を行うかが企業存続・成長の鍵となってくるのです。

日本企業が海外進出を行うためには、高いマネジメント力を持ったリーダーが必要です。さらに、意思疎通を図ることができる語彙力を持った人材や、経営ビジョンを事業に反映できる優秀な人材も必要です。こういったことから、日本企業は外国人労働力を積極的に受け入れるようになり、海外に進出する機会を多く創出して成長を遂げているのです。

外国人労働力の受け入れ

厚生労働省の生産年齢人口等の推移(外国人労働者)によると、2014年を境に留学等で入国した資格外活動による労働者が、専門的・技術的分野の在留資格を持った労働者(高度人材)を上回っています。

 

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引用:生産年齢人口等の推移 - 厚生労働省

 

外国人労働者は2016年の時点で108万人にのぼり、これからも増加していく傾向がみられます。

モノ消費からコト消費への変化

バブル時代、多くの日本人が派手に着飾り「モノ」にお金を使うことに価値観を見出していました。しかし、現在では、購入したモノやサービスを使ってどのような経験・体験をするかという「コト消費」に消費支出が変化しています。まさに「モノ消費」から「コト消費」という時代へ変化しています。こういった消費行動にも対応できるように多様な人材の活用が企業に求められているのです。

消費行動の変化

消費者庁の資料によると、消費生活に関する意識が近年大きく変わってきていることがわかります。モノやサービスを使ってどのような経験・体験ができるかという「コト消費」が増えていることがわかります。

 

家計の消費支出はモノからサービスへシフト - 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者行動・意識 - 消費者庁

引用:家計の消費支出はモノからサービスへシフト - 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者行動・意識 - 消費者庁

 

この価値観は若者を中心に社会全体に広がってきており、特に20代では3割以上がスポーツ観戦や映画・コンサート鑑賞といった「コト消費」にお金をかけていると回答しているのが特徴的だといえます。デジタルネイティブと呼ばれる世代には、情報を簡単に入手できるようになったことで、モノを所有することの意識の低下と、デジタル化されていないコンテンツの価値が高まってきていると推測できます。

 

【特集】若者の消費 - 消費者庁

引用:【特集】若者の消費 - 消費者庁

企業の組織のあり方

今後より「コト消費」が重要視されていることを考え、企業は雇用している人材の多様な価値観への価値提供を行わなければなりません。個別化・多様化のニーズを感知するために、組織には「多様な感度」が必要になります。

組織内のタテの繋がりだけではなく、ヨコの繋がりも強固にし、ヨコの価値観や意見がしっかりタテにも繋がって響いていく透明感のある組織づくりをしていくことが重要です。

「コト消費」に時間やお金が使えない企業だとわかった途端、人材は働く意欲が低下してしまうこともあります。いかに人材の価値観を大事にし、かつ仕事にも意欲的に取り組ませるかが組織のあり方に直結するといえるでしょう。

LGBTなどの性的マイノリティの表面化

国内の潜在人材として、性的マイノリティを隠し、企業といった組織に属することを難しいと感じている人材が存在します。貴重な人材を組織でどう活かすか、どういった価値観で共存し、保護していくべきかについても知っておきましょう。

LGBTとは

LGBTとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシャル)、Transgender(トランスジェンダー)の多様な性的指向や性自認の頭文字をとって表現しています。また、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉の一つとして使われることもあります。

 

多様な性について考えよう - LGBT - 法務省

参考:多様な性について考えよう - LGBT - 法務省

LGBT関連の社会的な動き

東京都渋谷区では、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」として「同性パートナーシップ条例」が可決・成立しています。この条例は性的少数者への差別を禁止する内容となっており、同性間のパートナーシップを区長が証明することができるようになりました。

参考:渋谷区パートナーシップ証明書 - 渋谷区公式サイト

 

企業でもこの条例の内容について学ぶべき点が多く存在します。例として、職場における家族手当や単身赴任手当といった諸手当が、異性間の婚姻関係のみならず同性間のパートナーシップにも適用するような環境づくりが求められるといった福利厚生面です。

「ダイバーシティマネジメント」を実践していくためには様々な人材の多様性を受け入れ、共存していきながら企業活動の充実を図ることが必要です。社会としては、LGBT生徒の保護にも乗り出しており、政府が定める「いじめの防止等のための基本的な方針」には、

 

性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するいじめを防止するため,性同一性障害や性的指向・性自認について,教職員への正しい理解の促進や,学校として必要な対応について周知する。
引用:いじめの防止等のための基本的な方針 - 文部科学省

 

 と明記されました。

性的マイノリティを抱えているひとり一人に寄り添った社会、「生きにくさ」を感じさせない社会づくりが急速に整えられているのです。

企業におけるLGBT人材活用の効果

多様な視点から、「LGBT」ビジネス市場は拡大し続けています。「LGBT」ビジネスのネット通販の市場規模が7兆円以上とみられており、大手広告代理店の電通の調査によると日本国内では、LGBTの人口は全体の8.9%以上という結果がでています。また、LGBT人材の確保は企業側でも関心が高まっており、企業の福利厚生面や、就業条件は、LGBT人材の働くモチベーションの維持・向上に直結する重要な指標です。

また、性的マイノリティの立場から雇用されていなかった優秀な人材の獲得により、企業にとってメリットの大きい経済的価値ももたらすことが可能です。多様性を受け入れ、職場の処遇改善にいち早く乗り出した企業から広く社会に認知されることとなり、離職防止や生産性向上、企業そのもののクリーンなブランディングにもなり人材戦略の強化を図ることができます。

 

LGBTレインボーフラッグ

障害者雇用の拡大

障害者雇用の拡大は、企業にとっても大きなメリットがあります。ここでは、障害者雇用の国の取り組みと、企業が障害者雇用を進めるメリットについて詳しく紹介します。

国の取り組み

国としても障害者雇用へ前向きに取り組んでおり、平成30年4月1日から障害者の法定雇用率が引き上げられました。厚生労働省によると平成33年4月までにはさらに0.1%の引き上げが予定されています。

参考:平成30年4月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります[PDF]

 

国が主導して障害者雇用のためのサポーター養成講座を実施しており、一緒に働くために必要な配慮を学べる機会が得られるようになりました。また、講師を派遣して講座を開いてもらうことも可能で、事業所へ出張して講義を依頼することもできることから従業員全員に障害者雇用について必要な知識と理解を得られる機会を設定しやすくなったといえます。

また、障害者雇用状況が改善しない企業に対しては、企業名を前提とした適正実施勧告が行われます。企業にとっては大きなブランドイメージの損失となりますので、国の定める雇用率をしっかり維持しながら、組織全体として障害者雇用に寄り添っていく必要があるといえます。

企業の障害者雇用

障害をひとつの個性として認め、受け入れる体制として企業はどういった点に配慮したら良いのでしょうか。まずは、助け合いができる環境づくりが必要です。障害者であっても、非常に優れた能力・スキルのある方はたくさんいます。業務に従事させるにあたっては、適材適所の配置をしたから大丈夫…となってしまうのではなく、常に目配りや気配りを忘れず、障害に対して正しい理解をすることが重要です。そして、就業後のミスマッチにいち早く気づき改善する環境づくりが大切になってきます。

障害者を雇用することによって、企業は労働力不足の解消にもなります。どういった方向性での雇用なのかということを外部へアピールすることによって、従業員の意識の統一にもなり、理解もより得られやすくなるでしょう。

経済的なメリット(助成金)としての魅力も大きく、法定雇用率を上回って障害者雇用をしている場合は、納付金が国から支給されます。こういった恩恵を受けながら企業は、障害者雇用をうまく取り入れながら労働環境整備と人材確保に尽力しましょう。

なぜダイバーシティマネジメントが企業に必要なのか

上記のような社会課題を含め、企業としては「個性を受け入れ、充実して働ける組織を作っていく」ことが生産性向上の糸口となります。


人材がどういった働き方を望んでいるのか、就業後もどういったフォロー体制が必要なのかを把握し、それを満たすような組織を維持していくことが重要です。また、社会の流れに沿った制度改正も必要になります。これからの企業には「ダイバーシティマネジメント」で感度を上げた経営手法を実践し、企業価値を高めていくことが求められているのです。