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少子高齢化によって生産年齢人口の減少が予測されている今、生産性の向上が課題となっている企業も多いのではないでしょうか。

 

生産性を向上させるには、社員の能力向上やツール導入による業務改善、不採算部門の縮小と様々な打ち手がありますが、社内ノウハウの共有という視点では「ナレッジマネジメント」が重要視されています。

 

そこで本記事ではナレッジマネジメントについて、必要とされる背景やメリット、導入時の注意点や有効なツールをまとめてご紹介します。会社全体で生産性の向上につなげたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、ナレッジ(=知識や経験、独自のノウハウも含む情報)を、マネジメント(=管理、全社に共有して会社全体で活用)していくことです。

 

知識やノウハウを共有するという点では、以前から行われている社内メールや定例会議もナレッジマネジメントといえるでしょう。しかし、ITの発達によって顧客情報や購買履歴といったあらゆるデータが集積される昨今、ただ「情報を共有すること」自体の価値は薄れています。

 

では、生産性を上げるためにはどのような知識やノウハウを共有すべきなのでしょうか。続いては知識の特徴について説明していきます。

人の知識は暗黙知と形式知に分けられる

人が持っている知識は、暗黙知と形式知に分けられるのをご存じでしょうか。暗黙知とは経験上できるが、人にはうまく説明できない経験や知識のこと。人が持っている勘やトップ営業マンだけが持つスキルがこれに当たります。

 

そしてもう1つが形式知。形式知は暗黙知の逆で、言葉で説明し他者に実施してもらうことができる知識や経験のことを指します。料理のレシピのように手順や分量、かける時間がわかる状態のことです。

 

組織の中では個人に蓄積している暗黙知が形式知化されず、異動や退職があった場合は新しい人がまたゼロから積み上げていかなければならない状況が多く、ロスが多い状態でした。しかし、生産性を高めていく必要があるこれからは、ナレッジマネジメントに取り組む必要が出てきているのです。

ナレッジマネジメントが必要な背景

ここで、ナレッジマネジメントが必要になっている背景についてご紹介します。冒頭でご紹介した生産年齢人口の減少と生産性の低さはもちろん、過去から現在に至るまでに下記2点のような大きな変化があったことも要因です。

人材の流動が激しい

約50年前の日本では転職がかなり珍しいものでした。転職雑誌が創刊され始めたことをきっかけに徐々に転職という概念が浸透し、今では転職サイト・転職エージェントも多数存在し、転職が珍しいという認識を持つ人は少ないでしょう。

 

厚生労働省のデータによると、平成7年から平成27年まで、平成21年を除く19年間ずっと新規学卒者の3年後離職率は3割以上であることがわかります。つまり転職が一般的な時代になり、複数回転職することも珍しくない=人材の流動が激しい時代になったということです。

 

新規学卒者就職率と修飾語3年以内離職率

 

(画像引用元:厚生労働省 新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率

 

また、下記リクナビのデータにおいても20代以外は53~67%の人が転職を経験していることがわかります。前に勤めた会社で得たノウハウが転職先の会社で通用する場合もありますが、少なからず新しいことを覚えるでしょう。

 

転職して一人前の社員として力を発揮するためには、ある程度その会社の製品について学ぶ期間が必要です。その間は上司が時間を割いて教育する一方、利益を生む社員になるまでには時間がかかります。一時的に会社の利益は減少するため、人材育成期間は会社にとっての投資期間といえるでしょう。

 

人材の入れ替わりが激しくなり人材育成期間が長くなると、会社は経営を圧迫されます。出来るだけすぐに即戦力となれる情報共有の仕組み、ナレッジマネジメントの重要性が上がってきているといえるでしょう。

 

年代別転職回数

 

(画像引用元:転職回数が多いと不利?

ビジネス環境の変化スピードが速まっている

中小企業庁が公表しているデータと企業の生存率を見てもわかるように、起業してから10年後には約3割、20年後には約5割の企業が退出しており、生存競争が厳しくなっていることがわかります。


企業の生存率

 

(画像引用元:中小企業庁

 

テクノロジーの進化によって世界中のあらゆる情報がデータとなり、さまざまな業種がネットワークでつながるようになったことで、新たな付加価値が生まれています。特にここ10年程度の変化を見ると、スマホの普及によって急速に成長を遂げたサービスも多いことに気がつくでしょう。

 

例えばAmazonが小売業に与えた影響も変化の一つです。2017年に世界の29の国と地域で行われた「トータル・リテール・サーベイ2017」では、Amazonの登場により他の小売店での購買が減少したと答えた人の割合が日本は世界一の39%、調査国平均では28%との結果が出ました。


Amazonによる影響

 

(画像引用元:PwCトータル・リテール・サーベイ2017

 

ビジネス環境の変化は企業価値に大きく影響するため、生存競争に勝ち残るには変化に素早く対応する必要があります。外部環境の情報やノウハウをいち早く自社に取り入れ社員に普及させるには、ナレッジマネジメントの質を高めるべきなのです。

ナレッジマネジメントのメリット

では次に、ナレッジマネジメントを実施するメリットについてご紹介します。

営業活動における「勝ちパターン」を再現

ナレッジマネジメント実施で実現できるものの中で収益に結びつきやすいのが、「勝ちパターン」の再現です。営業活動で誰かが編み出した勝ちパターンをナレッジマネジメントの実施によって横展開すれば、営業部にいる全員が勝ちパターンを使って収益を上げやすくなります。

 

成果を上げた人材のナレッジを形式知化することで再現性を高め、組織全体の力に変えられるのも大きなメリットです。特に営業部のような売上に直結する部門でナレッジマネジメントを展開すれば、短期間で大幅に収益を上げることも可能です。

 

今後働く人口が減少していく中では、ナレッジマネジメントを実施して少ない人材で大きな成果を生む組織作りも重要になります。

短期間で高度な人材育成が可能

先にご紹介した営業活動における勝ちパターンのような形式知をさまざまな部署内で展開すれば、トップ人材の働きを全員がコピーでき、能力を向上していくことが可能です。

 

良質なナレッジの展開を繰り返せば、短期間で高度な人材育成が可能となります。これも大きなメリットになるでしょう。

 

また、「営業の勝ちパターン」を編み出した人材が離職すると売り上げは下がってしまうものですが、ナレッジマネジメントを実施すると全員が営業ノウハウを習得できるようになるため、人材の流動性にも左右されません。

組織内連携の強化

ナレッジマネジメントを実施すると、部署内・部署横断の連絡頻度が自然と高まり、組織内の連携も強化されやすくなります。例えば同じ組織にエンジニア組織とセールスの組織があると考えてみましょう。

 

通常だとあまり連携を取らない傾向にある2つの部署でも、ナレッジマネジメントを実施することで連携が取れた場合、エンジニアが開発している状況や人員体制を把握しているため、お客様先でもどのような納期で開発が可能かということを即答できるようになります。

 

変化が激しく事業のスピードを高めることが企業成長に重要な状況を踏まえると、このような連携が取れることによるメリットは大きいでしょう。組織が大きくなるとなかなか組織内の連携が取れなくなってきますので、ナレッジマネジメントを利用した組織連携を強化してみてはいかがでしょうか。

ナレッジマネジメントの導入

では、いよいよナレッジマネジメントを導入する際に知っておきたいポイントをみていきましょう。ナレッジマネジメントの種類をご紹介した後に、ナレッジマネジメントに使えるツールをご紹介します。具体的に導入を検討しやすくなりますので、自社にどのナレッジマネジメントが合うのか、考えてみてください。

まずはナレッジマネジメントの種類を知る

まずはナレッジマネジメントの種類を知るところから始めましょう。ナレッジマネジメントには下記4つの種類があります。

分析・戦略型ナレッジマネジメント

分析・戦略型ナレッジマネジメントは、その名の通り分析・戦略の策定に役立つナレッジマネジメントです。業務プロセスに重複・不要なものがないか、トラブルとなるものがないかを分析し、どう改善すればよりよい状態に導けるのかを考えることが可能になります。

 

また、成功事例を検証し、どの部分が成功の引き金となったのかという要素を洗い出すことで、より再現性を高める戦略策定ができるようになります。こういった分析をすることで、経営に役立つ戦略策定を行いやすくなり、より会社の事業を前に進めてくれるようになるのが分析・戦略型ナレッジマネジメントです。

業務改善型ナレッジマネジメント

顧客からの要望に対し、どのように応えるとリピートにつながるのかをデータベース化して誰でも見られる状態にすること、そして一定レベル以上の対応については、責任者に相談するルールを定めて顧客満足度を高める業務改善が行えます。

 

また、営業活動で取り逃がしがちな顧客ニーズの発生も傾向を捉えてニーズが発生する時期を解析することも可能。活用することでミスや無駄のない業務プロセスを構築できます。

社員教育型ナレッジマネジメント

トップセールス、トップのエンジニアといった優秀な社員の思考や行動を解析し、形式知にできます。情報量が膨大で解析が難しくなるため、事前にどのような部分を切り出して形式知化するか、どのような方法で形式知かするかを決めておくといいでしょう。

 

目覚ましい活躍をする社員の暗黙知を形式知化できれば、大きな戦力差が出てくるはずです。思考と行動をインストールできる状態を作れば短期間で戦力化しやすくもなるため、従業員の教育に革新的な変化をもたらしてくれるでしょう。

ヘルプデスク型(専門知型)ナレッジマネジメント

ユーザーサポートやヘルプデスクといった、よくある質問から深い知識まで対応する仕事の内容をデータベース化することで、新人でも対応できる状態を作ることができます。

 

また、専門知識を持った人材が少ない場合、その人材がいないと対応ができなくなる問題も生じます。専門知識を持った人材の負担を減らし、対応が難しい業務をシステマチックに進めることができるため、多くの問題を解決してくれるナレッジマネジメントといえるでしょう。

ツールを用意する

ナレッジマネジメントにはさまざまなツールが存在します。ナレッジマネジメント自体はすべてを手動で行おうとすると逆に手間がかかることや、検索性や操作性が悪く、導入しても利用してもらえないというリスクもあります。

 

せっかく時間を費やして行うわけですから、自社の課題に合ったツールを活用して、自社の成長を加速させてみてください。

1:QUMU 社員教育型ナレッジマネジメント

QUMU

ツール名QUMU(クム)

 

提供元:株式会社ブイキューブ

 

機能

企業内で使用される動画を簡単に作成・配信が可能なオンデマンド配信サービス。ビジネス利用にふさわしいセキュリティの高さを備えています。社内の認証サーバでユーザ認証もできるため、安全性も担保。ビデオ視聴の権限設定ができるので、開示する範囲を定めて配信することも可能です。

 

コメントやいいね機能も搭載しており、インタラクティブなコミュニケーションがとれます。動画編集が初めての方でも簡単に使える、直観的な動画作成ツールを完備。字幕挿入・トリミング・並べ替えも簡単に行えます。

 

また、通信環境を問わず、どんな状態でもビデオ視聴が可能です。さらにユーザーの視聴状況やデバイス・環境を解析できるため、次回以降の配信に役立てられます。

 

導入メリット

動画コンテンツを作成できるツールを内蔵しているため、外部に委託せず簡単・スピーディに動画作成が可能です。マルチデバイスに対応しているため、どんな環境でも視聴できるため、従業員に短期間で一斉視聴を促せるメリットがあります。また、ユーザーの視聴状況を確認し、従業員教育がどこまで進んだかを確認できるため、教育進捗を把握し対策を打てます。

2:freshdesk ヘルプデスク型(専門知型)ナレッジマネジメント

freshdesk

 

ツール名freshdesk

 

提供元: Freshworks Inc. 

 

機能

ソーシャルメディア・メール・ナレッジベース・モバイル機器向け機能・ゲーミフィケーションが1つにまとまったツール。1つにまとまっていることで抜け漏れや対応の遅れを防ぎます。また、送られてきたメールの管理を楽にしてくれるチケット変換という機能があり、優先付け・分類・適切な人物へ振り分けることが可能です。

 

こういった機能を持ったツールにありがちな重複対応も防いでくれるため、カスタマーを混乱させずに対応できます。チケット更新の通知機能・同じ問題のチケットをまとめる機能・返信の定型文機能・アクティビティログ機能・繰り返しタスクの自動化・業務量の自動管理・顧客フォローアップ自動化などの機能を備えています。

 

導入メリット

顧客サービス部門が導入した事例の中では、48時間で稼働開始できるほど簡単であることと、上記のような利便性の高いツールでヘルプデスクで起こる問題を未然に防げるのがメリットです。

 

また、管理者としてはとても重要な対応状況もレポートで簡単に確認することができます。問題点が明確になるよう分析のマトリクスも組まれているため、クリック1つで可視化できます。さらに忙しい日や時間に応じてシフト調整の計画を立ててくれるため、効果的・効率的な管理が可能です。

 

チームごとの顧客対応にかかる時間の差についても確認できるため、課題発見もしやすく問題が顕在化する前に対応できるのもうれしいポイントではないでしょうか。

3:Domo 分析・戦略型ナレッジマネジメント

Domo

 

ツール名Domo

 

提供元:Domo, Inc.

 

機能:

あらゆるデータを高速で取り込み保存。データ同士を結合させてユーザーインサイトを可視化します。そしてAIツールによって新たな活用法を予測し、Appソリューションで解決に導きます。

 

例えば医療業界では、つながっていないシステムやスプレッドシートのせいでデータがなかなか統合できずにいました。しかし、Domoを活用することでデータを有効活用でき、患者の待ち時間を減らすことができました。

 

誰とでもどこからでもデータを共有できる機能・高いセキュリティ・アクセス制限を付与する機能があり、安全に大量のデータを取り込み、必要なところだけがアクセスできるようにできます。取り込んだデータを分析することで、さまざまな業種の解決を行ってくれます。

 

導入メリット:

数字として追うべき総予約数や総解約率をリアルタイムで確認でき、適したグラフにして見やすくダッシュボードに可視化してくれます。必要なときにはいつでも簡単に報告書を作ることができるため、これまでにかかっていたデータの統合・計算・グラフの作成時間を大幅に短縮できます。

ナレッジマネジメントの導入時に注意するポイント

では最後に、ナレッジマネジメントの導入時に注意すべきポイントをご紹介します。

効果を数字で測りにくい

ナレッジマネジメントは収益性の高い営業部で使う場合以外は、効率化や戦略策定を楽にしてくれるという機能が大きいため、具体的に数字で効果を測りにくいという特徴があります。

 

しかし、事前にどういった改善を望んでナレッジマネジメントを導入するのかを決定しておけば、定点観測していくことで徐々にその効果が目に見えてくるはずです。クレームの低減・長時間労働の改善・時間あたり業務効率など、自社にあった指標を設けて見ていくと成果を感じやすいでしょう。

ナレッジを共有したくない人の存在

ナレッジマネジメントを推進していくときに一番の壁となるのが、ナレッジを共有したくないという人の存在です。他人よりも努力をして独自の手法を編み出したわけですから、簡単に渡したくないという気持ちがあるはずです。

 

この場合は企業成長につながるという目的や働く環境の改善というメリットがあることを伝え、目的を理解してもらうように取り組むことが重要です。また、その人に対して表彰を与える、周囲からの感謝で価値を感じてもらう、あるいは報奨金のような形で感謝を示す方法で納得をしてもらえるようにしましょう。

ナレッジの共有を効率化する

ナレッジマネジメントを実施する際は、ナレッジの共有に大きな手間がかからない形式にするのがおすすめです。手間が大きいと、つい情報入力を怠ったり簡易的なことしか共有されなくなります。

 

日々の忙しさの中で余計なタスクが増えるだけに感じられてしまうと、せっかくの取り組みもうまく進まなくなってしまいます。ツールを導入して簡単にナレッジ共有できるようにする工夫が必要です。

まとめ

ナレッジマネジメントは今後の日本企業において、非常に重要な取り組みだといえます。実施メリット・ツール、導入時の注意点をまとめてご紹介しましたので、ぜひ取り入れる際は参考にしてみてください。

 

また、ご紹介したツール以外にもナレッジマネジメントのツールとしてオンライン営業、動画配信、オンラインセミナーを活用するのもナレッジマネジメントをうまく進めるためには有効です。

 

自社の課題に合わせてどのツールが適切かを検討し、ナレッジマネジメントへの一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。