ライブコマースとは?注目が集まる理由やメリットを紹介

「ライブコマース」とは、ライブ動画を配信しながら、その中でさまざまな商品を紹介して販売する「ライブ配信」と「Eコマース」をかけ合わせた新たな販売形態です。

本記事ではライブコマースがいま注目される理由に加えて、メリット・デメリット、さらにライブコマースを始めるために必要なプラットフォームなどについて解説します。

ライブコマースとは

動画のライブ配信は近年広く浸透し、アーティストからSNSのインフルエンサー、一般のユーザーまで、さまざまな人が動画をライブで配信しています。

「ライブコマース」は、このライブ配信と商品の販売プラットフォームをかけ合わせた、小売業の新たな形態だと言えます。

従来のECのイメージは、インターネット上に設置された架空の店舗に商品が並んでおり、それぞれの商品についての説明は画像とテキスト、あるいは録画された動画によってなされることがほとんどでした。

ライブコマースは、オンラインショッピングの一種ではあるものの、販売者と視聴者(消費者)がライブ動画を通してリアルタイムにつながりながら売買を行うことができるという点で、従来のネットショッピングとは大きく異なるものだと言えます。

ライブコマースが注目される理由

ライブコマースのメリットは、以下の点にあります。

  • 臨場感のある購買体験を生み出せる
  • 感染症の拡大防止策として来店不要での販売・購買が可能
  • タレントやインフルエンサーを起用した販売が可能

臨場感のある購買体験を生み出せる

ライブコマースを用いれば、新鮮な鮮魚をさばいて切り身にする様子を漁港からライブ配信してそのまま販売する、ワインのソムリエがテイスティングする様子をライブ配信し気に入ったものを購入する、といった販売方法が可能になります。

録画された動画の配信ではなく、ライブ配信なので、チャットを通じて視聴者が質問を送り、その場で販売者が質問に答えることもできます。

販売者(配信者)からの一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションによって臨場感のある購買体験を生み出すことができるのが、ライブコマースの大きな魅力の一つと言えるでしょう。

従来のECとの違いは、ECシステムがライブ動画の配信プラットフォームに組み込まれていることです。

そのため、購入するために動画を中断したり、別のアプリを立ち上げたりすることなく、動画を視聴しながら購入手続きまで完了できるので、動画の視聴から購入までをシームレスにつなげられるのは大きなメリットです。

また、販売者や生産者がリアルタイムに購入した人のリアクションを知ることができ、その声を次の商品企画につなげられる点も、従来のECにはなかった要素だと言えます。

感染症の拡大防止策として来店不要での販売・購買が可能

従来、デパートやアパレル店、スーパーマーケットなどで販売者が対面で商品をPRしたり説明したりして、その場で消費者が購入するというのは、小売業であれば業種を問わずどこでも見られる当たり前の光景でした。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染リスクの観点から多くの消費者が対面でのやりとりを避ける傾向が強まっています。

その結果オンライン販売の需要は高まっていますが、商品についての情報は画像やテキストに限られるのが一般的です。ライブコマースは近年特に中国で非常に人気が高まっている販売形態ですが、こうした背景によって、日本でも導入するケースが増えています。

タレントやインフルエンサー、メーカーの開発者を起用した販売が可能

まだ世の中に広く認知されていない商品や新たに展開するサービスなどを販売する場合、広告・集客の方法は従来、印刷媒体やテレビCMがメインでした。

SNSでの広告・集客も定着していますが、届けたい消費者に適切に届けることは簡単ではありません。

一方で、タレントやSNSでのインフルエンサーのライブ配信には数万単位で視聴者が集まることもあり、ライブコマースはそうした人気のライブ配信とコラボし、訴求力を高められます。

すでに多くのファンやフォロワーを抱えているタレントやインフルエンサーにライブ配信を行ってもらうことで、旧来の媒体では獲得できなかった購買層にもPRすることが可能です。

ただし、ライブコマースに限ったことではありませんが、配信者が会社や商品のイメージに直結するため選定は慎重に行う必要があると言えます。

また、商品の開発者や専門家、商品に詳しいバイヤーなどを配信者に起用すれば、商品のコンセプトや商品に込められた思い、活用方法などの情報に説得力が生まれます。

例えば、化粧品の販売にメイクアップアーティストや開発担当者を起用するなど、顧客の納得感を得やすい販売者からメッセージを訴求することで、顧客ロイヤリティの向上につなげられます。

商品の詳細をリアルタイムで質問しながら購入が可能

ECで商品を購入する際のデメリットとして、商品を実際に手に取ることができず、サイズ感や質感などの詳細がわかりにくい点が挙げられます。

ライブコマースでは、購入者がリアルタイムで質問をすることによって、商品に関する情報を詳しく入手することができ、不安を解消した上で購入することが可能です。

例えばアパレルの場合「身長〇〇cmだと着丈はどんな感じ?」「回ってみて!」「質感は?」といった質問を購入者が投げかけることが可能です。

ライブコマースの中国の市場規模

日本では未だ認知度の低いライブコマースですが、中国では著しく市場が拡大しています。

 ライブコマースは中国では著しい成長を遂げている

中国における2020年6月末時点のライブコマースユーザー数は3.1億人にものぼります。これは中国の全インターネットユーザー数の3割強、ネット通販ユーザー数の4割強を占める数字です。

さらにKPMG、アリ研究院「1兆元市場に向かうライブコマース」によると、2021年の中国のライブコマース市場は前年比90%増の1兆9,950 億元(約33兆9,150億円、1元=約17円)に達することが見込まれており、市場規模が著しく拡大し続けていることがわかります。

中国の成功要因 

ライブコマースが中国でこれほどまでに大きな成功を収めた要因は、主に3つあります。

まず第1に、カリスマ的な人気を誇るライバーの貢献が大きく起因しています。

従来のネット通販と異なり、ライバー自身のもつ個性的な魅力や独自の演出など、エンターテイメント性の高い買い物体験がユーザーの心を掴み、人気を博しています。ライバーのなかには、2時間で3億元の売り上げを達成した脅威的な記録を持つ者も生まれています。

第2に、ネット販売のコストパフォーマンスの良さも要因です。

売り手側の観点から見ると、ネット販売は店舗での販売に比べ、店舗の契約費用や家賃、販売員の人件費といった固定費を削減できるため、コストを抑えられがメリットです。

購入者側にも参加者限定クーポンの配布や、ライバーがメーカーに価格交渉を行うことで特別価格で購入できたりと、メリットが豊富にあります。

第3に、コミュニケーションの双方向性により、購入者が安心感を得やすいことも大きく関係しています。

もともと中国のECサイトでは、偽物や不良品が多く出回っていたため、ユーザーからの信頼感が低いことが課題となっていました。

ライブコマースでは、信頼できるライバーが良いと感じたものを厳選して販売しており、リアルタイムでの質問も可能です。そのため、顧客が安心して商品を購入できる仕組みとして広く受け入れられました。

ライブコマースの国内での現状 

日本でもライブコマースは広がりつつありますが、メルカリ(メルカリチャンネル)や楽天(楽天LIVE)、PinQul、Laffy、BASEライブなど多くの企業がサービスを終了しています。

ライブコマースの認知・利用状況の調査によれば、全体のうち「全く知らない」が56.8%、「言葉は聞いたことがあるが、利用方法や内容はよく知らない」が14.8%を占めており、日本国内においてはライブコマース自体があまり浸透していない状況がわかります。

ライブコマースの日本での事例

日本ではまだ認知度の低いライブコマースですが、国内でも成功事例は生まれています。

例えば、三越伊勢丹ホールディングスではオンライン接客やライブコマースを実施。コメントのリアルタイム投稿機能を活用し、商品開発の背景やストーリー、思いを訴求し、過去最高EC売り上げを実現しました。

また、株式会社BEAMSもクリエイティブディレクターやブランドディレクターを起用したライブコマースを実施し、1時間で100万弱の売上に成功しています。

ライブコマースのデメリット

一方で、ライブコマースのデメリットとしては以下の点を挙げることができます。

  • 事前の告知による集客が不可欠
  • ライブ配信者のスキルがある程度必要
  • 配信内容によって企業イメージが損なわれる

録画された動画ではなくライブ配信であることを考慮すると、配信前に視聴者を確保しておくことは当然必要になります。

事前の告知なく突然に配信をはじめても、なかなか視聴者が集まらない(=購入につながらない)という点はライブコマースのデメリットの一つと言えます。

どれほど広くライブ配信を周知されることができるかが課題にはなりますが、周知の方法によっては、従来のリアル店舗などでは来店が難しかった、遠方にいる潜在顧客にも、物理的な距離を問わずつながることができるとも言えるでしょう。

また、対面販売も熟練したトーク術を持つ人と未経験者では大きな差があるように、ライブ配信もやはりある程度のスキルと知識が必要です。

視聴者からの質問をチャットで確認する、商品がより美しく見える位置を探す、聞き取りやすいようにゆっくりはっきりと話す、などといった点は些細なことに思えますが、商品に対する視聴者の理解度にも大きく影響します。

機器のトラブルや通信障害などに備えてリハーサルや事前の確認を行うことも大切です。

さらに配信内容によっては企業イメージが損なわれる場合もあるため、企業ブランディングの観点からライブの内容やセット、世界観を構築しておく必要があります。

例えば、ラグジュアリーブランドの先陣を切ってラブコマースに挑戦したルイ・ヴィトンの配信では、ライブコマースへの挑戦に対する好意的な意見も寄せられたものの、ラグジュアリーブランドの世界観とかけ離れた配信内容に戸惑うユーザーが続出しました。

ライブコマースを成功させるには 

ライブコマースを成功させるには、いくつかのポイントをおさえる必要があります。それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

集客を行う(告知)

ライブコマースを実施する上で最も重要なのが、集客です。せっかくライブ配信を実施しても、視聴者が集められなければ売上げにつながりません。事前にしっかりと告知をしてライブの視聴者を集めましょう

告知の際にはカウントダウンでライブ感を演出するなど、多くの人の関心をひきつけやすくする工夫を織り交ぜましょう。

ライブコマースに慣れている人を起用する

配信にはライブコマースに慣れている配信者を起用しましょう。

近年では、「コマーサー」と呼ばれるライブコマースに特化したライブ配信者も登場しています。または、商品の開発者やバイヤーなど、商品に詳しい人を配信者に起用する方法もあります。

質問を逃さず的確に回答する 

視聴者の質問を逃さず的確に回答することも重要なポイントです。

配信者が一方的に商品の説明を行うのではなく、コミュニケーションの双方向性を意識し、視聴者が質問しやすい雰囲気を演出しましょう。

また、視聴者のコメントのなかに次回の配信や商品開発のヒントになるアイデアが含まれていることもあるため、ユーザーの生の声を収集できる機会としても活用しましょう。

商品在庫の確認 

事前の商品在庫確認も確実に行いましょう。

ライブコマースの視聴者が商品をスムーズに購入できるかどうかも、顧客満足度を高めるために重要な要素です。

通信環境の整備 

通信環境の整備も、ライブ配信を成功させるために不可欠な要素です。

通信トラブルは視聴者のライブコマースに対する満足度に大きく影響を及ぼします。配信時間に間に合わない、配信が途中で止まるといった事態にならないよう、事前に安定した通信環境を確保しておきましょう。

ライブコマースを始める際に必要なプラットフォーム

ライブコマースを始めるには、すでにある既存のプラットフォームを利用することが、最も簡単な方法でしょう。

ライコマ

ライコマ

出典:株式会社The Unit

ライコマは株式会社The Unitが提供しているライブコマースシステムです。小売業だけではなく、音楽イベントや料理イベント、トークショーなど、幅広いイベントなどで利用できます。

また、同サービスには、ツールの提供から番組企画、配信、キャスティング、分析までパッケージされており、ワンストップで運用を委託することも可能です。

Yahoo!ショッピング LIVE

Yahoo!ショッピングLIVE

出典:Yahoo!ショッピング

大手ECサイトの一つ、Yahoo!ショッピングにもライブ配信機能があります。各ストアが配信している商品説明のライブ動画を、iOS版、Android版Yahoo!ショッピングアプリ、およびパソコン(ブラウザー版)で視聴できる無料サービスとして提供されています。また、Yahoo! JAPAN IDでログインしている場合、動画にコメントを投稿することも可能です。

2020年6月でのサービス終了が告知されていましたが、サービス終了は延期されており、2021年3月現在利用することができます。

SHOPROOM

SHOPROOM

出典:SHOPROOM

SHOPROOMは、SHOWROOM株式会社が提供しているライブコマースシステムで、同社の動画配信プラットフォーム「SHOWROOM」でのライブ配信中に商品を購入できる「ライブショッピング機能」の一つです。

人気のタレントやインフルエンサーのおすすめアイテムや応援グッズを購入することができ、お気に入りの演者に商品をプレゼントすることもできます。

専用アプリからのアクセスに限られており、iOSとAndroidに対応しています。

ライブTV 

ライブTV

出典:KDDI

ライブTVは、auコマース&ライフ株式会社が運営するauPAYマーケットのライブコマースサービスです。出演者と視聴者が双方向のリアルタイムコミュニケーションをしながら買い物ができます。

実演販売士や芸人、インフルエンサーといった様々な演者が出演するライブ配信だけでなく、実際に商品を出展している店舗がそれぞれにリアルタイムで視聴者とコミュニケーションをとりながら商品の紹介から販売までできる店舗向けライブ配信機能も搭載しています。

配信の視聴やコメント機能を利用するためにはau PAYマーケットアプリが必要です。

オリジナルのライブコマースアプリも

ライブコマースの導入には、上記のプラットフォームを活用するほかに、既存のアプリやサイトにライブコマースシステムを組み込んで自作するという方法もあります。

たとえば、「動画SDK」を利用するというのもその一つ。「SDK」とは、ソフトウェア開発キットのことで、アプリケーションを作成するために必要なプログラムやドキュメントがまとめられた開発者向けツールです。

例えば上述の「ライコマ」もSDK「Agora」で開発されたプラットフォームです。

参考:株式会社The Unit 様

本来、こうしたライブコマースアプリの開発には知識や経験、技術が求められますが、こうしたツールを活用してアプリを自作すれば、ジャンルに特化した機能を自由にカスタマイズでき、細かなニーズにもフィットさせることができます。

また、自社で開発したプラットフォームを利用すれば、顧客のデータベースを自由に管理できるため、ライブコマース以外のチャネルを活用して顧客との接点を持つことが可能な点も、オリジナルのライブコマースアプリを利用するメリットです。

まとめ

このようにライブコマースは、現在の社会情勢を背景に小売業の新たな形態として大きな注目を集めています。

対面での販売が難しくなる中、商品やサービスの魅力をどのようにして顧客に伝えるかは喫緊の課題であり、ライブコマースはその答えの一つとなりうるシステムです。

導入の手段はプラットフォームの活用もしくは自作の選択肢がありますが、どのような商品をどういった人たちに向けてPRするか、という点でアプローチの仕方も異なります。メリットとデメリットを踏まえた上で、ぜひ導入を検討してみてください。

ブイキューブ
著者情報ブイキューブ

ブイキューブは映像コミュニケーションの総合ソリューションプロバイダとして、世界中どこにいても働ける働き方・環境の実現を目指しています。創業時よりテレワークを活用し、2016年には総務省「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選出されました。

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