快適な職場環境とは?成果の出る改善アクションを知るための手引き

2018年に公布された働き方改革関連法の影響を受け、フレックスタイム制やテレワーク、短時間正社員制度や副業といった「多様な働き方」が多くの企業に導入されました。また、2020年に起きた新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる行動制限は、在宅勤務やWeb会議の浸透を後押ししています。

こうした状況を背景に企業の総務担当の方は、改めて職場環境について考える必要性に迫られているのではないでしょうか。しかし、感染症の流行をきっかけとした働き方の変化はあまりに急激だったため、何をどうすればいいのか悩むケースもあるかもしれません。

そこで今回は、そもそも職場環境とは何を指すのか、どのようなアイデアがあり、どんな成果が見込めるのかといった情報をまとめてお伝えします。具体的な成功事例についても紹介するので、職場環境の改善に向き合う方はぜひ参考にしてください。

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職場環境とは

はじめに、職場環境という言葉が何を指すのかを明らかにしておきましょう。職場環境とは、狭義では「温度・湿度・設備などの物理的な環境」、広義では「人間関係や労働条件などを含め、職場を構成するもの全般」を指します。

いくらオフィスの設備が整っていても、人間関係が悪かったり長時間労働が常態化したりしている企業は、職場環境が良いとはいえません。反対に、人間関係や労働条件が良好でも、「作業スペースが不十分」「温度管理が適切でない」といった状況では働きづらいでしょう。

このように、職場環境の整備・改善を進めるには狭義と広義の両方を意識することが大切です。

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職場環境の整備・改善が必要な理由

職場環境の整備・改善が求められる理由には、「法令で定められている」「企業にメリットがある」という大きく2つの側面があります。

以下で、職場環境の整備に関する法令と、職場環境の改善によって期待されるメリットを紹介します。

法令

労働基準法や労働安全衛生法といった労働関係諸法令は、働く人の権利を保護するために必ず守られなければならず、違反行為は罰則の対象となる可能性があります。

法令を守っていないことが分かると取引先や顧客からの信頼も落ちるため、どのような法令があるのか確認し必ず守るようにしましょう。

以下で、企業が守るべき職場環境に関する法令を紹介します。

職場環境への配慮義務

職場環境への配慮義務とは、下記、労働契約法第5条のいわゆる「安全配慮義務」の一部として位置づけられているものです。

【労働契約法第5条】

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

具体的には、長時間労働や過度な業務負荷によるストレスが発生しないようにする、各種ハラスメントを防止し、円滑な人間関係を形成する、オフィスの物理的条件を整えるなど、職場環境の3要素が全て含まれます。

快適な職場環境形成のための措置

先ほど解説した職場環境への配慮義務に関する条文は、抽象的でわかりにくいと感じる人もいるでしょう。そこで役立つのが、厚生労働大臣が労働安全衛生法を根拠に公表している「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」です。企業が実施すべき措置には、大きく分けて以下の4つがあります。

  • 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
  • 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
  • 作業に従事することによる労働者の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
  • その他の快適な職場環境を形成するため必要な措置

指針では、より細かい内容も定められているため、とくにオフィスの作業環境を改善する際は参考にするとよいでしょう。

生産性の向上

社員の感情は生産性に影響を与えるため、職場環境の改善によって社員のストレスが軽減され働きやすくなれば、生産性の向上が見込めます。実際に、職場のメンタルヘルスに対する費用対効果を以下のように数値化した調査もあります。

【施策の費用対効果】

  • 投資額の3.0倍:職場環境改善
  • 投資額の2.4倍:個人向けストレスマネジメント教育
  • 投資額の1.2倍:上司の教育研修

この調査では、社員の精神的な健康を考えたときに「職場環境改善」「個人向けストレスマネジメント教育」「上司の教育研修」のうち、費用対効果が最も高い手段は職場環境改善だと示されています。

具体的には、上司の教育研修にかかる投資額5290円(社員1人あたり)に対する効果は6600円と、約1.2倍ですが、職場環境改善では投資額7660円に対し、2万2800円と約3倍の効果を発揮する計算です。

このことから、職場環境の改善は個々の社員への教育や研修よりも大きな成果をもたらすことが分かるでしょう。生産性の向上は最終的に会社の利益へとつながるため、企業としての成長には職場環境の改善が重要といえます。

離職率の低下

離職者が後を絶たない企業では、社員の知識や経験を蓄積させたり、継承したりすることが難しくなるため、社内の人材育成やキャリア形成に支障をきたします。その点、職場環境の改善は企業と社員の双方にとって、不本意な離職を減らす効果があります。

事実、株式会社OKANによる人事・総務担当者を対象とした調査では、離職理由の第1位は「人間関係:30.7%」、第2位「キャリアチェンジ:20.2%」、第3位「職場環境:18.4%」という結果になりました。

人間関係も職場環境の一要素であるため、職場環境改善によって働きやすさを実現し、社員の帰属意識やモチベーションを向上させることができれば、離職率の低下につながるでしょう。

採用競争力の強化

職場環境の改善は、社内だけでなく社外に対しても良い効果を発揮します。その代表的な例が、採用競争力の強化です。

就職・転職活動の際にインターネットを活用する人は多く、Web上にある社員・元社員の口コミやSNSの書き込みから企業の風評をチェックする人もいるでしょう。株式会社エフェクチュアルの調査によれば、こうした風評が入社の決め手に影響すると回答した人は63.9%で6割を超えています。

また株式会社ビズヒッツの転職に関するアンケートでも、転職の決め手となった理由上位5つのなかに「社風・雰囲気にひかれた」が入りました。

つまり、職場環境の改善によって社員がポジティブな感情を持って働けるようになれば、風評や雰囲気に良い変化が起き、就職・転職希望者から選ばれやすくなる可能性があるといえるでしょう。

職場環境の改善アイデア

職場環境を改善するには、「作業環境の改善」「人間関係の改善」「働きやすさの改善」という大きく3つのアプローチ方法があります。

ここでは、上記3つの観点からどのような取り組みを進めるべきかを解説します。

作業環境の改善

作業環境を改善するには、「作業内容に適したスペースが用意できているか」に加えて、「適切に休息が取れるか」も重要なポイントです。ここでは、具体的な取り組み例として2点ご紹介します。

個室ブースの導入

オフィスの作業環境が問題となっている場合、個室ブースの導入がおすすめです。なぜなら、オフィスに過度な雑音があると、社員は集中して作業できないからです。

豪州ボンド大学の研究によれば、デスクに仕切りのないオープンオフィスの場合、周囲の会話やパソコンの操作音、スマートフォンの着信音といった雑音は、わずか8分間でストレスを25%増加させるそうです。そこで、社内に個室ブースがあれば、雑音を気にせず集中して業務に取り組めるため、生産性の向上が期待できるでしょう。

新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、非接触で対応可能なWeb会議を導入した企業も多くあります。個室ブースは、出社している社員が周りの音を気にしていたり、Web会議用のスペース自体が不足していたりするといった課題をクリアする手段の1つとなります。

例えばブイキューブの提供する「テレキューブ」は完全個室のボックス型の個室ブースで、高い防音性と快適な居住性が特徴です。サブスクリプションプランでも提供しているため、購入するよりも手軽に導入できます。複数用の製品であれば、工事なしで会議室不足の解消にも繋がります。

オフィス用の個室ブースはどう選ぶ?タイプ別の特徴や抑えておきたい消防法への対応などのポイントを紹介

オフィス用の個室ブースについては「オフィス用の個室ブースはどう選ぶ?タイプ別の特徴や抑えておきたい消防法への対応などのポイントを紹介」の記事で詳しく解説しています。

リフレッシュスペースの確保

仕事中の集中力を保つには、適度な休憩が必要です。休憩を取らずに長時間作業をしていると疲労が溜まり、作業効率の低下を招くおそれがあります。厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」でも、パソコンを使った作業は1時間につき10〜15分の休憩を取るよう推奨しています。

社員が定期的に休憩をとれるように、リフレッシュスペースを確保することをおすすめします。自席では気が休まらず、休憩中に周囲の人から仕事を依頼される可能性があるためです。リフレッシュ専用のスペースがあれば、オンオフを切り替えやすくなり、周囲に邪魔されず効果的に休むことが可能です。

人間関係の改善

人間関係の改善には、社内コミュニケーションの活性化が効果的です。ここでは、社内のコミュニケーションを円滑にするための2つの方法を紹介します。

社内イベントの実施

社内イベントを開催すると、新しいコミュニケーションが生まれます。上司や同僚の人となりをより深く知るきっかけになったり、業務上関わりのない人との会話が生まれたり、多くの効果が期待できます。

例えば社内表彰イベントを開催すれば、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。スポーツ大会やバーベキュー、社員の家族を招く職場見学会など、イベントの種類はさまざまです。「コミュニケーションを促進したい」「モチベーション向上につなげたい」など、目的に合わせたイベントを企画してみてください。

1on1の実施

1on1は、人材育成を目的として上司と部下が1対1で話す機会のことで、職場環境の改善に役立てるときに重要です。

例えば、ストレスチェックの結果分析では個人を特定することは認められていないため、あくまで集団としての傾向を把握することしかできません。しかし、1on1では業務内容の感じ方や人間関係といったテーマを設定することもできるため、社員の状況をより把握しやすくなります。

また、仕事への取り組み方を褒めたり、家族や趣味などプライベートについてお互いに話したりすれば、モチベーションアップや相互理解にもつながるでしょう。

働きやすさの改善

働きやすさの改善には、柔軟な働き方を実現するテレワークやハイブリッドワーク、ABWの導入が効果的です。それぞれの特徴は以下のとおりです。

働き方

特徴

テレワーク

・オフィス以外の場所で働くスタイル

・在宅勤務や出先で働くモバイル勤務、サテライトオフィス勤務などがあり、家庭の事情で出社できない人も働ける

ハイブリッドワーク

・出社とテレワークを組み合わせたスタイル

・業務内容によって柔軟な働き方が可能となる

ABW

・仕事や気分に合わせて働く場所を自由に選ぶスタイル

・オフィス以外に、自宅やシェアオフィス、カフェなどで働くことができる

柔軟な働き方が選べるようになれば、育児や介護など家庭の事情による離職防止が期待できます。外出先で仕事ができると営業社員が直行直帰しやすくなるなど、職種に合う働き方を選べるのもメリットです。

職場環境の改善アイデアについては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてチェックしてみてください。

ABWとはどんな働き方?自由度の高いワークスタイルがもたらす生産性への影響とは

ABWについては「ABWとはどんな働き方?自由度の高いワークスタイルがもたらす生産性への影響とは」の記事で詳しく解説しています。

職場環境の改善事例

職場環境を改善するアイデアは複数ありますが、どんなふうに導入して実際の効果がどうだったのかという情報も気になるところです。そこで最後に、職場環境の改善事例を3つ紹介します。

1on1で離職率の低下を実現|サイボウズ株式会社

ソフトウェアの開発・提供を行うサイボウズ株式会社は、28%という高い離職率の職場環境を、「働きがいのある会社ランキング」に入賞する(2020年2位)までに改善した企業です。

厚生労働省の雇用動向調査で2006年以降の離職率が平均15%前後になっている点から考えると、職場環境が大幅に改善している例といえるでしょう。

サイボウズが導入したのは、「ザツダン」と呼ばれる1on1です。ポイントは、社員の育成というよりは支援を目的として、自由なテーマで話していることです。業務に関連することだけではなくプライベートの話ができたり、上司以外の相手とも気軽に会話ができたりするため、社員からは「心理的な負担が軽くなった」「人間関係が円滑になった」という声があがっています。

※参考:サイボウズ流1on1ミーティング「ザツダン」とは?

ABW型オフィスで部署を超えた社内交流を活発化|ピー・シー・エー株式会社

ピー・シー・エー株式会社は会計ソフトなどを開発・販売する企業です。IT企業という特性上、新型コロナウイルス感染症の拡大によってテレワークが推奨された際、実に8割の社員が在宅勤務となりました。これがオフィスのあり方を考える機会となり、より働きやすい企業を目指してABW型を導入したそうです。

もともとABWは働く場所をオフィスに限らず、カフェや自宅なども活用するスタイルを指しますが、ピー・シー・エーの場合は、社内にカフェや商談スペースといった雰囲気の異なる空間を複数用意し、オフィス内でABWのように働けるようにしたところが特徴的です。

最初は社員の理解を得るのに苦労したそうですが、結果として他部署の人と隣で仕事をするような状況が生まれ、社内コミュニケーションが活発化した好例といえます。

※参考:在宅勤務率8 割の会社が踏み切った、自社ビルフロアの大規模リニューアル

ワークブースで快適な業務空間を確保|株式会社Works Human Intelligence

法人のHR関連業務をサポートするソフトウェアメーカー、株式会社Works Human Intelligenceは、ワークブースである「テレキューブ」を導入し、職場環境の改善を行った企業です。

その背景には、やはり新型コロナウイルス感染症の拡大によるWeb会議の増加がありました。それまでのオフィスでは、周囲の雑音や機密情報が漏れるのを回避する会議室の数が不十分で、業務に集中するのが難しくなっていました。

しかし、テレキューブは防音性のある個室を後づけできるタイプのワークブースなので、大規模なレイアウト変更や工事を必要とせず、すぐに設置できるのが導入の決め手となりました。これにより、安心してWeb会議に集中できる環境が整い、社員の働きやすさが向上しているそうです。

事例の詳細はこちら

まとめ

職場環境は温度や設備といった物理的な環境と、人間関係や労働条件といった職場を構成する要素全般の大きく2つの意味を持っています。一方が良好でも、もう一方に不満があると生産性の低下や離職率の向上につながるため、両方の改善が必要です。

まずは、現場の声から企業の状況を把握してみてはどうでしょうか。実際の改善アイデアや成功事例にはさまざまなものがあるので、自社に合った施策の参考情報を得ながら、計画・実施をすることをおすすめします。

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山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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