コロナ禍で変わったファンエンゲージメントのための施策とは?最新動向を踏まえて解説

新型コロナウイルス感染症は世界中の人の生活様式を急激に変えていきました。実際にスタジアムや競技場に足を運び、スポーツを楽しむことが主流だったスポーツ業界でも、オンライン配信の導入などが余儀なくされている状態です。

このようななか、ファンとチームのつながりを示すファンエンゲージメントを高めていくためには、オンラインでのアプローチが必要となってきています。

スポーツチームの営業企画担当の方などのなかには、外出を控える人が増えている状況で、試合の観戦者数やチームのファンを増やすための施策に悩んでいる人も多いのではないのでしょうか。そこでこの記事では、ファンエンゲージメントを高めるにはどうすればいいのか、最近のファンエンゲージメントの動向を踏まえて解説していきます。

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ファンエンゲージメントとは

ファンエンゲージメントとは

「ファンエンゲージメント」はファンとの深いつながり、強い関係性といった意味です。スポーツ団体がファンや観客を増やすために行うスポーツマーケティングにおいて、ファンエンゲージメントはチームとファンのつながりの度合いを表します。

ファンエンゲージメントが高まると、ファンはチームに対して愛着がある状態であるため、何度も試合観戦したり、たくさんのグッズを買いたいと思ったりするようになります。また、ファンに強く慕われていればチームの選手のモチベーションも向上し、よりよいチームを作り上げることにもなるでしょう。

このように、ファンエンゲージメントの向上はファンとチーム双方にとってよい状態になることにつながるため、ファンエンゲージメントのための施策は理想的なチーム経営のために必須といえます。

ファンエンゲージメントへの取り組みの潮流

ファンエンゲージメントへの取り組みの潮流

ファンエンゲージメントの取り組み方は、スマートフォンなどのIT機器の普及や新型コロナウイルス感染症の流行により、オフラインからオンラインへと大きな変化がみられています。

スマートフォンやタブレット端末の保有率は2010年ごろから急増しています。2010年後半にはスマートフォンは7割以上、タブレット端末は4割近くの人が保有しており、インターネットによる試合配信も観戦することも一般的になってきました。

新型コロナウイルス感染症が流行する前である2017年にはすでに、スポーツ観戦は今後インターネット配信が主流になるのではないか、と予測している記事もあります。試合のインターネット配信は、自分で自由にカメラを切り替えられたり、試合のハイライト映像を流せたりするため、今までの中継や現地での観戦とは違った楽しみ方ができ、注目を集めています。

また、2020年には新型コロナウイルス感染症が流行し、感染対策のため現地での観戦はできなくなりました。徐々に観戦人数の規制は緩和されてきていますが、タオルを振り回す、大声で応援する、といった禁止事項はいまだ残っているスタジアムもあります。

このような状況からか、新型コロナウイルス感染症の流行は、現地観戦をする人の数を大幅に減らしました。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社による調査によると、スタジアム観戦をした人の割合は 13.7%から8.3%、観戦者平均の観戦回数は4.2 回3.4 回に減少しています。

しかし、同調査によると「スポーツを見ることへの関心が増加した人の比率」は、9.6%から 13.8%に増加していることから、人々がスポーツ観戦への興味を失ったわけではないことが分かります。

  • インターネット配信によるスポーツ観戦に魅力を感じる人がいる
  • 新型コロナウイルス感染症の流行により現地でのスポーツ観戦がしにくくなっている
  • スポーツ観戦をしたい人は増えている

上記3点を考慮すると、オフラインでの施策だけではなく、インターネットを活用したファンへのアプローチを取り入れることが、ファンエンゲージメント向上のために有効だといえます。

インターネットやIT機器を利用したデジタルマーケティングは、ユーザーの行動をリアルタイムに把握できるほか、ユーザーの属性と行動を紐付けられるため、より精度の高い情報を収集可能です。この情報を自動で分析を行うMAツールなどで活用すると、試合の観戦状況やグッズの購入額に応じて一人ひとりに合ったアプローチもできるようになります。

今後はよりオンラインでマーケティングを行いつつ、現地での試合観戦やイベントなどオフラインの施策もかけあわせ、よりよい顧客体験を提供するようになっていくでしょう。

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【試合前】ファンエンゲージメント向上への取り組み事例

試合を盛り上げ、チケット購入者を増やすためには、試合前からファンエンゲージメント向上のための取り組みが必要です。ここでは、試合前に行うべきファンエンゲージメントの施策を紹介します。

試合のお知らせを行う

試合を観戦してもらうためには、まず試合がいつどこであるのか、試合内容などを知らせなければなりません。新聞や雑誌の広告、テレビCMだけではなく、SNSやメールなども駆使して試合の宣伝を行いましょう。オンラインで行う宣伝では、そのままチケット販売サイトに移行できるようリンクを添付すると、ユーザーがチケットを購入しやすくなります。

SNSで試合に向けてファンの気持ちを盛り上げる

チームや選手のSNSで試合についての投稿を日々行っていくと、ファンの気持ちは高まり、より試合が楽しみになります。例えば、「試合まであと○日」とカウントダウンする、練習内容を発信する、といったことです。

SNSではチームや選手が一方的に発信するだけではなく、ファンと双方向のやり取りができます。試合を楽しみにしているファンや応援してくれるファンに「いいね」をつける、応援のコメントに返信するなどのファンサービスも、ファンにとって喜ばしいものでしょう。

【試合当日】ファンエンゲージメント向上への取り組み事例

試合当日はよい試合をすることはもちろん、スタジアムや配信での楽しく観戦できるような取り組みが必要です。そのための取り組みを紹介します。

スタジアム環境の整備

読売巨人軍代表取締役社長である今村司氏によると、コロナ禍のスタジアム観戦は「熱狂声援型」から「快適体感型」へ変化しているそうです。手指消毒やソーシャルディスタンスなどの感染対策をきちんと行い、安心して快適な試合を楽しむことの重要性が高まっています。

そのための施策として、チケットをQRコードやバーコードで管理する方法があります。入場でQRコードやバーコードを読み込み、自動でゲートを開閉するようにすれば、人が1枚1枚チケットを確認することなく入場可能です。短時間でスムーズに入場できるようになり、行列ができにくくなります。

また、座席で食べ物を注文し、出来上がり次第取りに行くシステムを採用すると、飲食店利用時に並ばずに済みます。

そのほか、東京ドームでは、事前にアプリで顔認証情報やクレジットカード情報を登録することにより、当日の入場から物販購入まで顔を見せるだけにできるシステムも開発中です。

ライブ配信・中継の提供

以前から試合のライブ配信や中継はありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、さらに当たり前の存在となりました。

試合後もしばらく視聴できるようにすれば、距離だけではなく時間の制約もなく試合を楽しめます。配信での試合観戦に、実況や解説、OBのコメントを入れるなどすると、よりファンが楽しめるためおすすめです。

近年では、より高速度で遅延が少ない5G通信が利用できるようになり、現地でライブ映像を楽しみながら観戦する方法もできるようになっています。スタジアムでその場で試合を楽しみつつ、見えにくいところはスマートフォンでのライブ映像に切り替えると、今までより一層試合内容を理解しやすくなります。

分かりにくいところや見えにくいところは、スマートフォンでリプレイ画像を見て確かめるといった方法も可能で、そのスポーツをよく知らない人でも楽しめる機能です。ライトなファンをコアなファンにするための方法としても有効でしょう。

【試合後】ファンエンゲージメント向上への取り組み事例

試合が終わったあとでも、次の試合に観戦に来てもらえるようにすることが必要です。ファンエンゲージメント向上のためにすべき、試合後の取り組み事例を紹介します。

観戦者に対してお礼のメールを送付

オンラインでチケットを購入するなどして、観戦者のメールアドレスが分かっている場合は、試合後にお礼のメールを送付するとよいでしょう。人は感謝されるとポジティブな気持ちになるため、より試合やチームに関する印象がよくなります。

そのときに、次回の試合に関する案内も同時に行うと、また試合に行こうと思えリピート率向上が期待できます。

顧客データの整理・統合

よりファンを楽しませて、ファンエンゲージメントを高めるためには、毎回情報を分析して次の施策につなげることが大切です。

この試合では、どのような客層が多く来たのか、行った施策に満足しているのか、違う施策を行ったときと来客層はどのように変わったのか、といったことを分析しましょう。

そのときには、自動でマーケティングができるMAツールを用いることがおすすめです。MAツールはデータを客観的に分析するため、主観が入ることなく精度の高い結果を得られます。

まとめ

スポーツ団体が健全な運営をしていくためには、ファンエンゲージメントを高めていくことが大切です。ファンの気持ちに立って、ファンがチームに対して愛着を持っていくような施策を行い、チームの売上向上を目指しましょう。

しかし、新型コロナウイルス感染症の広がりから、今までよりもオンラインでの施策が重要となっています。オンライン配信やアプリを活用した会場の整備やチケット管理などを行い、より快適な試合観戦ができるような工夫が必要です。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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