テレワークで変わるオフィスのあり方!これからの働く場所や必要なツールを解説

働き方改革によって、多くの企業が導入しているテレワーク

テレワークの導入が進むことで、働き方や働く場所が見つめ直され、オフィスを解約したり、縮小化をする企業が出てきています。特に2020年以降は新型コロナウイルス感染症の拡大により、人との接触をできるだけ少なくするため、在宅勤務に切り替える企業が増えました。テレワークの導入も加速しています。

テレワークが一般的になりつつある一方で、オフィスを手放しつつある企業もあることから、これからのオフィスはどうあるべきなのだろうか?と疑問を持つ方も多いでしょう。
そこで今回は、テレワークによって今後オフィスは不要になるのか、これから先のオフィスの役割や働く場所のあり方について解説します。

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2020年以降のテレワークの普及

「2020年までにテレワーク導入企業を2012年度(11.5%)比の3倍にする」という政府目標が掲げられたのは2016年のこと。緩やかに上昇を続けていた普及率は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で急激に上昇し、2020年に目標値の34.5%を超える47.5%を達成し、2021年には51.9%へと上昇を続けています。2020年以降のテレワークの普及

出典:総務省|令和3年通信利用動向調査の結果

では、コロナ禍で具体的にどのようにテレワークが普及したのか、データをもとに確認してみましょう。

全国での普及率

総務省発表の「令和3年 情報通信白書」によると、2020年4月から5月にかけて全国に発出された1回目の緊急事態宣言下で、テレワーク実施率が急激に伸びたことがわかりました。
同年3月時点のテレワーク実施率は17.6%(大企業33.7%、中小企業14.1%)でしたが、4月下旬から5月上旬にかけて55.9%(大企業83.3%、中小企業50.9%)、さらに6月上旬には56.4%(大企業83.0%、中小企業51.2%)へと上昇しています。

宣言解除後はテレワークの実施率も下がりますが、2021年1~3月の2回目の緊急事態宣言で38.4%(大企業69.2%、中小企業33.0%)へと上昇。ちなみに、3月時点での緊急事態宣言対象区域は、埼玉・千葉・東京・神奈川の1都3県でした。

全国での普及率

出典:総務省|令和3年版 情報通信白書

 地域別の普及率

地域別のテレワーク普及率は、下図のとおり関東が際立って高い状況です(2021年11月調査)。首都圏では、テレワーカー割合の高い6職種の就業者割合が高めであることが理由といえるでしょう。ちなみに、テレワーカー割合の高い6職種とその割合は以下のとおりです。

  • 研究職:64.1%
  • 営業:51.6%
  • 管理職:51.1%
  • 専門・技術職(技術職):49.8%
  • 専門・技術職(その他の専門・技術職):40.9%
  • 事務職:32.4%

地域別の普及率

地域別の普及率2

出典:国土交通省|令和3年度 テレワーク人口実態調査

ハイブリッドワークとABWの普及率

ハイブリットワークとは出社と在宅勤務とを組み合わせた働き方で、出社場所はオフィス、サテライトオフィス、コワーキングスペースなどの施設、自宅などです。企業によって出社する日数などに規定を設け、従業員の一定数はオフィスにいるように調整するところもあります。

ABW(Activity Based Working:アクティビティ・ベースド・ワーキング)は在宅やカフェ、サテライトオフィスだけではなく、出社も選ぶことができる働き方です。どちらも出社とテレワークを掛け合わせた働き方であり、すべての従業員を完全にテレワークにすることは難しいけれど、感染症対策やオフィス縮小のためにはテレワークも導入したい、という企業に最適な方法です。

実際にテレワークを導入している企業のうち、出社なしの完全テレワークの割合はわずか6.4%、テレワークの日が週2日という回答が27%、次いで週3日が25%と、多くの企業が出社とテレワークを組み合わせた働き方をしていることが分かります

出典:株式会社清和ビジネスのハイブリットワークに関する調査

テレワークでオフィスのあり方がどのように変わったのか

テレワークの普及により、都市部のオフィスを縮小して賃料の安い郊外や地方へと移転・分散する企業が増えています。コロナ禍でオフィスのあり方がどのように変わったのか、データを交えながら見ていきましょう。

オフィスの解約・縮小

オフィスの解約・縮小オフィスの平均空室率と平均賃料(坪単価)を、テレワーク実施率が比較的高い東京・大阪・名古屋で比較してみましょう。2020年1月からの半年ごとの推移は以下のとおりです。いずれのエリアでも空室率は増加傾向ですが、賃料が下落しているのは東京のみ。大阪はほぼ横ばいで、名古屋のオフィス賃料はコロナ禍においても上昇傾向です。

  東京 大阪 名古屋
(平均) 空室率 賃料 空室率 賃料 空室率 賃料
2020年1月

1.53%

22448円

1.96%

11856円

1.91%

11717円

2020年7月

2.77%

23014円

2.71%

11988円

2.91%

11876円

2021年1月

4.82%

21846円

3.54%

11922円

3.78%

11903円

2021年7月

6.28%

21045円

4.15%

11871円

4.21%

11939円

2022年1月

6.26%

20508円

4.75%

11868円

5.60%

12071円

2022年7月

6.37%

20262円

5.03%

11869円

5.77%

12080円

出典:三鬼商事株式会社|オフィスマーケット

オフィスの分散

株式会社帝国データバンクの調査によると、2021年に本社を移転した企業は全国で2258社、うち首都圏から地方へと本社または本社機能を移転した企業は351社です。これは過去最多数であり、テレワークの普及で首都圏にオフィスを維持する必要性やメリットが薄くなったことが、急増の大きな要因とされています。

移転先のトップ5は以下のとおりで、コロナ前には移転ゼロだった石川県・岡山県・愛媛県へ転出した企業もありました。

1位:大阪府(46社)
2位:茨城県(37社)
3位:北海道(33社)
4位:静岡県(24社)
5位:愛知県(20社)

出典:株式会社帝国データバンク|首都圏・本社移転動向調査(2021 年)

サードプレイスオフィスの活用

なかなか終わりの見えないコロナ禍において、家でも職場でもない「第三の場所(サードプレイス)」を希望する声が高まっています。2022年2~3月にかけて株式会社ブイキューブが首都圏在住のビジネスパーソン500人に行った調査では、61.6%がサードプレイスが必要と回答しました。

その理由としては、「ひとりの時間がとれる」「やりたい・やるべきことに集中できる」「自宅に家族がいてやりたい・やるべきことがしづらい」「生活にメリハリがつく」などがあげられています。

仕事に利用したい場所として人気を集めたのは、「シェアオフィス/コワーキングスペース」「カフェ・喫茶店」「個室ブース」など。図書館やカラオケボックスなども候補にあげられましたが、テレワークに対応できる環境であることが優先されるようです。

ちなみに、サードプレイスに求める要素は以下のとおりで、「個室であること」「電話やWeb会議などができること」「高速ネットワークがあること」が重要視されています。

サードプレイスオフィス

出典:V-CUBE|第三の場所(サードプレイス)に関する実態調査

テレワークで見え始めたオフィス以外の選択肢4つ

テレワークを実施した結果オフィス以外にも、働く場所にはたくさんの選択肢が見え始めました。

仕事の生産性を向上させるためには、様々な働く場所をオフィスとうまく組み合わせて活用していく事も重要でしょう。

本章ではオフィス以外に、働く場所の選択肢になるような場所を紹介していきます。

  1. 自宅
  2. サテライトオフィス
  3. レンタルオフィス
  4. シェアオフィス

1. 自宅

テレワークによって自宅が主な仕事場になっている人は少なくありません。

自宅が仕事場になることで通勤をする必要が無くなり、育児や介護がある人は仕事の合間に育児や介護をしたり、逆にそれらの合間に仕事ができるため、より柔軟な働き方を実現できます。

育児中の社員にテレワークを導入するメリットやデメリットと成功事例

育児中の社員が多い企業に検討していただきたいテレワーク活用例については、別記事「育児中の社員にテレワークを導入するメリットやデメリットと成功事例」を合わせてご覧ください。

一方で、中には仕事とプライベートのオンオフの切り替えが難しく、集中できる環境を確保しづらいという人もいるのも事実です。

自宅で上手く働いていくためにも、いかにして自分の生活空間を快適な仕事スペースにしていくかといったことを考えることも必要になってくるでしょう。

2. サテライトオフィス

サテライトオフィスは企業の本拠地から離れた場所に設置される小規模なオフィスのことです。

英語の「satellite(衛星)」から来ており、本拠地であるオフィスを中心に衛星のように各地に設置されることから、サテライトオフィスと名付けられました。

サテライトオフィスは通勤にかかる時間を抑えながら、本社とは離れた場所にある会社のオフィスとして、ある程度の緊張感を持って働くことができます。

企業側がサテライトオフィスをかまえて働く環境を整えてくれるので、通勤時間を削減しながら集中して作業することができるため、テレワークで働く場所としては非常に最適です。

サテライトオフィスとは?成功した企業事例と3つのメリットを解説

そもそもサテライトオフィスとは?という方は、別記事サテライトオフィスとは?導入企業の成功事例と3つのメリットを解説」を合わせてご覧ください。

3. レンタルオフィス

レンタルオフィスとは業務に必要な機器が備えられた個室を、自分専用のスペースとして借りられる施設のことです。自分だけの作業スペースを比較的に安価に確保することができます。

事務所を借りるほど面倒な手続きを必要としないのが大きな特徴です。

4. シェアオフィス

シェアオフィスとは、通常のオフィスとは違い、複数の第三者と共有しながら使用するオフィスのことです。図書館やカフェの様なフリースペースになっており、簡易的なオフィスとして作業に使用することができます。

中にはレンタルオフィスと一体になり、自分だけの作業空間を確保できる施設もありますが、基本的にシェアオフィスには個別の占有スペースがあるわけではないため、訪れたときに空いているスペースで作業を行う形になります。ただし、そのぶん比較的安価に利用できるのが特徴です。

注意点として、個室ではなく共用のスペースで作業をすることになるため、周りの声が聞こえてしまうことや、情報漏洩には十分注意する必要があります。

テレワークにはセキュリティ対策が必須!とるべき7つの施策とツールを解説

安全なテレワーク運用のために欠かせないセキュリティの注意点とポイントについては、別記事「テレワークにはセキュリティ対策が必須!とるべき7つの施策とツールを解説」を、ぜひチェックしてみてください。

 

これからのテレワーク時代に求められるオフィスの役割

テレワークの導入によって働く場所や働き方が多様化していき、必ずしも「働くために」オフィスが必要とは断言できなくなりました。

そのため、オフィスには働くための場所としてだけではなく、新たなあり方や役割が求められるようになるでしょう。

そこで本章ではテレワークで必ずしもオフィスに出勤する必要の無いこれからの時代に、オフィスに求められる役割について解説していきます。

社員同士が交流し、コミュニケーションをとるための場所

テレワークを実施している企業が増えたことにより、働くこと自体はオフィスがなくても可能であることがわかってきました。

しかし、テレワークの導入によって社員同士のコミュニケーションが少なくなるとの課題も挙げられています。

そのため今後オフィスは働くための場所としてではなく、社員同士がコミュニケーションをとり、交流をしていく場所としての役割が大きくなることでしょう。

これからテレワークの導入が進むこれからの時代には、いかにしてコミュニケーションを積極的にとれる手段を確保していくのかが重要です。

ミッションやビジョン、バリュー(MVV)を浸透させる場所

会社で働く上で、ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)は全ての従業員が働く上で羅針盤の様な役割を果たす重要なものです。

会社全体がどのような未来を目指しているのかを社員が理解していることは、パフォーマンスの最大化には欠かすことはできません。

ビジョンやミッションは、直接の関わり合いが少なくなるテレワークで効果的に伝えることが困難になります。

これからのオフィスには、ビジョンやミッションを体現したオフィス作り、日常の関わり合いから従業員にビジョンやミッションを浸透させる場所であることも求められていくでしょう。

前提として、あくまで働く場所の選択肢の一つであること

今までは、仕事をする場所=オフィスというのが当たり前でした。

しかしテレワークによって、どこでも仕事ができることがわかり、必ずしもオフィスで仕事をする必要は無くなりました。

しかし、中には自宅には快適に仕事をする環境が整っておらず、オフィスで働くことを希望している方、オフィスが最も集中できる場所であるという方もいることでしょう。

テレワークの導入はこれからの働き方の多様性についてを考える大きなきっかけです。

従業員の生産性の向上を目指すのなら、一辺倒にテレワークを導入するのではなく、オフィスも働く場所の一つの選択肢として残しておき、柔軟な働き方の選択肢を提示していくことが大切です。

多様化する働き方の一つの選択肢となることがこれからのオフィスの役割とも言えるでしょう。

テレワークにおいてオフィスに求められる機能・設備

テレワークで働き方が多様化した現在、オフィスにはどのような機能・設備が求められるのでしょうか?今後のオフィス構築に参考にしてほしい3つのポイントを紹介します。

コミュニケーションが取れる場

先述のとおり、オフィスは従業員の交流やコミュニケーションの場としての役割も大きいでしょう。

チームで業務を進めるためには進捗報告や現状の課題、個人的に困っていることなどを相談することが必要です。しかし、固定席しかない場合は相談のために席を移動して話しかける必要があり、コミュニケーションのハードルが高くなります。

こういったときにカフェやオープンスペースのような気軽にコミュニケーションがとれる場所があれば、こまめにコミュニケーションがとれるようになります。こういった場はWeb会議にも最適でしょう。

これまでWeb会議を行う際には、会議室などを随時利用するパターンが多かったのではないでしょうか?しかし、コロナ以降、社内外を問わずWeb会議の機会が増えたため、従来の方法では会議室が不足する企業もあるのではないでしょうか。

オフィスを縮小した場合はなおさらでしょう。とはいえ、オープンな執務スペースでは音の問題が生じるため、Web会議ができません。

そこでおすすめなのがWeb会議専用の個室ブースです。カメラやマイクなどの機材が常にセットされた状態なら、スムーズにWeb会議ができて便利です。

業務に合わせた執務環境

従来の島型レイアウトは同じ島でのコミュニケーションが取りやすく、新人の研修期間などにも適しています。一方で、周囲の会話が耳にはいりやすく、集中したいときに気が散ってしまうというデメリットも。。そうなると、おのずと企業全体の生産性が上がることが期待できます。

まとめ|テレワークによってオフィスのあり方を問い直す必要がある

テレワークによって、働く場所の選択肢はオフィスに留まらず、社員それぞれの生活や業務に合わせて多様化されています。

確かにオフィスで働くことには様々なメリットがありますが、さまざまな働き方を尊重するためにも、オフィスのあり方を改めて問い直し、働き方の選択肢の一つとして捉えていくことが重要でしょう。

本書が、自社のオフィスのあり方を考える際にお役に立てましたら幸いです。

ブイキューブ
著者情報ブイキューブ

ブイキューブは映像コミュニケーションの総合ソリューションプロバイダとして、世界中どこにいても働ける働き方・環境の実現を目指しています。創業時よりテレワークを活用し、2016年には総務省「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選出されました。

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