「自席で働くのは命令です」――化石化した上司に反抗してみた

「自席で働くのは命令です」――化石化した上司に反抗してみた

ITmedia NEWS編集長とは馬が合わない。「同じフロアで仕事をしろ」とか「電話の近くで働け」とか、いつの時代の話をしているんだ。おまけに「チームのコミュニケーション」とか言って、雑談もしてくる。そんな上司と、ついに決別する日が……!

ITmedia NEWSの編集長は、若いくせに相変わらず頭が固い。「仕事は会社に来てするもんだ」「長時間デスクを離れるときは一言いうこと!」などと、意味不明な言葉を連発する。ついこの前なんて、「自席で働くのは命令です」と言ってきた。理由を聞いたら「電話がかかってくるから」「顔を合わせてコミュニケーションしないといいアイデアが生まれないから」だそうな。時間や場所にしばられない働き方ができる時代なのに、どうしてこんなに束縛するのか。携帯電話や、インターネットというものの存在から教えてあげたい

もうこんな上司いやだ――そんな筆者の頭によぎったのが、以前この上司をむりやりリモートワークさせる企画に協力してくれたブイキューブの佐藤さん。東京に帰ってきたら再び化石のような思考になってしまった上司の事情を話せば、佐藤さんなら分かってくれるはず。そう思い、東京・中目黒にあるブイキューブオフィスを訪れた――「助けてください……」(筆者)。

 

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迎えてくれたのはブイキューブの佐藤岳さん(マーケティング本部本部長)

すると佐藤さんは「しばらくの間、ここで仕事してみては?」と、電話ボックスのような形をした個室「TELECUBE」(テレキューブ)を用意してくれた。

TELECUBEとは、安心してテレワークをするためのコミュニケーションブース。中にはテーブルや椅子、電源(2口)、USB給電口(3口)があり、タッチパネルディスプレイが設置されている。内壁は黒くなっており、外からのぞくと宇宙空間のようで、ちょっとわくわくする。

 

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電話ボックスのような形をしたTELECUBE

 

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コート掛けもある

TELECUBEは防音・個室になっているため、社外にあまり知られたくないことも安心して話せるという。急な会議などにも活用できそうだ。

中に入ると、とても静かな空間。防音になっているが、外の音は多少聞こえる。その理由を聞けば、何かあったときに中の人が感知できるようにするためだという。

 

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空気孔が付いた天井。かなり強めのライトが前方上にある

photo内部の様子。広々としたテーブルと大きな画面がある

密閉された個室環境だが、「狭い」という感覚はない。むしろ安心して作業ができるスペースが自分の周りに「確保されている」という印象だ。ドアの部分はガラス貼りだが、見られたくないときや作業に集中したいときにはロールカーテンを降ろせば目隠しできる。もちろん換気機能もあり、息苦しい感じもない。

 

photoロールカーテンを降ろせば目隠しできる

 

photo中にUSB給電口が3つ付いていて便利

photo椅子

設置されたタッチパネルディスプレイでは、Web会議サービス「V-CUBE ミーティング」(ブイキューブ)や「Skype for Business」(日本マイクロソフト)などが使え、編集部と常時接続できる。つまり、会議のためにわざわざ会社に行く必要もないし、用事があるときは「ねえねえ」とここから呼び掛ければ社内にいる誰かが反応してくれるというわけだ。

 

photo「ねえねえ、ちょっときてー!」

実はこのTELECUBE、「自前のPCを使わずにテレビ会議ができる」というのが特徴。モニターの下にスピーカーとマイクが付いており、タッチパネルでV-CUBE ミーティングのIDパスを入れれば接続できる。初期設定も納品時に設定されており、情報システム部門などの専門部隊がなくてもすぐに使えるという。

一方社内では、iPadに映し出された私の顔をデスクに置き、作業していた様子。基本無言でおのおのの業務をこなしているが、必要なときには「今何の記事書いてますか?」「これからちょっと臨時で会議入れようと思います」といった言葉が飛んでくる。遠隔からのアクセスに最初は面白がって手を振ってくれたが、数分も経てばみんなそれが当たり前かのように私の顔が映ったiPadを放置。社内にいるとき同様、お互いに常に状況を見ることができ音声も聞こえるため、用事がないときは無言で仕事をしている。

 

photoITmedia NEWS編集部の様子。iPadで常時接続

カフェなどでもPCにアプリケーションを入れて同様のこともできなくはないが、公共の場だとIDやパスワードを盗み見られたり、会話内容を盗み聞きされたりといったセキュリティの不安も。しかし、TELECUBEならその心配がない。テレキューブの端末は映像データの送受信のみであり、端末にデータは残らない仕様。そのため、Skype for Business、V-CUBE ミーティング共に、利用が終われば端末にデータが残ることもない。

また、ネットワークや音声が途中で切れてしまうこともなく、常時接続できるといった強みもある。電気は人感センサーでオンオフされるため、消し忘れも防げる。

実際、社内の臨時会議にTELECUBEから参加したが、音や映像がくっきりしているのはもちろん、資料や画面の共有も簡単な操作で行えるため全く問題なく参加できた。会議では資料や細かい数字が書かれたExcelシートを見る機会も多いため、この機能はとても助かる。

 

photo会議の様子

 

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画面共有

そんなこんなで、他社のオフィス、しかも離れた場所にあるTELECUBEに1日引きこもって、仕事をしてみたが、臨時で入った会議にも問題なく参加でき、いつもと変わらない1日を過ごした。ただ……やっぱりずっと1人でいるのはちょっと寂しかったので、佐藤さんに御礼を言い、いつものオフィスに戻ることにした。

――ただいま!

オフィスに戻ると、いつもの上司と編集部のメンバーがいた。久しぶりのオフィスだったが「戻ってきた!」という感じでもなく、何事もなかったかのように日々の業務をこなしている。

遠隔業務をしていたときのことを同僚に聞いてみると、「いつもと変わらなかった」「社内のことでも安心して話せた」「背景が真っ暗のため余計な情報が入らず集中できた」とのことだ。その感想を聞いて、上司に「フフン」とした。

今回は他社のオフィスにお邪魔したが、TELECUBEはオフィスの他にもいろいろな場所に設置することが考えられている。図書館や美術館・博物館のほか、駅の構内や空港のロビー・ラウンジ、公園といった屋外の設置もできるようだ。このボックスが街中にたくさんあったら便利だろうなーと思う。そんな街ができたら、出張中に空港でテレビ会議に参加することも楽にできそうだ。取材後に急いで記事を掲載しなければならないときも、近くにあるTELECUBEに入って編集部とつなぎながら書く、なんてこともできる。

さまざまなもののIT化が進む中、なぜか満員電車に乗り、仕事をするために毎日同じ場所へ向かう私たち。そんな“当たり前”の光景が、“当たり前”でなくなる日も遠くなさそうだ。

転載元:ITmedia NEWS

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