インナーブランディングとは?今取り組むべき3つの理由と事例を紹介
ブランディングというと顧客や消費者に向けて自社の価値をアプローチし、他社にはない価値を生み出すことをイメージする人も多いでしょう。このブランディングを従業員向けにすることを「インナーブランディング」といいます。
インナーブランディングが日本で広まったのは2000年代からと言われています。それ以前は顧客にむけて企業イメージを築き上げることが企業にとっての資産となるとし、商品やサービス、広告等でブランディングを行ってきました。しかし、築き上げたブランドイメージを企業が実体化できなければ意味がありません。
そこで「企業のブランド力を従業員が理解し、主体性をもって企業のブランドをつくっていくためにインナーブランディングの必要性がある」と言われるようになりました。
SNSの浸透によりインターネットを通じて多くの人に言葉を伝えられる今、従来よりも企業に関する良いイメージも悪いイメージも広がりやすくなっています。従業員の行動一つ一つによって世間からの企業イメージがすぐに変化することも考えられ、インナーブランディングにより従業員の心持ちや行動を徹底する重要性も高まっています。
インナーブランディングの重要性を感じ、ひいては従業員エンゲージメントの向上にも繋げたいと考える企業も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、インナーブランディングについて詳しく解説します。実際にインナーブランディング向上に成功した事例も5つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、社内向けにブランディングをすることです。
企業の理念や価値を浸透させるブランディングは顧客や消費者などの外部に向けても行われますが、従業員に対して行うインナーブランディングも重要と言われています。
インナーブランディングと顧客向けのアウターブランディングの違いは以下のとおりです。
インナーブランディング |
アウターブランディング |
|
対象者 |
従業員 |
・顧客 ・消費者 |
内容 |
・企業理念を社内に浸透 ・従業員の積極性を上げる |
消費者に自社の魅力を伝える |
利用する媒体 |
・社内報 ・社内イベント等 |
・広告 ・SNS |
目的・効果 |
・自社のブランド力強化 ・社員のやる気向上 |
・直接的な収益を上げる ・売上が上がる |
このように、自社の価値を顧客や消費者に伝えることがアウターブランディング、社内向けに従業員に伝えることがインナーブランディングです。同じブランディングではありますが、対象者が変われば手段や目的も異なります。
インナーブランディングの目的・効果
インナーブランディングを行う目的や効果として、以下のものが期待できます。
- 従業員エンゲージメントの向上
- 従業員の定着率向上・採用力強化
- 社外におけるブランド力向上
それぞれどのようなことなのか詳しく解説します。
従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に対して愛着や信頼を持っている状態で、積極的に自社に貢献したいと考えることをいいます。従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員一人ひとりが主体的に行動するため、結果として業務の効率アップなどにつながります。
インナーブランディングで行うことは、企業理念や企業の魅力を従業員に伝えることです。自社がどのような理念で社会に貢献し、どこに魅力があるのか理解できれば、従業員はおのずと自社に対して魅力を感じるようになるでしょう。そのため、インナーブランディングは従業員エンゲージメント向上にも効果的です。
従業員の定着率の向上・採用力強化
インナーブランディングにより従業員が自社に対して魅力を感じるようになれば、退職する人も減り、従業員の定着率向上につながります。
総務省の令和3年労働力調査によると、新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2020年から2021年は減少傾向にありますが、転職者の数は2011年から2019年まで年々増え続けている状態です。
また、定年まで1つの企業で働き続けるという考え方は当たり前ではなくなっており、2020年のキャリタス就活の調査では「1つの会社で定年まで勤めたい」と「転職してキャリアアップしたい」という人の数はほぼ同数となりました。
転職理由として一番多いものは給与でしたが、会社の将来性、会社の考えが合わない、といった理由もかなり多く、魅力を感じ信頼できるような企業でないと離職を考える人が増えると考えられます。従業員が辞めたい、転職したいと考えることを防止するためには、自社の理念や価値を正しく伝達するインナーブランディングが重要と言えるでしょう。
また、従業員が企業に対して魅力を感じている状態では、転職先を探している友人、知人にも進めやすくなります。当初から企業理念や価値を理解した人材が集まるようになり、採用力強化にも繋がるでしょう。
社外におけるブランド力向上
インナーブランディングの強化は外部へのブランディングとなるアウターブランディングにも効果的です。
従業員が企業理念を理解し、企業に貢献しようと動いている状態であれば、おのずと自社のサービスや商品の質も向上します。魅力的な従業員がいれば、顧客や消費者にとっても企業に対して良い印象を持つようになり、社外のブランド力向上にも繋がるでしょう。
インナーブランディングの施策例
インナーブランディングを向上させると、さまざまな面で企業にプラスになることを説明しました。しかし、具体的に何をすればインナーブランディングになるのでしょうか。ここでは、インナーブランディング向上のために行う施策として代表的なものを紹介します。
社内イベント
社内イベントは経営陣や従業員が境なく集まる良い機会です。その場で企業理念に関する話や従業員に対する感謝の気持ちを自然な形で伝えられるため、従業員の企業に対する理解度が深まり、愛社精神育成につながります。
社内イベントには様々な方法がありますが、社内のコミュニケーションを促進させるためには、サークル活動、懇親会、従業員に感謝を伝えるためには表彰式、周年イベントなどがあります。
ただ、新型コロナウイルス感染症が流行する中、従業員全員が対面で集まることが難しいこともあるでしょう。こういったときは、Web会議システムなどを活用し、オンライン社内イベントを開催することもおすすめです。感染症対策として有効であるほか、移動の必要がなく社員の負担も軽くできます。
インナーブランディング動画の作成
消費者や求職者向けに企業の紹介動画を作成した経験がある企業は多いでしょう。このブランディング動画は社内向けに作ることも可能です。一般的にこのような動画をインナーブランディング動画と呼び、インナーブランディング向上のために利用されます。
動画形式であれば、文字情報だけではなく動画と音声も入るため情報量が多く、文章では伝えきれないような微妙なニュアンスも表現できます。企業理念や価値をより正しく伝えられるでしょう。経営陣からの言葉や創業からの歩みだけではなく、顧客や消費者から届く感謝の気持ちを映像で流すことも可能です。
このようなインナーブランディング動画を発信すると、従業員に対して自分たちの仕事がどのように社会に貢献しているのか、直感的に理解を促せます。動画であれば、該当URLを配布するだけで全社員に共有できますし、社内イベントの際に流して全員で視聴することも可能です。場合によっては求職者向けの動画としても利用できるでしょう。
動画作成自体に費用はかかりますが、冊子の印刷費などもかからないうえ活用場面も多くあり、コストパフォーマンスが高い方法といえます。
社内報
社内報に、経営陣からの感謝の気持ちや企業理念、顧客からの感謝の声について記載すると、インナーブランディング向上につながります。ただ、社内報を発行しているのにきちんと従業員が読んでいない、といった課題を抱えている企業もあります。
このような課題を解決するためには、従業員へ一方的に情報を伝えるのではなく、従業員からのメッセージやインタビュー、意見などを掲載するとよいでしょう。リアルタイムに従業員が意見を書き込めるように、社内報の電子化もおすすめです。
社内コミュニケーションツール、社内SNSの活用
インナーブランディング向上のためには、経営陣、従業員の垣根を越えたコミュニケーションも重要です。いくら経営陣が企業の理念や魅力を従業員に伝えても、それが一方的なものであると、従業員は逆に反感を覚えてしまう可能性もあります。
そこで、チャットツールやWeb会議システムなどの社内コミュニケーションツールを活用し、こまめに面談を行うなど、双方向にコミュニケーションを取っていったほうがよいでしょう。お互いに気楽に情報をやり取りするためには、社内SNSもおすすめです。社内SNSをきっかけに、立場や部署の垣根を越えたコミュニケーションの活性化にもつながります。
インナーブランディングの事例
インナーブランディングに成功した5つの企業の事例を紹介します。
社内向け動画の作成(日本航空株式会社)
日本航空株式会社では、インナーブランディングと教育の一環として社内向け動画を作成・配信しています。
日本航空株式会社は、広報誌の文章と画像だけではコーポレートメッセージが伝わりにくいうえに、実際に読んだかどうかも判断できないという課題がありました。そこで動画配信という形式にし、従業員により多くの情報を分かりやすく伝えることに成功しています。
動画で経営者が言葉を伝えることによりメッセージの訴求力が高まっており、インナーブランディングの向上に大きく役立ったそうです。
この動画作成で利用したものがQumuです。Qumuは高いセキュリティ性と安定した通信環境を揃えており、社外に流出してはいけない社内向け動画の配信に最適といえます。誰でも直感的に使えるインタフェースも備えており、専門知識がなくてもコンテンツ作成や編集が可能です。
※参考:株式会社ブイキューブ「日本航空株式会社 様(社内向け動画)」
オンライン社内表彰イベント(森永乳業株式会社)
創業100年を迎えた森永乳業株式会社は、新たに「社員が自立して行動する」というコーポレートスローガンや経営理念を策定しました。このスローガンを確立するために社内表彰イベントを企画しています。社内表彰イベントは当初会場を借りて対面で行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインでの開催となりました。
オンライン開催とすることにより、多くの社員が参加できるようになったほか、映像を流して盛り上げるなど、オンラインならではのイベント開催に成功しています。
※参考:株式会社ゼロイン 「森永乳業グループのオンライン社内表彰イベント『Morinaga Milk Awards』」
社内SNS(日本たばこ産業株式会社)
日本たばこ産業株式会社では、まだ社内においても認知度が低い新商品の認知度を広げるために、社内SNSを活用しています。社内SNSでは、投稿や書き込みが自由にできるようにしているため、新商品に関する意見を発信することや、業務における情報交換も可能です。
社内SNSで新商品のプロモーションを行うことにより、まず社員が自社商品の魅力を存分に理解できています。
それだけではなく、一般的なSNSと同様私的なことを書き込めるようにもなっているため、社内コミュニケーションの促進にも効果があるそうです。
社内報(株式会社マクロミル)
株式会社マクロミルでは、紙媒体での社内報を発行していたのですが、情報が即座に伝わらないという点に課題を感じていました。そこで、社内報をオンラインで配布することに変更し、より早く従業員に情報を伝えることに成功しています。
社内報では、社内ニュース、表彰式受賞者のインタビューなどを発信するほか、別部署や経営陣とのコミュニケーションの場としても活躍しています。従業員が社内のことを深く知る良いきっかけとなっており、インナーブランディング醸成にもつながっています。
※参考:株式会社日本パープル「社内報で社内コミュニケーションを活発に。成功の秘訣を株式会社マクロミルに聞いてきた」
大規模シャッフルランチ(トランスコスモス株式会社)
新型コロナウイルス感染症の影響により、出社からテレワーク中心となったトランスコスモス株式会社。従業員の健康を守るためには仕方のない措置でしたが、社内コミュニケーションは激減してしまいました。そこで、オンライン上でシャッフルランチをすることにより、部署間を越えた繋がり強化を目指しています。
普段コミュニケーションを取らない人同士で会話をすることにより、お互いの仕事について深く知るほか、新しいアイディアに繋がる、といった効果を表しています。
※参考:oVice株式会社「部署を超えたつながり作りに成功。100人規模のシャッフルランチを開催」
インナーブランディングの成功事例6選|実際の事例を詳しく解説します
インナーブランディングの事例については「インナーブランディングの成功事例6選|実際の事例を詳しく解説します」の記事で詳しく紹介しています。
まとめ
インナーブランディングとは、社内向けに企業の魅力や理念を伝えるブランディングのことです。インナーブランディングにより、従業員一人ひとりが自社の魅力をしっかりと知ることができれば、従業員の愛社精神が育ち従業員エンゲージメントが高まります。従業員が満足して働けるのであれば、おのずと商品やサービスの質も上がり、顧客満足度向上にもなるでしょう。
インナーブランディングを向上させるためには、社内向け動画の作成、社内SNSや広報、社内イベントなどさまざまな方法があります。自社のインナーブランディングにおける課題は何か洗い出し、自社にとって最適な方法でインナーブランディング向上を目指しましょう。