オンライン接客はECサイト売上向上の鍵!?メリット・デメリット、成功事例も紹介します

オンライン接客とはインターネットを介して接客するサービスです。コロナ禍により外出を控えることが多くなり、実店舗での買いものを控える人が増えました。こうした背景から、オンライン接客を導入する企業も出てきました。

オンライン接客があれば、顧客と直接対話できないECサイトでも、商品の詳細やおすすめポイントの説明ができたり、顧客からの質問にすぐに答えられたりできるようになります。今までとは違った方法で顧客にアプローチできるため、オンライン接客はECサイトの可能性を広げるものになるでしょう。

また、オンライン接客に興味のある人の割合は4割近くというアンケート調査もあり、ユーザーからの期待も高まっているサービスといえます。感染症に関係なく、今後もオンライン接客はECサイトの売上を左右するサービスになるでしょう。

そこでこの記事では、オンライン接客がECサイトにどのような影響を与えるのか、メリット・デメリットのほか、導入事例などを紹介します。自身のECサイトの売上を向上させたい人は、ぜひ参考にしてください。

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オンライン接客とは

オンライン接客とは

オンライン接客とは、インターネットを介して接客を行うことです。オンライン接客があれば、顧客は店頭に行かなくても接客を受けられます。

新型コロナウイルス感染症の影響により、人と人が接する機会は大幅に減りました。その代わりにZoomなどのWeb会議システムの普及が進み、インターネットを介してチャットや対話をするハードルは以前より大幅に下がっています。

実際に、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年3月から、実店舗に出向いて買い物をする人よりも、ECサイトなどでオンラインショッピングをする人が急増しています。しかし、オンラインショッピングは店員の顔が見えず、分からないことがあっても質問しにくい性質があるからか、実に63.8%もの人が不安を抱えているそうです

このような不安を解消させるものが、インターネットでも対面に近ちかい接客ができるオンライン接客です。オンライン接客はインターネットショッピングの利用が急増しているなか、ECサイトの売上をのばす鍵になるといえます。

オンライン接客の種類と方法

オンライン接客の方法として代表的なものは以下の4つです。

  • ビデオ通話
  • ライブコマース
  • チャット
  • チャットボット

ECサイトに導入する際は、これらを複数組み合わせることも可能です。それぞれどのような接客方法なのか、詳しく説明します。

ビデオ通話

Zoom」や「Google Meet」、「Microsoft Teams」などのビデオ電話ツールや、オンライン接客専用のツールを利用して接客を行う方法です。声だけでなく、お互いの顔やしぐさを見ながら1対1で会話できるため、ECサイトでも実店舗のような接客ができます。

商品の魅力や使い方を、相手の反応を見ながら伝えられるため、より顧客の購買意欲をかきたてられるでしょう。顧客も気軽に質問ができ、インターネットショッピングのときに抱きがちな不安感を減らせます。

ただ、ビデオ通話で顧客とやり取りするためには、安定した通信環境や雑音がない環境が必要です。画質や音質が悪い、音がうるさく声が聞こえにくいといったことがあると、顧客の印象は悪くなります。

また、顧客側でソフトウェアやアプリケーションのインストールが必要なツールだと、オンライン接客を受けるハードルが高くなり、利用されない可能性もあります。顧客が使いやすいツールやアプリの導入も必要でしょう。

ライブコマース

ライブコマースとは、ライブ配信で商品紹介を行い、チャット欄やコメント欄に寄せられた質問に対し、ライブ中に答えるようなオンライン接客方法です。

ライブコマースは中国でかなり浸透している販売手法で、市場規模は2021年には1万9950億元を越えています中国では若い女性を中心にライブコマース利用者は増えていて、食品、アパレル、化粧品などで人気を博しています。

しかし、日本ではまだライブコマースは一般的ではありません。マイボイスコム株式会社のインターネット調査によると、2021年8月時点でライブコマースを知っている人はわずか3.9%、聞いたことがある程度の人は15.9%でした。まだライブコマースの認知度は低く、中国ほど注目は集めていません。

しかし、日経トレンディの2021年ヒット商品ランキングの1位は「TikTok売れ」でした。動画配信サイトをきっかけとして、食品や化粧品、高級車といったさまざまな商品が売れるようになっています。日本でも動画配信で購買意欲をかきたてることは可能で、ライブコマースの将来性は期待できるでしょう。

ライブコマースとは?

ライブコマースについて詳しく知りたい方は「ライブコマースとは?注目が集まる理由やメリットを紹介」をご覧下さい。

チャット

チャットとはリアルタイムに文字で会話することです。顔は見えず、声は聞こえませんが、文字で顧客の質問や要望に対応できます。

文字でやり取りをするチャットは、電話やビデオツールよりも心理的ハードルが低く、顧客は気軽に利用できます。それでいて、リアルタイムに情報が更新されるため、メールよりもスピーディにやり取りが可能です。顧客が商品への興味を失う前に疑問点に答えられるため、商品購買につながりやすくなるでしょう。

チャットボット

チャットボットは人間ではなくAIが顧客とのチャットに対応する方法です。商品の在庫状況や配送に関する質問に答えるほか、インターネットショッピングに必要な住所やクレジットカード番号などの登録もサポートできます。

インターネットショッピングにおいて、商品を選んでショッピングカードに入れるも、決済までの情報登録が面倒で離脱するケースもみられます。しかし、チャットボットが対話形式で次に何を入力すべきかサポートしていけば、顧客は最後まで入力しやすくなるでしょう。実際に、チャットボットと対話しながら情報入力していく方式にすると、CVRは平均138%も向上したそうです

また、AIが自動で顧客と対話をするため、企業側も顧客対応にかかるコストや手間を削減できます。

オンライン接客の動向

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、Web会議やオンライン飲み会が当たり前になってきましたが、オンライン接客はいまだ一般的になっているとはいえません。

2022年3月のオンライン接客の利用実態調査では、オンライン接客を受けたことがある人の割合は17.2%でした。また、2020年2月以降のコロナ禍でもオンライン接客をまったく取り入れていない接客業の割合は67.9%と、導入はあまり進んでいません。

しかし、オンライン接客に興味がある人は41.0%と、オンライン接客を受けたことがある人の倍以上がオンライン接客を受けてみたいと考えている状態です。

そのほか、「オンライン接客は感染症のことを気にせず利用できる」、「商品のことをより詳しく知ることが出来る」、「気軽に利用できる」、「安心してネットショッピングができる」とポジティブな意見も多く出ています。

以上のことから考えると、ECサイトで競合他社から勝ち抜くためには、オンライン接客の活用も重要なポイントであるといえます。

オンライン接客のメリット

オンライン接客のメリット

オンライン接客は顧客側、企業側双方にメリットがあるものです。どのようなメリットがあるのかそれぞれの立場から説明します。

顧客のメリット

オンライン接客を利用すれば、実店舗に行く必要はありません。そのため、店舗が家のそばにないような人でも、接客を受けながら買いものができます。また、相手がAIであるチャットボットであれば、従業員がいない営業時間外でも問い合わせ可能です。時間や場所の制約を受けずに、接客を受けられます。

また、基本的にユーザーがECサイトで買いものをするときは、写真や文章でどのような商品か把握するしかありませんでした。しかし、ビデオ通話によるオンライン接客を受ければ、実際に人が手に取った様子を映像で把握できますし、気になるところは気軽に質問できます。

映像で実物を見られればより多くの情報を得られ、写真と同じような商品が来るのか、といった不安を軽減できるでしょう。

企業のメリット

先程説明したとおり、オンライン接客は顧客へより多くの情報を提供できます。インターネットショッピングに不安がある人でも安心して買い物できるようになるため、CVRや購入率向上が期待できるでしょう。

ECサイトでネックになりがちな会員登録やクレジットカード番号の入力も、チャットによる対話形式で入力していくと、何を記入すべきか分かりやすくなります。そのため、会員登録や必要事項記入途中での離脱を予防可能です。

また、顧客は商品の質やECサイトの使いやすさだけではなく、購買のときに感じる特別な経験である「カスタマーエクスペリエンス」を重要視する傾向にあります。ジェネシスクラウドサービス株式会社の調査によると、アジア太平洋地域では、消費者の92%が企業が自身に「共感してくれること」を重要視しているそうです。

どうしても一方的な情報提供になりがちなECサイトですが、オンライン接客を導入すれば顧客の声を聞き共感できます。結果として、顧客の購買時に感じる満足度を上げられ、自社に対して特別な想いを抱くファンとして顧客を育てられるようになるでしょう。

オンライン接客のデメリット

オンライン接客は、双方向でのコミュニケーションができなかったインターネットショッピングの存在を大きく変えるものです。しかし、画面越しでの会話や文字だけのコミュニケーションでは細かな表情やしぐさで相手の気持を読み取ることは難しく、どうしても関係性構築は難しくなります。

また、どのような形式のオンライン接客においても、企業側顧客側双方にITリテラシーが求められます。オンライン接客のためのツールを使いこなせないと、顧客を待たせてしまうなど、不快に感じさせてしまうかもしれません。顧客側も使用したことがないツールに対して身構えてしまうこともあり、オンライン接客の利用を控える人もいるでしょう。

通信環境によってオンライン接客の効果が薄れることもあります。企業側が通信環境を万全にしたとしても、顧客側の通信状況が悪いと、映像が荒く参考にできないことや、会話が途切れる可能性があります。

オンライン接客の導入事例

オンライン接客を導入しようか検討している場合、ほかの企業がどのように導入しているのか気になるのではないでしょうか。ここでは、オンライン接客の実際の導入事例について解説します。

ビデオ通話を活用して自宅にいながら物件の内見に

賃貸物件を仲介する株式会社LIFULL(ライフル)では、自宅にいながら映像で物件の内見ができるオンライン内見を実施しています。

内見は物件の場所まで足を運び、実際に部屋に入ることが通常です。しかし、遠方であったり、引っ越しまでの時間が短かったりすると、なかなか実際に内見することが難しい人もいるでしょう。しかしオンライン内見であれば、自宅にいながら物件の見た目や光の入り方、コンセントの位置などを手軽に確認できます。

実際に内見をするほどではないけれど、少し見てみたいといったニーズにも対応可能で、潜在顧客の獲得にもつながるでしょう。物件を探している人の8割がオンライン内見を求めているというアンケート結果もでており、顧客満足度向上につながるサービスといえます。

オンラインで百貨店のおもてなしを提供

三越伊勢丹では、LINEを利用した問い合わせ対応や、ビデオ通話でオンライン接客を行っています。LINEでの通話には対応していませんが、商品の詳細についての問い合わせや来店予約ができます。

ビデオ通話によるリモートショッピングは、スマートフォンのアプリを通じて実際の店員から商品説明を受けられるサービスです。アプリのインストールは必要ですが、気になる商品について店頭にいるときのような説明を受けられます。商品を気に入った場合は、そのまま決済して購入し、自宅へ配送、もしくは店頭で受け取りできるような仕組みです。

リモートショッピングはアプリをインストールして事前登録が必要であり、利用までのハードルは低くはありません。しかし、その分販売意欲が高い顧客を集められるため、結果として客単価は店頭の2倍となりました。また、店頭だけではリーチしにくかった、アプリの利用が当たり前となっている20代の利用も増えています。

また、三越伊勢丹がそばにないような首都圏以外の人の利用が約半数と、店頭ではリーチできなかった顧客獲得に成功しています。

※参考:三越伊勢丹がオンライン接客で販路獲得に成功した「緻密な仕掛け」と利用客数10倍の道筋とは?

チャットボット導入により企業の負担軽減を目指す

顧客からの問い合わせに対し、スピーディに解決することと、電話やメールでの問い合わせを削減するために、島村楽器株式会社ではチャットボットを導入しています。まずはAIが自動でチャットにより対応するため、夜間や休日でも顧客を待たせずにすぐに対応できるようになりました。結果として、メールによる問い合わせも2、3割低下し、従業員の手間の削減に成功しています。

※参考:ECサイトのメール問い合わせを30%削減し、夜間はチャットボットによるカスタマーサポートを実現!

オンラインで理想のスタイルを提供

日本のアパレルブランドである株式会社トゥモローランドでは、顧客が要望する商品を案内し、そのまま決済までできるオンライン接客を行っています。予約制で顧客が要望する商品を案内し、まるで店舗にいるような接客を受けられます。

株式会社トゥモローランドはSNSによる発信にも力を入れている点も特徴的です。SNSで気に入った商品がある人に対して、そのままオンライン決済ができるような流れを作っており、顧客の購買意欲が下がる前に購入できる動線作りに成功しています。

オンライン接客で成果を上げるためのポイント

オンライン接客は、インターネットを介して接客を行うため、実際に対面して行う接客とは顧客との距離感や、商品の見せ方、必要な機器は異なります。接客の方法についても、店舗での接客とは違った工夫が必要です。ここでは、オンライン接客で売上向上を目指すためのポイントについて解説します。

データを蓄積し活用できるツールを選ぶ

顧客がオンライン接客を利用する際に会員登録を必須とすれば、オンライン接客を利用した顧客の情報を手に入れられます。その人がクリックした商品情報などを蓄積しておけば、顧客それぞれに最適なおすすめ商品を紹介することも可能です。

また、利用者の属性データを収集すれば、オンライン接客の利用や商品購買に対して、性別や年齢に偏りがあるかどうかも把握できます。

このように、データを蓄積し分析していけば、オンライン接客は販売のためのツールとして利用するだけではなく、マーケティングとしても活用可能です。そこからどのような商品や販促の仕方が有効かを分析すれば、より顧客満足度の高いオンライン接客を提供できるようになります。

オンライン接客を行うスタッフへの教育を行う

オンライン接客を受けた人の感想のなかには、通信環境が悪くスムーズに会話ができない、画面が小さくよく分からない、動画が反転していて見にくい、質問しずらい、といったものもあります。画面越しであることを意識せず、対面の接客をそのまま行うと、逆に顧客に対してストレスを与えてしまうかもしれません。

オンラインで対話をするときは表情や言葉が伝わりにくいため、ゆっくりとはっきりと会話をし、時々相手に質問を促すなどの配慮を忘れないようにします。また、スマートフォンの小さい画面でも商品の状態が分かるように、商品を画面に近づけて細かい部分を見せるなど、見せ方の工夫も必要でしょう。

そのほかオンライン接客独特の配慮やマナーがあるため、スタッフにはオンライン接客の基礎から教育を行ったほうがよいでしょう。専門の講座や研修を行っている企業も利用するなど、万全な準備が必要です。

通信環境を整える

オンライン接客を導入しても、通信環境が悪くスムーズにチャットや対話ができないと、顧客にとってマイナス印象になります。途中で通信が途切れるようなことがないよう、万全な通信環境が必要です。ただ、通信環境を整えたつもりでも予期せぬアクシデントは起こることもあります。そのため、通信が切れてしまったときの対処法を事前に決めておいたほうがよいでしょう。

回線が落ちてしまったときは、顧客に速やかに何が起きているのか伝え、電話連絡に切り替えるなど、もしもの場合に備えるようにしてください。通信が途切れたまま顧客を放置してしまうと、悪印象を与えてしまいます。

オンライン接客を利用する動線を作る

サイトにオンライン接客のための機能を実装しても、顧客がどうやって使い始めればよいのか分からないようであれば意味がありません。顧客が疑問を感じたとき、店員によるサポートが必要なとき、すぐにオンライン接客を受けられるような工夫が必要です。

チャットやチャットボットを導入するならば、トップページや商品紹介ページ、決済ページのどこからでもチャットを開始できるように、全ページの目立つ部分にチャット開始ボタンを設置するなど、顧客目線に立った動線作りを心がけましょう。

オリジナルのオンライン接客システムを構築する

オンライン接客のためのシステムは、自社で独自開発することも可能です。近年では、知識や技術がそこまで深くなくても開発できるようなSDK(ソフトウェア開発キット)もあります。開発までには時間や手間はかかりますが、独自開発のハードルはそこまで高くはありません。自社の顧客に合わせたシステム開発をしてみてもよいでしょう。

ブイキューブでは、カウンセリングやボイスチャット、ライブコマースに最適なアプリケーション作成のためのSDK「Agora」の提供サービスを行っています。Agoraでは、1配信あたり最大100万人という大人数に対して、低遅延の配信が可能です。

さまざまな企業のAgora導入事例もありますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

オンライン接客は、顧客と離れた場所にいても接客するための手法です。オンライン接客を導入すれば、店舗で直接対面することなく顧客へ商品紹介や使い方の説明ができるようになるため、顧客は安心して買いものができます。結果として、ECサイトの売上やCVRの向上が期待できるでしょう。

オンライン接客の方法にもチャットやビデオ通話などさまざまな方法がありますが、SNSやライブコマースで集客をするとより効果的です。また、SDKを利用すれば手軽に自社独自のシステムを開発できるため、自社の課題を解決するオンライン接客システムを開発できます。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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