directed-by-vcube

 遠隔授業を実施するために教育のICT化に取り組む企業や教育機関が増加しています。

 

複数の教室で同じ授業を提供するという目的で導入するケースが多いですが、中には海外の姉妹校とつなげて国際交流に活用する例もあるようです。

 

教育現場においてはアクティブラーニングといった「双方向コミュニケーション」を行うシステムの導入も進んでおり、いかにICTを活用していくのかが教育業界における今後の課題となっています。

 遠隔授業とは

そもそも遠隔授業とは離れた拠点(キャンパス)同士をWeb会議システムでつなぎ同時に授業を行うことを意味します。

 

文部科学省の初等中等教育分科会によると、遠隔教育は「小規模校等における教育活動の充実や、外部人材の活用や幅広い科目の開設などにおいて、重要な意義」を持つとされています。

 

 またその方式は合同授業型、教師支援型、教科・科目充実型の3つに分類されるとしています。

 

遠隔授業類型

 

(画像引用元:遠隔教育の推進について

遠隔授業のメリット

遠隔授業のメリットとして挙げられるのは主に都市部から離れた遠隔地でも質の高い教育を受けることができるという点が挙げられます。

地方や海外にいてもレベルの高い授業を受けられる

通常、レベルの高い教育は知識や経験の豊富な教育者から受ける必要があります。しかし、都市部ならまだしも、地方や海外でこのような質の高い教育者を見つけることは困難です。

 

遠隔授業であれば、地方や海外に居ながらにして質の高い教育者から授業を受けることができます。同様に国内にいても海外名門校の授業を受講することも可能となります。

 

例えば 文部科学省委託事業の「高等学校における次世代の学習ニーズを踏まえた指導の充実事業」では、実際に国内外の大学等との遠隔授業が行われました。

 

2018年度の生徒アンケートでは、学習意欲が高まったかどうかについて「そう思う」「大体そう思う」と答えたのが63人中47人という結果になり、遠隔授業が学力向上に寄与していることが分かります。

 

遠隔授業_生徒アンケート

 

(画像引用元:遠隔教育システムを用いた国内外の大学等との連携による教育効果について

 

講師の移動コストを削減

遠隔授業により遠隔地で授業を行うための移動コストが削減できます。多拠点展開している学校ほどその効果は顕著であり、時間のロスも含めるとかなりの削減効果が期待できます。

 

教職員の数が限られている岐阜県郡上市の小中学校では、往復で2時間以上かかるような場所へ教職員が研修、会議に出向く機会が多くありました。しかし、遠隔授業を行うことによって移動に伴う費用や2時間のロスを減らすことが出来たのです。

 遠隔授業のデメリット

 一方、遠隔授業は通常授業とは異なる形態で行われるためデメリットもいくつか存在します。

目や耳が疲れやすい

 遠隔授業は目の前で講師が授業するわけでなく、スクリーン画面を通して授業を受けることになります。したがって、長時間の講義になると目や耳が疲れやすいというデメリットがあります。

 

実際に高知県教育委員会が平成30年にまとめたアンケート調査によると、生徒から「目が疲れるし、ディスプレイに書き込む文字が見にくい」という声が上がっているようです。

 通信環境、IT機器の影響を受けやすい

 遠隔授業の場合、複数の拠点同士リアルタイムで授業が行われます。そのため、通信回線が貧弱であったりIT機器が低スペックだったりすると音声遅延や寸断が発生し授業が中断してしまう可能性があります。

 

先程例に出した高知県教育委員会が平成30年にまとめたアンケート調査でも、遠隔授業の機器について、「画面がよく止まる」「機械のトラブルが多い」「音声のラグを解消してほしい」との意見が出たと記されています。スムーズな授業進行のためには、ある程度スペックの高いIT機器やWeb会議システムが必要となることがうかがえます。 

遠隔授業の事例10選

 では、実際にICTを活用した遠隔授業を行っている学校や企業の事例をいくつかご紹介します。

事例1 日本経済大学:一人当たり3〜4万円の移動コストを削減

事例1_日本経済大学

 

(画像引用元:日本経済大学

 

東京渋谷、神戸三宮、福岡と国内3か所にキャンパスを擁する「日本経済大学」。経済学、経営学に特化した単科大学として唯一無二の個性を持つ大学です。

 

同校では、離れた場所にある3キャンパスをつなぎ、ICTを活用した遠隔授業を行っています。これにより、東京で行うハイクオリティな授業を神戸や福岡でも同時に受講することができるようになりました。

 

同時に、教授会や入試判定会議もWeb会議システムを活用することで教授の移動コスト削減にも成功。年間で1人あたり3~4万円の移動コスト削減効果があったとのことです。

 

今後は入学前教育やアクティブラーニングにもICTを活用していく方針です。

事例2 近畿大学:教職員の移動時間とコストの削減を図る

事例2_近畿大学

 

(画像引用元:近畿大学

 

世界で初めてマグロの完全養殖に成功した「近畿大学」。「実学教育」と「人格の陶冶」を建学の精神とし、地に足のついた実践的な人材の輩出に定評があります。

 

同校は関西地区に4か所のキャンパスを擁する他、広島と福岡にもキャンパスを持ち、東京にも拠点を構えています。そのため教職員の移動コストが課題となっていました。

 

そこで、Web会議システムによる教職員の移動時間とコストの削減に着手。全拠点共通のWeb会議システム導入によりインターフェイスの共通化も図り、効率的な会議運営に取り組んでいます。

 

また、外部業者との打ち合わせにもWeb会議システムを利用するなど、活用の場は広がっています。

事例3 郡上市教育委員会:Web会議システムを使い遠隔授業を実施

事例3_郡上市教育委員会

 

(画像引用元:郡上市教育委員会

 

郡上市」は岐阜県のほぼ中央部にある人口4万人強の地方都市です。奥美濃の小京都としても知られており、風光明媚でのどかな景色が広がる自然豊かな街です。

 

郡上市には22校の小学校がありますが、うち3校が極小規模校(全校児童数が10名未満)であり、児童同士のコミュニケーションが不足しがちになるという問題がありました。

 

そこで、極小規模校同士をWeb会議システムでつなぎコミュニケーション不足を補うとともに、道徳の授業や総合学習の時間における意見交換を積極的に行うことで多様な見方や考え方に触れる機会を創り出すことに成功しました。

 

同時に、市域が広いため時間もコストも膨大であった教職員の会議にもWeb会議システムを導入しコストを削減。今後はプログラミング学習や他自治体の同級生との交流にWeb会議システムを活用していく予定です。

 

また、郡上市にはHUB GUJOというシェアオフィス&コワーキングスペースがあり、市全体として地方創生に積極的に取り組んでいます。

事例4 宮崎県五ヶ瀬中等教育学校:海外在住の講師とつなげ授業を実施

事例4_宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校

 

(画像引用元:宮崎県五ヶ瀬中等教育学校

 

平成6年に全国初の公立の中高一貫校として開校した「宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校」。文部科学省からはスーパーグローバルハイスクールに指定されている全寮制の学校です。

 

同校は「中山間地域からグローバル・リーダーを育成する課題研究及び発展的実践」をテーマに海外との連携を積極的に進めており、その手段としてWeb会議システムを導入しました。

 

具体的には、バングラディッシュ在住の講師による授業を実施したり、フィールドワークの訪問先と継続的に交流したりという用途に活用しています。

事例5 株式会社イーオン:受講者の利便性を考えた遠隔授業システムを採用

事例5_株式会社イーオン

 

(画像引用元:株式会社イーオン

 

株式会社イーオン」は全国各地に約250校の英会話スクールを展開している企業です。日常英会話からビジネス英語、資格取得など受講生のニーズに合わせた幅広いコースラインナップが特徴です。

 

同社は早くからインターネットを用いた遠隔授業に力を入れてきましたが、受講生側のITリテラシーが課題となっていました。先端のシステムを導入しても受講生側が操作できずにかえって手間がかかっていたのです。

 

そこで、受講生側はインストールなど特別な操作が不要のWeb会議システムを導入し遠隔授業に活用することでその課題を克服しました。

事例6 町の学舎あこ:小規模自治体でも優秀な外国語指導員が確保できる

町の学舎あこ

 

 (画像引用元:町の学舎あこ

 

高知県土佐町にあり、地域の未来を担う人材育成事業を手掛ける「町の学舎あこ」。子どもから高齢者までが集まるコワーキングスペース兼コスタディスペースとして地域NPOにより運営されています。

 

同施設は老若男女問わず新しい学びを体験する場として活用されており、遠隔教育向けテレビ会議システムを用いたさまざまな遠隔授業や地域間交流が行われています。

 

例えば英語学習においては外国語指導員の確保が困難な地域であるため、遠隔教育向けテレビ会議システムを利用して指導員を確保し授業を補う活動を行っています。また大人を対象としたオンライン英会話サービスにもこのシステムが活用されています。

事例7 大分県立三重総合高等学校:本校と分校で変わらないクオリティの授業を実施

事例7_大分県立三重総合高等学校

 

(画像引用元:大分県立三重総合高等学校

 

大分県立三重総合高等学校」は大分県豊後大野市にある全日制の高校です。2006年に県内の4校を統合して設立された新設校であり、本校キャンパス以外に竹田市久住町に久住キャンパスがあります。

 

久住キャンパスは山間部にあるため、本校キャンパスと同レベルの授業を実施するのが困難な状況でした。そこで、専門的で質の高い授業を実施し生徒同士が協働で学ぶ習慣を身につけるためWeb会議システムを導入。農業大学校の専門講師による授業を本校と分校同時に受講できるようにしました。

事例8 徳之島町教育委員会:全国へと広がる複式双方向型指導モデル

徳之島町教育委員会

 

(画像引用元:徳之島町

 

徳之島町」は奄美群島のほぼ中央部に位置する人口1万人強の町です。町内には小学校が8校ありますが、どの学校も小規模校であるため複式学級制度(3・4年生学級や5・6年生学級)を採用しています。

 

同町は複式双方向型指導モデルの確立に取り組んでおり、遠隔合同授業やプログラミング教育にICTを活用した実証事業を行いました。

 

この方法は徳之島型モデルとして全国的に広がりつつあります。

事例9 一般社団法人KJK:全国どこでも同一レベルの研修を実施

事例9_ 一般社団法人KJK

 

(画像引用元:一般社団法人KJK

 

介護福祉士実務者研修を実施している「一般社団法人KJK」(旧:一般社団法人介護福祉士実務者研修センター)。人口高齢化に伴う介護ニーズ需要の高まりを受け、介護福祉士実務者研修の受講者も増加中です。

 

実務者研修の受講は介護福祉士国家試験の受験資格として義務付けられており、すべての受験者がこの実務者研修を受講しなければなりません。とはいえ、受講生は全国に散らばっており、すべての地区で均一なクオリティの集合研修を行うのは困難でした。そこで同法人はオンライン授業システムを活用した映像配信システムを導入しています。

 

これにより、クオリティの高い教材を受講生に対しタイムリーに提供できるようになり、どこにいても変わらないレベルの知識を身につけることが出来るようになりました。

事例10 国立大学法人北海道教育大学:他大学や高校も巻き込んだ遠隔授業を実施

事例10_北海道教育大学

 

(画像引用元:北海道教育大学

 

次世代の教育者を養成するという理念を掲げている「北海道教育大学」。本部を札幌に置き、旭川、函館、釧路、岩見沢に分校を設けています。

 

キャンパス間は最大580km離れているため、複数キャンパスで同時に受講できる遠隔授業はもちろんのこと、教職員の打ち合わせに利用できるICTの導入は不可欠でした。

 

そこで同校は遠隔授業を行うためのビデオ会議システムやモバイル端末用のビデオ会議ソフトウェアなど多様なコミュニケーション環境を導入。学内だけでなく附属学校との間で行われるアクティブラーニングにも活用することで効率的なコミュニケーションを実現しました。

 

現在ではさらにその取り組みを前進させ、道内の国立大学同士の教養教育科目受講も視野に入れています。

  まとめ

少子化や東京一極集中が課題となっている現在、遠隔授業の実施は今後の教育業界にとって率先して取り組むべきテーマといえます。そのためには、高レベルの遠隔授業を実現するためのICTの活用が必要不可欠。

 

通信回線や端末と同様に、目的に見合う使い勝手の良いWeb会議システムの選定にも配慮が必要であるといえるでしょう。