大学のオンライン授業の実態は?実施状況・満足度・今後の対策を解説

コロナ禍において導入が進んだオンライン授業。小・中・高で対面授業再開された中で、いまだに大学ではオンライン授業が多く行われています。

オンライン授業のメリットを感じている学生はいる一方で学費を無駄に感じてしまう学生がいることも確かです。今後どのように大学での授業を進めていこうか、今一度考える必要があります。

そこで本記事では、大学のオンライン授業の実施状況や、メリット・デメリット、学生の満足度などを解説します。今後の大学のオンライン授業の進め方を考えるヒントになれば幸いです。

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大学で実施されているオンライン授業

大学でオンライン授業の導入が進む中、どのような種類のオンライン授業が実施されているのか、事例や実施割合などを見てみましょう。

オンライン授業の種類

大学のオンライン授業の種類は、大きくわけて3種類あります。

  • LIVE配信型
  • オンデマンド配信型
  • ハイブリッド型

LIVE配信型では、リアルタイムに教授と学生がコミュニケーションを取ることができます。オンデマンド配信型では、あらかじめ録画された授業を学生が見る形式のため、時間や場所に縛られずに受講できます。これらの形式を組み合わせたのがハイブリッド型です。

オンライン授業のメリットを種類別に解説!活用法、注意点もご紹介

それぞれの配信方法のメリット・デメリットについては「オンライン授業のメリットを種類別に解説!活用法、注意点もご紹介」で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

オンライン授業の事例

オンライン授業の事例をご紹介します。

近畿大学

 

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近畿大学では、Web会議システム「Zoom ミーティング」を利用してオンライン授業を行っています。

授業以外にも、在宅勤務の教員と学内で働く職員とのやり取りや、就職活動支援における相談会や面接指導などでもZoomを利用しています。

参考:https://jp.vcube.com/zoom/case/kinki_university.html

日本経済大学

日本経済大学出典:日本経済大学

日本経済大学では、福岡、東京、神戸の3キャンパスのほか、運営母体となる都築学園グループに属する大学、専門学校、高校などの姉妹校が多数あります。教育の充実のための遠隔授業を開催しています。

具体的には、東京キャンパスで教授が講義を行い、福岡・神戸キャンパスの学生は遠隔で受講します。これにより、効率的に同内容の講義ができるようになり、どのキャンパスでも高いレベルの講義を均一に受講できるようになっています。

参考:https://jp.vcube.com/case/11401.html

大学でのオンライン授業の実施割合

大学でオンライン授業がどの程度実施されているのか、割合を見てみましょう。

内閣府が実施した調査結果(第1回調査:2020年5月実施、第2回調査:2020年12月実施)によると、大学生・大学院生のうち、「通常通りの授業をオンライン授業で受講した」と回答したのが、2020年5月は74.7%、2020年12月は54.0%、「一部の授業をオンラインで受講した」と回答したのが、2020年5月は20.7%、2020年12月は33.7%でした。いずれも比較的高い水準になっています。

オンライン授業の実施割合

出典:内閣府(2020)

新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

第1回調査は、2020年5月25日~6月5日に実施(回収数10,128)。第2回調査は、2020年12月11日~12月17日に実施(回収数10,128。うち継続サンプル5,212)。いずれもインターネット調査(国内居住のインターネットパネル登録モニター)。

大学のオンライン授業のメリット

では、大学のオンライン授業のメリットを、学生側と学校側で整理してご紹介します。

メリット

オンライン授業のメリットは学生側と学校側の双方にあります。オンラインで実施することにより、時間やコストを節約できるだけでなく、安定的に高クオリティの授業を提供・受講できるようになります。

学生側

大学のオンライン授業を受ける学生側にとっては、以下のようなメリットがあります。

  1. 通学やキャンパス間の移動による時間のロスがない
  2. 好きな時間に好きな場所で受講できる
  3. 自分のペースで授業を進めることができ、わからないところは繰り返し視聴できる
  4. 人気教員の授業や他キャンパスの授業を受けられる

学校側

学校側としては、オンライン授業にすることで、以下のようなメリットがあります。

  1. 最低限の教員で、多くの学生に教えられる
  2. 大学までの移動時間やコストを削減できる
  3. 好きな時間に授業を収録できる
  4. 離島や過疎地の学校教育に貢献できる
  5. 予期せぬ災害時にも、授業を継続して行えるようになる

その他にも、就職活動の相談や、論文執筆の相談などをWeb会議ツールを活用して実施することで、気軽に個別相談を実施できるようになります。移動時間もかからないため、学生も教授も負担がかかりすぎることなく行えます。

また、同じ内容を複数回行っている教授の場合、オンデマンド授業を取り入れることで、授業を行う時間を短縮でき、研究に専念できます。どの時間帯の授業でも同じ内容・クオリティの授業を生徒に届けることができ、生徒にとってもプラスになります。

さらに人気の授業だと出席するための予約をとり順番待ちをすることもありますが、オンラインだと参加人数の上限がない限りは不要です。

学生の満足度

実際にオンライン授業を受けたことがある学生のアンケート結果を見てみましょう。

内閣府が実施した調査結果によると、大学生・大学院生で、「全てオンライン」もしくは「一部オンライン」を希望している学生の割合が70%を超えており、オンライン授業への意欲は一定あることが分かります。

学生の満足度調査

出典:内閣府(2020)

新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

また、文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」によると、オンライン授業に対して「満足している」「ある程度満足している」と回答した人は56.9%と半数を超えています。

「あまり満足していない」「満足していない」と回答した割合は20.6%です。授業内容の理解のしにくさや、人との関わりの少なさに不満を感じている学生がいるため、今後オンライン授業の質の向上が求められます。

オンライン授業満足度

出典:文部科学省

新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査

オンライン授業のデメリット

オンライン授業に満足している学生も多い中、オンライン授業に不安や不満を抱えている学生もいます。

オンライン授業のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  1. 教授が学生の反応を見ながら講義することが難しい
  2. 授業用の資料作成や動画撮影に時間がかかる
  3. 実習・実技を伴う授業の実施ができない
  4. 公平な評価やテストの実施方法が確立されていない
  5. インターネット環境によって受講できない
  6. オンデマンド配信の場合、教授と学生が対話できない

これらのデメリットの多くは、オンライン授業に適したITツールを活用し、インターネット環境を整えることで解決できます。今後VR・ARの活用が進めば、仮想実習・実技も可能になるでしょう。

しかし、上記のようなデメリットが解消されたとしても、不安が残ります。コロナ禍は通学すら難しく、図書館などのような大学施設の利用が認められていないこともありました。

その結果、オンライン授業で満足のいく授業を行っていたとしても、一部の学生が「大学が契約義務を果たしていない」と、授業料の返還などを求める訴訟を起こした事例も生まれています。

今後は、大学施設をできるだけ開放したり、課題の提出方法や成績の付け方を変更したり、学生へのアンケートを実施したりして、双方が納得できるオンライン授業を作っていく必要があります。

オンライン授業自体のデメリットではありませんが、サークル活動やイベント活動の中止なども相次ぎ、学生同士の交流やつながりが減っていることも課題です。規定を定め、クリアしたサークル・部活動は活動を認めるなど、人との関わりを増やせるようにすることもポイントになるでしょう。

参考:https://www.asahi.com/articles/ASP8T5S3CP8TUTIL01F.html

大学のオンライン授業の今後

大学のオンライン授業は今後どのようになっていくのでしょうか。

まず、オンライン授業の導入にともない、ルール改正が必要です。教授向けと学生向けに、授業の実施・受講ガイドを作成し、一定のルールを定めます。情報倫理や著作権など、オンライン授業だからこそ発生するような問題にも対応を進めていきましょう。

コロナが落ち着き、対面授業が戻りつつあります。しかし、オンライン授業にも多くのメリットがあるため、すべてが対面授業に戻るわけではないと考えられています。

そのため、オンライン授業の質を高め、受講ルールなどを整え、学生側も学校側も納得して実施できるような体制を作りながら、授業の対面・オンラインのハイブリッド化を進めていくことが求められます。

まとめ|大学のオンライン授業の質向上、ルールづくりが重要

今回は大学のオンライン授業の種類、メリット・デメリット、今後の動きについて解説しました。

オンライン授業には多くのメリットがあり、けっして満足度が低いわけではありません。ただし、オンライン授業だけでは授業内容が理解しづらかったり、テストの受験体制に不公平が生じたりと、課題もあります。

そのためオンライン授業の質を高めていくための工夫が必要です。さらには、オンラインでも人の繋がりを感じられるような設計ができると、より充実した授業ができるようになるでしょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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