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働き方改革の一環としてテレワークを導入する企業が増加しています。時間や場所にとらわれず生産性の高い働き方を実現できるテレワークですが、一方で管理の煩雑さをはじめとしたデメリットも多くあるといわれています。


テレワークの導入を検討するにあたり、これらのデメリットによる経営への悪影響はできるだけ避けておきたいところ。そこで今回はテレワーク導入におけるデメリットをクローズアップし、対となるメリットも含めながら導入すべきか否かの判断材料となるようなポイントを解説いたします。

そもそもテレワークとは

まずテレワークとは何なのかについて簡単にご説明します。一般社団法人日本テレワーク協会によると、テレワークとは以下のように定義されています。

 

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

 

テレワークは働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つ分けられます。

 

(引用元:一般社団法人日本テレワーク協会

 

要するに、ICTを活用して在宅勤務やサテライトオフィスなどの本来の仕事場以外の場所で就業すること、およびその就業形態を指しているのです。テレワークを利用して働く人をテレワーカーと呼ぶこともあります。うまく導入すれば経営者側・社員側双方に大きなメリットをもたらします。ただし、導入から定着までかなりの時間を要することや現場の意識改革を行う必要があることなどから、効果を発揮するまで時間がかかると言われています。

テレワークの現状・普及率

では、テレワークが現在どの程度普及しているのかを見てみましょう。総務省が令和元年5月30日に発表した通信利用動向調査によると、企業におけるテレワークの導入状況は19.1%と、約5社に1社がすでに何かしらの形でテレワークを導入しています。それに加えて7.2%が導入予定ありと回答しており、この数値は年々増加しています。中でも情報通信業や金融・保険業は全体の4割近くの企業が導入済みとなっており、これらの業界における関心の高さがうかがえます。

 

テレワークの導入状況

 

(画像参照元:総務省「平成30年通信利用動向調査ポイント」)

 

これだけ多くの企業へ導入が進んでいるテレワークですが、すべての企業がその効果を実感しているかといえば決してそうではありません。

 

独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成28年3月31日に発表した「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」によると、ICTの活用に伴う従業員の総実労働時間数の変化についての質問に対し「変わらない」とする回答が72.3%を占めています。必ずしもテレワークの導入が働き方改革につながっているわけではないようです。

テレワークのデメリット

テレワークの導入が生産性向上にうまくつながらない要因として、テレワークの持ついくつかのデメリットが挙げられます。ひとつずつ具体的に見ていきましょう。

経営者目線でのデメリット

テレワークを導入する経営者側の視点で考えた時、主に社員の労務管理面でのデメリットが際立っています。

1.時間管理が曖昧になる可能性がある

通常の勤務形態であれば、オフィスに出社してタイムカードを刻印するといった具合に出退勤をわかりやすく管理することが可能です。また、オフィスにいること=仕事をしているとみなすことが出来るため、1日の労働時間を明確に管理できます。

 

テレワークの場合、出退勤はもとより勤務時間中の行動を管理することが困難です。時間内の行動を逐一監視しているわけにもいきません。その意味において企業側の時間管理があいまいになってしまう可能性があるのです。

2.社員の勤務態度を把握しづらい

極端な話、テレワークの場合は仮に勤務時間中に居眠りをしていても管理者にはわからないケースもあります。前述の通りテレワーカーの行動を逐一管理していないため、納期に遅れるなどの明確な生産性低下が認められる場合を除いて勤務態度にまで介入することが難しいといえます。

3.コミュニケーションが取りづらい

テレワーカーは多くの社員が勤務するオフィスと離れて仕事をしているという環境上、密なコミュニケーションがとりづらいというデメリットもあります。コミュニケーション不足が原因で生産性が低下する事態に陥ることもあります。

4.IT端末での管理が必要

テレワークを実現するためには、新たに端末を購入したりシステムを構築したりなどのICTへの投資が必要です。テレワーカーにIT端末を貸与し業務管理をするなどの手間とコストが新たに発生することになります。

従業員目線でのデメリット

テレワーク導入は従業員側にもデメリットがあります。どのデメリットも生産性に直結する問題だけに丁寧に対策しなければなりません。

1.自分で時間管理をしなければならない

勤怠管理ツールや業務管理(プロジェクト管理)ツールといったICTの支援があるとはいえ、業務時間は自分自身で管理しなければなりません。与えられた業務を時間内に終わらせるというセルフマネジメント力が無ければ務まらないでしょう。

2.正当な評価をされない可能性

いまだにテレワーク=楽をしているというイメージがあります。通勤時間などが削減される分楽であることは間違いないのですが、上司の目の前で必死に頑張る姿を見せられない分、残念ながら正当な評価をされない可能性もあります。

3.コミュニケーション不足で孤立する可能性

オフィスに常駐しているケースと比べて、明らかに上司や同僚との会話が減ります。ICTを用いて自ら積極的にコミュニケーションをとる努力をしない限り、仕事仲間とのコミュニケーション不足に陥ることは想像に難くないでしょう。

4.長時間労働になる可能性

特に在宅勤務の場合に多いのですが、恵まれた条件で勤務しているという上司や同僚への負い目が「何が何でも成果を出さねば」という気負いにつながり結果的に長時間労働になってしまうことがあります。仕事のアウトプットでアピールしようとする気持ちが休みを忘れて働くという行為につながるのです。

テレワークのメリット

とはいえ、テレワークがこれだけ普及している背景には、デメリットばかりでなくそれを上回る大きなメリットがあるからに他なりません。テレワークを導入するメリットとして以下のような内容が挙げられています。

経営者目線でのメリット

経営者側から見て最も大きいのはコスト削減効果です。テレワークが本格的に稼働すると通常時及び非常時のコストが大きく削減されます。

1.交通費・出張費などの経費削減

テレワーカーは通勤交通費が不要となります。また、環境さえ整えば全国どこでも業務を行うことが可能です。これにより交通費や出張費などの従業員の移動コストが削減できます。

 

他にもオフィススペースの削減や時間外手当の削減など、さまざまなコスト削減効果が見込めます。

厚生労働省が委託し運営しているテレワーク相談センターによると、テレワークによるオフィスコスト削減の事例として年間約1,500万円のオフィスコスト及び年間約3,000万円の時間外手当コストを削減した企業もあるとのです。

2.企業イメージの向上

テレワーク導入による働き方改革を進める企業は、いわゆるホワイト企業と見られることが多くあります。一般財団法人 日本次世代企業普及機構が主催する2018年 第3回 ホワイト企業アワードではテレワーク部門が設立されるなど、各社積極的に働き方改革への取り組みをアピールしており、テレワークの導入がイメージ向上に一役買っていることがうかがえます。ワークライフバランスが重視される採用時のブランディングとしてもテレワークは有効な手段と言えるでしょう。

3.災害時のリスクを分散

万が一大規模災害が発生して本社や支社が壊滅的な被害を受けた場合でも、被害のない地域で働くテレワーカーにより経営への影響を最小限にとどめることが出来ます。システムの負荷分散と同様に、人的リソースの負荷分散を行えるということです。また総務省では、新型インフルエンザなど感染症への対応策としても有効だと判断されています。

4.離職率の低下

時間や場所にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークは、従業員にとってワークライフバランスを実現するために欠かせない制度です。ワークライフバランスを実現すると従業員は会社に対する不満が減少し、「長くこの会社で働きたい」と考えるようになります。

 

実際に総務省主催の平成29年度テレワーク先駆者百選に選ばれた「株式会社ガイアックス」では、2015年度に38%あった離職率がテレワークを導入した翌年2016年度には8%にまで下がりました。

従業員目線でのメリット

従業員の目線で考えた時に最も大きなメリットは通勤も含めた労働時間の削減です。労働時間の削減により趣味や家庭に目を向ける時間が増え、幸福度が上がります。

仕事におけるメリット

総務省統計局による通勤時間の状況調査によると、首都圏の通勤時間はおおむね1日80分を超えています。


通勤時間の調査

 

(画像参照元:総務省統計局

 

テレワーカーは通勤時間がなくなるため、この時間を他のことに回すことができるのです。また、テレワークは邪魔が入らない環境で業務に集中しやすいため、効率も上がります。営業職の場合直行直帰型の活動により顧客訪問回数を増やせるというメリットもあります。

家庭にもたらすメリット

働き方改革の目的の一つにワークライフバランスの実現が挙げられます。つまり、テレワークの導入は家庭(=ライフ)にも好影響があるということです。

 

在宅勤務により、育児や家事あるいは介護といった家庭内でのさまざまな行動をしながら業務に就くことができます。また、通勤時間が減ることで家族との時間が増えたり、趣味に費やす時間が増えたりします。

個人が得られるメリット

仕事をする上で、時間と場所にとらわれないというのは従業員にとって大きなメリットです。テレワークの制度次第では好きな場所で好きな時間に仕事ができます。例えば南のリゾートアイランドのコンドミニアムに滞在して仕事をするということも可能になってくるのです。

テレワークは導入すべきか

テレワークによるメリットデメリットを一通り見てみましたが、どれもなるほどなと思わせる内容ではないかと思います。このような場合、メリットデメリット双方を見比べた上で0か100かの決断をするという判断になりがちです。しかしテレワークはある程度限定的な運用を行うことでメリットを最大限に生かしデメリットを最小限にとどめるという方法があります。

効果が高い部門・人に限定的に導入する

テレワークを導入するにあたり、全社一斉に適用するのではなく部門や人を限定して適用するというのが多くの企業で実践されている導入方法です。

 

例えば育休(産休)対象の社員に限定する、あるいは人事や総務などの管理部門に限定するといった具合に、比較的テレワークに馴染みやすい部門や人から順次制度を適用していくとよいでしょう。

ICTツールを効果的に使う

テレワークを効果的に運用するためにはICTの活用は必須です。メッセンジャー(チャット)やWeb会議システムのようなコミュニケーションツールの他、プレゼンス管理ツール、スケジュール管理ツールなどを組み合わせて運用することが大切です。

 

あわせて、仮想デスクトップ環境やクラウドアプリ、セキュアなPCの貸与など、ハード面の整備も並行して行うべきといえます。

テレワークの成功事例

最後に、テレワークの導入により働き方改革に成功した企業の事例を1つご紹介します。在宅勤務制度導入とテレワークを組み合わせて運用し、労使が協調しつつ働く環境改善に向けて取り組んだという事例です。

横河電機株式会社:在宅勤務制度を導入しワークライフバランスを充実

横河電機株式会社

 

(画像参照元:横河電機株式会社

 

2016年4月に在宅勤務制度を導入した「横河電機株式会社」。入社4年目未満の社員と製造ラインに従事する社員以外を対象としています。同社は中期経営計画「Transformation 2017」の中でテレワークの活用による働き方改革の実現、中でも多様なワークスタイル構築に注力すると明言しており、労使委員会による議論や専用のイントラネットを構築し制度を推進しています。

 

在宅勤務の際支障となる社内との情報共有については、リモートアプリケーションや仮想デスクトップ(Virtual Desktop Initiative)を導入することでシームレスかつ高セキュリティな業務環境を実現。

 

またコミュニケーションツールとして Web 会議システムの導入を図り、社内にいるのと変わらない環境で業務を行えるようにしました。Web会議システムには着席中か否かというアイコンが画面に表示されるようになっており、着席中の場合はチャットなどを利用していつでもコミュニケーションが取れるという仕組みも採用しています。

 

結果として、現在では全社員の約10%にあたる300人前後が在宅勤務制度を利用し柔軟な働き方の恩恵を受けています。

まとめ

テレワークの導入にはいくつかのデメリットがあります。しかし、適切な導入と運用を心がければデメリットを最小化し大きなメリットを享受することも可能です。これからテレワークを導入しようと考えている企業であれば、まずは限定的・段階的な導入を心がけ、ICTを効果的に活用しつつ社内に定着させることを目指してみましょう。