最適なオフィスレイアウトとは?レイアウトを検討するときのポイントを解説

オフィスのレイアウトを改善すると、生産性の向上やコスト削減など、多くのメリットがあります。例えば、仕事に集中できる個室空間を用意したり、チームで会話がしやすいようデスクの配置を見直したりすると、業務効率がアップして生産性の向上につながります。実際に総務省ではオフィス改革に取り組んだ結果、スペースの有効活用やコストの削減に成功しました。

しかし、オフィスレイアウトを改善したいと思っても、「具体的にどのようなレイアウトを採用すべきかわからない」と悩んでいる担当者の方もいるでしょう。他社の事例を参考にする場合でも、従業員数やオフィス面積、業務内容などが異なると、そのまま真似するわけにはいきません。

そこで今回は、オフィスレイアウトを検討する際のポイントについて解説します。具体的なデスクの配置例やデスクの運用方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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オフィスレイアウトを検討する前に考えておくべきゾーニング計画

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具体的なオフィスレイアウトを検討する前に、ゾーニング計画を考えておきましょう。ゾーニングとはオフィス内に設けるスペースを区分けする作業のことで、ゾーニングによってオフィス内の大まかな配置が決まってきます。

ゾーニングは、効率的にオフィスレイアウトを検討するために必要な作業です。各スペースの広さや配置を決める前に細かい部分の検討を進めてしてしまうと、「このスペースはもっと広くするべきだった」「スペースの配置がうまくいかず、導線が悪くなった」などの問題が発生するケースがあります。

このような事態を防ぐために、まずは必要なスペースを洗い出し、それぞれのスペースの広さと配置を決めてから、スペース内に配置する設備の具体的なレイアウトを考えていきましょう。

一般的なオフィスに必要なスペースとして、以下が挙げられます。

  • エントランス
  • 執務スペース
  • 役員スペース
  • 会議室
  • サーバールーム
  • リフレッシュスエリア
  • 収納スペース
  • 通路


上記以外にも業務内容に応じて必要なスペースがある場合はそれも加えて、まずは全体の配置を大まかに考えてみてください。

オフィスレイアウトを検討する際のポイント

オフィスレイアウトを検討する際に考慮すべきポイントとして、以下が挙げられます。

  • 1人あたりのワークスペース
  • プライバシー・パーソナルスペースへの配慮
  • 導線・通路幅
  • 仕事内容に合わせたスペース・家具

それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

1人あたりのワークスペース

はじめに考慮すべきなのは、従業員1人あたりのワークスペースです。一般的なオフィスでの1人あたりのワークスペースは3坪(約9.9㎡)で、オフィス家具を専門とするKOKUYOの調査では300名以下のオフィスにおける1人あたりの面積は約10.5㎡となっています。

まずは、「オフィスの総面積÷従業員数」を計算してみましょう。計算した結果、1人あたりの面積が3坪よりも狭かった場合は、執務スペースや会議室など業務に必要なスペースをしっかり確保しておく必要があります。反対に、1人あたりの面積が4〜5坪ある場合はスペースに余裕があるため、執務スペースのほかにリフレッシュエリアを整備したり会議室を多めに用意したりできます。

プライバシー・パーソナルスペースへの配慮

執務スペースの配置やデスクの大きさを検討する際には、プライバシーやパーソナルスペースへの配慮も必要です。パーソナルスペースとは他人が侵入すると不快に感じる空間のことで、人によってパーソナルスペースの広さは異なります。

人と人との距離が近すぎると、パーソナルスペースに侵入されて不快感を覚える従業員が出てくるでしょう。自分の資料やパソコンの画面が隣の人の視界に入りやすく、プライバシーが侵害されていると感じる可能性もあります。

執務スペースにおけるパーソナルスペースの目安は1.2mです。KOKUYOの調査では約6割の企業が幅1.2mのメインデスクを使用しているという結果が出ているので、幅1.2m以上のデスクを採用するとパーソナルスペースを確保できます。

しかし、従業員数やオフィスの面積の都合で幅の広いデスクを置けない場合もあるでしょう。何らかの事情で幅の狭いデスクを選ばざるを得ないときは、パーティションで仕切りを設けるのがおすすめです。仕切りがあると個別の空間がはっきりし、プライバシーが保たれます。

感染症対策の観点からも人との間隔はできるだけ2m、最低でも1mは空けるように推奨されているため、1.2mを目安に人と距離を取れるようなレイアウトにしましょう。

パーソナルスペースの重要性とは?

オフィスにおけるパーソナルスペースの重要性について詳しく知りたい方は「パーソナルスペースが近い職場だとどうなる?オフィスにおけるパーソナルスペースの重要性について」をご覧下さい。

導線・通路幅

オフィス全体のレイアウトを考えるときに意識しておかなければならないのが、導線と通路幅です。導線とは人が移動するときにたどる経路のことで、業務で必要な場所までスムーズに移動できるような導線の設計が求められます。導線が悪いと目的の場所まで遠回りしなければならなくなり、業務の効率が下がって従業員のストレスの原因になるため注意してください。

導線を検討する際のポイントは、できるだけシンプルなレイアウトにすることです。レイアウトが複雑になるほど通路の数が増え、通路幅も狭くせざるを得なくなります。はじめにエントランスからメインの通路を伸ばし、そこから各エリアへのルートを作っていきましょう。

適切な通路幅を確保することも大切で、特に多くの人が行き来するメインの通路は幅を広めにしておく必要があります。メイン通路の幅が狭いと、混雑してスムーズに通れません。建築基準法第119条で廊下の幅について定められていて、オフィスでは両側に部屋がある廊下は1.6m、それ以外は1.2mとされているので、この数値以上の幅を確保するようにしてください。

仕事内容に合わせたスペース・家具

仕事内容に応じて、必要な家具やスペースを導入しましょう。例えば、一人で黙々と作業する時間の多い職種やWeb会議の頻度が高い企業では、ワークブースの設置がおすすめです。ワークブースはデスクや椅子、電源など仕事に必要な設備を備えた、1人〜少人数用の個室空間のことです。

個室空間なので周囲を気にせず仕事に集中でき、外に声が漏れにくいのでWeb会議用の会議室としても活用できます。新型コロナウイルスの流行でWeb会議を行う機会が増え、会議室不足に陥っている企業も多いのではないでしょうか。86.8%の人が「新型コロナウイルス流行後にWeb会議が増えた」と回答しているアンケート調査もあります。

会議室が足りないと、自席でWeb会議に参加しなければなりません。自席でWeb会議を行うと周囲の雑音で相手の声が聞こえにくかったり、自分のマイクが雑音を拾って相手に不快感を与えてしまったりするおそれがあるため、なるべく個室空間で実施するのが望ましいです。また、「Web会議の声がうるさい」と周囲が迷惑に感じている可能性もあります。

ワークブースはオフィス家具という扱いで、設置に大掛かりな工事は必要ありません。会議室を増設するよりも低コストで個室空間を増やせるため、集中スペースや1人〜少人数用の会議室を増やしたい場合には、ワークブースを活用してみてください。

執務スペースや会議室のほかに、フリースペースを設けているオフィスもあります。フリースペースは簡単な打ち合わせやちょっとした休憩、自席から離れて集中して作業したいときなど、さまざまな使い方ができます。業務では関わりのない従業員同士が顔を合わせる場にもなり、コミュニケーションを促進したい場合にもおすすめです。

Web会議中に起こる雑音問題の解決方法とは?

Web会議中の声がうるさいなど雑音問題の解決方法について詳しく知りたい方は「Web会議にありがちな、うるさい音(雑音・ハウリング)問題の解決方法」をご覧下さい。

デスクの配置例

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執務スペース内のレイアウトを検討する際は、デスクの配置にもこだわってみましょう。代表的なデスク配置として、以下のようなものがあります。

  • 対向型
  • 背面式
  • ブース型
  • クロス型

以下で、それぞれの配置の特徴を解説します。

対向型

対向型は、向かい合わせになるようにデスクを配置するレイアウトです。スタンダードな配置で、見慣れた配置だと感じる人も多いでしょう。無駄なスペースが生まれにくく、限られたスペースに多くのデスクを配置したい場合に適しています。正面や隣の人と会話しやすいので、チームで仕事を進める部署にもおすすめです。

プライバシーやパーソナルスペースの確保のために、正面や側面にパーティションを設置するケースもあります。並べたデスクのまとまりを「島」といい、部署やチームごとに島を割り当てるのが一般的です。

背面式

背面式は従業員同士が背中合わせになるようにデスクを配置する、対向型とは逆のレイアウトです。周囲の視線が気になりにくく仕事に集中できるため、黙々と作業を進めるような部署に適しています。通常は背中を向けていますが、お互いに振り向けば距離が近く会話しやすいので、コミュニケーションを取りたいときもスムーズです。

ブース型

ブース型は、ひとつひとつのデスクをパーティションなどで仕切って個別の空間を作る方式です。プライベート空間が確保でき、周囲の視線や音が気になりにくいので集中力を必要とする業務に適しています。

ただし、空間を仕切るための設備にコストがかかり、対向型や背面式よりも広いスペースが必要になる点には注意が必要です。隣同士に壁がある状態でコミュニケーションが取りづらくなるため、進捗確認の時間を設けるなど運用するうえで工夫したほうがよいでしょう。

ワークブースを導入するメリットとは?導入事例と共に紹介

ワークブースについて詳しく知りたい方は「オフィスでのWeb会議や集中作業にワークブースを。メリットや導入事例を紹介」をご覧下さい。

クロス型

クロス型は、90度ずつ回転させた4台のデスクのまとまりをいくつも設置するレイアウトです。その形状から、「卍型」や「十字形」ともいわれます。ブース型のように仕切られてはいませんが、視線が交わらないのである程度のプライバシーが確保可能です。横を向けばコミュニケーションも取りやすいため、チームワークが求められる部署でも活用できます。

クロス型のデメリットは、広いスペースを必要とする点です。スペースに余裕のあるオフィスなら問題ありませんが、従業員数に対して執務スペースが狭いオフィスへの導入は難しいでしょう。

デスクの運用方法

従来は一人ひとりに席が割り当てられる固定席が主流でしたが、近年はフリーアドレスやグループアドレスなど席を固定しない運用方法も登場しています。業務内容によっては席を固定しないほうがスペースを有効活用できるケースもあるため、固定席以外のデスクの運用方法も把握したうえで、自社に合ったものを選びましょう。

以下では、固定席・フリーアドレス・グループアドレス・ABWの4つについて解説します。

固定席

固定席は、一人ひとりの従業員に決められた席を用意する運用方法です。誰がどこにいるのか把握しやすく、総務や経理などデスクワークが中心で他部署からの問い合わせが多い部署に適しています。自席から資料を持ち出すことが少ないため、経理や人事など機密情報を取り扱う部署も固定席のほうが安心です。

一方、営業のように外出が多く自席での作業が少ない部署や、常に一定の割合で在宅勤務をする社員がいるようなケースでは、全員に固定席を設けると空席が多くなり、無駄になってしまう可能性があります。

フリーアドレス

フリーアドレスは固定席を作らず好きな席で仕事をする運用方法で、基本的に従業員数よりも少ない席数で運用します。営業など外出が多い部署や、テレワークを導入していて出社率の低い企業では、従業員数より席数を少なくしても問題ないケースが多いでしょう。

テレワーク実施企業の約半数が完全フリーアドレスもしくは固定席とフリーアドレスの併用をしているという株式会社オカムラの調査結果もあり、固定席からフリーアドレスに移行する企業が増えています。

フリーアドレスは席数を減らしてリフレッシュエリアを作るなどスペースを有効活用したり、借りるオフィス面積を小さくしてコストを下げたりできるのがメリットです。業務では関わりのない人と近くの席に座ることもあり、コミュニケーションの機会が増えるというメリットもあります。

一方、誰がどこで仕事をしているか把握しにくくなるため、チーム内のコミュニケーションが難しくなる点はデメリットでしょう。また、上司の目が届きにくくなるため、特にチーム内に新人がいる場合は工夫してフォローする必要があります。

フリーアドレスを導入するポイントやメリット・デメリットについて紹介

フリーアドレスについて詳しく知りたい方は「フリーアドレスを導入するケースが増加中。再定義されるオフィスの役割と活用法」をご覧下さい。

グループアドレス

グループアドレスは、グループごとに決められたエリアのなかで自由に席を選ぶ運用方法です。フリーアドレスと同様に固定席は設けませんが、「チームでのコミュニケーションが取りづらい」というデメリットをカバーできます。固定席よりも自由度を高めつつ、チームで連携が取りやすい、固定席とフリーアドレスの「いいとこ取り」をしたような運用方法だといえるでしょう。

グループアドレスを導入する場合、部署ごとにエリアを固定する方法と、部署ごとのエリアも定期的に移動させる方法の2種類があります。部署ごとのエリアを移動させると、隣り合う部署が入れ替わるので多くの部署とコミュニケーションが生まれるきっかけになります。

ABW

ABWは「Activity Based Working」の略で、従業員が働く場所や時間を自由に選べるワークスタイルのことです。以下のように、その日の予定や気分、家庭の事情などに合わせて、以下のように自由に働けます。

  • 営業の外回りの合間にカフェで仕事をする
  • 通勤ラッシュを避けるために出退勤の時間を他の人とずらす
  • 子供の面談のために午後の2時間だけ仕事を中断し、それ以外の時間は自宅で仕事をする
  • 集中して作業をしたいときにコワーキングスペースを利用する

このように、ABWは個人の都合に合わせて柔軟に働ける点がメリットです。一方、どこでも仕事ができる環境を整えるために、ノートパソコンやタブレットの支給、出社しない社員の勤怠管理方法の検討、コミュニケーションツールの導入など、多くのコストがかかる点が課題として挙げられます。

ABWとは?

ABWの働き方や、それがもたらす生産性について詳しく知りたい方は「ABWとはどんな働き方?自由度の高いワークスタイルがもたらす生産性への影響とは」をご覧下さい。

まとめ

オフィスレイアウトを検討する際には、まず必要なスペースを洗い出してゾーニング計画を行い、導線や1人あたりの作業スペース、パーソナルスペースなどを考慮しながら最適な配置を考えましょう。デスクの配置も種類が豊富なので、業務内容や執務スペースの広さに合わせて適したレイアウトを選ばなければなりません。

また、「固定席にするかフリーアドレスを取り入れるか」「ABWのように柔軟な働き方を目指すかどうか」などによっても選ぶべきレイアウトが変わってきます。そのため、まずは自社でどのような働き方を実現したいのかを明確にしてから、具体的なオフィスレイアウトを検討してみてください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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